「医療事故調査制度施行に向けて、 医療安全管理体制の見直しを

看護職賠償責任保険制度
21
VOL.
特集
「医療事故調査制度施行に向けて、
医療安全管理体制の見直しを」
◆ 医療事故調査制度の概要
― 現場が知っておくべきその骨子 ―
宮澤 潤氏(弁護士)
◆「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」
に関わって
一般社団法人 日本医療安全調査機構
◆ 院内事故調査委員会の委員として参画、
事故を通して見えてきた課題
地方独立行政法人 神奈川県立病院機構
神奈川県立こども医療センター
法律に関する基礎知識
Part20
看護師の特定行為と
保健師助産師看護師法の改正
富良野市(北海道)/撮影 坂元 永
公益社団法人
特
̶ 現場が知っておくべきその骨子 ̶
地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター
裕季子氏
医療安全推進室 医療安全管理者 佐藤
みね子氏
看護局長 森内
潤氏
◆「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」
に関わって
弁護士 宮澤潤法律事務所 所長 宮澤
平成
年 6 月に成 立した
﹁ 地 域における医 療 及 び 介 護の総 合 的な確 保を推 進す
月より
﹁医療事故調査制度﹂
が施行されます。この制度は、医療法の
﹁第3章 医
るための関 係 法 律の整 備 等に関する法 律 ﹂
により医 療 法の一部 が改 正され、平 成
年
27
故の再発防止を行うことを目的としています。
本 特 集では、﹁ 医 療 事 故 調 査 制 度の施 行に係る検 討 会 ﹂
の構 成 員を務められた弁
護 士の宮 澤 潤 さんに制 度の概 要についてご 執 筆いただきました。さらに、日 本 医 療
年に自 施 設で発 生した医 療 事 故の院 内 事 故 調 査 委 員
年から一連の調 査の調 整・推 進を担 う 調 整 看 護 師をとりまとめてお
安 全 調 査 機 構 が実 施している
﹁ 診 療 行 為に関 連した死 亡の調 査 分 析モデル事 業 ﹂
に
おいて、平 成
られる畑 涼 子さんと、平 成
立こども医 療センター看 護 局 長の森 内みね子 さん、医 療 安 全 管 理 者の佐 藤 裕 季 子
さんにお話を伺いました。
医療事故調査制度の概要
¦ 現場が知っておくべきその骨子¦
潤
実と 言えます。
今 ま では 医 療 事 故 が 発 生 す る と 刑
事 告 訴 を されて逮 捕 されたり 、民 事で
損 害 賠 償を 請 求されること となってい
ましたが、そのよ う な 手 続 きでは 犯 人
が 誰 かと か、
いく ら 損 害 賠 償 し な けれ
ば な ら ないの か とい う 問 題 が 中 心 に
なってし まい、医 療 事 故の 原 因 を 分 析
して再 発 を 防 止していくということが
十 分 に 行 われ ま せんでし た 。そのため
従 来の方 法では 、同じ よ うな 医 療 事 故
弁護士 宮澤潤法律事務所 所長 宮
澤
1 責任追求から再発の防止へ
︵医療法の改正︶
医 療 を 行っていく 際 、人 間の 行 うこ
と なので 常に 完 璧 はあ り 得 ま せんし 、
ま た 、対 象 が 人 間 な ので 同 じ こ と を
行っても 機 械のよ うに必 ず同じ 結 果に
はなりません。そのため、医 療 行 為を 行
う 限 り 、あ る一定の 割 合で 医 療 事 故 が
発 生してしま うことは止むを 得ない事
02
看護職賠償責任保険制度News vol.21
26
療の安全の確保﹂
に位置づけられている通り、医療の安全を確保するために、医療事
10
会 委 員として調 査 、再 発 防 止 策の検 討 、報 告 書のとりまとめに携わられた神 奈 川 県
26
22
涼子氏
一般社団法人 日本医療安全調査機構 中央事務局 畑
集
◆ 医療事故調査制度の概要
医療事故調査制度施行に向けて、
医療安全管理体制の見直しを
◆院内事故調査委員会の委員として参画、
事故を通して見えてきた課題
②医療提供前に死亡が予期されることを
カルテ等に記載していた場合
③事後的聴取で死亡を予期していたと
認められる場合
対象: 死亡案件
要件1 医療行為に起因していると
疑われるもの
(3)
(4)
(5)
院内調査
開始
図4 厚生労働省資料をもとに筆者が作図
支援団体
相談
専門家の派遣等
必要な支援を
求める
}からの依頼
医療機関
遺族
センター調査
が何 度 も 発 生する 危 険 性があ り、医 療
の安 全の向 上は望めません。
そこで、今 回 法 律 上の責 任 追 及を 目
的 と せ ず、事 故の 原 因 を 分 析 し 、再 発
防 止 を 図っていこ う と する 制 度ができ
ました 。それが改 正 医 療 法の中に 規 定
された 医 療 事 故 調 査 制 度 なのです︵ 図
1 ︶。
それでは 、それがどのよ う な 中 身 を
持っていて、私 達が実 際の医 療を 行って
いく 時に何に注 意したら よいのか考 え
てみましょう。
(2)
図2
2 医療事故調査制度の対象は?
