ち ょ っ と ま わ り を見 わ た せ ば ……

ちょっとまわりを見わたせば……
日本フェアトレード・フォーラムが2015年6~7月に実施
した意識調査だ(表1)。ことばそのものは浸透しつつある
一方、その認知・理解は3割に満たないという現状があ
る。本特集では、市民活動や企業の社会貢献活動の現場
におけるフェアトレードへのとりくみを追いながら、その
背景や意義および市民社会とのかかわりを探ってみた。
奈良 雅美さん
(特定非営利活動法人
アジア女性自立プロジェクト)
品質から生まれる信頼が
持続的な活動につながります。
(3ページ)
さ よ
野田 沙良さん
(NPO法人アクセス)
どんな商品を買うかは、
どんな世界を実現したいか
ということです。
水野 泰平さん
(有限会社シサム工房)
フェアトレードの現場に
商品開発力と販売力を!
(3ページ)
が
先
材
取
石脇 智広さん
(石光商事株式会社)
日本の消費者に受け入れ
られること。 それが現地の
自信につながります。
(4ページ)
特集チーム 編集委員
梅田たけし、竹内友章、山野瞳、村岡正司、李顥
ウォロ特集 連 動セ
ミナ
ー「
アジアの貧困地域の女性たちに、日本
の市 民たちが支 援の手を 差し 伸べたこ
パーやチェーン系カフェなどでちょっと
輸入販売するという新しい
とから始まったフェアトレード。最も重
味した 製 品が、 国 際 交 流イベントのバ
動きが生まれた。その後大
要 視されるべき 生 産 者との顔の見える
まわりを見わたせば、認証ラベルの貼ら
手 企 業の 参 入 や、 国 際 的
関係……共感性は、時代の流れととも
ザーなどに登場するようになった。
組 織によるフェアトレー ド
にど う 変 化してきているのだろ うか。
れた製品や、フェアトレードをうたった
88
飲料メニューに出合うだろう。
ラベル認 証 制 度の誕 生 ( 図
次ページでは国内外でフェアトレードの
2015.12・1 ウォロ 12・1 月号(No.504)
特集
トレードの理解度について興味深いデータを示すのは、
(4ページ)
年 には 首 都 圏の 生 協 が 連 帯 し、
フィリピン・ネグロス地域の無農薬バナ
1)
、コミュニティ・ビジネス
推進や支援に携わる、市民活動家や企
ナを、 現 地の農 村の自立支 援を 目 的に
の普 及などもあいまって、
2
業人の姿を紹介したい。
出典:フェアトレード・ラベル・ジャパン
ホームページ(FLOの構成メンバー)
「認証ラベルの意味」
編集委員 村岡 正司
“ひとが手を挙げている図柄です。 これは、
途上国で日々、前向きに取り組む生産者の
人たちの決意と、フェアトレードを求める世界
中の消費者の熱望とが繋がり、前進していく
ポジティブな姿を表しています。未来への可
能性を青空で、そして成長や広がりを緑で表
現しています。”
品質にも重点が置かれるよ
う に な る。 今、 大 手 ス ー
[図1] 国際フェアトレード
認証ラベル 衣服など、国内の女性消費者の共感を
得るために、チャリティーの要 素を 加
[表1] フェアトレード製品の購入経験 (調査時期:2015年6月から7月)
出典:日本フェアトレード・フォーラム、「フェアトレードに関する全国意識調査」、
2015年7月16日
国 際フェアトレー ドラベル機 構 (注)
が2 0 1 4 年 に 発 表 し た、 日 本 国 内
%増 )だったとい
23
の 認 証 製 品 市 場 にお け る 取 扱 額 は 約
74
か国の合 計 額の7115億
%増 )に比べるとわず
億 円( 対 前 年 比
う。世界
円( 対 前 年 比
か1% 強 だが、 日 本フェアトレー ド・
・2%で、3年
フォーラムの調査では、フェアトレード
製品の購入経験率は
前に 比べ6・7% 上 昇 し たという 結 果
。消費者=市民がフェ
が出ている (表1)
アトレー ドに注 目し、 購 買 行 動を 起こ
す機会は増えているといえるだろう。
日 本におけるフェアトレー ドは、 貧
