実務者のための工事監理ガイドラインの手引き

平成 28 年3月 24 日
「実務者のための工事監理ガイドラインの手引き」解説講習会
質疑応答書(その2)
(公財)建築技術教育普及センター
頁
質問事項
行数/写真番号
回答
本手引きにおける「確認」は、建築士法第 2 条第 8 項の工事監理の定義における確認を指していま
全般
ところどころに「確認」という言葉が出てくるが、公共建築工事標準仕様書にある「承諾」とどの
す。建築士法はあくまで設計図書のとおりに工事されているか否かの確認です。一方、公共建築工
ように使い分けているのか。
事標準仕様書によると「監督職員の承諾」は、
「受注者等が監督職員に対し、書面で申し出た事項に
また、手引きで使われている「確認」は、
「承諾」とは異なるのか。異なる場合は、どのように異な
ついて監督職員が書面をもって了解すること」とされています。この「承諾」は、厳密な意味では、
るのか。
契約上の代理権限を伴うことがありますが、建築士法上の工事監理者は、こうした権限と直接関係
ありません。もっとも実際上は、ほぼ同一の意味合いで使用されることが多いと思われます。
手引きには、
「この「工種別の確認のポイントの例示」の確認内容や方法については、工事監理ガイ
全般
ドラインと同様に法的に強制されるものではありません。」と記載されているが、事故や問題等が生
法的責任の判断は、あくまで個別の事案ごとに異なります。紛争の際に本手引きに例示する方法が
じ、裁判等になった際に、この手引きが「工事監理者が合理的確認をしていたかどうか」の判断材
「工事監理者が合理的確認をしていたかどうか」の参考資料の一つになることは考えられますが、
料の一つになるのではないか。また、そうなった場合、この手引きどおりの確認をしていないと、
そのことと法的責任の有無はまったく別の問題です。
合理的確認をしていないことになり、法的責任が発生するのではないか。
講義DVDは、手引きの初版(平成 25 年9月 27 日発行)を元に作成されたものです。
全般
配付された正誤表の内容と講義の内容が違う箇所があるが、どちらが正しいのか。
正誤表が正しい内容のものとなります。また、初版二刷(平成 27 年 7 月 27 日発行)は、正誤表
の内容が反映されたものです。
基礎ぐい工事に係る問題の発生を受けて、国土交通省及び関係団体から次の対応がされています。
・基礎ぐい工事に関する適正な設計・工事監理の実施に向けて―国土交通省・建築行政
全般
確認の頻度について、基礎ぐい工事に係る問題の発生を受けて、建築主より全数確認を求める声が
多くなっているが、関係団体としてどのような改善策が考えられるのか教えてほしい。
(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000068.html)
・「既製コンクリート杭施工管理指針」の策定―(一社)日本建設業連合会
(http://www.nikkenren.com/publication/detail.html?ci=233)
・基礎ぐい工事問題に関する対策委員会の中間とりまとめ報告書を踏まえた当協会の取り組みにつ
いて―(一社)不動産協会(http://www.fdk.or.jp/news/pdf/houdoupress_20160121.pdf)
工事監理における確認の頻度を含めた合理的判断についての個別の根拠はありません。設計図書に
全般
「全数確認」以外の確認方法(抽出による確認や工事監理者が合理的と判断した方法)が、世間一
般に理解されるためにはどのように説明すればよいのか。
定めがなければ、個々の工事監理者の判断であり、それが第三者的に合理的と判断される必要があ
るということに尽きます。建築士法でいう工事監理とは、工事監理者が工事全般について負う合理
的な方法で確認する法的な義務なので、設計図書に定めがあっても「それだけ行えばよい、それ以
上する必要はない」という線引きはできません。
1
頁
質問事項
行数/写真番号
回答
「法的責任」には、他人に生じた損害を賠償する責任である「民事責任」と国家により刑罰が科さ
れる責任である「刑事責任」などがあります。契約責任は、私法上の責任ですが、契約に係る建築
公法である建築士法に契約に関する条文が追加されたが、私法である民法における契約に関する条
15
2 行目
文と矛盾することはないか。
また、これらの罰則は、公法(建築士法)上、私法(民法)上、双方より受けるのか。
士法などの公法上の規定に違反すると、行政処分など公法上の責任を負う場合がありますが、それ
が直ちに契約責任に結びつくとは限りません。
たとえば、契約については、建築士法に違反して契約書を作成しなかった場合には、建築士法によ
る不利益処分を受けることがありますが、だからといって民法上、契約が直ちに無効になる訳では
ありません。また、たとえ建築士法に合致して契約書を作成していても、その内容を履行しないと、
損害賠償責任を負うことになります。
手引きには、
「契約は、基本的に契約当事者同士でその内容を自由に決めることができるものです。
