産業技術センターニュース2014 vol.3(平成26年12月発行

産業技術センター
Kanagawa Industrial Technology Center News
産業技術センターニュース
2014 vol.3
contents
Topics1
● 『新たな消毒副生成物に関する研究と水質トラブルに関する技術支援』 . . . . . . . . . . . . 1
Topics2
● 技術動向 『粉体レーザ肉盛技術による鉄鋼材料の表面改質』 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
Topics3
● 『かながわロボットミーティング』を開催しました! ~ さがみロボット産業特区への取組み ⑤ ~ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
事 業 紹 介
● 『第31回(平成26年度)神奈川工業技術開発大賞』受賞技術・製品紹介 第1回 ~明日をになう独創技術は神奈川から ~ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5
設 備 紹 介
● ‌
「レーザ加工機」
「動的粘弾性測定システム」 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
技術部研究
チームガイド
● “旬”のイチ押し - 技術部研究チームガイド シリーズ⑦ 「燃料電池や蓄電池など、次代を担うエネルギー高度利用技術の開発に貢献します」 ~化学技術部 新エネルギーチーム~ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
お 知 ら せ
● ‌
「製品化・事業化支援事業」のお知らせ / 「産業技術センター デザイン相談室」 をご利用ください / 「テクニカルショウヨコハマ2015」に出展します / (公社)
日本セラミックス協会優秀総説賞を受賞 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
Topics 1
『新たな消毒副生成物に関する研究と
水質トラブルに関する技術支援』
1 はじめに
●
水質分析と一口に言っても、求められる水質によってその測定
項目や基準値は異なってきます。例えば、飲料を目的とした水道
水における水道水質基準や、
「特定施設」を設置している工場及
び事業場から公共用水域への排出および地下水への浸透を規制す
る水質防止汚濁法の排水基準などがあります。また、規制とは関
係なく、水に色がついている、あるいは臭いがする、これらの原
因が知りたいといった水質分析もあります。
ここでは、当センターにおける水質分析の中から、超高速液体
クロマトグラフ質量分析計 (UPLC/TOF-MS)(図1)を用いた
研究や分析事例をご紹介します。
TOF-MS
PDA
UPLC
図1 UPLC/TOF-MS 分析装置▶
産業技術センターニュース 2014 vol.3
1
2 新たな消毒副生成物に関する研究
●
水道水や排水の水質分析では、微量化学物質の分析方法の開発が求められています。水道水は水質基準に適合する
必要がありますが、それ以外にも水質管理上留意すべき項目を水質管理目標設定項目、毒性評価が定まらない物質や
水道水中での検出実態が明らかでない項目を要検討項目として位置づけし、最新の知見により水質基準を常に見直し
するようにしています。この要検討項目に新たに
NDMA前駆物質が
加わった N -ニトロソジメチルアミン (NDMA)
水源に混入
含まれている工場排水
は、クロラミンやオゾンによる処理をした時に
生成する消毒副生成物とされており、発がん性
LC/TOF-MSを用いて
が指摘されています。特に日本では、工場排水
工場
前駆物質を同定
由来の NDMA の前駆物質が水源に混入し、下
流のオゾン処理を導入している浄水場で NDMA
が生成することが課題となっています。NDMA
を低減するためには、その前駆物質を把握する
ことが重要です。当センターが所有している
UPLC/TOF-MS は精密質量数を測定することに
よって分子式が推定できるため、未知物質の同
定に有用な分析装置です。そこで、NDMA 前
駆物質の同定を行うとともに、NDMA の生成
取水
NDMA
水道
オゾン処理を導入
している浄水場
安全でおいしい水
NDMAの生成を抑制
する処理法の検討
図2 新たな消毒副生成物に関する研究の取組み
を抑制するための研究を国立保健医療科学院と