困 お よ び 男 性 優 位 社 会によ る 構 造 的
差 別、つまり二重の搾 取に苦しむ途 上
国 女 性の自立を支 援する手 段として、
NGO団 体などの手で1980年 代よ
り と り く ま れてき た。 活 動 の 中 心 を
担った多 くは日 本の女 性たちで、 手 仕
事による 伝 統工芸 品、アクセサリ ー、
(注)国際フェアトレードラベル機構 : 略称FLO。1997年設立。 国際的な統一基準を制定し、
フェアトレード運動を普及する非営利の国際組織
42
15
90
認知率29・3%、知名度54・2%。国内におけるフェア
語
援
ド支
ー
トレ
ア
フェ
る
の現 場から」開催のご
案内
今特集に登場した石光商事の担当者が、 同社の支援
するドイトゥンコーヒーサポートプロジェクトの現況を
お話しし、 フェアトレードにおける多様な支援のあり
方や、個々人としてかかわりをもつ意義について考え
るセミナーです。 会場ではコーヒーの試飲やウォロ
見本誌の配付もおこないます。
*日 時 2016年1月23日(土) 14時~16時
*お 話 石脇智広さん
(タイ王室メーファールアン財団コーヒーアドバイザー。
石光商事株式会社研究開発室長、
1969年鹿児島生まれ。
東京大学大学院工学系研究科修了、博士(工学)。 全日本
コーヒー検定委員会鑑定士。 趣味が高じてプロになった
元コーヒーおたく)
*会 場 旧グッゲンハイム邸
神戸市垂水区塩屋町3-5-17 1909年に建てられたコロニアル・スタイルの洋館です
*アクセス JR・山陽塩屋駅下車(東へ徒歩5分)
*参加費 500円
*申し込み先 主催団体事務局 電話090-8651-5742 メール [email protected]
主催/NPO法人ヒューマン・ビジョンの会
後援/社会福祉法人大阪ボランティア協会
2015.12・1 ウォロ 12・1 月号(No.504)
1
第 回ボランティア・スピ
リット賞
月 日(水・祝)に全国
表彰式(
東京)
ランティア・スピリット賞は、 米 国
地方係争処理委員会とは、国と地
方 自 治 体との間で、 国の関 与をめ
ぐり争いが生じた場合に審査する、総務省
に設置された合議制の第三者機関。
現在の委員は、国会の同意を得て総務
相が任命した大学教授を主体とした5人。
審査申し出に対し、 日以内に結論を出
し、必要であれば国に是正の勧告を行う。
沖縄県名護市の辺野古地区での米軍基
地の新設工事を強行する国に対し、 沖縄
県知事が 月に同委員会に審査申し出を
行った。
そもそも委 員 会が設 置された経 緯は、
それまで上 下 関 係ともされてきた国と地
方が、 対 等に議 論し争えるように地 方 分
権の推進を目的としているが、2000年
の設置以来、これまでの申し出の実績は、
横 浜 市と新 潟 県からの2件のみ。 うち国
に勧告を行ったのは1件だけで、十分に機
能しているとは言い難い。
行政不服審査方は本来、公権力から市
民を守るための制 度だ。 その制 度を国が
無理筋に解釈し、審査請求と執行停止の
申し立てをしたことに対して、多くの行政
法学者が違法・不当であるとしている。 辺
野古の案件については米軍基地の必要性の
議論とは別の視点として、 地方自治を踏
みにじるがごときの、 国による法やルール
を無視したなりふりかまわぬ横暴が続いて
いる点が大きな問題となっている。
この委 員 会での審 議の行 方は、 本 来の
制度の理念を生かして、この国の地方分権
と法の下の平等が守られるかが厳しく問わ
れている。
編集委員 大門 秀幸
冊)を挟
ウォロ・バインダー
新規購読者に
プレゼント
新 しいウォロが2 年 分 (
み 込 めるバインダー が 、 完 成です 。
すで に ウォロを 購 読 さ れてい る 皆 さ
ん に も ウォロ・バ イン ダ ー を 入 手 い
た だ くチャンスありです 。
(1冊500円+送 料250円 )
お 問い合 わせは ウ ォ ロ 編 集 部
まで
[email protected]
お菓子を食べて
市民活動 支援!