図1
われる 死 亡・死 産の場 合だけです。
です
から 重 大 事 故であっても 患 者さんが死
亡 し ない限 り は 法 律 上の 医 療 事 故 調
査の対 象にはなりません。
た だ 、死 亡には 至 ら なかったけれ ど
も 、重 大 な 事 故 で あ る とい う 場 合 に
行ってはなら ないということ を 意 味し
ていま せんので 、任 意 に 行 う こ と は な
んら 問 題はありません。
医 療 事 故 調 査の 対 象 と す る か 否 か
は 最 終 的 には 管 理 者 が 判 断 す る こ と
に な り ま す 。そ の た め 現 場 で は 医 療
行 為に 起 因 する と 疑 われる 死 亡 事 故
が あ った 場 合 に は 、院 長 等 の 管 理 者
に 報 告 し 、判 断 を 仰 ぐ こ と にな り 、自
分 で 判 断 す る 必 要 は あ り ま せん 。
た だ 、現 場 の 情 報 を 管 理 者 に 伝 え
ることは 必 要です。
①∼③に該当しない
予期しなかった死亡
‖
制度の対象
責任追及目的
医 療 事 故 には さ ま ざ ま な も のがあ
り ま すが、今 回 調 査の対 象 と するのは
提 供 さ れた 医 療 行 為 に 起 因 す る と 疑
図3
医 療 事 故か否かの判 断 基 準
3 医療事故と判断されたら
医 療 事 故 か 否 かは 先 に 書 き ま し た
どうするか
︵現場保存︶
よ うに 管 理 者の 判 断によ り ま すが、こ
こでは管 理 者がどのよ うな基 準で判 断
原 因 分 析 と 再 発 防 止のための 制 度
するのかも 見ておきましょう︵ 図 2 ︶。
で す か ら 、 カ テ ー テル 等 の 抜 去 等 を
医 療 行 為に 起 因 する と 疑 われる 場
し ないよ う に 現 場 保 存 を 図 る な ど の
合 の 医 療 行 為 は 手 術・処 置・投 薬 等
必 要 が あ り ま す 。 死 亡 し てし まった
で、施 設の火 災 等や 偶 発 的に生 じた 疾
場 合 、 御 遺 体 を 御 家 族に 引 き 継 ぐ 際
患によ る 死 亡 は 医 療 行 為に 含 ま れ ま
にカテ ーテル等 を 抜 去してし ま う と 、
せん。
原 因 の 解 明 がで き な く なってし ま う
次 に 管 理 者 が 予 期 し な かった も の
場 合 が 発 生 し ま す か ら 、 その 点 は 注
とは 図 3の通 りです。 意し な ければな り ません 。
遺 族 は 医 療 事 故 と 判 断 しセンター
医 療 事 故 と 判 断 さ れた 時 点 以 降 の
に 報 告 するこ と はでき ず、管 理 者 が医
手 続 き は 、 図 4のよ う な 流 れ と な り
療 事 故 と 判 断 し ない場 合 には 事 故 調
ます。
査 を させる 手 段 はあ り ません 。そのた
め、死 亡 事 故であって遺 族が死 因
について 疑 問 に 思 ってい る 場 合
に 、医 療 事 故 調 査 を 行 わ ないと
センターへ
結果報告
遺 族 は 従 来 の 方 法 と して 残 さ れ
ている 刑 事 告 訴 等の 手 段 に 訴 え
遺族へ
結果説明
る こ と と なってし まいま す。それ
では 医 療 の 安 全 向 上 に 向 かって
いき ませんから 、医 療 事 故の調 査
は 、原 因 究 明・再 発 防 止の観 点か
ら 広 くと ら えること が大 事 と な
り ます。
医 療 事 故 か 否 か 判 断 に 迷った
センターへ
報告
場合
医 療に起 因 するか、予 期してい
報告について
遺族へ説明
な かった かの 判 断 は 現 実 に 行 う
と 結 論 に 迷 う 時 が 出 て き ま す。
医療事故か
その 場 合 は 医 療 事 故 調 査・支 援
否かの判断
センター 、または 支 援 団 体に相 談
死亡事例
し 助 言 を しても ら う こ と に な り
発生
ます。
看護職賠償責任保険制度News vol.21
03
①医療提供前に死亡が予期されることを
説明していた場合
制度の対象外
‖
予期していた死亡
}
再発防止
医療安全の向上が
目的
原因分析
医療事故調査制度
(改正医療法)
}
損害賠償請求
従来
1+2で
調査・報告
2 管理者が予期しなかったもの
(1)
刑事告訴