■ほとんど学習内容が予定通り終わりそうですので、今後修了式までは 学習面から 基礎学力の反復学習を進めていきます。つまり、 読み・書き・計算です。 読みは、音読ですね。書きは、視写・漢字力・五十音です。計算は、繰り上がり・繰り 下がりの暗算です。この辺のところを確認していきたいと思っています。 最近の国語科の授業を紹介します。教育の最終目的の1つには、「自己教育力」がある と考えております。つまり、こういうことです。 担任がついていなくても、一人で学習していけること。 これは、家庭教育も一緒だと思うのですね。つまり、こういうことです。 20歳の成人になるまで、社会で一人で生活できるようにしてやること。 いつまでも「親の臑かじり」ではいけないのですよね。これと同じです。学校教育でも ある程度、似たようなことがあると考えています。もちろん、1年生にそれを要求するこ とは不可能ですので、初歩的なことを伝えていきたいと念じているところです。そんな授 業を紹介します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 5W1Hで物語の解読作業 5W1Hとは、「いつ」「どこで」「だれが」「何を」「どのように」「なぜ」の6観 点である。「たぬきの糸車」は、物語教材である。音読・漢字の学習をした後、以下のよ うな授業をした。 5W1Hという学習手段・方法論をもっておくと、物事を読解していく時の目安と なる。ここでは、物語文をどうやって学習していくかという時に、「いつ」「どこで 」・・・と考えていくことで、物語文を1人でも解読が可能となること。1年生には 1年生なりに、力をつけていきたい。物語文の学習目標は、「その物語が皆に伝えた いこと」つまり「主題」を見抜くことである。ちなみに、説明文の学習目標は、1段 落を30字以内での要約と構造を見抜くことである。(1年生では、構造までいくこ とはないが) なお、発問は中心的なものが以上のように6つ(5W +1H =6つ)で、それぞれの改 良型や追加的補助発問から構成されている。もちろん、構成なんて言っているが、授業中 に考えながらやっていった結果であって、構成というような代物ではない。又、途中経過 であることを断っておく。 〔When〕 発問1:いつのお話ですか。 これが意外と100%正解は出ない。「むかし」とか「月のきれいなばん」とか、バラ バラである。正解は「むかし、ある月のきれいなばんのこと」である。 〔Where〕 発問2:どこでのお話ですか。 同様に、正解は「ある山おくの一けんや」である。 〔Who〕 発問3:誰が出てきましたか。 これもなかなか正解が出ない。「たぬき」と「おかみさん」までは出てくるのだが、最 後にやっと「たぬき」と「きこりのふうふ」に落ちついた。 〔What〕 発問4:何が中心に出てきましたか。3の答えは除いてです。 「主に」ということである。挙げれば切りがないからである。「板戸」や「土間」まで 案の定だされた。でも、これはこれで、よく読んでいる証拠でもあるのだが。 補助発問4:水戸黄門は見たことがありますか。(半分程挙手) 水戸黄門には絶対 になければならないものがあります。それは何でしょうか。 これも面白い。いろいろなものが出てきた。最初に「印籠」(もちろん、こんな表現で はなく、子どもたちは「紋所」と答えた)、次に「侍」「助さん」「角さん」・・・・。 次のように説明した。 説明1:「侍」でも悪くはないのですが、「悪役」なのですね。(「あーそうか」と いう声) これがいないと、水戸黄門がやつける人がいなくなるので、面白く も何ともないよね。この2つがあるから面白いのですよね。 そんな風に考えると、「印籠」( =紋所 =黄門)と「お金」?( =悪代官 =敵)という ことになるのだろうか。(ここの部分は言及しなかった。) 途中、「水戸黄門なんか知らん」という子が出てきたので、「『ウルトラマン』や『仮 面ライダー』と一緒だよ。怪獣や怪人が出てきたりするでしょう。それと同じですよ。」 と。 改定発問4:言い直します。大事なものとは何でしょうか。2つ挙げなさい。3の答 えは別にしてだよ。 前者(悪役の話)のように助言したら、子どもたちが「面白い」と言って、探し始めた ドンドン挙手してきた。 正解は、「糸車」と「わな」である。 「わな」がなかったら、「糸車」を触ることもなかったのである!! 