ボック サン寄 付つき
クッキ ー 発 売 開 始
年以上神戸で愛され続けてきた洋
頭 に、「 こ れ は 衣 服 に 関 す る 物
フィシャルサ イ トの 映 画 紹 介の 冒
非営利活動法人しみん基金・KOBEにに
り発 売された。 売り上げの3%を 「 特 定
菓子屋、ボックサンの寄付つき商品
「 有 馬ソル ト クッキ ー」 が、 月 日 よ
分/カラー
カにて開始した、青少年対象のボランティ
語 で、 私 た ち が 着 る 服 や 衣 服 をつ く る
寄付し、市民活動の支援に役立てられる。
2015年/アメリカ/
アを 支 援 するアワー ドである。 日 本では
人 々、 そしてアパレル産 業 が 世 界に与え
ン情報 』のバックナンバーの閲覧スペース
ている。 タウン誌にも 焦 点 を あて、 今 年
出 版 社 書 籍ほか 約1000点 が 展 示され
られた 今はなき宝 文 堂の出 版 書 籍、 地 元
見交換会など、ボランティアのネットワー
教諭・ボランティア団体関係者のための意
全 国 表 彰 式では、 参 加 者によるグルー
プ・ディスカッション、生徒引率の保護者・
ティ賞として150組が選出された。
募から、ブロック賞として
組、コミュニ
だ。 フェア ト レ ー ド
ドキュメンタリー 映 画
と 問 題 提 起 して い る
当 のコス ト を 支 払ってい るのは 誰 か?」
牲」 をクローズアップし、「服に対して本
費に伴 う 「 生 産 者の犠 牲・地 球 環 境の犠
かれている。 安 価なファッションの大 量 消
助成金を交付した。
べ161団体に合計56944800円の
市 民 活 動に対し、これまでの
ンドで、 被 災 地を 中 心に活 動する草の根
歳 から
年からアメリ
ユニークな企 画 展 が、 仙 台 市 青 葉 区の仙
歳の
「しみん基金・KOBE」は阪神淡路大震
ル・ファイナンシャル」 が
台文学館で始まった。 宮城・仙台の歴史や
1997年に創 設 され、
る影 響の物 語だ。 これは貪 欲さと恐 怖、
も設けている。 会 期 中には、 地 元の作 家
クを 広 げるための交 流プログラムも 開 か
商 品 を 販 売 す るピ ー
年 間での
や地元雑誌・出版社の編集者など、本の書
れ る 予 定 だ。 ど な た で も 参 加 で き る の
プ ルツ リ ー の 代 表 サ
もち米の触感が楽しい銀シャリ塩味クッキー
枚 入 り、
編集委員 李 顥
● 問 合 せ 先 0 7 8-
731-3675
1080円)。
き る( 1 箱
店 の 5 店 舗 にて 購 入 で
ファー レ 横 尾 店、 三 宮
南 店、 板 宿 ビ バ 店、 リ
新商品は現在、ボック
サ ン 東 須 磨 本 店、 板 宿
16
10
周 年 を 迎 えたタウン誌『 せんだいタウ
き手、 作り手、 送り手の方々によるトー
で、 ぜひ情 報 交 換に参 加 してみてはいか
http://
)
truecost/scr
unitedpeople.jp/
ルはこちら :
る。( 上 映 ス ケ ジュー
も 取 り 上 げ ら れて い
フィア・ミニーの 活 動
クイベントも開催される。
月
23
http://www.t-i-forum.co.jp/
日(水・
がだろうか。
数多く収蔵されている。
● 問 合 せ 先 仙 台 文 学 館 電 話 022-
271-3020 FAX 022-271-3044
B7
●全国表彰式 2015年
23
仙 台 文 学 館 は1999 年 月 に 劇 作
家・小 説 家 井 上ひさしを 初 代 館 長 として
11
祝 )東 京 国 際フォーラム( 東 京 )ホ ール
な地方出版社や出版物を紹介する
文 化を伝える貴 重な資 料として、 戦 後 初
青少年ボランティアが表彰対象となってい
95
開 館。 宮 城・仙 台ゆかりの書 籍や雑 誌 が
18
オ
の総合文芸誌『 東北文学 』、仙台の老舗書
災をきっかけに設立したコミュニティ・ファ
監督 : アンドリュー・モーガン
プロデューサー : マイケル・ロス
~ファス トファッション
真の 代 償 ~ 』 公 開
『 ザ・トゥルー・コスト
「国地方係争処理委員会」
って ? 国
日(日)まで
仙台文学館企画展「人と街を
2016年1月
開催
11月1日〜
1月31日まで
そして権 力と貧 困の物 語でもある」 と書
の金融サービス機関「プルデンシャ
90
年 目 となる 今 回は1807通の応
ボ
11
る。
民 目 線で仙 台 市 内にあるさまざま
12