16
10 行目
また、契約は、意思表示の合致ですから、当事者同士の口頭の合意で成立します。
」と記載されてい
るが、平成 27 年 6 月 25 日から、書面による契約が義務化されたので、本文を変更した方がよい
のではないか。
平成 27 年 6 月施行改正建築士法に伴う補足説明
(http://www.jaeic.or.jp/other_info/kankoubutu/cf_1209book.files/hosoku201510.pdf)
を参照してください。
工事請負契約は、工事施工者が契約の目的物を完成させて引き渡すものであり、そのプロセスは問
わないことになっています。しかし、契約内容となっている設計図書に指定がある工法等を変更す
施工計画書について、設計図書の内容が正確に反映されているものとしなくてはならないが、設計
25
15 行目
図書と異なる工法を計画したい場合は、どうすればよいのか。
また、工事施工者側からの要望があった場合、工事監理者はどのように対応したらよいのか。
る場合は、契約変更になります。工事監理者には、設計図書を変更する権限はありませんが、この
検討は、契約上の定めがあれば監理業務の範疇です。
したがって、工事監理者と監理者とが同一人物であってもこの場合には、監理者として工法変更の
相談を受け、技術的な是非を検討し、その旨を建築主に報告して、建築主の判断を仰ぐ(あるいは
協議する)ことになります。変更に伴う工事費の増減や契約上の手続きの処理については、工事請
負契約約款の定めによります。
工事監理ガイドラインは、本手引きの P.489 にも記載されているように、その対象工事は「建築
物の新築に係るものに限る。」とされています。その理由は次のとおりです。
工事監理ガイドラインは、平成 21 年国土交通省告示第 15 号(以下、
「告示第 15 号」といいます。)
の略算表に示される工事監理等に係る標準業務量のうち、その主要な構成要素である工事監理に相
p12
下から1行目
工事監理ガイドラインの対象工事の一つに、「建築物の新築工事」と記載されているが「改修工事」 当する業務量に見合った業務内容を例示したものです。そして、告示第 15 号の標準業務内容は、
は含まれないのか。
新築工事を対象としたものであり、業務内容のばらつきが大きい改修工事や改築工事などは対象と
していません。そのため、告示第 15 号をベースとしている工事監理ガイドラインも新築工事のみ
を対象としています。
ただし、改修工事に、工事監理ガイドラインや本手引きの技術的な側面などを参考にすることは、
望ましいことだと思います。
200
201
282
14 行目
下から 7 行目
8行目
一般的には、くさびかい等により建具枠の位置を仮に取り付けた状態のことで、溶接などにより固
鋼製建具の仮止め時とは、どの時点をいうのか。
定する前の状態のことを指します。
「アルミ製建具と異種金属が接触する面については、絶縁処理が施工されていることを確認しま
す。
」と記載されているが、なぜ絶縁処理をする必要があるのか。
アルミは異種金属と接し、水等に接触すると電食作用を起こして腐食するといわれています。腐食
の度合いは接する金属間の電位差によりますが、腐食は短期間に侵攻をするので注意する必要があ
ります。
手引きには、
「最初の施工部分を立会い確認し」と記載されているが、なぜ立会い確認をするのか。
2
最初の施工部分を立会い確認することは、工事施工者の技量や経験を確認するとともに、それ以後
の工程において手戻りを少なくすることができることから、合理的な方法であると考えます。
頁
質問事項
行数/写真番号
回答
工事施工者は、原則として全数確認を行いますが、工事監理における確認が合理的な方法によって
301
8行目
自動火災報知設備の試験等の確認について、「全数」ではなく「抽出」の理由を教えてほしい。
行われているか否かは、ケースバイケースで判断されます。抽出による確認を行い、検査に不合格
なものが出た場合には、工事監理者の判断により全数確認をする場合もあります。
479
5行目
手引きには、
「系統に間違いがないように表記がなされていること」と記載されているが、非木造建
築物においても同様に確認するのか。
配線系統表示について、どの程度の表記を行うかは設計図書によります。
(独)住宅金融支援機構編著『木造住宅工事仕様書』には、
・塗り面の汚損や早期乾燥を防止するため、通風、日射を避けるよう外部開口部の建具には窓ガラ
461
下から 4 行目
手引きには、「暑中や寒冷期には、気象条件に合せた施工方法とします。」と記載されているが、暑
中の場合と寒冷期の場合の参考例をそれぞれ具体的に教えてほしい。
スをはめるとともに、塗面には、シート掛け、散水などの措置を行う。
・寒冷期には、暖かい日中を選んで施工するように努める。気温が2℃以下の場合及びモルタルが
硬化しないうちに2℃以下になるおそれがある場合は、作業を中止する。やむを得ず作業を行う
場合は、板囲い、シートおおいなどを行うほか、必要に応じて採暖する。
と記載されています。
3