JOGMEC 調査部 伊原 賢 アナリシス メキシコ:原油価格の下落が鉱区 公開ラウンドワンの進捗に与える 影響 サマリー 1 9 3 8 年より 8 0 年近く国家が独占してきたメキシコの石油・天然ガス等のエネルギー開発に、民間資 本を参入させるためのエネルギー改革。それが Enrique Peña Nieto(エンリケ・ペーニャ・ニエト)大 統領率いる現政権が 2 0 1 2 年 1 2 月の発足以来、取り組んできた抜本的な構造改革の一つである。 近年のメキシコにとって最大の課題であったエネルギー改革に向けた憲法の部分改正(エネルギー改 革法)は、2 0 1 3 年 1 2 月 2 0 日、Peña Nieto 大統領によって公布され、同国の石油開発事業への外資の参 入機会が開かれることとなった。外資を導入するための具体策として、炭化水素法や Pemex(メキシコ 石油公社 Petróleos Mexicanos。付録参照)法を含む 2 次法制は、2 0 1 4 年 8 月 1 1 日に原案どおり、メキ シコ議会において成立した。同年 8 月 1 3 日には、Pemex が引き続き開発を行う鉱区(ラウンドゼロ)と 一般競争入札(ラウンドワン)の対象予定鉱区が明らかになった。同年 1 0 月 3 1 日には、2 次法制関連の 2 5 の規程の公布が続いた。 ラウンドワンの第 1 弾となった「浅海探鉱」は 2 0 1 5 年 7 月 1 5 日に入札となり、外資の参入機会が具体 化した。本稿では、2 0 1 4 年半ばからの原油価格下落傾向のなかで、関係者の見方も交えながら、2 0 1 6 年 2 月末時点での進捗状況を解説する。 2 0 1 6 年 2 月末時点でのラウンドワン(一般競争入札)の結果と予定の概要は以下のとおり。 ①浅海域 (探鉱) の入札 2 0 1 4 年 1 2 月 1 1 日 (情報公開)~ 2 0 1 5 年 7 月 1 5 日 (入札日) Veracruz, Tabasco, Campeche の各州沿岸の浅海域 1 4 鉱区、生産物分与契約(PSC:Product Sharing Contract) (付録に用語説明) 事前資格審査(PQ:Pre-Qualification)完了企業 2 5 社(7 グループ /1 8 社)が入札の参加資格、1 4 鉱区の 内 2 鉱区のみ落札、2 7 億ドルの投資が期待 ②浅海域 (生産) の入札 2 0 1 5 年 2 月 2 7 日 (情報公開)~ 9 月 3 0 日 (入札日) Tabasco, Campeche 両州沖浅海の 9 フィールド(5 エリア)、PSC、5 エリアのなか 2 エリアが落札、3 0 億ドルの投資と日量 9 万バレルが期待 ③陸上油田 (生産) の入札 2 0 1 5 年 5 月 1 2 日 (情報公開)~ 1 2 月 1 5 日 (入札日) 北部の Nuevo León、Tamaulipas、東部の Veracruz、南西部の Tabasco そして南部の Chiapas の 5 州 の 2 5 鉱区、9 社がデータルームにアクセス、ライセンス契約(付録に用語説明) 、2 5 鉱区全てが落札、 1 1 億ドルの投資と日量 7 万 7,0 0 0 バレルが期待 17 石油・天然ガスレビュー アナリシス ④大水深 (探鉱) の入札 2 0 1 5 年 1 2 月 1 7 日 (情報公開)~ 2 0 1 6 年 1 2 月 5 日 (入札日) Perdido 地域の 4 鉱区とメキシコ湾南部(Cuenca Salina)の 6 鉱区、ライセンス契約、PQ 手続き開始 9 社 (Chevron、Shell、Total、Hess、Statoil、Atlantic Rim、ExxonMobil、BP、BHP Billiton) ⑤重質油と非在来型資源 スケジュールは未定 詳細不明 ⑥ Pemex の鉱区ファームアウト スケジュールは未定 ラウンドゼロによって、Pemex が取り置いた 1 2 プロジェクト(成熟油田、洋上超重質油田、大水深 油ガス田) エネルギー省(Secretaría de Energía。以下「SENER」)発表の探鉱・採掘の 5 カ年計画(2 0 1 5 ~ 2 0 1 9 年〈2 0 1 5 年 1 0 月 2 2 日〉 )に定められた探鉱採掘事業の入札ラウンドを行い、可能な限り多くの潜在的な 投資家を誘致し、原油生産の増量とそれに連動した雇用の創出がメキシコ政府の目標である。SENER、 大蔵公債省(Secretaría de Hacienda y Crédito Público。以下「SHCP」)、国家炭化水素委員会(Comisión Nacional de Hidrocarburos。以下 「CNH」 ) の主導により、入札手続きは進められている。 メキシコの資源エネルギー事業の改革は、石油・天然ガスの探鉱・採掘事業など上流プロジェクトの 民間企業への開放にとどまらず、中下流のプロジェクト並びに電力事業を含むエネルギー産業全般の民 間セクターへの開放を意味する。 ラウンドワンは第 3 次入札(陸上油田)まで終了した。今後の入札を通じて、メキシコの石油・天然ガ ス開発プロジェクトに投資する機会が創出される見込みである。5 カ年計画(2 0 1 5 ~ 2 0 1 9 年)では、さ らに、ラウンドツー、ラウンドスリー、ラウンドフォーと 3 件の入札ラウンドが計画されている。 経済 (油価下落) ・治安 (麻薬取引) に不安を抱えつつも、事態の好転を目指し、メキシコ政府および国 営石油会社 Pemex の取り組みは慎重に進行中と推察される。 1. 油田開発の課題とエネルギー改革への道 (1) 油田開発の課題 として申請した。 メキシコは膨大な石油と天然ガス資源を有し、その残 メキシコでは油田の国有化が始まった 1 9 3 8 年 3 月 1 8 存確認可採埋蔵量は原油換算で 1 3 9 億バレルと世界 1 7 日から 1 9 7 0 年代までは陸上油田からの生産が主であっ 位を誇った (2 0 1 4 年初。図 1) 。 たが、1 9 8 0 年代から現在までの原油生産は洋上油田が 2 0 1 4 年 3 月 2 1 日に Pemex は引き続き開発を行う鉱 主となり、生産量を伸ばし、累計原油生産量は 4 0 0 億バ 区をラウンドゼロとして、SENER に申請した。同国の レルに到達している (天然ガスも含む原油換算では 5 5 0 億 2P(確認 + 推定)埋蔵量 2 6 2 億バレルの 8 3 %にあたる バレル) 。しかし、原油生産のピッチは 2 0 0 3 年のピーク、 2 1 7 億バレルと想定資源量 1,1 4 8 億バレルの 3 1 %相当 日量 3 4 0 万バレルから 2 0 0 8 年には同 2 8 0 万バレルにま の 3 5 6 億バレルが申請対象であった。技術力や資金力 で落ち込み、2 0 1 4 年には同 2 4 3 万バレル(図 2、図 3) 、 の不足が見込まれる大水深油ガス資源(水深 5 0 0m 以深) 2 0 1 5 年 1 1 月は同 2 2 8 万バレルとなり、以降下げ止まっ やシェール資源については、将来の外資との共同操業 ている。主力カンタレル油田の減退が主因である(2 0 0 4 (2.(2)「Pemex の鉱区ファームアウト」で詳述)を前提 年平均日量 2 1 0 万バレル→ 2 0 1 3 年同 4 4 万バレル→ 2 0 1 4 2016.3 Vol.50 No.2 18 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 年同 3 7 万バレル (付録参照) 。 SENER が 2 0 1 5 年 初 に 公 Pemexは2P埋蔵量の83% (217億バレル) と 想定資源量の31% (355億バレル) をラウンド ゼロの対象としてエネルギー省SENERに申請 (2014年3月21日) サビナス 表した原油の生産予測から 米国 大水深 は、既存油田からの生産量は 2 0 2 0 年までに 1 3 %減少する 見通しとなっている(原油生 ブルゴス メキシコ ペルディト褶曲帯の発見 Trion, Supremus, Maximino, Vespa, Exploratus 大水深 メ キ シ コ ユカタン台地 タンピコ ミサントラ 産量〈NGL/ 天然ガス液を除 ガス発見 く〉は 2 0 1 5 年日量 2 4 0 万バ Lakach チコンテペック レル→ 2 0 2 0 年同 2 1 0 万バレ ガス田 油田 非在来型(シェールガス) 堆積盆地 ル)。日量 2 4 0 万バレルを維 持するとしても、僅か 5 年で、 原油換算 億バレル ベラクルス スレステ カンタレル ク・マロブ・サップ 埋蔵量 想定資源量 堆積 累計 1P 2P 3P 盆地 生産量(確認)(確認+(確認+ 在来型 非在来型 推定) 推定+ 予想) スレステ 454 122 182 251 201 タンピコ ミサントラ 65 10 70 177 25 348 ブルゴス 23 4 6 8 29 150 ベラクルス 7 2 2 2 16 6 サビナス 1 0 0 0 4 98 大水深 0 1 2 7 266 550 139 262 445 546 ユカタン 台地 計 5 開発・生産 602 探鉱 *2014年1月1日時点 出所:Pemex 資料より作成 新規油田開発の成果を上げる 図1 メキシコの石油天然ガス資源と埋蔵量の分布 必要がある。2 0 2 8 年の生産 目標を同 3 5 0 万バレルとすれ ば、既存油田からの生産との ギャップは同 2 0 0 万バレルに もなる (図 4)。 減退を続けてきた確認可採 千バレル/日 3,500 3,000 埋蔵量もようやく 2 0 1 1 年か 2,500 ら 1 0 0 %(1 年間に追加され 2,000 た確認可採埋蔵量 =1 年間の 1,500 生産量)を上回る回復を見せ 1,000 てきたが、新規の油田発見よ 500 りも既発見の 3P 埋蔵量(確認 + 推定 + 予想)から 1P 埋蔵量 (確認) への組み換えに過ぎな 1930年代から1970年代までの原油生産は陸上油田が主。 1980年代から現在までの原油生産は洋上油田が主。 洋上油田 陸上油田 0 1960 1962 1965 1967 1970 1972 1975 1977 1980 1982 1985 1987 1990 1992 1995 1997 2000 2002 2005 2007 2010 年 出所:PEP(Pemex の石油開発部門) 図2 メキシコの原油生産プロファイル(1960 ~ 2011 年) いとの厳しい指摘もある。 2 0 1 5 年 1 ~ 1 0 月の石油販 売による国家歳入は、2 0 1 4 年の同時期と比べて 3 8 %減 の 3 9 4 億 6,9 0 0 万ドルになっ た、 と 2 0 1 5 年 1 2 月 1 日 に Pemex 百万バレル/日 % SHCP は発表した。その主因 は、2 0 1 4 年に比べ石油生産 量が 7.6 %、天然ガス価格が 3 3.6 %それぞれ低下したこと にある。しかし、2 0 1 5 年メ キシコ政府は、油価を 7 6.4 0 ドル / バレルにセットした石 油ヘッジプログラム (2 0 1 4 年 に 7 億 7,3 0 0 万ドルを支払い、 年 2014 年 12 月 1 日 ~ 2015 年 1 1 月 3 0 日までの原油取引の うち 2 億 2,8 0 0 万バレルが対 象)により、2 0 1 5 年 1 2 月に 19 石油・天然ガスレビュー 出所:Pemex 図3 メキシコの原油生産プロファイル(2000 ~ 2014 年) アナリシス ・石油・ガスの探査・採掘に 百万バレル/日 おいて国が民間企業と契約 を締結する際は、地域住民 との協議・監査の下で実施。 石 油 基 金 の 創 設 と Pemex 取締役会からの石油労組排 除も特筆。 エネルギー改革法は 2 次法 年 出所:SENER 制の整備が必要となり、国会 審議を経て、2 0 1 4 年 8 月 1 1 図4 メキシコの原油生産予測(2015 ~ 2028 年) 日に成立した。その後、法整 備や外国企業の体制準備を経 て、2 0 1 5 年に外国企業がメ キシコのエネルギー分野に参 6 2 億 8,4 0 0 万ドルを受け取った。また、メキシコ原油が 入できることとなった。 2 7 ドル / バレルで取引される現状では、2 0 1 5 年の在外 原油生産の減退や Pemex の責任の大きさ、また、その 労働者の送金は石油収入を上回る見込みである。 財政的・技術的な課題に対処するためには外国企業の技 一方で、非石油製品の税収は伸び、全体で 2 8.1 %増 術導入やリスクの共有が必要であり、外国企業を惹きつ えた。特に大きな増加を示したのは、生産・サービス特 ける PSC の導入が期待されたのである。石油契約上の経 別税 (2 4 1 %) 、関税 (2 7.6 %) 、所得税 (2 3.8 %) であった。 済条件(原油価格リンクの期待報酬)や埋蔵量の財務諸表 結果として 2 0 1 5 年の歳入は、1 ~ 1 0 月の期間について への資産計上が可能となるからだ。また、Pemex の操業 は 2 0 1 4 年 比 で 2 % 増 加 し た が、 財 政 収 支 を 見 る と、 や財務能力の向上を前提とした一層の独立性を確保する 2 0 1 4 年の赤字は 2 6 1 億 3,2 0 0 万ドルよりも多く 2 9 6 億 ための措置が採られたものの、Pemex の生産減少に伴い 2 0 0 万ドルとなった(付録「●メキシコの石油・天然ガス 政府収入 (政府歳入の 3 0 %程度) も減少している (図 5) 。 概況」参照) 。 Pemex の投資の判断も政府の意向に左右されるよう ひ な構造であったが、改革により Pemex は海外の国営石 (2) エネルギー改革への道 油会社と同様な会社(例えばブラジルの Petrobras、コロ メキシコは 1 9 3 8 年の油田国有化宣言以降、Pemex が ンビアの Ecopetrol)への移行が期待される。新しい体制 国内で民間企業と共同で事業を行うことを禁じてきた。 の下では Pemex は政府から独立した形となり、必要に 採掘技術や資金の流動メカニズムを向上させるために民 応じて子会社を設立し、民間の石油会社とパートナーを 間企業と手を組むことは世界的に行われており、Pemex 組む形になる。その場合、政府との契約主体には Pemex はそれができない数少ない石油公社であった。 がなることもあれば、民間石油会社がなることもある。 2 0 1 3 年 1 2 月に公布されたエネルギー改革法のポイン 生産原油の所有権については、サービス・利益分配契 トは次の 4 点である。 約 (付録参照)が国家に帰属、生産物分与・ライセンス契 ・エ ネルギー改革により、Pemex 単独では採算が見込 約においては、契約の内容により石油会社への帰属とな め ず、 こ れ まで行われてこなかった大水深 油 田 や るが、地下に埋蔵された石油の所有権については国家に シェールオイル・ガスの開発が進むと期待。 帰属することは変わらない。新しい組織体制の下では、 ・国家債務を増加させることなく投資資金や最先端技術 新しい組織の設立、新しい役割の付与が行われる。ここ を調達することで、埋蔵量の増加や、国際的経済競争 で、「原油」とは人為的に地下から取り出され、精製され 力の引き上げに貢献。 る以前の油を指す。 ・大 統領は地下に埋蔵する炭化水素の所有権は国有の SENER は、案件ごとにサービス契約や PSC といった まま維持し、国家主権を強化すること、透明性を保 外資導入形態のデザインを担う。CNH は地質情報等の 証することを強調。ライセンス契約や PSC が想定(付 技術情報の取りまとめ、入札の実施や契約の署名、契約 録参照)。 の管理を担当する。また、SHCP は会計条件を設計し、 2016.3 Vol.50 No.2 20 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 サービス契約や利益分配契約 兆ペソ の際には国が市場のマーケ 非石油関連収入 ティングをサポートする。石 石油関連収入 油開発による政府の歳入、契 うちPemex 約への対価支払い等は石油基 金が執り行う。 