18道県政策提言書 (PDF documentファイル

日本の森を再生させる
有志18道県から政策提言
「森林(モリ)ノミクスで地方創生」
~森林・林業関連産業の成長を目指して~
ハーベスタによる伐倒・造材作業
森林環境教育(スギの造林作業)
平成28年3月24日
北 海 道 知 事
高橋はるみ
青 森 県 知 事
三 村 申 吾
岩 手 県 知 事
達 増 拓 也
宮 城 県 知 事
村 井 嘉 浩
秋 田 県 知 事
佐 竹 敬 久
山 形 県 知 事
吉村美栄子
新 潟 県 知 事
泉 田 裕 彦
石 川 県 知 事
谷 本 正 憲
福 井 県 知 事
西 川 一 誠
山 梨 県 知 事
後
長 野 県 知 事
阿 部 守 一
三 重 県 知 事
鈴 木 英 敬
奈 良 県 知 事
荒 井 正 吾
鳥 取 県 知 事
平 井 伸 治
島 根 県 知 事
溝口善兵衛
高 知 県 知 事
尾 﨑 正 直
熊本県知事職務代理者
熊本県副知事
宮 崎 県 知 事
河 野 俊 嗣
藤
斎
村田信一
我が国は、国土面積 3,779 万 ha のうち森林が 2,508 万 ha
を占め、国土の約7割が森林で覆われた世界有数の「森林国」
であります。森林は、木材等の供給はもとより、美しい自然
景観や観光資源の形成、水源の涵養、山地災害の発生や地球
温暖化の防止に寄与するなど、幅広い多面的機能を通して、
国民の生活や産業経済に欠くことのできない様々な恩恵をも
たらしております。一方、現在の我が国の森林は、これまで
の先人の努力等により、戦後植林された人工林を中心に本格
的な利用期を迎えており、国内の豊富な森林資源を循環利用
することが喫緊の重要な課題となっております。
しかしながら、我が国の林業・木材産業は、近年国産材供
給量が回復傾向にあるものの、平成 26 年の供給量は 2,366 万
㎥(木材自給率 31%)と依然として少ない状況であり、また、
長期にわたる木材価格の低迷等で林業所得の減少や、それに
伴う森林所有者の経営意欲の低下、さらには国産材の生産・
流通構造の改革の遅れなど、引き続き厳しい状況にあります。
このため、森林資源は十分
に循環利用されることなく、
国土面積:3,779 万 ha
森林面積:2,508 万 ha
また適切な森林整備が行き届
かずに荒廃した箇所も目立ち
始めております。最近頻発す
る集中豪雨等では、こうした
森林で土砂災害が多く発生す
るなど、森林の有する多面的
機能の維持・発揮への影響が
国有林
民有林
懸念されております。
こうした中、現在、国を挙
出典:土地利用調整総合支援ネットワークシステム(国土 交 通 省 土 地 ・
水資源局)のデータより国土計画局が作成。ただし北海道の国有林
は 国 土 数 値 情 報 森 林 ・ 国 公 有 地 メ ッ シ ュ (1995 年) を 用 い た 。
1
げて各地で地方創生に取り組んでおりますが、とりわけ有志
18道県においては、我が国の豊かな森林資源を「森のエネ
ルギー」、「森の恵み」として産業振興や雇用創出に活かして
いく『森林(モリ)ノミクス』の推進など、国産材の生産・加工
流通・利用の拡大を図り、林業・山村の振興に取り組んでい
るところであります。
つきましては、政府としても、
「農林水産業・地域の活力創
造プラン」に掲げる「平成 32 年までに国産材の供給量を 3,900
万㎥に増加」(基準年の平成 21 年対比で 2.2 倍)の達成に向
け、森林・林業関連産業のさらなる成長を実現するため、次
の事項について、特段の御理解・御支援を賜りますようお願
いいたします。
1
森林整備の推進について【川上対策】
(1)林業の生産基盤づくり
持続可能な森林経営を推進し、木材の安定供給体制を構築
することにより、林業振興と雇用創出、そして地域の活性化
を図るため、主伐・間伐等の森林整備はもとより、それを加
速化させるのに不可欠な森林の境界明確化や施業の集約化、
路網の整備、高性能林業機械の導入、さらには資源循環のた
めの再造林など、林業の生産基盤づくりに必要な施策につい
て、十分かつ安定的な財源を確保すること。
(2)森林の多面的機能の維持・増進
森林の有する多面的機能を維持・増進させるため、地方財
政措置による森林吸収源対策等の一層の充実を図るととも
に、民有林の適正な管理に対する新たな交付金制度(農地の
2
「多面的機能支払制度」に準じ、民有林の面積に応じて定額
補助する仕組み)を創設すること。
2
国産材の流通・加工施設整備等の推進について【川中対策】
(1)国産材の流通・加工施設の整備
国産材の供給量及び利用量を拡大するため、TPP協定の
発効も見据え、流通・加工施設の生産性向上とコスト低減に
よる体質強化や、攻めの木材・木製品の輸出も視野に入れた
効率的な流通システムの確立に必要な施策について、十分か
つ安定的な財源を確保すること。
(2)林工連携による木材関連産業のクラスター形成
地域の林業を起点とする裾野の広い木材関連産業のクラ
スターを形成するため、木材利用に関する林工連携を進め
る取組みや雇用創出に対する支援の強化を図ること。
3
木質バイオマスの利用拡大について【川中対策】
再生産可能な森林資源を余すことなく有効に利用するた
め、木質バイオマスの発電・熱利用を推進するとともに、製
材端材や林地残材等の効率的な収集・運搬システムの構築や
運搬経費に対する支援など、地域の実情に応じた燃料(木材)
の安定供給に向けた施策を推進すること。
4
国産材を利用した木造建築物等の拡大について【川下対策】
国産材の利用を拡大するため、公共建築物や民間建築物
(住宅・非住宅)の木造化・木質化に向けた施策を政府主導
で強力に推進するとともに、地域材を活用した大型木造公共
施設など複数年にわたる整備についても補助対象にするな
3
ど支援制度を拡充すること。また、新たな国産材の需要喚起
が期待されるCLTの利用を一層拡大させ、さらに 2020 年
東京オリンピック・パラリンピックの関連施設等への国産材
の利用を促進すること。
5 人材育成システム・資格制度の確立について【川上から川下対策】
持続可能な森林経営を推進するため、欧州の林業先進国に
おける森林官(フォレスター)等のような、実効性のある人
材育成システムや国家資格制度を創設し、その社会的な評価
の定着・確立を図ること。また、林業分野の即戦力となるリ
ーダーを育成する農林大学校の運営に対する支援や学生等
を対象とする青年就業準備給付金の充実を図ること。
山形県南陽市
4
市民文化会館
交流ラウンジ