特典
新規購読
50
23
店金港堂の関係資料、郷土誌の発行で知
93
つなぐ― みやぎで生まれ
た本・雑誌」
パ ラ ボ ラ ・ ニュー ス
市
24
19
12
19
12
40
12
13
2015.12・1 ウォロ 12・1 月号(No.504)
2015.12・1 ウォロ 12・1 月号(No.504)
14
3
40
ア ゴ ラ
シ ネ マ
40
café est
カフェ
は話す。
くることが目的。 それに加え、地
時、 名 古 屋 大 学に通 う2人の学
café スタッフは現 在 人で、 中心は
2年 生。 名 古 屋 大と椙 山 女 学 園
域住民との交流を目的に「七夕」
古屋市営地下鉄 「 本山 」
大の学生が参加している。 全員が
や「 縁 日 」、「ハロウィン」 をテー
生が「 人とのつながりを育めるよ
無報酬で、 授業やアルバイトと掛
マにしたイベント、 そして年 末 恒
駅 から 北へ徒 歩 5 分。 住
け持ちで運営にあたり、入学や卒
例の「餅つき大会」なども開いて
」はラテン語で「存
店名の「 est
在する」という意味。「そこにあっ
業にともない顔ぶれが替わる。ス
いる。 収 支はスタッフの人 件 費が
うな交流の場をつくろう」と考え
st がある。 店 内は窓から光が
e」
差し込み、 明るく 開 放 的 な 雰 囲
タッフとしての参 加 条 件は、 月2
ゼロのためほぼトントンで、利益が
居 と 店 舗が入り 混じる 通りに、
気で、心地よい時間を過ごすこと
回のミーティングに参加すること。
出れば地域住民向けイベントの開
て当たり前の存在になりたい」 と
」には、 一 般 的なカ
「 café est
フェとは 大 き く 異 な る 特 徴 があ
「スタッフ間の情 報 共 有やメニュー
催費に充てられる。
たことだった。
る。 そ れは、 食 材 の 仕 入 れから
開発などの議論の場を大切にして
ここで、ぜひ強 調しておきたい
「 一 杯 のコーヒーからいっぱいの
メニュー開 発、 調 理、 接 客までを
いる」からなのだと広報担当の石
出 会いを 」がコンセプトの「
現役の大学生のみで運営している
田駿介さん(名古屋大学3年生)
エスト
ことだ。 店 舗がオープンしたのが
ができる。
月。 きっかけは、 当
の願いが込められ、 集いの場 をつ
カフェということはわからないこと
だ。〝 学 生 主 体 〟 を ウ リにして
もいいはずだが、 そうしない理 由
を、石田さんは「提供する商品で
12
しっかり勝負したいから」と語る。
つながりを育むことを目的に立
」。 オープン
ち上がった「 café est
た
年が経った今は、 店 内には
から
若者のほか、親子連れなど、地域
の人たちの姿も目 立つ。つながり
1960年沖縄県生まれ。仕事はドキュメンタリー映
画の制作・配給。
「沖縄慰霊の日」にちなみ、毎年
6月東京・ポレポレ東中野で上映を続けている長
編記録映画『ひめゆり』(2007)。仏・独で話題にな
り、現在もロングラン上映中の『 千年の一滴 だし
しょうゆ』
( 2015)
などを手がける。問合せ:プロダク
ション・エイシア
(電話 042-497-6975)
を育む学生たちのチャレンジは、い
イラスト:杉浦 健
まも続いている。
大 兼久 由 美
2003年
愛知県名古屋市千種区楠元町1丁目21
OPEN 11:00(LUNCH TIME -14:00)
CLOSE 20:00
(LAST ORDER 19:30)
不定休
(HP・SNSで確認してください)
http://cafeest.jimdo.com/
編集委員 金治 宏
川崎市は戦後、工業都市とベッ
ドタウンとして急 速に発 展し、こ
の 団 地 は 全 国から 押 し 寄せる 労
働 者の受け皿だった。 ふるさとに
つい
家族を置いてきた人や、もう誰も
すみか
残っていない人にとって、ここが終
の棲 家 なのだろ う。 個 性の違 う
住人同士、団地での暮らしや交流
が全てうまく行く訳ではないが、
たくま
よ し み
」
ことがある。 それは「 café est
を訪れても〝 学 生がやっている〟
落ち着いてくつろげる
アットホームな店内
「桜 の 樹 の 下 」
名大祭での出張カフェの様子
今月の作品
営 団 地で
暮 らすお
年 寄 りの 日 常 を
取材した、来春公
み
開 予 定の作 品を観
た。 団 地 に 住 む お
年寄り……とひとこ
c a fé e s t
●今月の館主
おおがねく
12
名
第41回
2015年/日本/92分/ドキュメンタリー
