トップインタビュー

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リコーグループの総力を結集し、
「非連続な変革」に挑戦してまいります
代表取締役
社長執行役員・CEO
三浦 善司
9
Value Creation
Q: 取り巻く環境の変化と企業の役割につい
てお聞かせください。
Q: 企業価値の向上に向けて拠り所となる考
えをお聞かせください。
私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。
企 業 価 値を高めるために、全 世 界のリコーグ
地球規模の観点で見ると、人口問題、気候変動によ
ループの従業員で共有しているのが
「リコーウェイ」
る災害の増加、水資源や食料の不足、生物多様性の
です。
減少といった地球環境問題が発生し、また、経済成
「リコーウェイ」は、
「人を愛し、国を愛し、勤めを
長やグローバル化の負の側面とも言える格差・貧
愛す」という創業の精神「三愛精神」と、
「経営理念」
困の拡大や人権問題、環境汚染などの社会課題も
である「私たちの使命 *1」、
「私たちの目指す姿 *2」、
山積しています。
「私たちの価 値 観 * 」からなり、リコーグループの
3
*1「私たちの使命」 世 の 中 の 役に 立つ 新しい
価値を生み出し、提供しつ
一方、企業は社会の一員として、ますますその役
企業活動の基礎となる理念・価値観です。企業が
割を期待され、影響力が増しています。資金力はも
直面する高度で複雑な課題に対し、どのように判
とより、有能な人材、イノベーションを生み出しつ
断し、行動すべきかを明確に示しています。
づける技術力、グローバルな事業展開力などをも
現在のように事業環境が大きく変化しつづける
つ企業には、社会が抱える課題に関してより責任を
中で、リコーグループがその総 合 力を活かして今
もった行動と具体的な解決策の提供が求められる
後も成長を果たしていくためには、
「リコーウェイ」
ようになりました。
に基づいた事業活動がますます重要になると考え
私は、企業にとって最も大切なことは、社会に認
ています。
標に挑 戦しつづけ、チーム
められ存続を望まれることだと考えています。そ
私は、全従業員がこの「リコーウェイ」を実践す
ション を 起 こす 高 い 倫 理
のために、リコーグループは、企業市民として環境
ることで、お客様に新しい価値を提供しつづけ、持
保全活動や社会貢献活動に取り組むことはもちろ
続可能な社会づくりへの責任を果たし、事業成長
んのこと、事業活動を通じて社会課題を解決し、企
と一体となった企業価値の向上が可能になると考
業価値を高めていきます。
えています。
づけることで、人々の 生 活
の 質の 向 上と持 続 可能 な
社 会 づくりに 積 極 的 に 貢
献する
*2「私たちの目指す姿」 世 の 中にとって、なくては
ならな い 信 頼と 魅 力 のブ
ランドでありつづける
*3「私たちの価値観」 顧客起点で発想し、高い目
ワークを発揮してイノベー
観 と 誠 実 さ を 持 って仕 事
に取り組む
P.1参照
Q: リコーグループが目指す経営についてお
聞かせください。
地球環境や社会の持続性に貢献するためには、
• 企業価値の向上
リコーグループ自体が未来に向けて存在しつづけ
お客様価値
る力をもたなければならず、
「企業価値の向上」へ
満足と
感動の実現
の取り組みが大切になります。
企業価値とは、さまざまなステークホルダーの
期待に応えながら、お客様価値、株主価値、従業員
価値、社会的価値などを高めることで総合的に向
上していくものであると私はとらえています。
P.15–18参照
社会的価値
持続可能な
社会づくりへの
貢献
企業価値
株主価値
成長の継続
時価総額の増大
従業員価値
活力ある組織、
個人による高い
目標の達成と
処遇
10
トップインタビュー
Q: 将来のリコーグループのありたい姿を教
えてください。
Q: その将来像に向けた、長期的な取り組み
についてお聞かせください。
2014年に、リコーグループの第18次 中 期 経
2020年とその先の未来に向けてリコーグルー
営計画(2014年4月 –2017年3月 : 以下、18次
プが進む方向性を示した図があります。
中 計)を発 表した際に、2020年とその先を見 据