協力して行っています(図2)
。
3 水質のトラブルに対する技術支援
●
水が着色している原因を調べたいといった技術相談があります。これらの原因物質の解明は容易ではないですが、
UPLC/TOF-MS で同定できる場合があります。当センター所有の UPLC/TOF-MS は UPLC と TOF-MS の間にフォ
トダイオードアレイ検出器 (PDA) が装備されており、200 ~ 800nm の波長領域の吸収を調べることができるため、
着色成分の吸収を検出することができます。そこで UPLC で分離した着色成分のピークを PDA で検出し、TOF-MS
分析による精密質量数によって着色原因物質を解析します(図3)。
Intensity (☓105)
8
吸収スペクトル
着色物質の
吸収波長帯
1
10
0.5
8
0
350
6
450
550
650
吸収波長 (nm)
750
4
2
マススペクトル
3
クロマトグラム
(検出器:TOF-MS)
Intensity (☓104)
Intensity (☓104)
10
1.5
Intensity (☓105)
2
クロマトグラム
(検出器:PDA)
6
m/z 377.1460
着色原因物質
2
1
0
100
200
300
400
500
600
m/z
4
2
0
0
5
6
7
8
9
10
5
6
7
8
9
10
保持時間(min)
保持時間(min)
図3 着色した原因物質の解析事例
4 おわりに
●
ここでは UPLC/TOF-MS を用いた水質分析をご紹介しました。当センターではガスクロマトグラフ質量分析計 (GC/
MS) やイオンクロマトグラフ分析計といった他の分析機器も用いて水質分析を行っております。技術相談は随時受け付
けており、内容に応じて、依頼試験、受託研究や技術研修などを提案させていただきますので、まずはご相談下さい。
【問合せ】化学技術部 環境安全チーム 岩本卓治
2
産業技術センターニュース 2014 vol.3
Topics 2
技術動向
『粉体レーザ肉盛技術による鉄鋼材料の表面改質』
1. はじめに
粉体レーザ肉盛技術(レーザ・メタル・デポジション、以降 LMD と記します)は、材料表面に形成した溶融池に
粉末を供給することにより、母材と異なる特性の改質層を形成する技術です。数 mm2 の比較的狭い領域に kW オー
ダーの高エネルギーを投入できるため、材料の熱的ダメージを抑えた局部的な表面改質が可能です。用途としては、
工業用カッターの刃先への硬化層形成から航空機や火力発電用ガスタービンのタービンブレード等のエンジン部品補
修等、安価な量産品から高価格部品まで広く適用されています。
以下、本年導入した LMD の紹介と鉄鋼材料への適用例について紹介します。
2.LMD による肉盛層の形成
図1にレーザヘッドとそれを駆動するロボットの外観を、図2に肉盛層形成過程の模式図を示します。発振器から
出たレーザ光は光ファイバー内を伝送され、ロボット先端に固定されたレーザヘッドより出射されます。ロボットに
よりヘッドを移動させつつ、試験片表面のレーザ照射点に形成された溶融池に粉末を投射することにより肉盛層を形
成します。肉盛層の幅は数 mm ですので、所定の面積の肉盛層を形成する場合は、複数の肉盛層を平行移動させて
堆積させます。また厚い肉盛層を形成する場合は高さ方向に複数の肉盛層を堆積させます。
3.適用事例
軟鋼表面への耐食性付与を目的に、Ni 基合金(インコネル625)粉末による肉盛溶接を行いました。図3は断
面マクロ組織の写真です。1層目は5パス、2層目は4パス、3層目は3パスと台形状に肉盛層を積層させました。
肉盛層内には大きな欠陥が認められず、健全な改質層が形成されていることが確認できます。
4.おわりに
LMD の公設試験研究機関への導入は当センターが最初で、今後様々な LMD の用途開発を行っていきます。ご関
心のある方は是非お問い合わせください。
(※)p.6 の設備紹介で当センターでこのたび導入した「レーザ加工機」の紹介をしています。 そちらも併せてご覧下さい。
レーザ光
移動方向
肉盛層
1パス 2パス
3パス
3層
粉末の流れ
1層
肉盛層
希釈層
図1 装置外観
2層
溶融池
1パス 2パス 3パス 4パス
試験片
図2 肉盛層形成の模式図
熱影響部
5パス
1000μm
図3 断面マクロ組織
【問合せ】 機械・材料技術部 材料加工チーム 薩田寿隆
産業技術センターニュース 2014 vol.3
3
Topics 3
『かながわロボットミーティング』を開催しました!