この改革で重要な点は、今 後、Pemex は メ キ シ コ 政 府 の収入源の確保に責任を負わ 全体の 約3割 なくなることにある。政府が 必要とする財源は、政府自ら が契約を締結、管理、運営し て確保する。短期的には政府 年 (注)1 ペソ≒ 6 円 出所:SHCP の財源は引き続き Pemex の 石油生産分からの収入に依存 図5 メキシコの歳入内訳 することになるが、長期的に は他の石油会社による生産か らの財源が増えていくことを期待している。 ・ラウンドワン~ラウンドフォーは、国が管理し、入札 を実施。 (3) 油田の探鉱開発の5カ年計画 (2015 ~ 2019年) ・ 2 0 1 5 年 1 0 月 2 2 日公表。 ・想定資源量(Potential Resources)1,0 5 0 億 Boe(石油 換算バレル)、2 3 万 5,0 7 0 ㎢、計 3 3 3 鉱区。 ・ 5 カ年計画は、毎年第 3 四半期中に翌年の入札情報の ・ 2 3 7 カ所の開発鉱区の入札を検討(陸上 1 6 9、浅海 変更・調整・追加等の評価がなされ、遅くとも 9 月 3 0 39、超重質油13、チコンテペック12、 〈水深500 ~ 1,500m 日までに SHCP に提出。 の〉深海 4)。 ・ 5 カ年計画の評価のツールとして、SENER は各企業 から業界と州政府に対するアンケートを活用。 ・7 2 カ所の在来型の探鉱鉱区(陸上 2 6、浅海 1 7、深海 2 9) 。深海 2 9 鉱区の内訳は、ラウンドワン 6、ラウンド ・ラウンドゼロ:Pemex 単独での実施が承認(Pemex へ ツー 9、ラウンドスリー 6、ラウンドフォー 8。 の割り当て)、および Pemex のファームアウト(民間 ・ 2 4 カ所の非在来型の探鉱鉱区(内訳は未定)。 企業へのファームアウトを義務付け) 。 2. ラウンドゼロの進捗 (1)Pemex への鉱区割り当て た(表 1、図 7) 。ラウンドゼロでは Pemex が今後 1 5 年 2 0 1 4 年 8 月 1 3 日、Peña Nieto 大統領の 2 次法制の署 以上、石油換算で日量 2 5 0 万バレル程度を維持するため 名式での演説のとおり、SENER、CNH および Pemex は、 に、保持したい鉱区はほとんど認められた形である。 ラウンドゼロの結果とラウンドワンの対象予定鉱区を公 表した (図 6)。 (2)Pemex の鉱区ファームアウト 2 0 1 4 年 8 月、 Pemex はメキシコ全体の 2P (確認 + 推定) ラウンドゼロによって Pemex による保持が認められ 埋蔵量の 8 3 %(申請の 1 0 0 %) 、 想定資源量の 2 0.4 %(申 た資産のうち 1 2 プロジェクトについては、Pemex が 請 3 1 %、結果として申請の 6 6 %が認められた)の保持 ファームアウトすることによって民間企業とのパート を認められ、面積 9 万㎢、石油換算で 2P 埋蔵量 2 0 6 億 ナーシップを結成して開発する。このファームアウトに バレル、想定資源量 2 3 4 億バレルを保持することになっ よって推進する 1 2 プロジェクトは、成熟油田、洋上超 21 石油・天然ガスレビュー アナリシス 出所:SPE(The Society of Petroleum Engineers:世界石油工学者協会) 図6 SENER 公表のラウンドゼロとラウンドワン鉱区 重質油田、大水深ガス田、大水深油田(ペルディードエ (3)既存契約の新規契約への移行 リア)の新規発見の 4 種類に大別される(表 2)。これら 表 3 に示す南部地域 Poza Rica Altamira や北部地域 の鉱区は早期に成果が現れるよう特に重視されており、 Burgos をカバーする 2 2 の既存契約(CIEP: Integrated ラウンドワンのなかでファームアウト案件として取り扱 Exploration and Production Contract〈統合探鉱開発契 われることが明らかになった。 約〉と COPF: Financed Public Works Contract〈財政公 2016.3 Vol.50 No.2 22 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 表1 認可された 2P(確認 + 推定)埋蔵量と想定資源量の内訳 認可量 (石油換算百万バレル) 認可 / 申請 (%) 面積 (㎢) 2P 埋蔵量 20,589 100 17,010 想定資源量 23,447 67 72,897 在来型 非在来型 (18,222) 70.9 (64,489) (5,225) 51.6 (8,408) タイプ / エリア 在来型 浅海 南東部 2P 埋蔵量 (石油換算百万バレル) 15.5 想定資源量 (石油換算百万バレル) 20,589 18,222 11,374 7,472 11,238 7,472 136 - 8,819 5,913 南部 4,379 5,371 チコンテペック(Chicontepec) 3,556 - 北部 陸上 ブルゴス(Burgos) 425 - 北部 459 542 大水深 ペルディード(Perdido) ホロックハン(Holok-Han) 非在来型 計 397 4,837 - 3,013 397 1,824 - 5,225 20,590 23,447 出所:CNH, SENER 出所:SENER 図7 SENER 公表のラウンドゼロ鉱区 23 石油・天然ガスレビュー 埋蔵量 / 生産量 (年) アナリシス 表2 Pemex の鉱区ファームアウト 区分 2P 埋蔵量 (石油換算百万バレル) 鉱区 投資額 (十億米ドル) 成熟油田(陸上) Rodador, Ogarrio, Cardenas-Mora, Samaria 691 4.0 成熟油田(洋上) Bolontiku, Sinan, Ek-Balam 770 9.2 超重質油(洋上) Ayatsil-Tekel-Utsil(API 度 10 未満) 750 10.9 大水深(ガス) Kunah-Piklis 296 8.1 大水深(油) ペルディード Trion, Exploratus, Maximino 1,007 27.0 出所:Pemex、2015 年 10 月 表3 新契約に変更される既存契約(CIEP、COPF) 上:第1弾/下:第2弾 Boe (石油換算バレル) 、 M (千) 、 MM (百万) 、 BD (バレル/日) 、 CFD (立方フィート/日) 、 USD (米ドル) Asset Area # 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Cinco Pres Bellota Jujo APRA APRA APRA APRA APRA Burgos Burgos Burgos APRA Magallanes Santuario Altamira Arenque Panuco San Andres Tierra Blanca Nejo Olmos Mision Ebano TOTAL Asset Area # 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Burgos Burgos Burgos Burgos ATG ATG ATG ATG ATG ATG Samaria Pirineo* Cuervito* Fronterizo* Monclova* Amatitlan Miahuapan Miquetla Pitepec Humapa Soledad Carrizo** TOTAL Contract Operating Years 2.7 2.7 1.8 1.6 1.8 1.8 1.8 7.3 10.5 10.6 10.9 Contract Operating Years 9.3 10.6 10.6 7.3 0 0 0.7 0.1 0 0.7 2.4 Area P2 P3 Resources Reserves Reserves MMBoe MMBoe MMBoe ㎢ 169 130 1,625 2,035 1,839 209 358 1,165 358 1,972 1,584 11,444 Area ㎢ 3,840 231 231 3,358 230 128 112 230 128 125 13 8,626 36 41 6 66 29 202 36 32 13 68 40 569 93 41 13 82 37 531 60 44 45 81 56 1,083 13 994 132 100 37 1,276 P3 Resources P2 Reserves Reserves MMBoe MMBoe MMBoe 11 58 31 3 368 88 195 440 260 179 6 1,639 16 68 35 4929 279 224 1,049 503 291 51 3,449 Production To May 2014 Oil Gas MBD MMCFD 7.4 10 8.0 4 2.1 0 5.4 0 1.6 8 3.2 0 1.4 0 9.9 210 0.0 3 0.0 110 0.3 0 39 345 Production To May 2014 Oil Gas MBD MMCFD 0 24.3 0.65 30.6 0.41 26.6 0 17.9 252 0.1 0.1 101 0.3 0.4 86 0.9 2.5 252 0.1 0.1 157 1.1 2.1 128 3.4 8.1 976 7 113 Investment MMUSD 2013 2014∼ 2015 138 133 200 133 50 72 241 215 155 331 86 177 137 103 450 602 20 108 110 179 249 575 1,836 2,628 Investment History MMUSD 525.5 311.1 270.4 490.6 1,598 *Oil production is referred to the production of condensed **Suspended 出所:CNH, SENER 共事業契約〉 ) について改革を反映した内容の新契約へと が定める新しい規定のメリットを、Pemex の契約相手 変更される。これら新契約への移行は、入札には付され 方が享受できるようにすることである。SENER が新契 ない。 約締結のための実用ガイドラインを承認し、SHCP が経 移行の意義は、石油天然ガス法と石油天然ガス歳入法 済的諸条件を承認することになっている。 2016.3 Vol.50 No.2 24 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 3. ラウンドワンの進捗 ラウンドワンには、短期の石油・天然ガス ラウンドワン対象鉱区の 2P (確認 + 推定) 表4-1 埋蔵量と想定資源量の内訳 生産量の増加、新規埋蔵量の追加が期待され ている。SENER の当初案(2 0 1 4 年 8 月)では 石油換算 百万バレル 鉱区数 169 の内訳 1 6 9 鉱区が入札の対象となった。うち 1 0 9 鉱 大水深ペルディード 想定資源量 1,591 11 区が探鉱、6 0 鉱区が生産段階にある。対象 大水深南部 想定資源量 3,222 17 2P 埋蔵量 2,671 28 想定資源量 8,927 62 2P 埋蔵量 鉱区には浅海、重質油、チコンテペック / 非 チコンテペック、非在来型 在来型資源、陸上成熟油田、大水深を含む。 SENER はそのホームページに特設サイトを 陸上、浅海、重質油 創設し、対象となる 1 6 9 鉱区を発表している (表 4-1、表 4-2、図 8) 。 2 0 1 6 年 1 月末時点でのラウンドワンの結 非在来型 1,111 32 想定資源量 724 11 想定資源量 142 8 出所:CNH, SENER 果と予定の概要を表 5 に示す。 ラウンドワン対象鉱区の 2P 埋蔵量と想定資源量の内訳: 表4-2 探鉱 / 開発、在来型 / 非在来型 入札公開後にデータルームがオープンさ 開発 探鉱 2P 埋蔵量 想定資源量 石油換算 百万バレル 石油換算 百万バレル れ、同時にデータパッケージも販売される。 鉱区のタイプ Pemex の手元にあるデータは、全て CNH に 移管された。入札とその評価は CNH が実施 する。民間は、相対交渉により Pemex との 在来型 3,782 5,537 陸上 61 - パートナリングは可能となるが、その権益取 チコンテペック 2,671 - 得には入札プロセスを経る必要がある。 なお、 浅海 293 724 Pemexと 重質油 757 - 大水深 - 4,813 の M O U(M e m o r a n d u m o f Understanding) による便宜は図られない。 非在来型 TOTAL (1) 浅海探鉱 入札説明会 2 0 1 4 年 1 2 月 1 1 日、ラウンドワンの浅海 鉱区数 - 9,069 3,782 14,606 60 109 出所:CNH, SENER 域(探鉱)入札に関する説明会が SENER の主 催で実施。概要は以下のとおり (図 9) 。 ⅴ.経済面では 2 オプションを提示。 1)1社につき最低10億米ドルの資金を有する。また、 ①浅海域 (探鉱) 入札全体に関する概要 コンソーシアムを組む場合、各社合計で当該金額 ・大水深、非在来、超重質油、成熟油田、浅海域等それ に達し、かつ、3 社を超えない。 ぞれの入札をまとめて「ラウンドワン」と称するため、 今回の浅海域の入札はラウンドワンの最初の入札 (Primera licitacion de Ronda Uno) と呼称する。 ・入札のベース(Base de licitacion)とは、 「必要条件・ プロセス・期間」 を調整するもの。 2) もしくは、6億米ドルの資金を有するオペレーター が参加実績を有する。また、1 0 0 億米ドルを上回 る全活動が実績を有する。 ⅵ.オペレーター会社は、コンソーシアム内に 3 社のう ち1社は経済的参加の会社を含めなければならない。 ・オペレーター会社としての入札参加条件: ⅶ.1 4ブロックのうち、入札できるのは5ブロックまで。 ⅰ.2 0 1 0 ~ 2 0 1 4 年の間に少なくとも3 件の探鉱開発プ ・コンソーシアム ロジェクトへの参加実績、または、1 ~ 2 件の 1 0 億 米ドル規模の大型プロジェクトに参加経験を有する。 ⅱ.浅海に関する具体的な知識の提示。 ⅰ.1 社で、二つ以上のコンソーシアムに参加すること はできない。 ⅱ.大規模企業(日量石油換算 1 6 0 万バレルを生産)に ⅲ.1 0 年以上の専門知識のある従業員を雇用。 関する規定として、浅海域の入札にはコンソーシ ⅳ.5 年以上の安全・環境保護に関する知識を有する。 アムを組んでの参加は不可。1 社として入札で競合 25 石油・天然ガスレビュー アナリシス 出所:SENER 図8 SENER 公表のラウンドワン鉱区 表5 ラウンドワンの結果と予定の概要(2016 年 2 月末) ①浅海域(探鉱)の入札 2014年12月11日(情報公開)~2015年7月15日 (入札日) Veracruz, Tabasco, Campecheの各州沿岸の浅海域14鉱区、生産物分与 (PS) 契約 (付録参照) PQ完了企業25社 (7グループ/18社)が入札の参加資格、14鉱区の内2鉱区のみ落札、 27億ドルの投資が期待 ②浅海域(生産)の入札 2015年2月27日(情報公開)~9月30日 (入札日) Tabasco, Campeche両州沖浅海の9フィールド(5契約)、PS契約、5エリアのなか2エリアが落札、 30億ドルの投 資と日量9万バレルが期待 ③陸上油田の入札 2015年5月12日(情報公開)~12月15日 (入札日) 北部のNuevo León、 Tamaulipas、東部のVeracruz、南西部のTabasco、 南部のChiapasの5州の25鉱区、 9社がデー タルームにアクセス、ライセンス契約(付録に用語説明)、25鉱区全てが落札、 11億ドルの投資と日量7.7万バレル が期待 ④大水深(探鉱)の入札 2015年12月17日(情報公開)~2016年12月5日 (入札日) Perdido地域の4鉱区とメキシコ湾南部(Cuenca Salina)の6鉱区、ライセンス契約、 PQ手続き開始9社 (Chevron、 Shell、 Total、 Hess、 Statoil、Atlantic Rim、ExxonMobil、BP、BHP Billiton) ⑤重質油と非在来型資源 スケジュールは未定 ~ 2 0 1 5 年 2 月 2 5 日。