監督:田中圭、撮影:田中圭、前田大和
制作:島田隆一、製作:だいふく、JyaJya Films
宣伝:佐々木瑠郁
配給:JyaJya Films
孤独や問題を抱えながらも、時に
を描けないと感じる事もあるが、
とでいえ ば珍しく も
若い制作者たちが、高齢の住人に
「 生 き る と は ど うい う こ と だ ろ
支えあい逞しく生きている。
の内や、まさに〝人生いろいろ〟な
受け入れられていることを感じさ
う 」 という問いが、この作 品を観
をお茶に誘う。 彼 女の部
老いの暮らしの情 景を静かに浮か
せるシーンだ。 現役時代は仲間と
ているうちにじんわりと 浮かんで
ないのだが、 住 人 一
び上がらせている。 舞 台は住 人の
劇団を作るなど活発に活動してき
きた。 老いや独りの寂しさを抱え
屋でその暮らしぶりを静かに写す
7割が高齢者で、その多くが単身
た男性や、働き盛りに視力が低下
ながら、人はみな年をとっていく。
人ひとりとじっくり向き合うこと
者という、神奈川県川崎市の市営
し、今はヘルパーが唯一の話し相手
「 生きて、そして老いていく」とい
毎 日 見 聞きする高 齢 化 社 会の
様々な問 題からは、 将 来への希 望
団地。 高齢者や身体障がい者、生
という男性、 片付けられずゴミと
う当たり前のことを、 優しい映像
20
代の監 督とカメラマン。
活保護受給者が暮らしている。 冒
物で埋まった部屋で暮らす女性な
とともに素直に感じた。
のは、
頭、カメラが団地の風景を撮ってい
ど、カメラは4人の暮らしを追う。
で、 外からはなかなか見えない心
ると、 老 女が近 寄り撮 影スタッフ
~市民視点のドキュメンタリー映画を紹介する 公
第33回
ライ ブ ラリー
第11回
民主主義ってなんだ?
牧里毎治監修・川村暁雄・川本健太郎・柴田学・武田丈編著、ミネルヴァ書房、2400円+税
高橋源一郎・SEALDs 著、河出書房新社、1200円+税
ジネスがどのような原理に基づ
れられがちになり、
「安易な幻想
要があることを導き出している。
いて展開されているのかを分析
を売り込むことにつながる」と本
「これからの社会的企業」に求
した一冊である。
書では問題提起している。
められるのは「何か特別な事象」
多様化、複雑化する社会問題
本書ではこれまでの社会的
を起こす「1つのカリスマ的な組
田氏)と、作家・高橋源一郎氏
ホームページで、全文や動画が
刊であるが、世代が違いながら
に対して、新しい柔軟な発想を
企業を「社会的課題の解決を目
織による挑戦」への関心ではな
と、の対談が収録された書籍が
公開されている。
も共通項が垣間見られるところ
用いて解決する主体として社会
的とし、収益事業を社会課題の
く、社会的課題の解決のために、
発刊された。
一方の高橋源一郎氏は、三
が興味深い。前半は、SEALDs
的企業が近年、注目されてきて
解決のために活用し、利益分配
市場、政府、市民の各セクター
SEALDsは、今 年 5 月ご ろ
島由紀夫賞、谷崎潤一郎賞な
の 3人がそれぞれのこれまでの
いる。
しかしながら「ビジネスを通
に制限のある独立組織」と定義
の役割と責任を問い直すという、
から物 議を醸した「安 全 保 障
どの受 賞 歴をもつ、日本を代
半生について語り、後半は高橋
して社会的課題を解決する」と
し、
「社会的課題を目的とした組
「パートナーシップの明確化」の
関連法案」への反対デモで、一
表するポストモダンの作家であ
さんによる民主主義の歴史に
語られてきたこれまでの社会的
織」に焦点を絞りながら事例検討
過程である。とりわけ本書におい
書のテーマは社会的企業
企業は「新しい政策や手法を生
を行っている。そして社会的課題
ては政府の責任の明確化が強調
の「カリスマモデルから
み出す特別な事象」に関心が寄
を解決するための持続可能な活
されている。従来の社会的企業、
今
の脱却」と「パートナーシップの
せられてきたため、その活動が
動を行うためには、これまで語ら
それに関する議論が持つ限界と
明確化」である。国内外の社会
社会的にどのような意味を持つ
れてきたビジネス(市場)だけで
課題を検討しながら、その新しい
的企業の事例を取り上げ、どの
のか、ビジネスがどのような原理
はなく、政府、市民の各セクター
可能性を示す一冊と言える。
ような社会的意味を持ち、そのビ
で成り立つのかということが忘
が、それぞれの責任を果たす必
本
28
これからの社会的企業に求められるものは何か ―― カリスマからパートナーシップへ