「わな」から救 ってくれたおかみさんへの恩返しなのだ。「わな」がなかったら、この題名は「おかみさ んの糸車」なのである。これでは普通の題で面白くも何ともない。「たぬきの糸車」と出 すところに、「エッ、たぬきが糸車を?」という読んでみたいという欲求を引き起こす。 そして、「アッ、そうか!」という充実感を読後にもたらす。これが物語の舞台だ。「た かが物語、されど物語」なのである。 指示1:では、なぜこれが大切か、水戸黄門みたいに説明しなさい。 数人の子が立った。10人位いたろうか。ここでは、「少ないようだから、次の時間に 聞くことにしましょう。大事なことだから、次の時間にとっておきましょう。考えられる 人は、その間に考えておいて下さい。」と言って、次に進む。 〔How〕 発問5:どんな音が聞こえましたか。順にノートに書きなさい。 これまた、子どもたちはいい加減である。次の ⑴の部分のみを書いて安心しきっている そのために、「順にノートに書きなさい」とあえて指示したのに。 ⑴:「キーカラカラ キーカラカラ キークルクル キークルクル」 キーカラカラ キークルクル キークルクル」 ⑵:「キャーッ」 ⑶:「キーカラカラ ⑴と ⑵までは書けるが、 ⑶がなかなか書けない。書けた子は、5人程いたようだ。「や っぱりね。」とニンマリしていた。 補助発問5: ①「キャーッ」は何の音ですか。 →たぬきの声とわかる。 ②最初の「キーカラカラ・・」と最後の「キーカラカラ・・」とは、何 が違うのですか。 これは、大勢が口を尖らせて答えてきた。最初はおかみさんの糸車で、最後のはたぬき の糸車であるということだ。黒板に、それぞれ「おかみさんの糸車」「わな =たぬき(の 声)」「たぬきの糸車」と書き加える。 説明2:(黒板を指して)皆、ここで面白いことに気づきませんか。 ⑴と ⑶は糸車で ⑵はわなだよね。4番の答え、「糸車とわな」と同じになってきたね。 そしたら、子どもたちが一斉に「面白い」と連呼しだした。ここに、物語の醍醐味があ るのだ。これを見抜けるような子どもたちにしていきたい。 〔Why〕 発問6:なぜ、たぬきはうれしがって帰っていったのでしょうか。 子どもたちの答えを全て振り返ってみよう。いろいろな答えが返ってきた。毎度のこと ながら、1年生の答えは、途轍もなく面白い。高学年は担任できなくなる。 〔1〕おかみさんのお手つだいができたから。 〔2〕はじめていいことをしたから。 〔3〕糸車をまわせたから。 〔4〕おかみさんがよろこんだこと。 〔5〕糸がたくさんできたから。 〔6〕おかみさんがたすけてくれたから。 〔7〕おかみさんが見ていてくれたから。 〔8〕おかみさんが帰ってきたから。 〔9〕おかみさんがおどろいたから。 〔10〕ほめられたつもりだから。 〔11〕おんがえしができたから。 補助発問6 −1:この中で絶対に違うものは、どれだと思いますか。又、それはなぜ ですか。 尋ねてみたら、それぞれに同数ずついたので、こちらで指定した。 補助発問6 −2:〔6〕と〔8〕は明らかに違います。それは、なぜでしょうか。 〔6〕の理由はこうだ。助けてくれたのは、ずっと前のことで、ここで喜んだらおかしい ということだ。ここは、数名指摘することができた。〔8〕は、文末に「のぞかれている のに気」づいてからうれしがって帰って行ったわけだから、「帰ってきた」のが直接の原 因ではないということになった。 補助発問6 −3:〔2〕も明らかに違います。つまり、「はじめて」ではないのです それは、なぜですか。 答えは、「国語科の答えは、文章の中にあるのです。」という口癖を繰り返す。「どこ に書いてあるのですか、はじめてではないということが。」と指示を出し、しばらく待つ 何人かが答えた中で、光る答えが出された。 子どもの解説:80ページの2行目に、「いたの間に、白い糸のたばが、山のように つんであったのです。そのうえ、ほこりだらけのはずの糸車には、まき かけた糸までかかっています。」とあります。はじめてなら、「山のよ うに」なっていないと思います。 おおいにほめた。よく読めている子は、このような「細かい」ことに気づくのである。 その通りなのだ。文章までは指摘できるが、説明ができないという子が3名いたが、その 子たちはあと一歩なのである。そして、「いまの箇所に、もう1つはじめてでないという ことがわかるところがあるよ。」