データ室 に関する明確化。 デ ー タ 室 の 開 設:2 0 1 5 年 1 月 1 5 日~ 7 月 1 4 日の 6 カ月(ア クセス申請は 2014 年 12 月 15 日~ 2 0 1 5 年 2 月 2 5 日) 間。 〈第 2 回目〉2 0 1 4 年 1 2 月 1 5 日 ~ 2 0 1 5 年 3 月 1 5 日。PQ に 関 する明確化。 PQ 書 類 の 受 け 付 け 期 間 は 2 0 1 4 年 1 2 月 1 5 日~ 2 0 1 5 年 3 詳細不明 ⑥Pemexの鉱区ファームアウト 〈第 1 回目〉2 0 1 4 年 1 2 月 1 5 日 月 3 1 日。内容の確認は 2 0 1 4 年 スケジュールは未定 ラウンドゼロによって、Pemexによる保持が認められた12プロジェクト (成熟油田、 洋上超重質油田、 大水深油ガ ス田) 出所:CNH, SENER 1 2 月 1 5 日~ 2 0 1 5 年 4 月 2 3 日。 〈第 3 回目〉2 0 1 5 年 1 月 1 5 日~ 6 月 1 5 日。提出・入札・落札と 契約に関する明確化。 すること。ただし、浅海域以外での入札ではこの 入札に関する情報(必要条件、スケジュール、PQ、契 限りではない。 約書等)は、全て www.ronda1.gob.mx で公示され、今後、 ・スケジュール CNH のコミッショナーは、企業との直接の連絡、面談 3 回の明確化ステップを挟み、その間、PQ や契約書 等を一切禁止とする。 に関するさまざまな調整等を実施。 2016.3 Vol.50 No.2 26 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 浅海生産 浅海探鉱 2015年7月15日のラウンドワンの浅海探鉱入札で落札されたエリア 出所:CNH 図9 CNH 公表のラウンドゼロとラウンドワンのエリア ②浅海域ブロックに関する概要 ・ PQ プロセスを開始した会社:3 4 社 ⅰ.浅海の 1 4 ブロック、1 1 6 ~ 5 0 0 ㎢(合計 4,2 2 2 ㎢) ・ PQ プロセスを通過した入札資格者:1 8 社と 7 コン を入札。 ⅱ.ナショナルコンテンツの割合は図 1 3 参照。 ⅲ.契約期間は 2 5 年、認められた場合にのみ 5 年 +5 年、 最大で 1 0 年の延長が可能。 ソーシアム 1 8 社(Atlantic Rim, BHP Billiton, Chevron, Cobalt Energia, CEPSA, ExxonMobil, Hess, Hunt, Lukoil, Maersk, Marathon, Nexen, ONGC, Pacific ・探鉱段階:初期段階で3年、 2年延長して最大で5年。 Rubiales, Pemex, Plains Acquisition, Statoil, ・開 発段階:2 2 年まで。探鉱段階で商業レベルの Total) 発見があった場合、開発プランを提出。その際、 7 コ ン ソ ー シ ア ム( ① BG Group Mexico, Galp EOR(Enhanced Oil Recovery:採油増進法)の必 Energia; ② Eni, Casa Exploration; ③ Murphy 要が認められれば最大で 1 0 年の延長が可能。 Oil, Petronas; ④ Pan American Energy LLC, ⅳ.14ブロックで36カ月以内に26探査井の掘削を約束。 E&P Hidrocarburos y Servicios; ⑤ Talos ⅴ.最 低 作 業 計 画(Minimum Work Program: Energy LLC, Sierra Oil & Gas, Premier Oil; ⑥ MWP) :2,7 6 0 万~ 6,9 8 0 万ドル Tullow, Petrobal; ⑦ Diavaz Offshore, Woodside Energy Mediterranean, Pluspetrol) 2 0 1 5 年 7 月 1 5 日のラウンドワンの浅海探鉱入札で CNH は 2 0 1 5 年 6 月 9 日、浅海域 PSC の最終モデルを 落札されたエリア 発表 (付録参照)。 2 0 1 4 年 1 2 月 1 1 日 の 入 札 説 明 会 か ら 入 札 日 ま で の CNH へのコンタクト状況 入札結果 ・関心を示した会社:4 9 社 2015年7月15日(メキシコ時間午前8時から)浅海域 (探 ・データルームへのアクセスを申請した会社:4 1 社 鉱)の入札状況が、CNH のホームページにおいて生中継 ・データルームへのアクセスが認められた会社:3 9 社 された。 27 石油・天然ガスレビュー アナリシス 表6 浅海域(探鉱)の入札結果 エリア番号 Minimum value of the participation of State in operating profit(%) Increase percentage in the minimum work program established(%) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 40 40 40 40 40 40 40 25 40 40 25 25 25 25 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO 1 Statoil E&P Mexico, S.A. de C.V.(ノル ウェー) NO NO NO NO NO NO 65.00 86 (加重値:63.136) 2 Eni International B.V.(イタリア) CASA Exploration, L.P.(米) NO NO NO NO NO NO 57.00 20 (加重値:53.536) NO NO NO NO NO 20.00 5 3 ONGC Videsh Limited(インド) NO NO NO NO NO 20.00 5 4 Sierra Oil & Gas, S. de R.L. de C.V.(メキシ コ) Talos Energy LLC(米) Premier Oil PLC(英) NO 55.99 10 NO NO NO NO 68.99 10 (加重値:63.672) NO NO NO NO NO NO NO 5 Hunt Overseas Oil Company(米) NO 54.55 5 NO NO NO NO 65.11 15 (加重値:60.535) NO NO NO NO NO NO NO 6 Atlantic Rim Mexico, S. de R.L. de C.V.(米) NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO 7 E&P Hidrocarburos y Servicios, S.A. de C.V.(アルゼンチン) Pan American Energy LLC(アルゼンチン) NO NO NO NO NO NO 27.26 6 NO NO NO NO NO NO NO 8 Murphy Worldwide, Inc.(米) Petronas Carigali International E&P B.V.(マ レーシア) NO NO 35.00 5 35.00 5 NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO 9 Cobalt Energia de Mexico, S. de R.L. de C.V.(米) NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO NO 結果 入札者 なし 1 Sierra Oil & Gas Premier Oil Talos Energy 落札者 なし 落札者 なし 入札者 なし 落札者 なし 入札者 なし 入札者 なし 入札者 なし 入札者 なし 落札者 なし 入札者 なし 入札者 なし 2 Hunt 1 Sierra Oil & Gas Premier Oil Talos Energy 2 Statoil E&P 出所:JOGMEC メキシコ事務所 ・ PQ 取得会社 2 5 社、入札への参加は 9 社。 ・最終的にプロポーザルを提出したのは、コンソーシア ムを 1 社として以下の 7 社。 場合、国は、より高い割合で受け取ることになる。 ・契 約期間 3 0 年、5 年延長可の PSC。CNH の承認が得 られれば、開発計画、年間作業計画、予算に変更を加 ▷ Hunt えることができる。契約期間に埋蔵量や地質構造の評 ▷ ONGC 価期間 2 年を含む。 ▷ Statoil ・エ リ ア 3、4、6、1 2 は、SHCP の 設 定 し た 最 低 価 値 ▷コンソーシアム② (Eni, Casa Exploration) (Minimum Value。付録に詳細説明)を下回ったため ▷コンソーシアム③ (Murphy Oil, Petronas) オファーは棄却。入札者なし 8 エリア。結果 1 2 エリ ▷コンソーシアム④(Pan American Energy LLC, アで落札者なし。 E&P Hidrocarburos y Servicios) ▷コンソーシアム⑤(Talos Energy LLC, Sierra Oil & Gas, Premier Oil) ・今回の2件の落札案件で27億ドルの投資が見込まれる。 ・ CNH の Zepeda 委員長が「期待よりも低い」との趣旨を 表明。 ・ 1 4 エリア(鉱区)中、落札:2 エリア(エリアの位置は 図 9 に記載) 、詳細は表 6。落札されたエリア 2 とエ 入札結果の考察 リア 7 の落札者は、ともにコンソーシアム⑤ Talos 国内外の 7 社から合計 1 1 件のプロポーザルがあった。 Energy LLC(米), Sierra Oil & Gas(メキシコ), これよりも多くの参加者、それも参加だけではなくプロ Premier Oil(英) であった。 ポーザルまでの提出があればよかったが、原油価格下落 ・落 札 案 件 に お け る 国 家 の 取 り 分 は、 エ リ ア 2 が が各企業のキャッシュフローに影響を与えてしまった。 5 5.9 9 %、エリア 7 が 6 8.9 9 %。ロイヤルティ、炭化水 PQ 取得会社が 2 5 社あったにもかかわらず、入札への 素の探鉱・採掘の税金などを付加すると 7 4 %と 8 3 % 参加は 9 社のみであった(表 6)。Cobalt Energia(米)と が国家の収益。 Atlantic Rim(米)に至っては、全てのブロックについて ・契約は累進課税方式を採用しているため、原油価格が 入札辞退のレターを提出するためだけにイベントに参加 高騰したり、予想よりも多い石油やガスが発見された したと言える。エリア 3、4、6、1 2 は、SHCP の設定し 2016.3 Vol.50 No.2 28 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 た最低価値を下回ったためオファーは棄却、最終的に 1 2 ブロックが落札者なしという結果に終わった。落札 されていないブロックに関しては、将来のラウンドで再 び入札を行う可能性がある。 メキシコ政府は、今後を見据え改善点を特定するため に、今回の入札の条件とその結果について詳細な分析を ては、内容の検討が必要かどうか、今後判断す るつもりである。 Q3:政府(国家)の取り分が 7 4 ~ 8 3 %という数字 は大き過ぎないか ? A4:世界水準で見ると高すぎる数字ではない。 行う予定とした。改善点としては、落札案件における国 家の取り分などの契約条件の見直し、輸送インフラの利 用条件の整備が挙げられた。 (2)浅海域(生産) 入札説明会 2 0 1 5 年 2 月 2 7 日、メキシコ政府は浅海域(生産)に関 〈参考〉 入札結果を踏まえた Zepeda 委員長による記 する新たな入札を実施すると発表した。全部で 1 6 9 区画 者会見概要流れ を対象とするいわゆる「ラウンドワン」の第 2 フェーズの ラウンドワンの五つの入札のうち、一つ目が終 枠組みにおけるもので、石油採掘に関する 5 件の入札が わった。1 4 エリアのうち 2 エリアが落札、4 エリア 行われる。2 0 1 4 年 1 2 月 1 1 日に続くこの入札を通じて、 は落札該当者なしという結果は、ラウンドワンのス 今後 3 年間に 4 4 億 7,8 0 0 万ドルの投資が実行されると見 タートとして期待していたような大きな推進力、ダ 込まれる。今回の入札対象は、メキシコ南東部 Tabasco, イナミックなものではなかったが、透明性は完璧な Campeche 両州沖浅海の 2 8 1 ㎢の鉱区で、原油換算 6 億 ものである。フェーズ(データ室、PQ、提出 / 入札 7,1 0 0 万バレル相当の炭化水素資源が埋蔵されていると / 落札 / 契約)に分けた手続き、データ室の開設、 試算される(表 7)。鉱区位置は図 9 参照。1 社あたりの CNH のホームページを通したクラリフィケーショ 最大入札鉱区数 5 の制限は外された。PQ プロセスを通 ン(Clarification:透明性)などの面において着実な 過した入札資格者は 1 4 社であった。 一歩であったことは確かである。ラウンドワンは今 Coldwell エネルギー大臣名義のコミュニケによると、 後、まだ四つの入札が控えているので、ラウンドワ 入札が行われる 5 件が全て落札されると、メキシコにお ンの最終的な評価を下すのは尚早であると言える。 ける原油生産量は日量平均 1 2 万 4,0 0 0 バレル増大する 今回落札されたエリア 2、エリア 7 に関して、それ としている。また、5 件全ての鉱区について、埋蔵量に ぞれ 5 5.9 9 %、6 8.9 9 %のオファーで落札された。 関する認証が済んでいる上に、既に「開発段階にあって これは課税する前の率であり、炭化水素収入法に基 予備探鉱が必要ない」ことから、地質的リスクが低いと づいた諸々の税金契約料(探鉱および採掘の操業税、 される。なお、これらの新鉱区全てが極めて魅力的であ ロイヤルティ) などが加味されて、7 4 %(エリア 2)、 る。メキシコで最も豊かな南東部の海底盆地にあるから 8 3 %(エリア 7) が国家の利益となる計算である。 である。 国際原油価格は 2 0 1 4 年にバレルあたり 1 0 0 ドルから Q1:1 4 エリアのうち 2 エリアしか落札がなかった のは何が悪かったのか ? A1:さまざまな側面が影響している。その一つに、 5 0 ドルに下落したが、そのような環境下でも、石油産 出にかかるブレークイーブンコストはバレルあたり約 2 0 ドルと想定しているので、メキシコのエネルギー改 現在の石油価格の低迷も原因に挙げられる(今 革は勢いを失わない、と Coldwell エネルギー大臣は力 回のラウンドは、石油価格を基に大蔵公債省 説した。だが改革が始まると同時に、メキシコ財政は国 〈SHCP〉において最低価値を設定したのではな 際価格の劇的下落という波にさらされた。そのためメキ い)。 Q2:今 後の入札の調整、最低パーセンテージ等の 変更、検討はあるのか? A2:9 月 3 0 日に入札予定のラウンドワン -2(浅海 シコ政府は2015年1月にGDPの0.7%に相当する85億7,200 万ドルの歳出削減を実施した。このなかには Pemex 向 けの予算 4 1 億 5,3 0 0 万ドルも含まれていることから、ま だ始動していない複数のプロジェクトが影響を受けると 生産)に関しては、現在のところ変更はない。 予想された。特にリスク度が高い大深海鉱床の開発が遅 ラウンドワン -3(1 2 月 1 5 日入札) 以降につい れると言われた。 