p. 1 §土作り 作物の栽培に適した土にする作業を一般に土作りと呼んでい

H2803 市民農園講習会資料(池田)
§土作り
作物の栽培に適した土にする作業を一般に土作りと呼んでいます。
トマトやナスと水を好むイネやレンコンでは適した土が違うので土作りも異なる
点があることは理解しやすいと思います。厳密に言えばトマトに適した土とナス
に適した土は違うはずで、それぞれの作物ごとに土作りは変えるのが最善なので
しょうが、そんなことをしていては土の管理作業が大変になります。
連作被害の防止のために輪作することも考慮して、野菜全般に共通する土壌環境
を整え、作物ごとには施肥や灌水による調節で対応するのが一般的です。
土はすぐれた栽培資材で、物理性、化学性、生物性を良好な状態に管理・維持
すると普段の栽培管理が楽になり、不良環境に対する耐性も高まります。
【物理性】
物理性は、土の硬さ、水はけ、保水性、土の微細構造の改善などを指します。
土が硬いと根張りが十分にできないため成育が遅れたりすることがあります。
また、降雨後の雨水が土に浸透しにくくなります。根を収穫するダイコンなど
の根菜類は播種前に数回耕起して栽培土を膨軟にしておくと地中にまっすぐに
根が伸びてよい物が収穫できます。
雨降り後に水が 1 日以上たまる所では、砂を混ぜて下方への排水を良くしたり
畝を高くして根が長時間水に浸からない様にします。年に 1 回程度は地表から
30cm くらいの深さまで丁寧に土起こしをすると、下方への排水が良くなり
根が張れる土の量が増えて栽培が安定しやすくなり、作土層の下にできる
耕盤層という硬い土の層を破壊する効果も期待できます。
土のこまかい粒子が一団の塊となっているのを団粒構造と言います。
団粒内には多くのすき間があり、そのすき間が水はけと保水性という一見する
と相反する特性をもたらしてくれます。
1月に紹介しましたが寒起こしには土を団粒化させる効果があります。
【化学性】
土の中の養分の量や組成比、土の酸性度などが含まれます。
養分の量は播種や植えつけ前に基肥を入れるので、栽培期間の短い葉菜類では
追肥はあまり必要ありませんが栽培期間が長い根菜類や果菜類では栽培期間中
に追肥を与えることが多いです。養分の組成比で注意すべきなのは、ある特定
の肥料成分を与えすぎないようにすることです。土中にカルシウム(石灰)が
多すぎるとカリやマグネシウム(苦土)、カリが多すぎるとカルシウムやマグネ
シウムの吸収が抑制されます(拮抗作用と呼んでいます)。ある養分を施用する
と他の養分の吸収を促す場合もあります(相乗作用)。例えばリンを施用すると
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マグネシウムの吸収が促進されることが知られています。
作物により好適な土壌酸度は異なります。中性に近い条件を好むホウレンソウ
やエンドウなどでは石灰資材を十分に施す必要があります。反対にじゃがいも
など酸性土を好む作物では石灰資材の過剰施用は避けます。
図1.養分間の拮抗作用と相乗作用
図2.土壌 pH による
肥料成分の溶解度の
模式図
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好適pH範囲 作物名
6.5~7.0 (微
酸性~中性)
野菜
えんどう、ほうれんそう
花き
ガーベラ、カスミソウ、スイートピー、あじさい(赤)
果樹
野菜
6.0~6.5 (微
酸性)
花き
果樹
5.5~6.5(微酸 野菜
性~弱酸性
花き
の広領域)
果樹
野菜
5.5~6.0(弱酸
花き
性)
果樹
アスパラガス、いんげん、えだまめ、オクラ、かぼちゃ、カリフラワー、
さといも、しゅんぎく、すいか、スィートコーン、セルリー、そらまめ、タマ
ネギ、とうがらし、トマト、なす、にら、ねぎ、はくさい、パセリ、ピーマ
ン、ブロッコリー、みつば、みょうが、メロン、落花生、レタス
カーネーション、グラジオラス、シクラメン、スターチス、ストック、ゼラ
