「ゲン木くらぶ」 取材:“子育て”を支える

本稿は、『勤労よこはま』15
年11月号に掲載されました。
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取材:“子育て”を支える
<編集部>
横浜市内で子育て支援に携わる人、施設を取材しました。
∼労使協力による、
社員の子育て支援への取り組み∼
㈱日立製作所事業所内託児施設
「ゲン木くらぶ」(戸塚区戸塚町)
保育士が演じる手作りの人形劇に、小さなこど
もたちがじっと見入っています。一見、保育園と
見間違えるこの施設は、㈱日立製作所の労使の協
力による事業所内託児施設「ゲン木くらぶ」です。
180㎡の真新しい施設に1∼2歳児を中心とした
合ソフト支部の執行委員長仲谷薫さん。「ゲン木
17人の子どもたちが、4∼5人の保育士に見守ら
くらぶ」の園長もつとめています。場所が駅に近
れながら、のびのびと過ごしています。労働組合
いこと、労働会館が独立した建物であるため、近
が所有する労働会館の一階を改装し、2003年4月
隣の日立グループの社員も利用しやすいことか
に開設されたばかりです。
ら、託児所はソフト支部に設置となりました。
「毎月のお誕生会をはじめ、こどもの日、七夕
「ゲン木くらぶは会社から近いので送り迎えが
などの行事を行いました。秋は芋掘り遠足とハロ
しやすいと好評です。父親の送り迎えも増えてい
ウィーンをする予定です。季節感を大切にしてい
ますよ」と、半沢さん。
ます。保育園のプログラムと変わらないですね」
「ゲン木くらぶができてから、グループ会社で
と施設内を案内する日立製作所労働組合ソフト支
協力するとこれだけのことができると会社の中で
部書記長半沢美幸さん。家具に丸みをつけ柱には
も団結力が強まった気がします。男女共同参画の
クッションをつけるなど、子供の目線に立った安
視点から、職場へのアプローチを続けていくつも
全管理を施し、毎月避難訓練を行います。
りです。当初は不安に思っていた保護者の方も、
運営は日立製作所労働組合ソフト支部が中心に
いまではとても良いところに預けたと喜んでくれ
行い、保育事業は民間企業に委託しています。運
ていますね」と仲谷さん。今後は、待機児童が多
営費用は、21世紀職業財団の事業所内託児施設助
く保育のニーズの多い0∼2歳児が中心になると
成金と、㈱日立製作所と日立グループ会社など21
予想しています。労使の協力による子育て支援は、
の支援団体からの分担金拠出及び保護者からの利
まだ始まったばかりと言えるでしょう。
用料により賄われています。
「ゲン木くらぶ」の開設前は、施設前方の道路に
「社内で調査したところ、全国でも横浜市が待機
は違法駐輪、違法駐車が多かったのですが、区役所
児童の問題が深刻でした。日立グループの社員が
や警察の協力を得て取り組んだ結果、今ではほと
多く居住・勤務し、社員の託児所設置の需要が高
んどなくなりました。今回の事業所内託児施設の
かった戸塚区に設置することになりました。組合
設置が会社全体を明るくし、地域全体が良くなる
事務所が保育施設になるとは、はじめは想像もで
方向に向かえばと、仲谷さんたちは考えています。
きませんでした」と、語るのは日立製作所労働組
ゲン木くらぶ概要
所在地:〒244-0003 横浜市戸塚区戸塚町5030
(日立製作所労働組合ソフト支部労働会館1F)
TEL/FAX
045-861-7415
代表者:仲谷 薫(日立製作所労働組合ソフト支部
執行委員長)
設置運営方法:ピジョン㈱に委託。
保育時間:7:30∼20:00(運営日は月∼金曜日)
保育対象:0歳児∼小学校就学前の乳幼児(定員25名)
*㈱日立製作所は平成13年3月から「ジェンダー・フリー&ファミリー・フレンドリー・プラン」
(F.F.プラン)を推進しており、性別を意識し
ない人材活用とプロとして納得できる仕事をしながら家庭を両立させていく、社員が働きやすい環境を整えていくことに取り組んでいる。
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勤労
2003・11
∼地域で共に育ち合う
子育て環境づくりをめざして∼
秋祭り
(10月18日)
NPO(特定非営利活動)法人