29 石油・天然ガスレビュー アナリシス 表7 ラウンドワンの浅海生産鉱区の埋蔵量 MMB(百万バレル)、BCF(十億立方フィート) (注)上の 5 フィードには生産履歴なし。ラウンドゼロで Pemex が保持しなかった 2P 埋蔵量の 17%のカテゴリーに入る。 出所:CNH 表8 浅海域(生産)の入札結果 エリア番号 Minimum value of the participation of State in operating profit(%) 1 2 3 4 5 34.8 35.9 30.2 33.7 35.2 Increase percentage in the minimum work program established(%) 0 0 0 0 0 61.81 0 (加重値:55.629) NO NO NO NO 1 DEA Deutsche Erdoel AG(ドイツ) 2 Statoil E&P México, S.A. de C.V.(ノルウェー) 66.00 0 (加重値:59.40) 61.00 0 (加重値:54.900) NO NO NO 3 Pan American Energy LLC(アルゼンチン) E&P Hidrocarburos y Servicios, S.A de C.V.(ア ルゼンチン) 68.23 34 (加重値:64.322) 70.00 100 (加重値:68.000) NO NO NO 4 Eni International B.V.(イタリア) 83.75 33 (加重値:78.247) NO NO NO NO 5 Petronas Carigali International E&P B.V.(マレー シア) Galp Energia E&P B.V.(ポルトガル) 57.00 8 (加重値:52.714) NO NO NO NO 6 Fieldwood Energy LLC(米) Petrobal S.A.P.I de C.V.(メキシコ) 48.00 0 (加重値:43.200) 65.00 10 (加重値:60.081) NO 74.00 0 (加重値:66.600) NO 7 Talos Energy LLC(米) Sierra Oil & Gas, S. de R.L. de C.V.(メキシコ) Carso Oil & Gas, S.A. de C.V.(メキシコ) Carso Energy, S.A. de C.V.(メキシコ) 46.73 11 (加重値:43.715) 63.84 11 (加重値:59.114) NO NO NO 8 Lukoil Overseas Netherlands B.V.(ロシア) 75.10 0 (加重値:67.590) NO NO NO NO 9 CNOOC International Limited(中) 54.60 0 (加重値:49.140) 50.15 0 (加重値:45.135) NO NO NO 入札者 なし 1 Fieldwood Energy Petrobal S.A.P.I 入札者 なし 1 Eni International 1 Pan American Energy E&P Hidrocarburos y Servicios 2 Lukoil 2 Fieldwood Energy Petrobal S.A.P.I 結果 出所:JOGMEC メキシコ事務所 入札結果(表 8) ・ 5 エリア(9 フィールド)が入札対象で、最低価値は事 前に公表。 ・ PQ 取得会社 1 4 社。9 月 3 0 日にプロポーザルを提出し たのは 9 社(個別 5 社、コンソーシアム 4 グループ) 。 エリア 1,2,4 は落札者あり(計 3 エリア、5 フィールド)。 エリア 3,5 は落札者なし。 エリア 1:Eni International B.V. エリア 2:P a n A m e r i c a n E n e r g y L L C , E & P Hidrocarburos y Servicios, S.A de C.V. エリア 4:F ieldwood Energy LLC, Petrobal S.A.P.I de C.V. 2016.3 Vol.50 No.2 30 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 エリア 1 は Amoca, Miztón, Tecoalli という 3 ブロック から構成される地区で、総面積は 6 8 ㎢。エリア 2 は 〈参考〉入札結果を踏まえた記者概要 Hocki ブロックの 4 2 ㎢。エリア 4 は Pokoch と Ichalkil Zepeda 委員長: の両ブロックから成る区域で、広さは 5 8 ㎢。 今回の入札の結果はとてもよかった。とても満足 エ リ ア 1 は 1 1 月 3 0 日 に メ キ シ コ 政 府 と Eni している。われわれが第 1 の公約としているプロセ International B.V. との契約が成立した。1 0 億米ドル スの透明性は絶対的なものであった。今回の入札に の投資が期待される。 は個別、コンソーシアムを含め 9 社の参加があり、 ・落 札 案 件 に お け る 国 家 の 取 り 分 は、 エ リ ア 1 が 1 5 の有効なオファー、そのうち 3 エリア(入札の 8 3.7 5 %、エリア 2 が 7 0 %、エリア 4 が 7 4 %。ロイヤ 6 0 %)=6 油田(入札の 6 7 %)が落札された。9 油田の ルティ、炭化水素の探鉱・採掘の税金などを付加する 3P 埋蔵量の 7 0 %、2P 埋蔵量の 7 7 %にあたる。 と、 エ リ ア 1:9 0 %、 エ リ ア 2:8 2 %、 エ リ ア 4: 8 4 %が国家の取り分となる。 Melgar CNH 担当次官: ・契 約期間 2 5 年、5 年の延長可の PSC。CNH の承認が 今回の入札プロセスも完全な透明性のなかで行わ 得られれば、開発計画、年間作業計画、予算に変更を れ、結果に大満足である。これにより、2 0 1 8 年に 加えることができる。契約期間に埋蔵量や地質構造の は生産を開始することができる。メキシコにとって 評価期間 2 年を含む。最低作業計画は 4,9 9 0 万~ 9,9 7 0 よいニュースと言える。落札された 3 エリアの油田 万ドル。 の生産は、ピーク時で9万バレル/日を見込んでいる。 「浅海域 (探鉱)の入札」 ・ からの変更点は次の 2 点。 今回の入札で重要な点は、次第に国際的になってき ・コンソーシアムによる応札ルールの柔軟性向上:応札 ており(伊、米 + メキシコ、アルゼンチン)、外国資 した民間企業のなかでオペレーターを務める民間企業 本がメキシコ投資に興味を持っていることを示して は、単独応札者の資格で、当該鉱区とは別の鉱区につ いる。現在の低油価の状況に鑑みるとよいニュース いても応札が認められるようになった。 である。 ・仮に応札したコンソーシアムからオペレーター企業が 脱退した場合に、残ったメンバーが PQ をパスした他 SHCP: の応札者に参画するか、または同じくPQ をパスした新 インターナショナルスタンダードにのっとって入 しいオペレーターの加入を要求できる余地を残した。 札プロセスが進められた。前回同様、各社が提示し た国家へのプロフィットに諸々の税金等が加味され 入札結果の考察 て、 エ リ ア 1:9 0 %、 エ リ ア 2:8 2 % エ リ ア 4: ラウンドワンの浅海域 (生産) の入札結果を受け、メキ 84%が国家の取り分となる計算である。この数値は、 シコ政府は同日、今回の入札は「成功」であり、また 国際的な油価低下の状況にあってよい傾向であると Peña Nieto大統領が推進してきたエネルギー改革が世界 言える。 的にも認知され前進している証しであるとの見解を示し た。入札後の記者会見で、Zepeda 委員長は、 「第 2 次入 Q1:今回の入札の結果は期待していたものか ? 札の成功は、エネルギー改革そのものの成功である」と A1:5 エリア中 3 エリアの落札は素晴らしい結果、 表現し、また同席したエネルギー省の Melgar 炭化水素 担当次官は「原油価格が下落している国際的状況のなか でも、メキシコの資源が投資家たちにとって強い関心を 引き付けていることが証明された」 と述べている。 成功であったと思っている。 Q2:落札された油田での生産コスト幅はどのくら いか ? A2:2 0 米ドル / バレル以下だと予測している。エリ メキシコ政府は、現政権の任期が満了する 2 0 1 8 年に ア 1:3 万 5,0 0 0 バレル / 日、エリア 2:3 万バレ は今回落札された鉱区での生産が開始できると見込んで ル / 日、エリア 4:2 万 5,0 0 0 バレル / 日、合計 9 いる。これら 3 鉱区への総投資額は 3 0 億ドルに及び、 万バレル / 日の生産量、2 0 1 8 年の第 2 四半期に また全体の炭化水素資源生産量は、ピーク時に日量およ 生産開始を予定している。生産のピークは、生 そ 9 万バレルに達すると予想される。 産を開始してから 3 ~ 4 年で達すると見られ、 今回の場合は 3 年後程度と見積もっている。 31 石油・天然ガスレビュー アナリシス Q3:R1-4(ラウンドワンの 4 次入札) 、R1-5(ラウ A7:詳 細な数字は控えたいが、少なくとも今回の ンドワンの 5 次入札) の入札発表はいつか ? 9 万バレル / 日は 2 0 1 8 年に見込まれている(現 A3:現在発表に向けて調整を行っており、R1-4 は 政権内) 。また、R1-3 は成熟油田で早期の生産 秋(言葉を濁して 1 0 月~遅くても 1 1 月初旬)に が期待でき、ファームアウト案件も控えてい 発表できればと思っている。さらに、Pemex る。どれだけの生産増とは言えないが、生産 のファームアウト案件(2.(2)「Pemex の鉱 減にブレーキをかけることができる。 区ファームアウト」参照)も並行して準備中で ある。 Q4:既 に発表されている 5 カ年計画の変更はある (3)陸上油田(生産) 入札説明会 のか ? A4:ア ナウンスしたとおり、フィードバックなど SENERは2015年5月12日、 ライセンス契約 (付録参照) を考慮して調整し、本日 9 月 3 0 日に最終版が によって資源開発を民間資本に開放する方式の初の取り 公表される(1.(3)「油田の探鉱開発の 5 カ年 組みであるラウンドワンの、第 3 次募集となる 2 6 鉱区の 計画(2 0 1 5 ~ 2 0 1 9 年) 」 参照) 。 入札について公示した。総投資額が最初の 5 年間で 6 億 Q5:今 回の入札を踏まえて、R1-3(ラウンドワン 2,0 0 0 万ドルに及ぶ同プロジェクトは、メキシコの石油産 の 3 次入札) の契約書の変更や調整はあるのか ? 業振興に資するものである、と Coldwell エネルギー大臣 A5:公 表されているとおり R1-3 の入札は 1 2 月 1 5 はその意義を語った。これら 2 6 鉱区は、北部の Nuevo 日に行われ、ライセンス契約の変更はない。 Q6:今回の入札は 2 エリアで入札者なし、1 エリア はほぼなしになる寸前であったが ? A6:この手の入札は、世界中どこでも1 0 0 %落札と いうことは起こり得ない。 結果には満足している。 Q7:今 後 R1-3、R1-4 を控えているが、現政権中に どの位の生産増が見込まれるのか ? León(ガス 8 鉱区) 、Tamaulipas(石油 1、ガス 1) 、東部 の Veracruz(石油 6) 、南西部の Tabasco(石油 5)そして 南東部の Chiapas(石油 5)の 5 州に位置する(図10) 。堆 積盆地としては、ブルゴス、タンピコ - ミサントラ、ス レステに位置する。これら 2 6 鉱区のうち、1 7 は石油と その随伴ガスを産出する油田、9 は非随伴ガス鉱床であ り、総埋蔵量は、1 億 8,1 7 5 万バレル(原油換算)と見ら れる。また生産量は、石油が 3 万 6,0 0 0 バレル / 日以上、 出所:CNH 図10 ラウンドワンの陸上(生産)入札のエリア 2016.3 Vol.50 No.2 32 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 ガスが 2 億 2,3 0 0 万立方フィート / 日以上に及ぶと推計 アごとに入札⇒落札者を発表するという流れだった される。 が、その都度、各社の封筒を開封して数字を読み上げ コントラクターが請負人としての立場で開発に参画 るのではなく、スクリーンに一度で結果が掲示され、 し、政府の関与を比較的強く受ける契約形態である PSC その間に各担当者が提出された書類が正しいかどうか であった前回までの二つの入札に対し、今回の第 3 次募 を確認するという方法をとっていた。 集は、特定の鉱区において探鉱・採掘等の権利を付与さ ・表 9 において、Type 1 は 3P 資源量が 1 億バレル未満、 れるライセンス契約である。この契約方式は、8 0 年に Type 2 は 3P 資源量が 1 億バレル以上を指す。Type 1 わたって国家が独占してきたエネルギー部門の開放を の 最 低 作 業 計 画 は 3 5 0 万 ~ 6 7 0 万 ド ル、Type 2 は 謳って 2 0 1 3 年 1 2 月に公布されたエネルギー関連の憲法 3 6 0 万~ 3 8 0 万ドル。 うた 改正に基づく、同分野で初めて実施される契約形態であ ・全 2 5 鉱区の生産量は現在 2,0 0 0 バレル / 日(コンサル る。契約期間は 2 5 年で、状況により 5 年ずつ 2 回までの タント Ernst & Young による) 。追加投資により 3 万 延長が認められる。 5,0 0 0 バレル / 日まで増加可能。なお 2 1 鉱区は資源量 コントラクターは、国家に対価、すなわち、ロイヤル 1 億バレル以下。落札者の多くが、憲法改正後に新設 ティ、所得税等を支払うことで、採掘した炭化水素資源 されたメキシコ法人(Mexican juniors)。 の所有権を得る。また、採掘した炭化水素資源を売却す ・経験や資金などの諸条件をクリアし当日の入札に参加 る機会を得る。これまでラウンドワンの 2 回の入札でも した企業は全部で 4 0 社であり、ほとんどの鉱区が 5 提示された鉱区開発権に加え、この第 3 次では販売権が ~ 1 0 社が参加して競われた。その結果、2 5 鉱区のう 付与される。販売する石油の価格は国際市場価格に基づ ち 1 5 鉱区をメキシコ企業、5 鉱区を国内企業のみで構 き、品質やロジスティック費用、また販売時の需要と供 成されたコンソーシアム、5 鉱区を外国企業とそのコ 給のバランスを考慮して決定される。 ンソーシアムが落札した。主な落札企業はメキシコ企 コントラクターは、開発に要する敷地の占有のために 業とカナダ企業で石油メジャーは落札なし。最も注目 適用法令に基づき、 探鉱または採掘作業を開始する前に、 を受けたのは Topen で 2 2 の入札があった。 あらかじめ土地所有者との間で私人間における合意を取 ・外 国企業では、カナダ Renaissance 社が 5 鉱区中の 3 り付け、かつ、地域環境への影響調査も行った上で、こ 鉱区、オランダ Canamex Dutch 社が率いるコンソー れらについて関係当局の承認を得なければならない(地 シアム(いずれもメキシコ企業の Perfolat de México 域コミュニティーとのコミュニケーション、および当局 社と American Oil Tools 社が参加)が 1 鉱区、米国 に対する効果的な働きかけ) 。他に土地所有者への利益 Roma Energy 社 率 い る コ ン ソ ー シ ア ム( 米 国 GX 配分、農地法の遵守が重要となる。 Geoscience Corporation 社 と メ キ シ コ Tubular 今回の入札に関わるプロジェクトによって、将来的に Technology 社が参加)が 1 鉱区の権利を獲得した。 は直接間接合わせて 6,0 0 0 件の雇用が創出される見込み ・Zepeda 委員長は今回の結果について「非常に満足」と じゅんしゅ である。 