リコーグループの基盤であるオフィス領域をさ
えたリコーグループのありたい姿を「お客 様の期
らに強 化しつつ拡 大し、リコーの強みを活かした
待を超えた、安 心、快 適、便 利を提 供し、ライフス
商用印刷、インダストリ、コンシューマ、公共・イ
タイルの変 革を支 援する環 境にやさしい会 社」と
ンフラなどの領域において確固たる事業基盤を築
定めました。
いていきます。
数年先の社会に目を向けると、情報化やネット
もう少し詳しくお話しすると、リコーグループは、
ワーク化、都市化、地球温暖化、さらには人々の価
創 業から現 在に至るまでの約80年 間、オフィス領
値観やライフスタイルの多様化が進み、社会の様
域を中心に事業を展開し、成長してきました。この
相は一段と大きく変化していくことが考えられま
基 盤 事 業をより堅 固なものにするために、従 来の
す。そのような将来の経営環境変化(メガトレン
「モノ」の提 供に加え、お客 様 接 点 力の強みを活か
ド)を踏まえ、私たちが現在および未来において保
したサービスによる「コト」の価値提供を加えた「モ
有する技術力とお客様接点力という強みを活かし
ノ+ コト」の価 値 提 供で競 争 力を高めていきます。
て、ありたい姿を実現していきます。
具体的には、マネージド・ドキュメント・サービスや、
P.12参照
ドキュメントの電子化・ネット化に伴うワークスタイ
ルの変 革を提 案するIT サービスを強 力に展 開して
• リコーグループが2020年とその先に目指す姿
いきます。さらに、いつでも・どこでも・誰とでも、
遠 隔コミュニケーションを可 能にするユニファイド
お客様の期待を超えた、
安心、快適、便利 を提供し、
ライフスタイルの変革を支援する
環境にやさしい会社
コミュニケーション システム、海外を含めた遠隔会
議までサポートできるインタラクティブ ホワイト
ボード、超 短 焦 点プロジェクターなどを含むビジュ
アルコミュニケーション事業を進めていきます。
また、基 盤 事 業の強みを活かしたプロダクショ
ンプリンティング事業の新たな成長領域である商
用印刷や、リコーの技術力とものづくり力を活か
せるインダストリ領 域、コンシューマ領 域などで
の事業拡大を目指しています。
これらに加え、公共・インフラ領域でも安全で環
境 負 荷の少ないまちづくりや、さまざまな環 境ソ
リューションなど、未来起点による新たな事業の
種を育てていきます。
11
Value Creation
• 2020年と、その先の未 来の方向性
安心・快適・便利
ワークスタイル
公共・インフラ
ライフスタイル
オフィス領域
商用印刷領域
プロダクションプリンティング
(基盤成長)
MDS、
BPO、
ITサービス、
企業内印刷、
PJS、
IWB、
RICOH UCS、
LED
コンシューマ領域
カメラ、
時計、
RICOH THETA
インダストリ領域
光学デバイス/モジュール、
電装ユニット、
電子デバイス、
サーマルメディア、
インクジェットヘッド+インク
新しい分野
※MDS:マネージド・ドキュメント・
サービス
BPO:ビジネス・プロセス・アウ
トソーシング
PJS:プロジェクション
システム
RICOH UCS:
リコー ユニファイド
コミュニケーション シス
テム
IWB:インタラクティブ ホワイ
トボード
オフィス領域
(基盤既存)
MFP、
レーザープリンター
技術力
リコーウェイ
Q: 短・中期的な視点での戦略をお聞かせく
ださい。
お客様接点力
ンスなどのアフターサービスによる収益の最大化
を図っていきます。業種別の特定市場にフォーカ
スし、私たちの強みを活かしたサービス事 業を展
私は、18次中計をリコーグループの長期的な発
開することで、収益力の拡大を目指します。また、
展と企業価値向上を確実なものにするための3年
市場特性に合った製品・サービスを提供すること
間と位置づけています。
で新興国マーケットでの事業を拡大します。
18次中計の骨格となる事業戦略は「基盤事業収
「新たな事業の柱の構築による成長」では、たとえ
益力の強化と成長」
「新たな事業の柱の構築による
ば、プロダクションプリンティングを活かし、商用印刷
成長」の二つです。
領域へ本格的に参入しています。インダストリ領域
「基盤事業収益力の強化と成長」では、オフィス
では、ファクトリーオートメーション、車 載カメラ、セ