2015.12・1 ウォロ 12・1 月号(No.504)
編集委員 竹内 友章
躍有名となった学生団体であ
る。今年 5 月には、震災直後で
関する話が掲載されている。関
年 9 月 に、 学 生 団 体
る。9 月 15 日には、参院平和
ある 2011 年 4 月から 15 年 3
心ある方は、手にとってみては
SEALDs(シ ー ル ズ:
安全法制特別委員会の中央公
月末分までの「論壇時評」
(朝
いかがだろうか。
Students Emergency
聴会にも奥田氏が公述人として
日新聞連載)をまとめた『ぼくら
Action for Liberal
出席し、意見を述べた。その様
の民主主義なんだぜ』を発刊し
Democracy - s)の主要メン
子は、ニコニコ生放送でネット
ている。
バー 3 人(奥田氏、牛田氏、芝
中継された。今でもいくつかの
そんな各者の対談による新
2015.12・1 ウォロ 12・1 月号(No.504)
編集委員 山本 佳史
27
国際協力ボランティア活動で
育むコンピテンシー
さわやま としひろ
関西大学教授
験への誘いを 耳 に す る 機 会 が 増
日記 念 事 業に遡る。 紆 余 曲 折 と
PCPの始まりは、1994年
にコラソン・アキノ元大統領の来
PCPのエッセンス
児 童の発 達 段 階 に加 え、 同 じ 学
ことができ る 楽 器 だ。 課 題 曲 は
で 技 術 力 と語 学 力の不 足 を 補 う
間で 初 歩 的 な 教 授 法の習 得 がで
イノリティや平和問題について考
あ ま り 目 を 向 け る こ とのないマ
跡 地 などを 訪 問 する。 日本では
か れ ていたク ラ ー ク 空 軍 基 地の
かどうかということであろう。
えば、上から目線でない人である
力 などを 指 標 とする。 一 言で 言
良 好 な 人 的 ネットワー クの構 築
澤山 利広
え ている。 その多 く は 自 己の能
変 遷 を 経 ながら、 法 人 格 も 事 務
年 に 異 な る 年 齢 の子 ど も が 机 を
える機会となってる。
側にとってのリコーダーは、短期
力の向 上 や 開 発 を 主 眼 とす る
所 も 会 員 制 度 も ないグルー プ を
並べるフィリピンの学習環境を考
は、 異口同 音 に 「 与 える より も
日 本 の内 な る 国 際 化への関 心 の
コンピテンシー(後述)の向上や
り、二次的に日本からの参加者の
続してきた原動力である。
た時の不 甲 斐 な さ が、 活 動 を 継
奏 で き た 時 の 感 動 や で き な かっ
最 終 日のコン サー ト で 立 派 に 演
児 童 が日に日に曲 をマスターし、
どもたち も 必 死に練 習に励 む。
CPのメンバーは懸命に教え、子
が同 等のアメリ カ 国 務 省 外 交 官
教 授 が、 学 歴 や 入 省 試 験の結 果
学 教 室のデビッド・マクレランド
コンピテンシーとは、1970
年 代 初 めにハーバー ド 大 学 心 理
グローカル人材のコンピテンシー
た避難ゲームを披露した。
災 世 界 大 会で 火 山 噴 火 を 想 定 し
年 度 は仙 台 で 開 催 さ れ た 国 連 防
うことができる。
コン ピ テンシ ー の 獲 得 を う か が
のそ れ ぞ れの機 会になっており、
成、⑤アイデンティティの探求、
再 発 見、 ③ 文 化 相 対 主 義 的 視
識、 ② 日 本 文 化のす ば ら し さの
家 族 や 地 域 社 会の大 切 さの再 認
れる。 異 文 化 社 会での奮 闘 が①
き、 身 振 り 手 振 り を 交 えた指 導
留 学 な どで あ る が、 日 本 国 内の
母 体 に、 現 在 は両 国の有 志 が活
慮して選 曲 する。 簡 単 すぎ ず 難
嚼を兼ね
帰 国 後 は体 験の咀
て、国際交流・協力イベントや学
与 え られ た」 という 感 想 が聞 か
グローバル人 材 が も て は や さ
れ る 現 代 社 会 において、 海 外 体
多 文 化 共 生 社 会の創 造 とも リ
動 を 継 承 し ている。 PCPの目
し す ぎ ず、 5日 間 で 何 と かマス
会 な どで 発 表 を 行 う。 2014
さかのぼ
ン ケ ー ジ し ている 草 の根 の国 際
的 は、 教 員 不 足、 教 材・施 設 不
ターできる曲であるからこそ、P
喚起を企図している。
午後は、その年のメンバーの得
い
意分野を活かし、例えば、口腔衛
の、 途 上 国でのパフォーマンスの