評価し、これら鉱区における生産量は、ピークを迎え 2 0 1 5 年 6 月末に北部の Nuevo León 州のガス 8 鉱区の る 2 0 1 8 年には原油換算で日量 7 万 7,0 0 0 バレルとなる うち、Anahuac が除外され、対象鉱区数は 2 5 となった。 見通しだと述べた。また 2 5 鉱区全体で最初の 5 年間 に 6 億 2,0 0 0 万ドルの投資を要し、総投資額は 1 1 億ド 入札結果(表 9) ルに達する見込みである。 Coldwell エ ネ ル ギ ー 大 臣 は、1 2 月 7 日、Mexican Council of Energy(COMENER)に出席し、同月 1 5 日に 入札結果の考察 開かれるラウンドワンの陸上(生産)入札に 5 2 社の応札 第 3 次にあたる今回と、2 0 1 5 年 7 月 1 5 日と 9 月 3 0 日 (3 6 の会社と 1 6 のコンソーシアム)があると見られる、 に実施された 2 回の入札との違いは、前回までが契約事 と発言したが、最終的に入札に参加したのは 4 0 社(個別 業者がメキシコ政府の関与を受けながら請負人として開 2 6 社、1 4 のコンソーシアム) であった。 発に参画する「生産物分与契約」であったのに対し、今回 は「ライセンス契約」となる点である。「ライセンス契約」 ・1 2 月 1 5 日の入札会では、2 5 エリア全てが落札された。 は探査・採掘等の権利を契約者が付与されるもので、そ ・そ の様子は CNH のホームページにおいて生中継され の期間は 2 5 年、状況に応じて 5 年ずつ 2 回まで延長が可 た。大筋では第 1 次、第 2 次と同じように、入札エリ 能。契約者は、採掘した炭化水素資源の所有権を得る条 33 石油・天然ガスレビュー アナリシス 表9 陸上(生産)の入札結果 入札順 エリア番号 / エリア名 1 23 T Y P E 2 7 2 3 4 5 6 7 8 15 16 6 25 BARCODÓN MUNDO NUEVO PARAÍSO CATEDRAL TOPÉN MAYACASTE 10 11 MALVA 18 2 PEÑA BLANCA BENAVIDES-PRIMAVERA 13 9 14 20 RICOS 15 12 MAREÓGRAFO 16 5 17 19 18 19 24 22 20 8 21 21 22 3 23 10 24 4 25 17 FORTUNA NACIONAL CARRETAS PONTÓN TECOLUTLA SECADERO DUNA SAN BERNARDO CALIBRADOR PASO DE ORO Additional Increase percentage in royalty 最低値 the minimum work 最低値 Value(%) program established(%) COMPAÑÍA PETROLERA PERSEUS, S.A. de C.V. メキシコ 2 PERFOLAT de MÉXICO, S.A. de C.V. CANAMEX DUTCH B.V. AMERICAN OIL TOOLS S. de R.L. de C.V. メキシコ オランダ メキシコ 15.19 1 Servicios de Extracción Petrolera Lifting de México, S.A. de C.V. メキシコ 60.82 2 Sánchez-Olium, S. de R.L. de C.V. アメリカ 56.54 1 PERFOLAT de MÉXICO, S.A. de C.V. CANAMEX DUTCH B.V. AMERICAN OIL TOOLS S. de R.L. de C.V. メキシコ オランダ メキシコ 85.69 2 TUBULAR TECHNOLOGY, S.A. de C.V. GX GEOSCIENCE CORPORATION, S. de R.L. de C.V. ROMA ENERGY HOLDINGS, LLC メキシコ アメリカ アメリカ 50.99 1 Diavaz Offshore, S.A.P.I. de C.V. メキシコ 64.5 2 Generadora y Abastecedora de Energía de México, S.A. de C.V. メキシコ 48.1 1 RENAISSANCE OIL CORP. S.A. de C.V. カナダ 80.69 2 Diavaz Offshore, S.A.P.I. de C.V. メキシコ 78.9 1 TUBULAR TECHNOLOGY, S.A. de C.V. GX GEOSCIENCE CORPORATION, S. de R.L. de C.V. ROMA ENERGY HOLDINGS, LLC メキシコ アメリカ アメリカ 35.99 2 GRUPO DIARQCO, S.A. de C.V. メキシコ 12.36 1 Diavaz Offshore, S.A.P.I. de C.V. メキシコ 63.9 2 GRUPO DIARQCO, S.A. de C.V. メキシコ 59.36 1 RENAISSANCE OIL CORP. S.A. de C.V. カナダ 78.79 2 Diavaz Offshore, S.A.P.I. de C.V. メキシコ 76.3 1 GRUPO DIARQCO, S.A. de C.V. メキシコ 60.36 2 TUBULAR TECHNOLOGY, S.A. de C.V. GX GEOSCIENCE CORPORATION, S. de R.L. de C.V. ROMA ENERGY HOLDINGS, LLC メキシコ アメリカ アメリカ 35.89 60.88 1 RENAISSANCE OIL CORP. S.A. de C.V. カナダ 57.39 Servicios de Extracción Petrolera Lifting de México, S.A. de C.V. メキシコ 57.81 1 Strata Campos Maduros, S.A.P.I. de C.V. メキシコ 50.86 2 Diavaz Offshore, S.A.P.I. de C.V. メキシコ 49.5 1 Sistemas Integrales de Compresión, S.A. de C.V. Nuvoil, S.A. de C.V. Constructora Marusa, S.A. de C.V. メキシコ 40.07 2 Servicios PJP4 de México, S.A. de C.V. メキシコ 29.41 1 COMPAÑÍA PETROLERA PERSEUS, S.A. de C.V. メキシコ 36.88 2 TUBULAR TECHNOLOGY, S.A. de C.V. GX GEOSCIENCE CORPORATION, S. de R.L. de C.V. ROMA ENERGY HOLDINGS, LLC メキシコ アメリカ アメリカ 12.97 1 Strata Campos Maduros, S.A.P.I. de C.V. メキシコ 41.5 2 STEEL SERV S.A. de C.V. Constructora Hostotipaquillo, S.A. de C.V. Desarrollo de Tecnología y Servicios Integrales, S.A. de C.V. Mercado de Arenas Sílicas S.A. de C.V. メキシコ 12.36 1 Consorcio Manufacturero Mexicano, S.A. de C.V. メキシコ 34.25 2 NUVOIL, S.A. de C.V. Sistemas Integrales de Compresión, S.A. de C.V. Constructora Marusa, S.A. de C.V. メキシコ 33.47 1 Strata Campos Maduros, S.A.P.I. de C.V. メキシコ 50.86 メキシコ 30.11 2 Iberoamericana de Hidrocarburos, S.A. de C.V. 1 GEO ESTRATOS MXOIL EXPLORACIÓN Y PRODUCCIÓN, S.A.P.I. de C.V. Geo Estratos, S.A. de C.V. 2 RENAISSANCE OIL CORP. S.A. de C.V. 1 GEO ESTRATOS MXOIL EXPLORACIÓN Y PRODUCCIÓN, S.A.P.I. de C.V. Geo Estratos, S.A. de C.V. メキシコ 68.4 2 TONALLI ENERGÍA S.A.P.I. de C.V. メキシコ 31.22 メキシコ 60.74 カナダ 59.09 メキシコ 61.5 カナダ 21.39 1 Grupo R Exploración y Producción, S.A. de C.V. Constructora y Arrendadora México, S.A. de C.V. 2 RENAISSANCE OIL CORP. S.A. de C.V. 1 CONSTRUCCIONES Y SERVICIOS INDUSTRIALES GLOBALES, S.A. de C.V. メキシコ 20.08 2 SARREAL, S.A. de C.V. メキシコ 9.28 1 SARREAL, S.A. de C.V. メキシコ 10.56 2 GEO ESTRATOS MXOIL EXPLORACIÓN Y PRODUCCIÓN, S.A.P.I. de C.V. Geo Estratos, S.A. de C.V. メキシコ 11 1 Consorcio Manufacturero Mexicano, S.A. de C.V. メキシコ 41.77 2 GPA ENERGY, S.A. de C.V. メキシコ 12.07 1 GEO ESTRATOS MXOIL EXPLORACIÓN Y PRODUCCIÓN, S.A.P.I. de C.V. Geo Estratos, S.A. de C.V. メキシコ 66.3 2 Desarrolladora Oleum, S.A. de C.V. INGENIERÍA, CONSTRUCCIONES Y EQUIPOS CONEQUIPOS ING. LTDA. INDUSTRIAL CONSULTING S.A.S. MARAT INTERNATIONAL S.A. de C.V. CONSTRUCTORA TZAULAN, S.A. de C.V. メキシコ コロンビア コロンビア メキシコ 29.69 2.5 0 99 100 メキシコ 81.36 GRUPO DIARQCO, S.A. de C.V. 2 Desarrolladora Oleum, S.A. de C.V. INGENIERÍA, CONSTRUCCIONES Y EQUIPOS CONEQUIPOS ING. LTDA. INDUSTRIAL CONSULTING S.A.S. MARAT INTERNATIONAL S.A. de C.V. CONSTRUCTORA TZAULAN, S.A. de C.V. メキシコ コロンビア コロンビア メキシコ 32.7 1 GEO ESTRATOS MXOIL EXPLORACIÓN Y PRODUCCIÓN, S.A.P.I. de C.V. Geo Estratos, S.A. de C.V. メキシコ 67.61 2 Servicios de Extracción Petrolera Lifting de México, S.A. de C.V. メキシコ 10.2 0 3 0 14 0 10 0 11 0 17 0 2 0 11 0 23 0 5 0 7 0 9 0 8 0 5 0 4 0 7 0 7 0 5 0 3 0 7 0 2 0 5 0 5 0 2 0 5 0 2 0 100 1 10 10 100 70 25 100 100 0 1 10 0 89 25 100 0 10 4 5 2.5 100 100 36 100 0 75 100 100 1 100 100 3 15 100 4 1 1 76 100 100 100 50 1 100 0 1 100 25 3 88 80 80 1 3 10 100 35 100 1 1 入札数 100 5 5 2 LA LAJA CALICANTO 国 1 MOLOACÁN 13 12 1 1 CUICHAPA-PTE 9 11 T Y P E 14 TAJÓN 落札会社 1 18 5 1 1 30 4 出所:JOGMEC メキシコ事務所 2016.3 Vol.50 No.2 34 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 件として、総収入の 1 ~ 1 0 %に相当するロイヤルティ センス契約 ▷入札ガイドラインの吟味(入札条件、技術・財務的 や所得税等を対価として国家に支払う。 また、今回は 1 0 0 %落札された点で前 2 回とは大きな 要件)。アンケート調査や専門家への意見聴取。 差がある。浅海域 (探査) の採掘権に関する入札となった ▷最低価値の適正化 第 1 次では落札希望者がなかったか金額面での調整が付 ・2 0 1 8 年に 5 0 万バレル / 日、2 0 2 5 年に 1 0 0 万バレル / かなかったため、募集された全 1 4 鉱区のうち契約が成 日の増産目標。 立したのは僅か 2 鉱区であった。さらに、政府が「成功」 と評した第 2 次でも落札されたのは全 5 鉱区中 3 鉱区で 入札説明会 あり、これら 2 回の平均落札率は 2 6 %となる。このよ 2 0 1 5 年 1 2 月 1 6 日に放送された CNH のセッションの う な 前 例 を 踏 ま え 入 札 前 日 の 2 0 1 5 年 1 2 月 1 4 日、 なかで、大水深(CNH-R-L0 4/2 0 1 5)の入札を承認。1 2 Coldwell エ ネ ル ギ ー 大 臣 は、 第 3 次 は 全 体 の 2 0 ~ 月 1 7 日の官報で公示され、入札ベースはその後に公表 25%、 すなわち5件程度の契約が成立すれば 「素晴らしい」 されるとのことだが、Zepeda 委員長の会話から拾えた との認識を示していた。そのため Peña Nieto 大統領は、 情報は下記のとおり。 最終結果が出るや「専門家らの予想を上回る成功」であ り、 「国際的な石油価格下落という状況下にありながら、 わが国とその将来のエネルギー産業に対し、企業が信頼 ・こ れ ま で ど お り 3 フ ェ ー ズ(1. デ ー タ 室 ア ク セ ス ⇒ 2.PQ ⇒ 3. プレゼンテーション & 入札)で行われる。 を示す結果となった」というコメントをツイッター上で ・そのなかには以下の 7 ステップが含まれる。 発表した。 1. 官報で公示、入札ベース公表 しかし、表 5 に示したとおり、ここまでの落札によっ 2. データ室へのアクセス、支払い て期待される増油量は日量 1 7 万バレル弱で、図 4 に示 3. PQ に向けた入札登録 した、SENER が 2 0 1 5 年初に公表した原油の生産予測 4. PQ の実現は難しいと言わざるを得ない状況にある。 5. プレゼンテーション、入札 6. 落札 (4) 大水深 (探鉱) 7. 契約登録 石油会社の関心はメキシコ湾の大水深に向きそうであ ・1 0 エリア:4 エリアは Perdido 地域(軽質油)、6 エリ る。油埋蔵の可能性はかなりの有望性を持つが、メキシ アはメキシコ湾南部(Cuenca de Salina:5 軽質油、1 コ側は(米国側に比べ)未探鉱に近い。2 0 1 0 年以降、試 ガス)(図 1 2) 。 掘 井 L a b a y - 1、T r i o n - 1、 Kunah-1 と Maximino-1 に お いて、油やガスが発見された ( 表 2) 。Perdido エ リ ア、 メ キ シ コ 隆 起 部(Mexican Ridge)、 カ ン ペ チ ェ 深 海 盆 地に広がる 2 8 の大水深のブ ロッ ク で は、 石 油 換算で計 4 8 億バレルの推定資源量の 可能性が指摘されている。 ・SENER と CNH は、 高 額、 高リスクの民間企業負担に 係る以下の課題を検討中。 ▷経済的にメリットの大き い鉱区の設定 ▷鉱区の特性にとって最適 な契約形態の選択:ライ 35 石油・天然ガスレビュー 出所:CNH 図11 大水深(探鉱)入札のスケジュール アナリシス ・データ室アクセス料は 3,8 5 0 万ペソ (約 2 億 3,0 0 0 万円) ・ノンオペレーター: 少なくとも 2 億 5,0 0 0 万ドルの資本金を有すること。 〈スケジュール〉(図 1 1) ・データ室アクセス申請:2 0 1 6 年 1 月 6 日~ 4 月 1 5 日 〈入札エリア〉 ・データ室アクセス期間:2 0 1 6 年 1 月 6 日~ 1 2 月 2 日 http://ronda1.gob.mx/?page_id=1 5 8 9 4 ・PQ 受付期間:2 0 1 6 年 6 月 1 4 日~ 7 月 1 日 ・Perdido:4 カ所 ・PQ リストの発表:2 0 1 6 年 8 月 2 4 日 ・Cuenca de Salina:6 カ所(サイスミックは、エリア 6 以外 1 0 0 %取得済み) ・入札日:2 0 1 6 年 1 2 月 5 日 〈入札参加の条件〉 〈契約〉 ・契約期間は、3 5 ~ 5 0 年(フェーズは表 1 0 のとおり) 。 ・オペレーター: 1. 2 0 1 1 ~ 2 0 1 5 年の間に、最低 1 件のプロジェクト (水 深 1,0 0 0m 以上) のオペレーター経験を有すること。 2. 少 なくとも、合計で 2 0 億ドルの投資経験を有する こと。 〈Coldwell エネルギー大臣〉 ・油 価 が 大 幅 に 低 下 し て い る 現 状 で、 先 日 行 わ れ た R1-0 3 の入札が 2 5 カ所全て落札され、大成功であった。 3. 過去 5 年間における産業安全と環境保護の経験を証 明すること。 ・R1-0 3 の入札でも見られたように、国内企業の後押し の役割を果たし、投資増大、生産量向上が期待される。 4. a.少なくとも20億ドルの資本金を有する、 もしくは、 b. 少なくとも 1 0 0 億ドルの総資産を有し、なおかつ、 Fitch、Moody’s、Standard & Poors の格付け機関 ・芽が出るのは、Peña Nieto 政権のその後になるが、わ ま れわれは今その種を蒔いている。 ・入札プロセスは、透明性、確実性、公平性を守っている。 からの格付けを受けていること。 出所:CNH 図12 ラウンドワンの大水深(探鉱)入札エリア 2016.3 Vol.50 No.2 36 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 〈Melgar CNH 担当次官〉 ・R1-0 1 発表時と油価の状況 が大きく変わっている。 ・大水深のエリア選定におい て は、 業 界 か ら の 強 い 表10 大水深探鉱の段階別期間とナショナルコンテンツ(注) 探鉱 評価 開発 4 ~ 10 年 最初は 4 年 ・延長(1 回目) :3 年 ・延長(2 回目) :3 年 ~3年 最大で 3 年 22 年~ 承認から 22 年 ・5 年、もしくは 10 年の延長可 フィードバック(当初の区 ナショナルコンテンツ(図13) 画が興味のあるブロックか ↓ ↓ ↓ ら外れている)があった結 3% 初期 6% 1 回目の延長 8% 2 回目の延長 発見があった場合、開発フェーズの 段階で決定する 4% 生産開始時 10% 生産開始後 果、現在のようになった。 ・地 下 に 埋 蔵 す る 炭 化 水 素 (注)ナショナルコンテンツ:メキシコ企業の活用およびメキシコ産物資の調達 出所:CNH は、国の所有物である。 ・最 低 作 業 計 画(MWP: Minimum Work Program) は未定。 入札申請状況 2 0 1 6 年 2 月2 6日時点 ・データ室へのアクセス許可: 1 0 社(C h e v r o n、S h e l l、 Total、Hess、NBL、Statoil、 Atlantic Rim、ExxonMobil、 BHP Billiton、BP) ・ P Q 手 続 き 開 始:9 社 (Chevron、Shell、Total、 Hess、Statoil、Atlantic 年 (注)SW:Shallow Water(浅海域) 出所:CNH 図13 ナショナルコンテンツ(%)と契約期間(年)の関係 Rim、ExxonMobil、BP、 BHP Billiton) 発言あり。第 5 次入札のガイドラインは 2 0 1 6 年 3 月に (5) 重質油と非在来型資源 2 0 1 5 年 1 2 月 1 6 日に、Coldwell エネルギー大臣のラ ウンドワンの第 5 次入札(非在来、超重質油)についての も出され、2 0 1 6 年 8 ~ 9 月に結果がでるだろう、との こと。2017年第1四半期まで結果が出ない4次入札(3.(4) 「大水深〈探鉱〉」)より早いと予想される。 4. 油価下落下のメキシコの石油開発活動の行方 ①メキシコは現在世界の石油生産国のベストテンに入っ 減であった。その 7 3 %である 9 6 億バレルは重質油を ている。しかし、原油生産は 2 0 0 5 年以降減退傾向に 中心とする原油で、NGL(天然ガス液)とコンデンセー あり、 2 0 1 4 年平均では日量 2 4 0 万バレルにまで下がっ トは 1 1 億バレル、天然ガスは 1 2 兆 3,0 0 0 億立方フィー た。ネットでは原油輸出国であるとはいえ、石油製品 ト(石油換算で 2 0 億 5,0 0 0 万バレル)だった。 では輸入国であり、そのほとんどは米国から輸入され 原油生産の 2 3 %が陸上から生産され、残りが浅海 ている(付録参照) 。メキシコの SENER によると、 域から生産されている。現在の生産量の約 3 分の 2 は、 2 0 1 4 年 1 2 月末時点の石油・天然ガスの残存確認可採 ベラクルス、タバスコとカンペチェ州沖合のカンペ 埋蔵量は石油換算で 1 3 2 億バレルとなり、前年比 3 % チェ湾の油田群から産出されている。主な生産は、湾 37 石油・天然ガスレビュー アナリシス の 北 東 部 に 位 置 す る Cantarell 油 田 群 と Ku-Maloob- フォード - アグアヌエバ層と上部ジュラ紀のピミエン Zaap(KMZ)油田群という、二つの隣接した油田群で タ-ラカシタ層となる。しかし、非在来型資源の探鉱 (最 ある。Cantarell 油田群が減退するなかで、KMZ 油田 初の井戸は 2 0 1 0 年後半に掘削)は、これまでの米国に 群からの油生産は 2 0 1 5 年 4 月に日量 8 5 万 5,0 0 0 バレ おけるシェール開発ブームの成功に倣ったものまでに ルに達した。Pemex は産出量を増やすべく、採油増 至っていない。加えて、掘削許可、契約、環境、地権 進の対策を採っている。 者に係る問題が、シェール層開発活動の妨げとなろう。 ② SENER 発 表 の 探 鉱・ 採 掘 の 5 カ 年 計 画:2 0 1 5 ~ ⑤ Peña Nieto 大統領の任命を受けて、2 0 1 6 年 2 月第 1 2 0 1 9 年(2 0 1 5 年 1 0 月 2 2 日)に定められた探鉱採掘事 週 に Pemex の 新 総 裁 に 就 任 し た ば か り の José 業の入札ラウンドを行い、可能な限り多くの潜在的な Antonio González Anaya 氏 が 2 月 9 日、 ラ ジ オ 局 投資家を誘致し、原油生産の増量とそれに連動した雇 Radio Fórmula の取材に応じ、Pemex の経費削減の必 用 の 創 出 が メ キ シ コ 政 府 の 目 標 で あ る。SENER、 要性に言及した。このなかで新総裁は、Pemex の経 SHCP、CNH の主導により、入札手続きは進められて 営状態は「非常に厳しい」が「惨憺たる状態」という程で いる。メキシコのエネルギー改革は、石油・天然ガス はなく、必ずしも人員削減という方法を選択しなけれ の探鉱・採掘事業といった上流プロジェクトの民間企 ばならないわけではない、と強調した。また 2 月 1 7 日、 業への開放にとどまらず、中下流のプロジェクトおよ メキシコ政府は同国 GDP の 0.7% に相当する 1,3 2 3 億 び電力事業を含むエネルギー産業全般の民間セクター ペソ(約 7 9 億ドル、1 ペソ= 0.0 6 ドルで換算)の歳出 への開放を意味する。 削減案を打ち出した。内訳は、政府支出を 3 2 3 億ペソ ③ラウンドゼロ(Pemex への、メキシコの確認および推 さんたん (約 1 9 億ドル) 、Pemex の支出を 1,0 0 0 億ペソ(約 6 0 定〈2P〉埋蔵量の 8 3 %の割り当て)の後、メキシコ政府 億 ド ル )、 そ れ ぞ れ 削 減 す る。2 0 1 5 年 1 ~ 9 月 に、 はラウンドワンにその注力をシフトした。 最高 1 6 9 鉱 Pemex の純損失は、世界的な原油価格下落の影響も 区(探鉱のための 1 0 9 鉱区と生産のための 6 0 鉱区)が対 あり、2 0 1 4 年同期比で 1 3 8.4% 増えて 2 0 7 億 4,5 0 0 万 象になる。浅海探鉱入札ラウンドはラウンドワンの第 ドルを記録した。また、資金力や技術力の限界から新 1 段階であった。第 2 段階のラウンドの浅海生産入札は 規油田を発見できず、原油産出量は 2 0 0 4 年以降減少 Sureste 盆地の九つの生産ブロックを五つの契約エリア を続けている。 に分類した。第 3 段階のラウンドは陸上成熟油田の入 ⑥総じて、超重質油、大水深、チコンテペックエリア、 札となり、ブルゴス、タンピコ - ミサントラ、スレステ 非在来型資源が眠るエリアは、2 0 1 4 年半ばからの原 盆地の 2 5 鉱区が対象となった。ラウンドワンは第 3 次 油価格下落傾向のなかで苦戦を強いられよう。しかし、 入札 (陸上成熟油田) まで終了した。 2 0 1 5 年メキシコ政府は、油価を 7 6.4 0 ドル / バレルに 第 3 次入札までの結果を見ると、2 0 1 6 年 1 月末時点 セットした石油ヘッジプログラム(2014年に7億7,300 での増油量は日量 1 7 万バレル弱である。図 4 に示した 万 ド ル 支 払 い、2 0 1 4 年 1 2 月 1 日 ~ 2 0 1 5 年 1 1 月 3 0 SENER による原油の生産予測の実現は難しいと言わ 日までの原油取引のうち 2 億 2,8 0 0 万バレルが対象)に ざるを得ない。原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワ より、2 0 1 5 年 1 2 月に 6 2 億 8,4 0 0 万ドル受け取った。 ンの進捗に与える影響は大きい。 また、メキシコ原油が 2 7 ドル / バレルで取引される ④今後の入札を通じて、メキシコの石油・天然ガス開発 プロジェクトに投資する機会が創出される見込みであ る。2015年10月に公表された5カ年計画では、さらに、 現状では、2 0 1 5 年の在外労働者の送金は石油収入を 上回る見込みである。 ⑦また、国立統計地理情報院(INEGI)が 2 0 1 5 年 1 2 月 ラウンドツー、ラウンドスリー、ラウンドフォーと三 2 3 日付コミュニケで報告したところによると、同年 件の入札ラウンドが計画されている。とりわけ、非在 1 0 月のメキシコ経済活動指数は前 2 0 1 4 年同月比で 来型資源に関して、2 0 1 1 年 4 月に米国エネルギー省 2.7 %上昇した。第 3 次産業が 3.8 %、第 1 次が 3.6 %、 (DOE)エネルギー情報局(EIA:Energy Information 第 2 次が 1 %という伸びである。メキシコの GDP 成長 Administration)はメキシコのシェールガスとシェー 率は 2 0 1 0 年以降 4 ~ 5 %台で推移してきたが、2 0 1 3 ルオイルの技術的回収可能量をそれぞれ 5 4 5 兆立方 年には1.4%と大きく落ち込んだ。翌2014年には2.1% フィートと 1 3 0 億バレルと推定したので、期待が高ま と再び上昇、2 0 1 5 年は 2 ~ 2.8 %程度になると政府 る。賦存エリアはブルゴスとタンピコ - ミサントラ盆 は予測している。また、SHCP によれば、2 0 1 3 年の 地となる。主な対象層は、上部白亜紀のイーグル・ GDP成長率は2.5 ~ 3%で、2018年のGDP成長率は4.4 2016.3 Vol.50 No.2 38 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 ~ 4.9 %と予測している。その上昇の内訳は労働改革 を抱えつつも、経済全体の調子は良好そうである。 +0.1 %、通信改革 +0.5 %、エネルギー改革 +1 %、財 ⑧よって、エネルギー革命の成功を目指し、メキシコ政 政改革 +0.3 %であり、経済成長をエネルギー改革だ 府と Pemex の石油開発活動への取り組みは慎重に進 けに頼っていない。自動車産業の好調もその牽引役 行中と見る。 であろう。経済(油価下落)・治安(麻薬取引)に不安 【参考資料】 1. JOGMEC 石油・天然ガス資源情報「メキシコ:原油価格下落の既存油田の生産、鉱区公開方針等の石油政策に対す る影響」 、2 0 1 5 年 3 月1 6日、伊原賢 2. JOGMEC 石油・天然ガス資源情報「メキシコ:原油価格の下落下における鉱区公開ラウンドワンの進捗」 、2 0 1 5 年 7 月 2 3日、伊原賢 3. 2 0 1 5 年度第 5 回 JOGMEC 海外石油天然ガス動向ブリーフィング「メキシコ:原油価格の下落下における鉱区公開 ラウンドワンの進捗」 、2 0 1 5 年 8 月 2 0日、伊原賢 4. 石油開発時報 No. 1 8 7「メキシコの石油天然ガスプロジェクトの最近の動向について」 、2 0 1 5 年 1 1 月号、Juan Carlos Serra ほか 5. 2 0 1 5 年度第 8 回 JOGMEC 海外石油天然ガス動向ブリーフィング「メキシコにおけるエネルギー改革の進展 – Round One の進捗状況」 、2 0 1 5 年 1 1 月1 9日、縄田俊之 《付録》 :用語説明ほか ●メキシコの石油・天然ガス概況 (表 1 1) 〈石油〉 ・生産量:日量 2 7 8 万 4,0 0 0 バレル(天然ガス液を含む)(世界第 1 0 位)。残存確認可採埋蔵量:1 1 1 億バレル(世 界第 1 8 位)。消費量:同 1 9 4 万 1,0 0 0 バレル (世界第 1 1 位) (2 0 1 4 年末、BP 統計 2 0 1 5 年 6 月) 。 ・日量 1 2 9 万バレルを輸出(原油 1 1 3 万 5,0 0 0、製品 1 5 万 5,0 0 0) 。そのうち同 8 4 万 2,0 0 0 バレルが米国向け。日本 への輸出はイスムス原油がスポットとして同 7,0 0 0 バレル (2 0 1 4 年) 。2 0 0 3 ~ 2 0 0 6 年は同約 2 1 0 万バレルの輸出 量があったが、その後、減少傾向にある。メキシコの原油生産日量 2 3 6 万バレル @2 0 1 4 年 1 0 月、2 万 7,0 0 0 バレ ル /日の減退。同月輸出量日量 1 4 0 万バレル(図14) 。最大の輸出先で 千バレル/日 あった米国でシェール革命が起こり、 同国向け原油輸出量は 2 0 0 7 年比で 4 割減。米国市場の喪失で総輸出量も 同年比 3 2 %減(原油生産量は同年比 2004年 がピーク 1 7 %減) 。アジア市場の開拓が急務。 ・投資の失敗:カンタレルを含む生産 回復に2008 ~ 2012年に700億ドル、 チコンテペック 1 3 0 億ドル、大水深 での油発見には 2 3 回目で成功。 ・ 2 0 1 6 年から Pemex 以外の石油製品 年 販売開始、2 0 1 8 年までにガソリン・ 軽油価格のメキシコ政府統制は終了 予定。 ・ 2 0 1 6 年 2 月 Peña Nieto 大 統 領 は、 39 石油・天然ガスレビュー 出所:Pemex 資料より作成 図14 原油生産量と輸出量の推移 アナリシス ガソリン・ディーゼルの輸出は、同年 4 月 1 日より解禁すると発言。 