ニウム、パンジー、フリージア、ポインセチア、
キウィフルーツ、さくらんぼ、ぶどう、もも
イチゴ、カブ、キャベツ、きゅうり、ゴボウ、コマツナ、ダイコン、チンゲ
ンサイ、フキ、ニンジン、レンコン
キク、コスモス、スイセン、マリーゴールド、ユリ、バラ
イチジク、ウメ、カキ、ナシ、ミカン、リンゴ
サツマイモ、ショウガ、ニンニク、ジャガイモ、ラッキョウ
セントポーリア、プリムラ
クリ、パイナップル
野菜
5.0~5.5(酸
性)
花き
シダ、ベゴニア、リンドウ、シャクナゲ、ツツジ、ツバキ、あじさい(青)
果樹
ブルーベリー
表1.野菜ごとの好適土壌酸度(pH 値)
【生物性】
土壌中にはさまざまな生物が生息していて、それらがお互いに対抗したり共生
したりしながら生存しています。植物に害を及ぼす生物が増殖しにくくするに
は土壌中に様々な生物が生息できるように管理することが重要です。
土壌伝染性の病害(ナス科の青枯れ病やアブラナ科の根こぶ病など)、ネコブセ
ンチュウやネグサレセンチュウにいったん汚染されると完全な防除は非常に
困難です。
これらの病害虫の侵入や持ち込みには十分に注意するとともに、良質な堆肥の
施用による生物相の多様化、輪作、対抗植物の栽培などにより特定の生物だけ
が増殖することのない土にすることは安定生産の面からとても重要です。
【堆肥】
堆肥は炭素源として稲ワラ、麦ワラ、すすき、もみ、米ぬか、落ち葉、バーク
(木の皮)、おがくずなどと窒素源としての家畜糞尿などの有機物を原料として
腐熟させたもので、家畜糞尿を使わない場合は微生物による炭素源の分解を
促すために窒素肥料を加える事もあります。
微生物の働きにより、分解されやすい有機物の分解が終わった完熟堆肥は腐植
を多く含み、
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① 保肥力を高める
② 団粒化促進効果が高い
③ 土壌中の微生物のエサとなり土壌構造の維持や土壌病害の抑制に効果が
ある
④ 微生物により徐々に分解され肥料成分を少しずつ放出していく、などの
優れた能力を持っていて、物理性、化学性、生物性の改善に大きな効果が
あります。
完熟堆肥は異臭・腐敗臭はしませんが未熟な堆肥は異臭・腐敗臭がしますので、
異臭がする場合は施用を見合わせ完熟してから施用します。
堆肥で作物の成育に必要な養分(特に窒素)をすべて与えようとするのはカリや
リン酸の過剰施用や土の保水性が過度に高くなったり土が膨軟になり過ぎて
軽くなりすぎる危険があり、避けた方が無難です。完熟堆肥といえども過剰な
施用は慎んだ方が良いです。堆肥は一時に大量に投入するのではなく、毎作
あるいは毎年小分けして継続的に施用していくのが無難です。
有機物に含まれる炭素の量を窒素の量で割った C/N 比という指標があります。
(窒素炭素比、
窒素率とも言います)この数値が大きいと炭水化物が多く含まれ、
低いと窒素の含量が多いことになります。
完熟堆肥の C/N 比は 15-30 程度で、
この数値よりも大きいと土中での有機物
の分解は進みにくく分解に時間を要し
たり微生物により分解される時に土中の
窒素が使われるため作物が一時的に窒素
不足になることもあります。
小さいと土中で急速に分解が進み分解時に
アンモニアガスを生じます。油かすや鶏糞
は堆肥ではなくて肥料の一種といえます。
また、土壌病原菌が含まれるカビや細菌は
10 以下です。
市販の堆肥には C/N 比が必ず記載されて
いますので購入時の参考にします。
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各種資材のC/N比の例
資材名
C/N比
油かす
7
鶏ふん
5~7
豚ぷん
10~13
牛ふん
15
完熟堆肥
15~30
モミガラ
75
稲ワラ
60~80
麦稈
120
バーク
100~1300
オガクズ
150~1100
土壌中のカビ
9
土壌中の細菌
5