最近のPCPメンバーは、一連
の活 動 か ら 生 じ た 問 題 意 識 を 発
PCP参 加 者 に 限 ら ず、 国 際
協 力 ボ ラ ンティア の 体 験 者 か ら
協 力 ボ ランティア 活 動 に も 関 心
足 な どのために十 分 に行 わ れ て
持たない新しい公募メンバーが、
生や理科実験などのワークショッ
差 を 分 析した研 究に由 来 する。
展させ、外国にルーツを持つ子ど
そしゃく
を 寄 せたい所 で あ る。 本 項 では
音 楽 教 授 法の修 得や 指 導 案の検
プを行う。 週末のエクスカーショ
高い成 果 や 期 待 さ れ た結 果 を も
も た ちの支 援 を 日 本 国 内 で 展 開
私 が 携 わ って い る
を
Children’s Project (PCP)”
例 に、 国 際 協 力の醍 醐 味 とその
討、 教 材 の作 成 等 に 励 む。 フィ
ンで は、 ピナツボ 火 山 噴 火 被 災
た ら す 共 通の態 度、 思 考パタ ー
し ている。 国 際 協 力 ボ ラ ンティ
“Philippine いないフィリピンの初 等 教 育レベ
ルの情 操 教 育 分 野への寄 与 で あ
「 グロー カル」 人 材 の 育 成 に 果
リ ピンで は、 毎 年 8 月 中 旬 にマ
地 やその影 響で 移 住 を 余 儀 な く
ン、判断基準のことで、具体的に
点の涵 養、 ④ 地 球 市 民 意 識の醸
かんよう
たす役割を考えてみたい。
ニラから3時 間のアンへレス市 圏
されたアエタ族の集落、第二次世
ア 活 動 は地 域 づく り を 担 う 市 民
派 遣 前 には、 毎 年 参 加 す るコ
アメンバー と 一 般 に 移 転 技 術 を
で1週 間 程 度 を 過ごす。 午 前 中
は信念の強さ、異文化に対する高
編 □
集 □
後 □
記
□
ウォロ(Volo)12・1 月号 / 通巻504 号
2015 年 12 月 1 日発行
*本誌の発行費用の一部は大阪府共同募金会の
助成を受けています。
◎事務局
李 顥(り はお)
◎デザイン / DTP
ADOアサノデザインオフィス
◎校正 村岡正司
◎発送協力
トミの会 / 元久の会 / 梅田 茂 / 岸田 和弘 /
中野 伊津子 / 福満 奈都 / 吉中 広子
◎制作・編集
大阪ボランティア協会『ウォロ』編集部
29
2015.12・1 ウォロ 12・1 月号(No.504)
つな
界 大 戦 時の神 風 特 攻 隊 発 祥の史
澤山 利広(関西大学教授)
は児 童 養 護 施 設 付 属の小 学 校で
国際協力ボランティア活動で育むコンピテンシー
の育成に他ならない。
《フィリピン発! グローバルレポート~世界市民社会の動きから》 ㉙
「居住福祉」―ハウジング・ファーストの理念
《この人に》㉕
1.市民活動の政治活動規制をめぐる誤解 さいたまサポセン直営化条例によせて
2.創意工夫が誘発し合う組織へ 協会創立50周年にちなんで
《V 時評》 ⑮
「café est」/『桜の樹の下』/書籍紹介
い感受性、他者の人間性の尊重、
Ⓒ 社会福祉法人 大阪ボランティア協会
〒5 4 0 - 0012 大阪市中央区谷町 2 丁目 2-20 2F
市民活動スクエア CANVAS 谷町
鵜飼 七緒子(神戸大学大学院工学研究科建築学専攻)
《パラボラ・ニュース》 ⑭
◆ V時評で紹介した「フラッシュモブ」に参加し、大の大
人 20 人と踊って歌って大騒ぎ。夏に余興案として浮上
し、9 月から練習が始まり、当日も朝からリハーサル。なぜ
こんなことにこんなに時間を? もちろん、楽しいから! ステ
ージから見たみんなの驚き顔、一生忘れない。
(り)
◎印刷所
デジタル総合印刷株式会社
本誌掲載記事の無断転載を禁じます。
社会福祉法人 大阪ボランティア協会
2015.12・1 ウォロ 12・1 月号(No.504)
30
猛 虎 打 線のように繋ぐこと
(グ
ローカリズム、社学連携、産官学
NPOの協働、理論と実践とのリ
ンケージ)
を心がけている。
日本国
内、アジア、アフリカでの参加型
ボランティア活動の企画・立案に
携わってきた。共編著に
『国際協
力の地平』、共著に
『ライフストー
リーでつづる国際ボランティアの
歩き方』、
『 NPO/NGOのキャパ
シティディベロップメント』他。
(公
社)
青年海外協力協会理事、
(特
活)
関西国際交流団体協議会理
事、
社会貢献学会理事。
◎発行所
記録を残すことには意味がある
「国地方係争処理委員会」って?
