第63回日本生態学会大会で発表しました

第 63 回日本生態学会大会の企画集会 ”里地里海の生き物の暮らし”と
自由集会 ”アメリカザリガニの生態系への影響と対策” というテーマ
で発表しました
平成 28 年 3 月 20 日から 24 日に仙台国際センターにおいて,第 63 回日本生態学会大会
が開催され,財団から嶋田と森が参加しました。嶋田は愛媛大学大学院の日鷹一雅先生と
ともに、
”里地里海の普通種の行方~多様な環境変化と生態系レジリエンス”というテーマ
で企画集会を開催しました。里地里山にある種個体群や群衆が、なぜ衰退したり、勢いを
増すのかについて、多様な環境要因との因果関係に焦点を合わしながら生態系のレジリエ
ンスについても考慮した考察を行い、身近な生きものの動態の変遷と今後の行方、人間社
会の管理のあり方について議論しました。嶋田は”地域の多様な種群に対応している生態
系管理の現場から”というコメントで、オオクチバス駆除とコクガンのモニタリングの事
例を踏まえ、順応的管理の中で、生態系レジリエンスをどう位置づけて保全作業をすすめ
ていくか、ということを発表しました。森は“アメリカザリガニの生態系への影響と対策”
という自由集会の講演者のひとりとして“植物への影響と対策”というテーマで発表しま
した。
森の発表内容を要約します。我々は、湖沼から淡水資源や漁業資源など様々な恩恵を受
け生活しています。沈水植物は湖沼の重要な資源を維持する役割を担っています。しかし、
富栄養化などの水質悪化に加え、アメリカザリガニの侵入により世界各地で沈水植物群落
の縮小・消失が進行しています。伊豆沼・内沼でもかつてクロモといった沈水植物群落が
広がり、水質浄化や多様な生物を支える基盤となっていましたが、1980 年に起きた大洪水
により沈水植物は激減し、現在に至るまで回復していません。そこで、伊豆沼・内沼では,
水質浄化と生物多様性向上を目的とした自然再生事業の中で、クロモの植栽や沈水植物の
保存を実施しています。
当初,私たちはクロモを一本一本丁寧に植栽していました。しかし,アメリカザリガニ
が食べてしまったりして,この試みは上手く行きませんでした。この経験を生かし、大量
に育生したクロモを植栽し、それをフェンスで囲うことでアメリカザリガニに食べられる
ことを防ぎました。この結果、クロモは群落をつくり、エビやヤゴが集まってきました。
また、沼の土の中には植物の種が発芽せず、眠っていることがあります。沼の土を採取し
水槽の中に敷くことで眠っていた種を発芽させ、これを育てています。この方法で、沼か
ら消失してしまったジュンサイやムサシモといった貴重な植物を発見することができまし
た。以上のように、フェンスの中や水槽の中で植物を管理することで、アメリカザリガニ
の食害を防ぎ、効果的で安価に植物を保全することができました。
発表では、湖沼における沈水植物の役割、アメリカザリガニの沈水植物への影響と説明
し、具体的な保全対策として伊豆沼・内沼で実施している取り組みを紹介しました。この
発表を通じ、アメリカザリガニの駆除の必要性や沈水植物の保全に関する知識を参加者と
共有することができたと思います。
会場の国際センターの外観
自由集会の様子