というと、多くの子が「ハイハイ」と手を挙げた。つま り、正解は「ほこりだらけの『はず』の糸車」というところである。 まずは、どこに書いてあるのかがわかる ⇨そして、その説明ができる、というような状 況まで持っていきたいと考える。 これ以上は、進めなかった。考えてくるように、との指示を出す。話題を変え、前回の 発問4に返る。 新発問4 −1:「わな」と「糸車」が大切だという話をしました。「わな」は、なぜ しかけられたのですか。 4 −2:どんな「いたずら」をしたのですか。 4 −1は、簡単に「いたずらをするから」と出された。その上での4 −2である。する と、以下のような答えが返ってきた。 <1 >糸車をまわしたこと。 <3 >糸車のじゃま <2 >やぶれしょうじをやぶったこと。 <4 >かってに見たこと。 新発問4 −3:明らかにおかしいのは、どれですか。その理由も考えなさい。 <2 >「やぶった」とは、書いていない と多くの子指摘することができた。随分と国語 の学習方法に慣れてきたようだ。 <1 >「まわした」とは、書いていない、「まねをした」と書いてある 〃 問題は、 <3 >と <4 >である。 新発問4 −4:おかみさんは、たぬきがのぞいているのを、じゃまだと思っています か。思っていませんか。 全員が「思っていない」と言う。「なぜですか。」と聞き返すと、答えられない。 説明3(&発問):そうですね。じゅまだとは思っていないようです。では、それが わかる文章があります。さあ、どこなのですか。国語の答えは、文 章の中にあるのでしたね。 (一番前の子に、わざと勉強の邪魔をする) 今から、○○君の勉強の邪魔をします。教科書を取り上げます。 筆箱も取り上げます。(○○君発言)「何、すんの!」 そう、じ ゃまをされたら、怒るよね。さあ、どこか見つけなさい。 1人(先程とは別の子)だけ挙手したので、指名した。 子どもの解説:76ページ後ろから2行目に、「おかみさんは、おもわずふき出しそ うになりましたが、」とあります。これは、わらっているような感じだ から、じゃまだとは思っていないと思います。 おおいに褒めた。その通りである。そしたら、ある男児が「ふき出しって、何?」とい う発言。そこで、辞書の登場である。 指示2:「ふき出す」を国語辞典で引きなさい。 クラスで20人位が常時持っている。1人が引き出すと、数人ドンドン引き出してくる まだまだ五十音順が定かでない子が迷っている。1年生だから当然である。教えに行くし 教えにやらせる。 そして、意味が3つあることに気づく。辞典によっては、2つだったり、4つだったり する。そして、1つ1つ確認をしていく。 説明4: ①を読みなさい。「風が吹く」というような意味ですね。「おかみさんは、 おもわずふき出しそうになりましたが、だまって糸車をまわしていました。」 どうですか。風と関係がありますか。ないね。では、 ②を読みなさい。・・・ ・・・では、 ③を読みなさい。「笑いだす」ようなことですね。「おかみさん は、∼∼∼」 どうですか。関係がありますか。(「あ、これだ」という声) ありますね。大ありですね。そのまんまですね。辞書にいくつかの意味が書い てある時は、このように文章にあてはめてみるのです。 さて、こんなことで、おかみさんは、じゃまというより、むしろ楽しんでい るようですね。ということは、これはいたずらではない。!! 問題は、 <4 >である。これに関しては、以下のように話した。 説明5:このことに関しては、教科書には全然出てきていません。ここは、自分で勝 手に考えるしかありませんね。ちなみに、先生は、「かってに見たこと」はい たずらではないと思います。それは、相手に迷惑をかけていないと思うからで す。もちろん、皆はこれをいたずらと思っても構いません。例えば、人の家を 勝手に覗き込むことは、いたずらだ、とね。!! ここは、考えは自由です。 たまには、日記に1日の思い出を書くのではなく、授業の続きで、自分の考え をまとめるような、「考える日記」もやってみましょう。 ところで、先生は、この物語には、どんないたずらをしたかについては書い てないと思います。皆はどう思いますか。どんないたずらをしたのか、予想し てみるのも物語の面白いところですよ。 以上は途中経過を紹介した。
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