●広告掲載のお申し込み、記事内容について
[TEL]06-6809-4903 [FAX]06-6809-4902 [E-mail][email protected]
担当/李 顥(り はお)
● 購 読 の お 申 込 み、定 期 購 読 の 宛 先 変 更
[TEL]06-6809-4903 [FAX]06-6809-4902 [E-mail][email protected] 担当/岡村豊子 ●定期購読のご案内(2014年4月から)
1年間(6冊)3,000円(送料、税込)
千葉 有紀子 印刷会社勤務・写真家
筒井 のり子 龍谷大学教員
中田 万葉 大学生
華房 ひろ子 ライフコーチ
原 栄美子 ライター
早瀬 昇 大阪ボランティア協会常務理事
牧口 明 社会福祉士
水谷 綾 大阪ボランティア協会事務局長
村岡 正司 (特活)ヒューマン・ビジョンの会
山中 大輔 団体職員
山本 佳史 市民社会ドゥタンク代表
山野 瞳 大学院生
◎発行者
牧里 毎治 ◎編集者
水谷 綾 ◎編集委員長
増田 宏幸 新聞社勤務
◎編集委員
浅野 信之 グラフィックデザイナー
磯辺 康子 ライター
梅田 たけし ライター・ジャーナリスト
大島 一晃 場とつながりの研究センター
岡村 こず恵 大阪ボランティア協会職員
小笠原 慶彰 神戸女子大学教員
影浦 弘司 大阪ボランティア協会職員
金治 宏 愛知淑徳大学教員
工藤 宏司 大阪府立大学教員
久保 友美 ボランティア・市民活動ライブラリー館長
阪口 侑洋 大阪大学人間科学研究科
神野 武美 フリージャーナリスト
杉浦 健 住みよいカルチャータウンをつくる会
大門 秀幸 自治体職員
竹内 友章 ウォロ編集委員
垂井 加寿恵 神戸学院大学
《東日本大震災・神戸発~現地から伝える「被災地の今」
》㉔
《うぉろ君の気にな〜るゼミナール》⑬
増田 寛也さん
跡、ア ジア 最 大の米 軍 基 地 が 置
ふぞろいなコミュニティー 《アゴラ/シネマ/ライブラリー》 ㉗
《ウォロ‘sトピック》 ⑰
60年前…… 黒人差別に抗議「バス・ボイコット運動」起こる
140年前…… 「森村女紅場」開設
宮垣 元(慶應義塾大学総合政策学部教授)
《市民活動の暦(こよみ)~ 12月、1月にあったこと 》 ㉒
《ソシオロジックフォーカス~社会学の視点で世相を深読み》 ⑫
上田 英司(NICE 事務局長)
勝又 英子(日本国際交流センター専務理事・事務局長)
インターネットをうまく活用する ボランティアコーディネーション
36歳の代表理事 パイオニアが乗り越える道
《現場は語る ~コーディネートの現場から》 ⑲
《実録・市民活動「私のいちばん長い日」
》⑪
(株式会社野村総合研究所顧問、東京大学公共政策大学院客員教授)
リコー ダ ー を 指 導 す る。 教 え る
フェアトレード
買い物を通じた社会貢献
理 科 実 験 で 飛 ばしたペット
ボトルロケット
《特集》
リコーダー指導の様子。
リコーダーは日本の市民に寄贈いただき、教材は派遣前
準備で作成。facebook
(www.facebook.com/philippine.c.p)
をご覧ください
市民活動総合情報誌/ボランティア・NPO をもう一歩深く