~ さがみロボット産業特区への取組み ⑤ ~
−はじめに−
当センターでは、各分野で得られた研究・技術開発成果の発表や支援事例の紹介を通して、産学公の連携と交流を促
すため、
「神奈川県ものづくり技術交流会」を10月22日から24日まで3日間にわたって開催しました。
その一環として、初日22日に「生活支援ロボット」関連技術をテーマに、
「かながわロボットミーティング」を開催し、フォー
ラムとワークショップを行いました。フォーラムでは、
「介護ロボットの未来について」をテーマにパネルディスカッションも実
施し、コーディネーター、
プランナー及び出席者とのディスカッションを行いました。ワークショップでは、介護ロボットを開発
している企業による展示・実演、参加者に試用をして頂きながら、ロボットのメーカーとユーザーとの意見交換を行いました。
● ロボット研究会フォーラム
前半は2つの講演を行いました。経済産業省製造産業局産業機械課 岡本健
太郎様による「生活支援ロボットの産業化に向けた施策」では、ロボット産業
の現状、生活支援ロボットやロボット介護機器に関する取組み、「ロボット革
命」に関する最近の動向について講演いただき、経済産業省のロボット関連事
業についても解説していただきました。
神奈川県立保健福祉大学 石井慎一郎先生による「介護現場ではどのような
ロボットが必要か」では、介護現場から見た、ロボット・機器の導入ニーズが
高いと考えられる移動支援・介助ロボットのデザインコンセプトについて講演
していただきました。
後半は、
「介護ロボットの未来について」をテーマとして、パネルディスカッ
ションを行いました。司会に当センター所長 大塚康男、パネリストに東京大学 佐藤知正先生、神奈川県立保健福祉大学 石井慎一郎先生、社会医療法人JM
A 介護老人保健施設アゼリア 相川浩一様、TOTO
(株)
杉山聡洋様、
(株)
コ
バヤシ精密工業 小林昌純様を迎え、ご自身の介護ロボットとの関わり、介護ロ
ボットの導入メリット、介護ロボット活用に適した作業、人との役割分担、介護ロ
ボット普及に向けた課題等について意見を交わしました。また、ロボット研究会
のコーディネーター、プランナー及び出席者とのディスカッションも行いました。
ロボット研究会フォーラム(講演風景)
ロボット研究会フォーラム
(パネルディスカッション)
● 介護ロボットワークショップ
介護ロボットワークショップでは、TOTO
(株)様の「浴室設置型入浴支援
ロボット」、(株)コバヤシ精密工業様の「身体洗浄ロボット」
、富士ソフト
(株)
様の「高齢者の介護予防に活用できるコミュニケーションロボット」の展示と
実演を行い、介護ロボットの開発・事業化及び普及を促進するため、参加者に
試用して頂くとともに、ロボットのメーカーとユーザーの意見交換を実施しま
した。
介護ロボットワークショップの風景
−おわりに−
今後もフォーラムなどを通じて、生活支援ロボットの実用化・普及を進めていきます。ロボット研究会の参加者も
随時募集しておりますので、今後とも「さがみロボット産業特区」の取組みへのご理解とご協力をよろしくお願いい
たします。
●「さがみロボット産業特区」について ~下記 URL をご覧ください~
http://sagamirobot.com/
http://www.kanagawa-iri.jp/sagami-robot.html(当センター HP、4 月 1 日から URL が変更になりました)
【問合せ】 企画部 研究開発連携室 斉藤光弘
4
産業技術センターニュース 2014 vol.3
事業紹介
『第 31回(平成 26年度)神奈川工業技術開発大賞』受賞技術・製品紹介 第1回
~明日をになう独創技術は神奈川から~
− はじめに −
神奈川県では、神奈川新聞社と共催で県内の中堅・中小企業の技術開発の奨励と技術開発力の向上をめざして、
昭和 59 年度から毎年、優れた工業技術や製品を神奈川工業技術開発大賞として表彰しています。
第 31 回となる平成 26 年度は、29 件の応募の中から大賞 2 件、ビジネス賞 2 件、奨励賞 3 件の計 7 件の技
術・製品が選ばれ、11 月 4 日に表彰式を行いました。今号では、これら 7 件のうち、特に優れた技術・製品に
贈られる大賞を受賞した 2 件についてご紹介します。
各種保護リレーの検査を一台で実施できる試験器 株式会社エヌエフ回路設計ブロック(横浜市港北区)
保護リレーとは、落雷や風水害等により電力設備に電気
的な異常が発生した場合、要所に設けた遮断機へ開閉信号