領域において、新製品の機能・コスト面で高い競争
キュリティの領域をターゲットにグループ内の相互協
力を実 現していくこと、および消 耗 品やメンテナ
力体制を発揮しながら取り組みを進めています。
12
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詳細
• オフィス領域
· · · · · · P.21–24
• 商用印刷領域
· · · · · · P.25–26
• インダストリ領域
· · · · · · P.27–28
• 新しい分野
· · · · · · · · · P.29
Q: 2015年3月期の事業の進捗はいかがで
したか。
Q: 現在の状況を踏まえたリコーグループの
課題をお聞かせください。
マクロ経済の回復の遅れや、将来に向けた投資と
2008年の世界金融危機以降、世界経済と市況
新興国・サービス体制強化費用の増加などが主な
の動 向は混 沌とした状 態がつづいており、いずれ
要因となり、当初の事業計画を達成できませんでし
の企業においても将来に向けた明確な道筋を描き
た。しかしながら、お客 様に新しい価 値を提 供する
づらくなっています。
ための施策や構造改革による効率化は着実に進展
このような環 境においても、リコーグループは
しています。
成長をつづけ、事業活動を通じて社会の課題解決
オフィスイメージング事 業では、競 争 力 強 化、収
に貢 献する、という使 命を貫いていきます。混 沌
益 力の確 保を目指した施 策を展 開しています。 製
とした経済環境の中で、未来への道筋を描くには
品ラインアップの刷 新により収 益 基 盤の強 化を図
これまでと同じやり方では不可能と考えています。
り、2014年はA3レーザー複 合 機 市 場で世 界シェ
そこで私は、
「今こそ、グループの総力を結集し
ア No.1を奪 回しました。 新 興 国 市 場においては、
て『非 連 続な変 革』への挑 戦を開 始する時である」
ドバイ、インド、中 国などに設 置したイノベーション
と宣 言しました。「非 連 続な変 革」とは、日々の改
センターを拠 点として、お客 様のニーズに合った付
善レベルの改 革ではなく、従 来のやり方や常 識に
加価値提供を強化しています。
とらわれず自分自身やお客様、ひいては世の中を
プロダクションプリンティング事業では、新モデル
大きく変えるイノベーションを起こす活動のこと
の投 入と販 売・サービス体 制の拡 充、ソフトウエア
です。
などのリソース獲 得により、さまざまな お客 様 の
創業以来、リコーは数々のイノベーションを起
ニーズにお応えできるようになりました。さらに、戦
こし、市 場における新たな価 値の創 出によって成
略 的な投 資により、企 業 内 印 刷や商 用 印 刷 分 野へ
長してきました。このように「非連続な変革」はリ
の提供価値の向上に努めています。
コーが誇るべき企業のDNAとなって引き継がれて
産 業 分 野では、スピーディーな経 営 判 断と事 業
います。
に適した効率的な経営インフラ構築のため、グルー
今再び、リコーグループは「非連続な変革」、すな
プ内のリソースを再編、分社化を行いました。重点
わち新たなイノベーションへ挑戦していきます。
カテゴリのファクトリーオートメーション、車 載カメ
ラ、セキュリティを中心に、産業用途における新たな
価値の創造と効率化を推進するための新製品を投
入しています。
また、新たな事 業として2014年 秋にアディティ
ブ・マニュファクチャリング事業に参入しました。リ
コーに蓄積した3次元設計の技術をベースに、製品
販売、出力サービスに加え、部品設計や製造のコン
サルティングサービスも提 供し、お客 様のものづく
り現場のイノベーションを支援していきます。
13
,244
2013
会計基準
18,859
1,000
500
2012
2013
2014
米国会計基準
2013
2014(FY)
2014
IFRS
2014(FY)
IFRS
2011
0
高値
2012
終値
始値
1,203
634
安値
2011
2012
2013
2013
終値
始値
2014
2014
1,203
735
735
0
Q: -180
株主価値の向上に向けた取り組みについ
てお聞かせください。
2012
2013
2014
2013
2014(FY)
2014
2013
米国会計基準
