1 式辞 春を迎えるこの佳き日に、宮崎学園短期大学の卒業式並びに修了

式辞
春を迎えるこの佳き日に、宮崎学園短期大学の卒業式並びに修了式を行えることをたい
へん嬉しく思います。ご来賓の方々、保護者・ご家族の方々、ご臨席に感謝申し上げます。
本学は昭和四十年、建学の精神「礼節・勤労」の下に設立され、安井息軒ゆかりの明教
堂を受け継いだこの忍ヶ丘の地で、今年創立五十周年を迎えました。卒業生たちは一万九
千名になろうとし、さまざまな場所で活躍しています。
この度、保育科卒業生二一〇名、現代ビジネス科卒業生三八名、専攻科福祉専攻修了
生三六名、専攻科音楽療法専攻修了生七名を世に送ります。
本学の卒業生・修了生たちが身につけ旅立つ、建学の精神「礼節・勤労」について、その
意義をここで再度確認したいと思います。
礼節は人間社会が平和的・協力的に成り立つ基礎です。人と人とが支え合って成り立つ
人間社会では、自分の思い・都合だけを考えていたのでは衝突を繰り返し、互いに疲弊して
しまいます。互いに相手を気遣うこと、自他の人間性を尊重する思考・行動が求められます。
それが敬意を表し、自ら節度を保つよう律すること、則ち礼節です。
勤労は人間社会が成り立ち、向上していく基礎です。私たちが今日の生活を享受できる
のは、食べ物にしても、着るものにしても、私たちが利用する乗り物、手にする機械・道具、
あるいは私たちの頭の中にある知識・技術、あるいは私たちが暮らす社会の制度、あるいは
学問にしても芸術にしても娯楽にしても、自然以外のありとあらゆるものが、人の勤労のお陰
です。そしてそれらが継承と改善や改良による歴史的産物であることを考えれば、その背後
には何千年にも及ぶ人類の勤労の歴史があります。今日の自分が、今日の世界が、多くの
人の勤労のお陰で成り立っていることを忘れてはなりません。
これからは、皆さんがお陰を返していく番です。人を支え、人の為になり、世のため、社会
のために貢献していかねばなりません。そのために学び、自己の人格を高め、利他の精神
を養い、行動を高めていくのが勤労です。
ここで、人間の幸せについて考えてみたいと思います。人間の幸せはどこにあるでしょう
か。人間にはさまざまな欲求があります。お腹がすけば食べ物が欲しくなります。友だちがい
なければ友だちが欲しくなります。年頃になれば、生涯の伴侶を求めたくなるでしょう。それ
らが手に入れば幸せを感じます。
しかし、欲しいものが手に入ることが幸せでしょうか。今日、テレビをはじめ様々なメディア
から、商品やサービスの宣伝広告が送られてきます。そうしたものを目にすると、欲しいもの
は無限に浮かびます。そしてそれらの商品やサービスが手に入れば、幸せになれそうな幻
想に陥ります。商品やサービスを手に入れるにはお金が必要です。ではお金持ちになれば、
幸せになれるのでしょうか。そうではありません。
欲しいものが手に入れば一時の満足は得られますが、それだけでは幸せになれません。
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私は人間の幸せは次の四つにあると思います。
・人から愛されること
・人から褒められること
・人の役に立つこと
・人から必要とされること
いかがでしょう。お金で手に入る満足とは異なる、人間社会での幸せがここにあると思いま
す。皆さんには、これからの人生において本当の幸せを実現して欲しいと思います。
ではそのために大切なことは何でしょう。人から愛され、褒められ、必要とされるには、他
者への敬意を表し、節度をわきまえる礼節が欠かせません。そして人の役に立ち、人から必
要とされるためには勤労が欠かせないのです。
建学の精神「礼節・勤労」は社会人への扉を明ける鍵であると同時に、自分が社会の中で
幸せになっていく鍵でもあるのです。
卒業・修了にあたり、これまで自分が授かった家族、人々、社会からのお陰を感謝し、是
非、建学の精神「礼節・勤労」を胸に刻み、今度は皆さんが家族、人々、社会に貢献していく
責任を果たして行かれる事を望みます。
ご来賓の皆様、この学生たちの旅立ちを見届けて下さり、ありがとうございます。まだまだ
未熟な者たちです。しかし社会の荒波に立ち向かう覚悟と少しばかりの自信は身に付けて
います。どうか温かくお見守り下さい。
ご家族の方々、ここまで多くのご苦労がおありだったと思います。お疲れ様でした。まだま
だ未熟です。でも今日は少し自信に顔を輝かせています。祝福してやって下さい。
在学生諸君、決して平坦ではない道のりを歩み今日を迎えた卒業生・修了生の後ろ姿を
胸に刻み、祝福すると共にあとに続く決意を固めて下さい。
卒業生・修了生諸君、沢山の人から感謝される人になって下さい。君たちの前途に幸多
き事を祈る。
以上をもって、式辞とします。
平成二八年三月一九日
学長 宗和 太郎
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