を出力することにより、異常個所を電力系統から切り離し
て、他所への悪影響を防ぐ機器の総称で、電気的な異常の
種類に応じて様々なタイプがあります。保護リレーの保
守・点検の際には、多様な検査項目に対応できるよう多機
能な試験器が求められますが、従来その検査システムは、
大きく重くなる傾向がありました。
電力系統と保護リレー
保護リレー試験器
同社は、各種保護リレーの検査項目のほとんど全てを
一台で検査できる、多機能な小型試験器を開発しました。
4つの独立電源を内蔵しているため、検査の対応範囲が
広く、同社従来比でおよそ 1/5 まで軽量化(15kg)さ
れたことも大きな特徴です。
本試験器は電力設備の保守・点検の能率を向上させ、
社会インフラの信頼性向上に貢献します。
再生医療用の培養細胞を二方式で観察可能な滅菌対応の小型顕微鏡 株式会社ニコンエンジニアリング(横浜市神奈川区)
近年、培養細胞を用いて組織や臓器を修復・再生する治療法(再生医療)が注目を集めています。この分野の発展
のためには、より雑菌の少ない環境下で細胞を培養する技術の向上が求められています。従来、再生医療分野におい
て培養細胞を観察する際には、恒温恒湿器内の培地を器外の顕微鏡にセットする必要があったため、培地が顕微鏡や
室内由来の汚染を受ける可能性がありました。
同社は、再生医療用の培養細胞観察の用途向けに、蛍光顕微鏡 *1、位相差顕微鏡 *2 の二方式の顕微鏡を一体に納
めた滅菌対応の小型顕微鏡を開発しました。顕微鏡全体を滅菌後、恒温恒湿器内に設置し、顕微鏡のステージに培地
をセットすることにより、培養を進めながら、適時、観察することができます。観察の操作は外部のPCから遠隔操
作で行うことができるため、培地の汚染やダメージを最小限に抑えることができます。
本製品により、再生医療の安全な推進・実用化が期待されます。
*1
蛍光体が組み込まれ
た細胞などの被写体に光
線を当て蛍光現象を起こ
し、蛍光色による識別を
容易にした顕微鏡。
細胞観察用小型顕微鏡
蛍光・位相差観察の合成画像例
*2
細胞など無色透明の
被写体を通過した光線の
位相差を、明暗のコント
ラストに変換することに
より、被写体の像を明瞭
化する顕微鏡。
【問合せ】 技術支援推進部 商品開発支援室 玉島美喜子
産業技術センターニュース 2014 vol.3
5
設備紹介
「レーザ加工機」
「動的粘弾性測定システム」
当センターでは、このたび新たに「レーザ加工機」、「動的粘弾性測定システム」を導入しました。今回はこれらの装
置の概要をご紹介します。依頼試験や受託研究でご利用いただけます。
詳細については、担当者までご相談ください。皆様のお問合せをお待ちしています。
レーザ加工機(TRUMPF 製:TruDisk3006)
(※)p.3 の TOPICS 2(技術動向)参照
● この装置は…
YAG レーザによる溶接機です。発振器から出たレーザ光は光ファイバ中を伝送し、図1に見られるレーザヘッド
からワークへ照射されます。ヘッドが6軸のロボットにより駆動される、精密自動溶接機です。
● 主な用途、 特徴は…
用途は薄板の突合せ溶接及び紛
体肉盛溶接です。粉体肉盛用溶接
ヘッドには穴が設けられ、レーザ
照射点に向けて粉末が投射されま
す。また、図2のような回転・傾
斜が可能なポジショナーを備えて
おり、3次元形状のワークやシャ
フト・パイプ等の円筒形状の製品
に対する溶接並びに肉盛溶接を行
うことも可能です。
なお、溶接施工から金属組織観
察、硬さ測定、元素分析、機械強
度等の評価までを受託研究で対応
いたします。また、小型の試験片
であれば予熱を行い溶接施工する
ことも可能です。
図1 駆動ロボット及びレーザヘッド
図2 ポジショナー
【問合せ】 機械・材料技術部 材料加工チーム 薩田寿隆
動的粘弾性測定システム(TA インスツルメント㈱社製 ARES-G2)
● この装置は…
プラスチック、ゴム、接着剤等、柔らかい物質のレオロジー、熱、機械的特性を知ることができます。研究開発は
もとより、性能評価、生産、トラブル解析に至るまで幅広い分野にわたって活用することができます。
● 主な用途、 特徴は…
プラスチック・ゴム・ゲルなど
の粘弾性特性の測定と解析をする
ことができます。ガラス転移や融
点などの熱物性、応力緩和などの
機械特性、ヒステリシスなどのレ
オロジー特性が分かります。また、
内部監察用 CCD カメラを使って
測定中の試料の外観変化をその場
観察することも可能です。さらに
大変形時の非線形粘弾性(LAOS)
の測定及び解析ソフトを備えるこ