〈天然ガス〉 ・生産量:年 5 8 1 億㎥(2 兆 5 1 8 億立方フィート、世界第 1 3 位) 。残存確認可採埋蔵量:3,4 8 3 億㎥(1 2 兆 3,0 0 0 億立方フィート、世界第 3 3 位) 。消費量:年 8 5 8 億㎥(3 兆 3 0 0 億立方フィート、世界第 9 位)(2 0 1 4 年末、 BP 統計 2 0 1 5 年 6 月) (図 1 5) 。 ・米国から年205億㎥ (7,240億立方フィート) をパイプラインで輸入している。LNGでも年93億㎥ (3,280億立方フィー ト) をペルー、カタール、ナイジェリア、インドネシア、トリニダード・トバゴ、ノルウェーから輸入 (2 0 1 4 年) 。 ・パイプライン網を拡充中 。 (メキシコ国内で天然ガス需給のミスマッチ解消、メキシコ電力公社 CFE との関係) ・シ ェール革命による北米の供給過剰感からアジアへの輸出解禁が進む。メキシコも地理的優位性を生かし、 LNG/LPG 輸出計画あり (2 0 1 4 年 1 1 月 1 0 日の Pemex DAY で Pemex の Lozoya 総裁〈当時〉発言)。 〈新規油ガス田の発見〉 ・ Pemex が新規鉱床の発見を公表(Pemex、2 0 1 5 年 1 2 月 1 4 日)。Pemex が 2 0 1 5 年第 2 四半期に浅海域で新たに 二つの鉱床を発見していたことを 8 日、同社 CEO の Emilio Lozoya(当時)が明らかにした。これは、中部 Hidalgo 州 Tula 市の Miguel Hidalgo 製油所で開催された式典で公表され 十億立方フィート/日 た。 浅 海 域 で 発 見 さ れ た の は Teocalli と Japsol と 呼 ば れ る 2 鉱 床 で、これらにおける 3P(確認、推定、 予想の各埋蔵量の合計)は原油に換 算して 1 億 8,0 0 0 万バレル相当。日 量約 4 万バレルの石油と 2,5 0 0 万立 方フィート(7 1 万㎥)の天然ガス生 産が見込まれる。また、深海域の Perdido 鉱区とメキシコ湾の Hem-1 年 鉱区で、いずれも原油換算で、1 億 5,0 0 0 万~ 1 億 7,0 0 0 万バレル相当、 1 億 5,4 0 0 万バレル相当の埋蔵資源 出所:Pemex 資料より作成 図15 天然ガス生産量と国内販売量の推移 発見も発表された。 表11 メキシコエネルギー産業の変遷データ 同生産量(百万立方フィート/日) 同輸入量(百万立方フィート/日) 4,576 4,467 5,667 4,524 1,143(20.2%) 7,905 5,762 2,143(20.2%) 同生産量(万バレル/日) 同輸入量(万バレル/日、米国から) 石油化学製品消費量(億ドル/年) 同生産量(億ドル/年) 同輸入量(億ドル/年) (注)原油生産量の減少、天然ガスの輸入量増大の他、ガソリンや石油化学製品の輸入量増大という課題も抱える。 出所:CNH, SENER 2016.3 Vol.50 No.2 40 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 Pemex は 2 0 1 5 年 6 月にも浅海域で合わせて原油 3 億 5,0 0 0 万バレル相当を埋蔵する四つの鉱床発見について発表 している。これらの発見により、2 0 1 5 年に Pemex は原油 1 0 億バレル相当以上の炭化水素資源を新たに保有するこ ととなった。このうち 6 0 %は浅海域、3 5 %は深海域、残りの 5 %は陸上油田に埋蔵されている。世界的な石油価格 低迷により炭化水素資源関連の企業が困難な状況にあるなか、Pemex は今後も投資力を高めることを目的に、2 0 1 6 年にはこれまで以上に生産性を高め、さらなる埋蔵量の獲得、生産コストの削減に向け取り組んでいくと語った。 ・ Pemex は Sureste 盆地オフショア Reforma-Akal Fold Belt、AE-0 0 2 1 鉱区において試掘井 Jaatsul 1 ST2 によ り Upper Jurassic Kimmeridgian Formation 油ガス貯留層を発見したと発表した。流量 1,0 0 0 バレル / 日と 2 0 0 万立方フィート / 日が IP テストで得られ、3P 埋蔵量は石油換算で 1 億 2,0 0 0 万バレル程度と推定された。同試 掘井は AE-0 0 2 1 鉱区の中心部、Uech、Ichalkil 油ガス田の中間に位置する(Pemex、2 0 1 5 年 1 2 月 2 1 日)。 〈主管省庁〉 ・ Pemex は、どう変貌を遂げるか ? 2 0 1 4 年 1 1 月に組織変更を発表:4 部門(上流 /PEP、精製 /Refining、石化 /Petrochemicals、ガス /PGBP:図 1 6) から 2 部門(上流、下流 /Industrial Transformation)へ。5 ビジネスユニッ ト:掘削、輸送、コージェネレーション、肥料、エチレン。これまでの「公僕」から成果至上主義へ。調達シス テムの簡素化、税負担の軽減。 〈石油開発政策〉 ・憲法には 1 9 3 8 年から石油・天然ガス資源の国有化が明記されていた。Pemex とその子会社が炭化水素資源産 業を独占し、石油・天然ガス等の探鉱・開発、精製、販売を行う権利を有している(石油利権を与えられた見 返りに、Pemex は政府に対し、その利権収益の 1 0 ~ 3 5 %をロイヤルティとして支払う)。 ・しかし、Pemex 自身の技術力・操業能力・財務力の不足等が課題であったため、生産拡大を目指し、Pemex は非随伴天然ガスの生産事業に限って、民間企業が既発見ガス田の生産事業を請け負い、Pemex が対価を支払 うという MSC(Multiple Service Contract)を 2 0 0 3 年に導入した(これはサービス契約のパッケージ化であり、 上流権益自体は付与されない) 。 ・ 2 0 1 4 年から始まったエネルギー改革では、石油開発の会計制度も変更になる予定で、これまで政府が石油収 入の約 7 0 %を徴収していたのに対して、新制度の下では、ロイヤルティや法人税といった費目で国際的な慣 習に沿った、政府への税納付が行われる見込みである。生産原油の所有については、サービス・利益分与契約 が国家に帰属。生産分与・ライセンス契約においては、契約の内容により石油会社への帰属となるが、埋蔵原 油の所有については国家への帰属は変わらない。新しい組織体制の下では、新しい組織の設立と新しい役割が 出所:JOGMEC 資料より作成 図16 SENER とその傘下の委員会および公社 41 石油・天然ガスレビュー アナリシス 付与される。 ・ SENER は、案件ごとにサービス契約や PSC など外資導入形態のデザインを行う。CNH は地質情報等の技術情 報の取りまとめ、入札の実施や契約の署名、契約の管理を行う。SHCP は会計条件を設計し、サービス契約や 利益分与契約の場合には国が市場のマーケティングをサポートする。石油開発による政府の収入、契約への対 価支払い等は石油基金が執り行う。 ・エネルギー改革の最大の障害とされた資源ナショナリズムは、2 0 1 4 年に既に克服(2 0 1 4 年 8 月 6 日に 2 1 の関 連法成立) 。Peña Nieto 現政権は国民の支持を得ながら、段階的にこの改革を前進させた。上下両院で過半数 の議席を下回る与党制度的革命党 (PRI) は、2 0 1 5 年 6 月の中間選挙(下院全議席:与党 PRI が安定多数を獲得) 、 2 0 1 8 年夏の大統領・上下両院選挙に向け、国民にエネルギー改革による経済効果を示すための財源確保に課 題あり。 ● Pemex 会社概要 ①概要 設立年月日 1938年 本社 メキシコ合衆国 メキシコ・シティ 最高経営責任者 (CEO) José Antonio González Anaya 総裁 メキシコの国営石油会社 ②沿革 / 経営 メキシコは 1 9 3 8 年の油田国有化宣言以降、国営石油会社 Pemex が国内で民間企業と共同で事業を行うこと を禁じてきた。しかし、採掘技術や資金の流動メカニズムを向上させるために民間企業と手を組むことは世界 的に行われており、Pemex はそれができない唯一の石油会社であった。 近年のメキシコにとって最大の課題であったエネルギー改革に向けた憲法の部分改正(エネルギー改革法) は、2 0 1 3 年 1 2 月 2 0 日に Peña Nieto 大統領によって公布され、メキシコでの石油開発事業への外資の参入機 会が開かれることになった。 エネルギー改革法には潜在的なリスクもあろう。例えば、Pemex の下流部門とメキシコ電力公社(CFE)との す 棲み分けがはっきりしない。どちらも発電に前向きだからだ。また、国営会社に対するメキシコ政府の関与が 薄まり過ぎるのではないかとの懸念がある。各社の格付けは、キャッシュを政府に吸い上げられている代わり に政府の後楯がある、という見立てで付けられているものだ。国内の燃料価格政策(例えば、資源への競争が 働かなければ、ガソリン価格への補助金削除はメキシコ国民にとってガソリン価格の上昇となる) 、PSC、ほ かの国の契約条件との比較、政府の意向(Pemex と CFE のトップは政府が任命)にリスクがあろう。Pemex の 役員会議長はエネルギー大臣が務める。人材の不足もあろう。 ③投資戦略 / 活動 外資を導入するための具体策としての石油法や Pemex 法を含む 2 次法制は、2 0 1 4 年 8 月 1 1 日にほぼ原案ど おり成立。同年8月13日には、 Pemexが引き続き開発を行う鉱区(ラウンドゼロ)と一般競争入札(ラウンドワン) の対象鉱区が明らかになった。ラウンドワンの第 1 弾となった「浅海探鉱」は 2 0 1 5 年 7 月 1 5 日に入札となり、 外資の参入機会が具体化した。 2 0 1 6 年から Pemex 以外の石油製品販売開始、2 0 1 8 年までにガソリン・軽油価格の政府統制は終了予定。 ④埋蔵量・生産量と目標・見通し SENER が 2 0 1 5 年初に公表した原油の生産予測からは、既存油田からの生産量は 2 0 2 0 年までに 1 3 %減少す る見通し(原油生産量〈NGL/ 天然ガス液を除く〉 :2 0 1 5 年日量 2 4 0 万バレル → 2 0 2 0 年同 2 1 0 万バレル)。 日量 2 4 0 万バレルを現状維持するとしても、僅か 5 年で、新規油田開発の成果を上げる必要がある。2 0 2 8 年の 生産目標を同 3 5 0 万バレルとすれば、既存油田からの生産とのギャップは同 2 0 0 万バレルにもなる。ラウンド ゼロとラウンドワンの進捗状況に鑑みれば、目標達成には黄色信号がともる。 2016.3 Vol.50 No.2 42 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 ⑤わが国企業との共同プロジェクト 2 0 0 3 年 7 月に実施された MSC の第 1 次ラウンド入札において、帝国石油(現・INPEX)が Petrobras 等とブル ゴス地域の 2 鉱区 (クエルビト、 フロンテリソの 2 鉱区)を落札した。現在も INPEX が開発・生産操業事業に参画。 三井物産は、2 0 1 3 年 7 月に米国アリゾナ州において、米国の天然ガスをメキシコへ輸出するためのパイプラ イン事業に出資参画することで、 米国パイプライン運営最大手 Kinder Morgan および Pemex と合意。本事業は、 米国アリゾナ州ツーソンの既存の基幹パイプラインからメキシコ国境のササベまで約 1 0 0 ㎞の天然ガスパイプ ラインを新規に敷設し運営するもの。2 0 1 3 年 4 月に Pemex との間でエネルギー関連事業の協調に関する MOU を締結していたが、エネルギー改革に関する憲法改正を機に、2 0 1 4 年 5 月に Pemex と同国での石油・ガスの 上流開発、石油・ガスのマーケティング・関連インフラ事業等での共同プロジェクトを検討していくことに合 意し MOU を締結。2 0 1 2 年 9 月に投資子会社を通じ、スペインの Iberdrola 社の子会社から、Gas Natural México 社の株式を取得し、メキシコでのガス配給事業に資本参加。2 0 0 8 年に LNG 輸入基地であるマンサニー ジョ LNG ターミナルの事業権を、韓国ガス公社、三星物産とともに入札で獲得。本事業は LNG を受け入れ、 貯蔵、再ガス化する設備を建設・運営し、メキシコ電力公社 CFE に対し 2 0 年間にわたりガスを供給する予定。 ⑥将来日本に影響しそうな動き パイプライン網を拡充中(メキシコ国内で天然ガス需給のミスマッチ解消。メキシコ電力公社CFEとの関係)。 アジア市場の開拓が急務(シェール革命による北米の供給過剰感からアジアへの輸出解禁が進む。メキシコ も地理的優位性を生かし、LNG/LPG 輸出計画あり)。 ●生産物分与契約 (PSC) 国家が原油・天然ガスの所有権と管理権を保有することを前提に、コントラクターである石油・ガス会社に、 原油・天然ガスを探鉱開発させ、採掘された原油・天然ガスの一部を、コントラクターのコスト回収と利益の ためにこれら石油・ガス会社に分与する契約である。採掘された原油・天然ガスの所有権もまず国家に帰属する。 コントラクターは採掘事業に関連する全ての費用とリスクを負担する。コスト回収を上回る原油・天然ガスが 採掘された場合には、その一部がコントラクターである石油・ガス会社にシェアされる。 すなわち、ホスト国はコントラクターに対し、「採掘された原油・天然ガスの一部の分与」を提供し、その見 返りに、コントラクターはホスト国に対し、 「原油・天然ガスの探鉱採掘役務の履行」を行う。メキシコの場合、 CNH と、入札で選ばれたコントラクターとの間で締結される契約。 ●最低価値 最低価値 (Minimum Value) SHCP が定める。最低限メキシコ国家にもたらされるべき価値。①開発された石油・天然ガスからもたらさ れる操業による利益のうち、国が受け取る対価(Minimum value of the participation of State in operating profit)と②最低義務作業計画を超える部分の上乗せの作業量(Increase percentage in the minimum work program established) 。鉱区ごとに最低価値を設定。入札ガイドラインに定められた数式を適用して算出。最 低価値を下回る入札提案は採用されない。 例えば、 「浅海生産の入札」の対象エリア 1 では、①を 3 4.8 %に設定していたのに対し、ある応札者(Eni International B.V.)は 8 3.7 5 %という非常に高い比率を提案。②は 0 %と定めていたが、この応札者は 3 3 %の上 乗せの作業量を提案。入札ガイドラインに定められた数式から加重した値は 7 8.2 4 7 %で、応札者のうち最も高 い数値になった結果、落札者となった。 ●浅海 PSC の最終モデルを発表 (CNH, 2 0 1 5 年 6 月 9 日) 2 0 1 5 年 6 月 9 日に CNH は、メキシコ湾の浅海にある 1 4 鉱区に対する入札プロセス(ラウンドワンの第 1 段階) で適用される PSC の最新版を公開した。PSC は、特定の契約鉱区で、契約コントラクターがリスクと費用を取 43 石油・天然ガスレビュー アナリシス ることで、炭化水素を探査して生産する専有権を契約コントラクターに許諾するもの。 契約フェーズと期間 PSC の期間は 3 0 年であるが、CNH の承認を前提として、2 5 年の期間延長が可能。PSC のフェーズは四つに 分かれる。探査、評価、商業化宣言、生産の 4 段階。 探査フェーズ PSC の発効日から 1 2 0 日以内に、契約コントラクターは承認を得るために、探査計画を CNH に提出しなけ ればならない。PSC では契約の発効日から最大 4 年の探査期間が設定されている。そして、その間、契約コン トラクターは少なくとも契約に定められた最小限の作業プログラムを完了する義務がある。