2014(FY)
IFRS
IFRS
これまでお話ししたように、リコーグループは長
(%)
%
期 的な成 長に向けて基盤事業のさらなる強化と、
(%)
6.7
6.7
(目標)
新たな事業の柱の構築を目指していきます。これ
(目標)
5.5
6.7
(目標)
6.7
(目標)
3.9
らの戦略と並行して、
保有資産の見直しを含めた
3.3
5.5
3.9
資産効率の向上を進め、
目標であるROE10%を目
-0.9
5.5
3.9
3.3
5.5
3.9
-0.9
3.3
0
指します。株主の皆様への利益還元においては、連
-0.9
0
0
結配当性向を考慮しながら安定的な配当を行うよ
2012
2014
2013
2014
2013
2014(FY)
米国会計基準
IFRS
う努めています。当面は総還元性向30%程度を目
2013
2014(FY)
2012
IFRS
安に株主還元を行っていきます。また、
企業活動
2012
2013
米国会計基準
2013
2014
米国会計基準
2013
2014(FY)
IFRS
2014
2014(FY)
2013
IFRS
%
の基盤として、自律的なコーポレート・ガバナンス
6.7
への取り組みも継続して行っていきます。
6.7
(目標)
(目標)
5.5
• ROE
これらの取り組みによって企 業3.9
価 値の持 続 的
3.3
(%)
5.5
な向上を図り、
株主の皆様のご期待に応えてまい
3.9
3.3
2013
会計基準
0
1,400
安値
(目標)
1,400
(目標)
3.3
2013
会計基準
2013
高値
億円
634
2013
会計基準
Value Creation
500
-0.9
0
ります。
7.5
7.5
2012
2014
2013
2013
2014
米国会計基準
2014(FY)
2013
2014(FY)
IFRS
6.5
6.5 4.4
4.4
Q: 最後に、
リコーグループの今後の発展に
IFRS
ついてお聞かせください。
2013
2013
2014
世界経済が大きく揺れ動き、お客様の価値基準
2014
2015 (FY)
2015 (FY)
• 1株当たり配当金
も急速に変化している中で、
「非連続な変革」に勇
(円)
気をもって挑戦し、未来を創る、その決意を改めて
固めました。私たちは、この大きな変 革にグルー
プ 一 丸 と な っ て 挑 戦 し て い き ま す。 そ29.0
し て、
33.0
33.0
29.0
34.0
34.0
2016年2月の創 業80周 年をステークホルダー
の皆 様とともに迎え、さらに100周 年、その先へ
と邁進していきたいと思います。
2013
2013
2014
2014
2015 (FY)
2015 (FY)
1,500
• 株価
(円)
1,500
1,000
1,000
500
500
0
0
2012
2012
2013
2013
2014
2014
2015
2015
2015/3
2015/2
2015/1
2014/12
2014/11
2014/10
2014/9
2014/8
2014/7
2014/6
2014/5
2014/4
2014/3
2014/2
2015/3
2014/1
2015/2
2013/12
2015/1
2013/11
2014/12
2013/10
2014/11
2013/9
2014/10
2013/8
2014/9
2013/7
2014/8
2013/6
2014/7
2013/5
2014/6
2013/4
2014/5
2013/3
2014/4
2013/2
2014/3
2013/1
2014/2
2012/12
2014/1
2012/11
2013/12
2012/10
2013/11
2012/9
2013/10
2012/8
2013/9
2012/7
2013/8
2012/6
2013/7
2012/5
2013/6
2012/4
2013/5
2012/3
2013/4
2012/2
2013/3
2012/1
2013/2
2013/1
2012/12
2012/11
2012/10
2012/9
2012/8
2012/7
2012/6
2012/5
2012/4
2012/3
2012/2
2012/1
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