びーのびーの(港北区篠原北)
「おはようございます」乳幼児を連れてお母さ
んが次々入ってきて、あっという間に親子の輪が
できあがります。菊名駅から歩くこと数分。菊名
駅西口商店街の一角に「おやこの広場びーのびー
木のおもちゃや絵本の委託販売など事業は多岐に
の」はあります。児童館のような“乳幼児とその
わたります。3月には、市域のネットワークに入
親が集える、気軽に行くことができる施設”が身
り、「よこはま1万人子育てフォーラム」を開催す
近になかったことから、「0∼3歳児とその親が一
るなど、なかなか届きにくい育児をする母親たち
緒にくつろげる場所がほしい」という思いで、子
の声を絶えず発信しています。
*3
育て真っ最中のお母さんたちが作った施設です。
お父さんのための育児講座などのイベントも何
「開設準備の際、0123吉祥寺を見学させてもら
回か開催しましたが、「正直言ってうまくいかな
い、これと同じものを地元の港北区にほしい!と
かった。」仕事で忙しいお父さんに育児参加を呼
思ったのです。既存の施設や空きスペースを借り
びかけても、今の状況を汲み取った上で、お父さ
るのも考えました。しかし、乳幼児たちが気軽に食
んたちが“楽しめる”ようでないと自主的に参加
べて、寝て、遊ぶとなるとなかなか難しい面があり
してくれないだろうと分析します。しかし、そう
ます。
“乳幼児と親のためのもうひとつの家”
がコン
した活動の中からお父さんだけのグループ「劇団
セプトにあり、常に拠点としてあることが大事だ
パパびーの」が生まれました。
*1
ろうと考え、商店街の空き店舗を借り上げて常設
2000年4月に開設して4年目を迎え、今では商
にしたのです」と副代表
(事務局長)
の原美紀さん。
店街の一員として、お祭り等のイベントにも参加、
約70㎡のフローリング張りのスペースには、絵
企画も行います。夏にはビアガーデンを、秋にはフ
本、木や布のおもちゃがあり、湯沸かし器やオムツ
リーマーケットや「パパびーの」による人形劇の公
換えの場所も用意され、会員はいつでも立ち寄る
演も行いました。
「開設する前はこのような広がり
ことができます。現在、月の有効会員は平均100組
をもてることになるなんて想定していませんでし
で、1日平均で17∼20組の親子が利用していくそ
た。乳幼児のことだけを考えるのでは済まなくな
うです。運営にあたるのは、約30人のスタッフと
りましたね」と原さん。地域の子育て支援から始ま
学生ボランティアや子育て経験のあるサポーター
った活動も今や“街づくり”にまで及んでいます。
など約60人。昨年から、横浜市の親と子のつどいの
建物の前でビニールプールを出して、水遊びを
広場事業の補助を受け、会費を引き下げました。
したり、三輪車で遊んでいると、帰宅途中の人、
*2
「ひろば」以外にも、子育てに関する講演会や
地域のお年寄りをはじめ、いろいろな人が声を掛
イベントの開催、幼稚園・保育園ガイドの発行や
けてくれるそうです。地域の人々の愛情とスタッ
フの情熱がこの施設を支えています。
N P O(特定非営利活動)法人びーのびーの
理事長:奥山千鶴子 事務局長:原 美紀
2000年2月設立。4月に港北区に開設。
〒222-0021横浜市港北区篠原北1-2-18
☎(439)7447 FAX(439)7448 開館時間9:30∼16:00
(休館日:土曜日(第一土曜日は開館)、日曜日、
祝祭日、年末年始、特別休館日)
<ホームページ>http://www.bi-no.org
*1「 0 1 2 3 吉祥寺」0歳から3歳までの子どもとその親が、いつでも気軽に遊びにくることができる子育てのひろば。92年、武蔵野
市が開設した。*2「親と子のつどいのひろば事業」子育て支援など行っている団体(NPO法人等)に対し、運営経費の一部を横浜市
が補助している。*3「よこはま1万人子育てフォーラム」横浜市18区にまたがる子育て支援団体及び、個人からなるネットワーク。
昨年度は市の協働事業として『乳幼児の居場所』調査(報告書も作成)実施。今秋には4ブロックでミニフォーラムを市内各区で開催。
勤労
2003・11
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