とで、人間の感性に係る食感・塗
り心地などの物性を定量的に評価
することができます。
6
産業技術センターニュース 2014 vol.3
動的粘弾性システム外観写真
CCD カメラによる測定室内観察
【問合せ】 化学技術部 材料化学チーム 津留崎、武田
技術部 研究チームガイド
“旬 ”のイチ押し‐技術部研究チームガイド シリーズ⑦
「燃料電池や蓄電池など、次代を担うエネルギー高度利用技術の開発に貢献します」 ~ 化学技術部 新エネルギーチーム ~
1.はじめに
2.業務概要
化学技術部は、材料化学、化学評価、バイオ技術、環
境安全、新エネルギーの5チーム、総勢30名程の技術職員
で構成されています。
今回は、“ 燃料電池、二次電池、エネルギー変換素子材
料、未利用バイオマス ” に貢献する新エネルギーチームに
スポットを当て、その業務概要と技術支援事例を紹介します。
新エネルギーチームは、5名の職員により、
(1)燃料電池など
の次世代発電技術の開発と評価、
(2)
リチウムイオン電池などの
二次電池の開発と評価、
(3)光電エネルギー変換素子材料の成
膜と評価、
(4)
古紙など未利用資源の再資源化など、再生可能エ
ネルギーの利用促進に貢献する新エネルギー分野や化石資源
の消費削減に貢献する触媒変換などの技術支援を行っています。
3.技術支援事例
❶ 燃料電池など次世代発電技術の開発と評価
アルコール水溶液を燃料とした携帯機器用のマイクロ燃料電池や空気電池等の開発と支援
を行っています。
白金使用量の低減をめざした電極材料に関する研究を行うとともに、電極材料の酸化・還
元特性評価や高分子膜等のガス透過性評価などの技術支援を行っています(写真1)
。
写真 1 燃料電池評価設備
❷ リチウムイオン電池等の二次電池の開発と評価
リチウムイオン電池の電極材料の開発と支援を行っています。 二次電池開発に欠かせな
い充放電試験(写真2)では、電池の大型化への対応を進めています。また、電極作成や電
池組立の支援を行うとともに、電極材料に関する基礎的研究を行っています。
その他、電池評価で利用する電気化学計測技術を活かし、腐食・防食技術等に関する支援
要請にも幅広く対応しております。
写真 2 二次電池評価設備
(充放電試験機とグローブボックス)
❸ 光電エネルギー変換素子材料の成膜と評価
光電エネルギー変換素子等に利用される化合物半導体材料の成膜技術について開発と支援
を行っています。
地球上に豊富に存在する鉄や珪素からなる半導体材料の成膜技術に関する研究を行うとと
もに、成膜素子の評価などの技術支援を行っています。
鉄シリサイド半導体の可視光応答性に着目し、太陽光を利用したグリーン水素製造を目指
し、水の光分解による水素発生に関する基礎研究に取り組んでいます(写真3)
。
写真 3 閉 鎖循環型光触媒評価装置
水の光分解活性の評価
❹ 廃棄物系バイオマスなど未利用資源の再資源化
古紙を原料にした炭素系固体酸触媒の開発研究など、未利用の廃棄物系有機資源を有効に
活用する技術の開発と支援を行っています。
未利用資源の多くを占める有機高分子の熱物性評価技術を活かし、熱重量測定 / 質量分析
(写真4)や熱分解ガスクロマトグラフ質量分析等を用いた技術支援を行っています。
写真 4 熱重量測定 / 質量分析装置
4.おわりに
化学技術部では、今回紹介した新エネルギー技術分野に加え、無機・有機分析、プラスチック物性評価・環境試験、バイオ
技術、環境保全・安全化技術、繊維技術など、幅広く研究・技術支援・人材育成事業を行っています。新技術や新製品の開発
など、お気軽にご相談下さい。
【問合せ】 化学技術部 新エネルギーチーム
産業技術センターニュース 2014 vol.3
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お知らせ
「製品化・事業化支援事業」のお知らせ
当センターでは、企業の「研究開発」
、
「製品化」
、
「事業化」の各段階に応じた総合支援(技術・デザイン・経営)を行っています。
県内に事業所を有し、新製品の開発や商品化をめざす中小企業者を対象とし、
『製品化支援』と『事業化支援』のフェーズに
分け募集を行なっています。詳細は、当センターホームページでご案内しています。
製品化支援
研究開発的要素を有する、ものづくり分野を対象とし、当センターの技術
系担当職員を決めて製品化の技術サポート等を行います。
【支援内容】開発に必要な当センターの試験分析費用や機器使用料が一部免
除、製品開発室(有料)の利用、