契約コントラク ターが最小限の仕事義務を負って、最初の探査フェーズの間に実行されなかった最小限の作業プログラムの内 容を完工すると約束すれば、2 年の期間延長も認められるかもしれない。契約者は、追加井に相当する「仕事単 位」 も実行しなければならない。また、最小限の作業プログラムを遵守しなければ金銭的処罰の対象となる。 評価フェーズ 探査フェーズの間に、契約コントラクターは、ある発見が「商業発見」であるかどうかを評価する目的で、 CNHに作業プログラムと予算の承認を求めるかもしれない。この評価フェーズの期間は12カ月である。しかし、 CNH の承認が得られるならば、この期間はさらに 1 2 カ月延長される。 商業化宣言 発見が評価フェーズの終わりの 6 0 日以内に「商業的である」と確定するならば、契約コントラクターは CNH に知らせなければならない。商業的発見と考えられれば、契約コントラクターは商業化宣言後 1 年以内に CNH の承認を得るべく、開発計画を提出しなければならない。 生産フェーズ 商業生産が始まる年から、契約コントラクターは、作業プログラムのなかにフィールドごと、井戸ごとに生産 予測を含めなければならない。契約コントラクターは、生産活動のために作業プログラムおよび危機管理プログ ラムに従って、井戸、集油ガス設備と必要な他施設の全ての建設、設置、修繕、調整を行わなければならない。 縮小と放棄 契約コントラクターが最初の探査フェーズの終わりにさらなる探査期間を与えられないならば、契約者は CNH に対して、承認される開発計画の影響を受けない、または、評価エリアに指定されなかった契約エリアの 1 0 0 %を放棄して、返すことを要求される。評価フェーズの終わりに、契約コントラクターが商業発見を宣言 しなければ、契約者は評価エリアの 1 0 0 %を放棄して、返すことを要求される。商業発見を宣言しても開発計 画を提出しない、あるいは開発計画に対して CNH の承認を得ることができなかった場合も同様である。以上 にもかかわらず、契約コントラクターがさらなる探査期間を与えられるなら、最初の探査期間の終わりに、契 約者は承認された開発計画の影響を受けない契約エリアの 5 0 %を放棄、ないしは返却しなければならない。さ らなる探査期間の終わりには、契約コントラクターは、承認開発計画の影響を受けない、または、評価エリア に指定されなかった契約エリアの 1 0 0 %を放棄して、返さなければならない。 評価フェーズの終わりに、契約コントラクターが商業発見を宣言しないならば、契約コントラクターは評価 エリアの 1 0 0 %を放棄して、返すことを要求される。商業化発見を宣言しても開発計画を提出しない、または、 開発計画に対して CNH の承認を得ることができない場合も、また同様である。 支払いと配分(表 1 2) 現金による探査フェーズの契約代金、 (ii)PSC に規定されたロイヤルティ メキシコ国への毎月の支払いは、 (i) に相当する産出された炭化水素量、 (iii)コントラクターによってあらかじめ設定された営業利益のメキシコ国 側のシェアに応じた炭化水素の量、となる。 他方、契約コントラクターへの毎月の支払いは、(i)コスト回収のための炭化水素の量と、(ii)営業利益のメ キシコ国側のシェアを減じた炭化水素の量から成る。 生産されたネットの炭化水素量と品質(生産された炭化水素量から、フィールド操業での自己消費のために 2016.3 Vol.50 No.2 44 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 使われる炭化水素を除いたもの)は、指定 されたメーターと地点で測られることとな 表12 生産物分与契約における対価の算定方式 る。契約コントラクターは、自己の取り分 となる炭化水素を、自ら、または、マーケ 法人所得税 30% ティング会社を通して、市場に出すことが 探鉱契約料 最初の 5 年間は 1㎢あたり 1,150 メキシコペソ。 その後契約期間が終了するまで 2,750 メキシコ ペソ。 探鉱および採掘の操業税 探鉱操業税は 1㎢あたり 1,500 メキシコペソ。 採掘操業税は 1㎢あたり 6,000 メキシコペソ。 ロイヤルティ 石油・天然ガスのスポット価格を考慮した算定式 を適用して算出。 できる。また、CNH に承認された開発計 画 の 範 囲 内 で、 生 産 さ れ た 炭 化 水 素 を、 フィールド操業のための燃料(採油増進法 に使われるものを含む)として、対価なし 出所:メキシコ石油天然ガス歳入法より作成 で使用することができる。 年次の作業プログラム 契約コントラクターは、契約に規定された油ガスの採掘作業に関して、CNH から承認を得るために年次の作 業プログラムを提出しなければならない。また、油ガスの採掘操業の進捗に関して、四半期報告を CNH に提 出しなければならない。法律によって規定される場合を除いて、特定の油とガスの操業活動が年次の作業プロ グラムの範囲内で CNH に承認されれば、個別の施設の設計・エンジニアリング・建設について、さらなる CNH の承認は必要とされない。 予算と経費 契約コントラクターは、年次の作業プログラム遂行する予算についても、CNH の承認を得なければならない。 財務長官によって出されるガイドラインと関連の会計手順に従えば、契約に基づき油ガス採掘活動に要する経 費は回収可能となる。 プロジェクト資産の所有 PSC の期間中、契約コントラクターはプロジェクトとインフラ資産の全ての所有権を維持する。いずれにせ よ契約が打ち切りになると、資産の所有権は、無償でメキシコ国に移る。契約が初期に終了した場合、賃貸契 約が CNH に指名された第三者による操業オプションを含むならば、契約コントラクターは、その第三者の使 用のために資産を賃貸するかもしれない。 結合 (他鉱区との一体化) PSC は、結合メカニズムを含む。発見が契約エリア外に広がる構造、層または賦存の一部であるなら、契約 コントラクターは SENER と CNH に知らせなければならない。この通知の後、契約コントラクターは、SENER によって結合の決定を受ける。 契約保証 最初の探査フェーズとさらなる探査期間の間、契約コントラクターは CNH のために無条件で取り消せない 信用状の形で、作業の性能保証を提出しなければならない。また、契約の実行と同時に、契約者または契約コ ンソーシアムの各社は、会社保証を CNH に提出しなければならない。 環境義務 契約者は、契約エリアの放棄に関連した全ての活動を行わなければならない。契約者が商業的発見をした場 合、契約者は契約エリアの放棄活動への蓄えとして、CNH と契約者が共同で投資信託を設立することを要求さ れる。契約者は、油とガスの採掘活動によって環境に引き起こされる損害賠償のためだけにでなく、ベストプ ラクティスと環境許可に準拠して、全ての環境保護義務を負う責務がある。 下請けとメキシコ国の商品・サービスの使用 (ローカルコンテンツ) 契約コントラクターは、操業者の作業代替とは見なされない専門器材とサービスの供給を下請けに出すかも しれない。契約コントラクターは、油とガス採掘活動のための専門器材とサービスの供給について、契約中で 規定された割合をメキシコ国の商品・サービスとして使用しなければならず、これに従わない場合、金融処罰 の対象となる。さらに契約者は等しい価格、品質と納期状況の下では、メキシコ国家の商品とサービスを優先 45 石油・天然ガスレビュー アナリシス しなければならない。 その他の準備 PSC は、いくつかの標準的な契約(規定する法律条項はメキシコの法律で定める)を含む。不可抗力条項(活 動が連続 2 年以上の間中断されるならば、当事者には契約を解除する権利がある)、割り当て条項(事前の CNH による同意)と免責条項が含まれる。免責条項は CNH と他のどの政府機関も保障して、保護することを契約者 に要求する。そのなかには、契約と損害賠償に従わない行動、主張、損害賠償、経費、税、費用と、損失を被 らないための従業員、代表、アドバイザー、ディレクター、譲り受け人、後継者の保護が含まれる。その上、 CNH は、PSC に含まれる特定の事案の発生によって、管理の撤回または契約の撤回によって PSC を終了する かもしれない。 係争の場合、調停は最大 3 カ月とする第一歩として規定される。メキシコの連邦裁判所は契約の管理の撤回 に関連したあらゆる問題を解決することになる。他の係争事案はスペイン語で、ハーグ(オランダ)の国際司法 裁判所において、3 人の仲裁人の決定を前提として、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)規則の下で仲裁に よって解決される。 ●ライセンス契約(表 1 3) 地下に賦存する原油・天然ガスの所有権は国家に帰属しており、国家が許諾あるいは許可しない限り、それ らを探鉱、採掘することは認められないという前提に基づくが、ホスト国政府から行政的な許諾または許可を 取得した石油・ガス会社は採掘した全ての原油・天然ガスの処分権を取得できる。ホスト国は、ライセンシー である石油・ガス会社からロイヤルティあるいは租税の形で金銭あるいは採掘された原油・天然ガスの一部を 徴収することにより、利益を得る。 すなわち、ホスト国は石油・ガス会社に、「原油・天然ガスの探鉱、採掘の許可」と「採掘された原油・ガス の取得権」を提供し、その見返りに、石油・ガス会社はホスト国に、「最低探鉱事務の履行」と「一時金、ロイヤ ルティの支払い」 を行う。 メキシコでは、CNH から石油・ガス会社が採掘権のライセンスを受けて、自己のリスクと費用の負担におい て開発を行う。 ●利益分配契約(表 1 3) CNH と、入札で選ばれたコントラ クターとの間で締結される契約。民間 表13 契約形態に応じた支払い義務 企業、民間企業連合 (コンソーシアム) 、 Pemex はコントラクターの入札に参 加可能。生産された石油・天然ガスは、 市場で販売する販売業者に全量引き渡 され、その販売益をメキシコ政府とコ 利益分配契約 サインボーナス なし 探鉱契約料 ○ 国が受け取る対価(最低価値の構成要素) ○(現金) PSC なし ライセンス契約 ○ ○ ○ ○(現金) ○(生産物) 探鉱および採掘の操業税 ○ ○ ○ ロイヤルティ ○ ○ ○ 環境保護税 ○ ○ ○ ●サービス契約 契約の監督と管理手数料 ○ ○ ○ 事業主である Pemex による石油・ 調整メカニズム ○ ○ ○ 法人所得税 ○ ○ ○ 国税と地方自治体税 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ントラクターの間で分配。 天然ガス開発プロジェクトに必要な役 務をコントラクターが提供する契約。 コントラクターはプロジェクトの収益 に直接依存しない。役務(サービス)提 供の対価は現金でコントラクターに支 ※1 による調整 従業員への利益分配 ※2 ※ 1:調整メカニズムとは、特別な利益が発生した場合に、その一部が国に分配される ように、国およびコントラクターが受け取る対価を決定するパラメーターをコン トラクターの操業結果に基づき、修正する仕組み。 ※ 2:雇用主は、利益の一部を従業員に分配することを義務付けられている。 出所:メキシコ石油天然ガス歳入法より作成 2016.3 Vol.50 No.2 46 メキシコ:原油価格の下落が鉱区公開ラウンドワンの進捗に与える影響 払われる。 ●カンタレル油田の盛衰 減退したカンタレル油田に、メキシコの石油産業を牽引するだけの力は残っていない(2 0 0 4 年日量 2 1 0 万バ レル、2 0 1 4 年同 3 7 万バレル) 。2 0 1 7 年から油生産を安定させるために 6 0 億ドルの投資計画あり。 カンタレル油田は、1 9 6 1 年、漁師 Rudesindo Cantarell Jimenez が海から引き上げた網に油が頻繁につくこ と (海底からの油の染み出し) をきっかけに発見された。 1 9 7 6 年の探鉱井の成功を経て、1 9 7 9 年より商業生産が始まり、1 9 8 1 年までに日量 1 1 6 万バレルに達した。 1 9 7 6 年メキシコは経済危機に直面していた(天井知らずの失業率、通貨ペソの暴落)。当時の大統領 Jose Lopez Portillo は経済危機からの立ち直りを、カンタレル油田からの原油輸出による外貨獲得に期待し、それ は実現された。 カンタレル油田群:Mesozoic 炭酸塩岩。Akal, Nohoch, Chac, Kutz の他に 1 0 ほどの小規模油田から成る。 1 9 7 9 年に Nohoch 油田から生産が始まり、2 年後に主力の(可採埋蔵量の 9 0 %を占める)Akal 油田から生産が 始まった。Akal 油田は 4 0 ㎢の広さながらも層厚 1,2 0 0m を誇る巨大な油層構造(アラスカ州プルドーベイ油田 の 1.5 倍) 。1 9 8 4 年原始埋蔵量 3 5 0 億バレルのうち 1 7 0 億~ 2 0 0 億バレルが回収可能と推定された(後に 1 8 0 億 バレルと修正) 。 1 9 8 7 年油層圧の減退を克服すべく、生産井にガスリフトが適用された。1 9 9 1 年に Chac 油田からの生産が 始まり、1 9 9 4 年まで日量 1 1 0 万バレルで推移してきた。その後、生産井に占めるガスリフトの割合は 9 0 %に 達した。1 9 9 9 年に Kutz 油田が生産に加わり、同 1 4 0 万バレル態勢に入った。2 0 0 0 年 6 月には本格的な油層圧 回復のため、 油層頂部からの窒素圧入プロジェクトが始まった。4年後に同200万バレルを目指すことになった。 窒素圧入(Linde グループ /BOC)は、ほかに水圧入、ガス圧入、CO2 圧入のなかから、増油効果と操業面を考慮 して選ばれた。増油効果は即座に現れ、2 0 0 4 年には同 2 1 0 万バレルのピークに達したが、その後減退が始まっ た(2 0 0 6 年 1 3.1 %減) 。 2 0 0 7 年 7 月に日量 1 5 3 万バレル、2 0 0 8 年 7 月には同 9 7 万 4,0 0 0 バレルまで減退した。Pemex は 2 0 1 2 年に 同 5 0 万バレルで落ち着くと予想した。しかし、2 0 0 9 年 9 月には同 5 0 万バレルに下がり、その後、2 0 1 2 年 4 月 に同 4 0 万 8,0 0 0 バレル、2 0 1 3 年 6 月に同 3 8 万 8,0 0 0 バレルと低下を続け、2 0 1 4 年 6 月には同 3 4 万バレルとなっ た。2 0 1 4 年平均では同 3 7 万バレルであった。 2 0 1 4 年 7 月に Pemex は日量 3 7 万バレルを守るべく(主力 Akal 油田の生産レートを同 1 8 万~ 2 0 万バレルに 保つ) 、2 0 1 7 年からの 6 0 億ドルの追加投資を発表した。例えば界面活性剤を含むフォーム(泡)の圧入。また、 現在の回収率 4 2 %から 6 0 %を目指す。水の使用量 2 2 万 5,0 0 0 バレル、ガス生産は日量 1 1 億立方フィート。油 は、同 3 7 万バレルを 5 年ほど微減を続け、将来は同 2 0 万バレルで安定すると見る。 執筆者紹介 伊原 賢(いはら まさる) 1983年、東京大学工学部資源開発工学科卒業。同年、石油公団(当時)入団。1991年、タルサ大(米国オクラホ マ州)大学院石油工学修士課程修了。1994年、東京大学博士号(工学)取得。石油学会奨励賞受賞。 アラブ首長国連邦(UAE)ザクム油田操業、生産技術研究室長、JOGMECヒューストン事務所長ほかの勤務を 経て、2008年7月より石油・天然ガスの上流技術の調査・分析業務に従事する上席研究員。専門は石油工学とC1化 学。東京大学、東京工業大学、九州大学 非常勤講師。石油学会論文誌編集委員。 主な著書:『シェールガス争奪戦』日刊工業新聞社 2011年9月 『シェールガス革命とは何か』東洋経済新報社 2012年7月 『天然ガスシフトの時代』 (共著)日刊工業新聞社 2012年12月 趣味はへぼゴルフ、グルメ(和食中心)、アニメ、デザイン。 47 石油・天然ガスレビュー
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