展示会への出展支援、
セミナー、
事業化相談等が受けられます。
【応募時期】平成 27 年1月~2月(予定)
【支援期間】平成 27 年4月からの1年間を予定
事業化支援
「売れる商品づくり」を目指す企業に対して、商品開発のサポート等を実施
し、事業化を促進します。
【支援内容】技術・デザイン・経営の専門相談、商品企画、調査、デザイン
製作、販路開拓等の支援(一部企業負担)
、必要に応じて専門
家のコーディネート等を実施します。
【応募期間】随時(相談無料)
【支援期間】相談規模に応じた期間
【問合せ】技術支援推進部 商品開発支援室
「産業技術センター デザイン相談室」をご利用ください
当センターでは、中小企業センタービル 6 階にデザイン相談室を設け、専門のデザイン相談員
による無料相談を行っています。“ 魅力あるものづくりのために ”、“ お客様に選んでいただくた
めに ”「デザイン」を有効にご活用ください。また、自由な雰囲気でデザイナーと語り合える場
「デザインカフェ」も開催しておりますので、お気軽にご利用ください。
(相談日は、毎週月曜日、
水曜日、第 2、第 4 金曜日です。)
【問合せ】横浜市中区尾上町 5-80 神奈川中小企業センタービル6階
TEL:045-633-5204 E-mail:[email protected]
「テクニカルショウ ヨコハマ2015」
に出展します
〔H27/2/4-6、パシフィコ横浜 展示ホール C・D
(横浜市西区)
〕
神奈川県内で最大級の工業技術・製品に関する総合見本市
「テクニカルショウヨコハマ 2015」に出展します。当センター
のブースでは、以下の項目についてご紹介します。是非お立
ち寄りください(入場無料)。
○ものづくり支援事例や研究開発成果
○生活支援ロボットの実用化・普及を進めるさがみロボット
産業特区の取組み
○
「スマートエネルギーシステム」に関する実証試験の成果
○製品化・事業化支援事業による企業の支援事例
○第31回神奈川工業技術開発大賞の受賞技術・製品 等
【問合せ】技術支援推進部 商品開発支援室
(公社)
日本セラミックス協会優秀総説賞を受賞
東京工業大学大学院総合理工学研究科の吉本護教授を中心
とし、当センター電子技術部の金子智主任研究員も加わったグ
ル ー プ が「Room-temperature synthesis of epitaxial
oxide thin film for development of unequilibrium
structure and novel electronic functionalization(邦題:
単結晶性酸化物薄膜の室温合成と新奇な構造および電子機能
の創成)
」により 2013 年日本セラミックス協会誌優秀総説賞を
受賞しました。この研究は、新しい電子材料の技術開発につな
がるものであり、金子主任研究員は物性の解析等を行いました。
掲載誌名:JCerSJ(Journal of the Ceramic Society of
Japan:日本セラミックス協会誌)Vol.121 (2013) pp1–9.
著者:吉本護、山内涼輔、塩尻大士、Tan Geng、松田晃史
(東工大)
、金子智(神奈川産技セ)
技術相談専用電話(直通)
☎ 046-236-1510 当センターホームページ http://www.kanagawa-iri.jp/
産業技術センターニュース 2014 Vol.3
平成26年12月発行
通巻108号
8
【問合せ】電子技術部 電子材料チーム
神奈川県産業技術センター
〃 工芸技術所
〃 計量検定所
〃 尾上町駐在事務所
〒243-0435 海老名市下今泉705-1
TEL 046-236-1500
(代表)
FAX 046-236-1526
〒250-0055 小田原市久野621
TEL 0465-35-3557
(代表)
FAX 0465-35-3936
〒221-0062 横浜市神奈川区浦島丘4 TEL 045-421-3484
(代表)
FAX 045-402-6260
〒231-0015 横浜市中区尾上町5-80
TEL 045-633-5124
(代表)
FAX 045-633-5018
(複製を希望する場合は、当センター企画調整室までご連絡ください。)
印刷所 (株)相模プリント 〒252-0144 相模原市緑区東橋本1-14-17 TEL 042-772-1275
(代表)
FAX 042-774-1913
産業技術センターニュース 2014 vol.3
見やすいユニバーサルデザインフォント
を採用しています。