地域のネットワークを活用した 認知症の啓蒙活動

ソーシャルワーク
スキルアップ特集
認知症の啓蒙! 地域・家族へ正しく理解してもらう試みと工夫
地域のネットワークを活用した
認知症の啓蒙活動 ∼“みなサポ”の活動から
(取材:1グループ)
南区認知症サポートネットワーク(みなサポ)構成員
社会福祉法人十条龍谷会 特別養護老人ホームビハーラ十条
主任生活相談員 増田良平
2007年3月介護福祉士取得。2009年3月花園大学社会福祉学部卒業。同年4月社会福祉法人十条龍谷会入職。
介護職員を経て,2011年9月生活相談員,2014年4月主任生活相談員。2015年3月社会福祉士資格取得。
ビハーラ十条は,京都市南区にある定員108
力を得て,区内の認知症サポートリーダー
人(入所100人,ショートステイ8人)のユ
(写真1)の有志で認知症の啓蒙活動を行っ
ニット型特別養護老人ホームで,2005年に設
てきました。その活動もあり,南区における
立され11年目を迎える施設である。開設当初
福祉,とりわけ認知症の理解は進んでいると
より地域への情報発信や地域貢献などに力を
思います。ですので,すごく活動しやすいで
注いできた当施設において,認知症の啓蒙活
す」と話してくれた。
動に関する取り組みについてお話をうかがう
ここ数年,メディアでも認知症について大
ため,主任生活相談員の増田さんを訪ねた。
きく取り上げられており,前述のような地域
地域住民の福祉への理解
増田さんに南区の地域の実情についてうか
がうと,
「ビハーラ十条がある京都市南区でも,
高齢者や認知症の方の増加といった地域課題
での取り組みと合わせて,認知症への理解度
は高まってきていると言える。
南区認知症サポートネットワーク
“みなサポ”
を抱えています。そのような中,南区社会福
▶設立の経緯と構成メンバー
祉協議会,福祉介護事業所,南区役所内の協
京都市南区では,2011年度から2020年度ま
写真1 認知症相談アドバイザー認証式の様子
での南区基本計画の基本指針として「高齢者
が住み慣れた地域で生き,健やかに暮らせる
地域づくり」ということが示されている。その
中には,地域包括支援センター運営協議会,
介護保険事業者連絡会などの関係者,関係機
関などを充実し,区レベルでのネットワークを
充実・強化すること,認知症あんしんサポー
ターの育成とまち全体での支援の充実などの
認知症サポートリーダーとは,認知症に関する基本的な
知識や介護経験などがある介護専門職で,講師として
地域住民に認知症の啓蒙活動を行う者を言う。
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相談援助&業務マネジメント Vol.6 No.4
項目が示されている。このことから,有志によ
る活動からさらに南区役所と連携を強化すべ
く「南区認知症サポートネットワーク」
(通称:
資料1 南区認知症サポートネットワーク
南区役所
・介護保険係
・支援2係
・介護サービス事業所
・地域包括支援センター
公的連絡窓口
下京区・南区認知症ケア地域連携協議会
認知症相談アドバイザー
・南区各学区社会福祉協議会
・南民生児童委員会
・下西・下東医師会(再掲)
・南区支援課(再掲)
・南区社会福祉協議会(再掲) ほか
南区地域包括
支援センター
運営会議
南区事業者等
連絡会議
認知症アドバイザー
相談・調整・連絡窓口
・下西,下東医師会
・下西医療福祉ネットワーク
委員会
・南区社会福祉協議会(再掲)
・下京区,南区役所(再掲)
・東九条ネットワーク連絡会
ほか
身近な窓口
(みなサポ)
地域住民
南区地域福祉推進会議
福祉事務所
みなサポ)へと名称を変更して新たな形で活
・南消防署
・介護者家族の会
・南区社会福祉協議会
・老人クラブ連合会
・南保健センター
・介護予防推進センター ほか
写真2 認知症あんしんサポーター養成講座
動し,みなサポの中心メンバー(15人)は南
区長より南区認知症相談アドバイザーとして
認証され,増田さんも参加している。
みなサポの構成メンバーは特別養護老人ホー
ム,地域包括支援センター,居宅介護支援事業
所,デイサービスセンター,民間企業のメンバー
などで構成されている。さらに,みなサポの運
営には区役所,南区社会福祉協議会もサポート
メンバーとしてかかわっている(資料1)
。
祉協議会との連携を図った上で取り組んでい
増田さんはこのように複数の事業所でネッ
くことの重要性について説明してくれた。
トワークを組むことに関して,
「ビハーラ十
条だけで認知症の普及を含めた地域貢献活動
を実践することは難しいです。しかし,この
地域のネットワークを活用して
取り組む認知症の啓蒙活動
ような形で多くの事業所とネットワークを組
みなサポの活動は,幅広い層に対して「認
むことで活動しやすくなります。また,福祉
知症」に関する理解の普及活動と具体的な支
介護事業所だけでなく,南区役所,南区社会
援を行うためのネットワークの構築,それに伴
福祉協議会とも連携を取りながら進めていく
い認知症の人やその家族が住み慣れた地域で
ことで,さらに動きやすくなります」と,地
安心・安全に暮らし続けるまちづくりを推進し
域の関係各団体だけではなく,行政や社会福
ていくことを目的としている。この認知症の理
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資料2 あんしん相談窓口ステッカー
多いということはありがたい』という声が聞
かれるようになりました。その後,民生委員
を介して,自治会,小中学校からの講演依頼
が増え,地域の方の認知症理解に関する普及
活動が広まっていきました」と,講座開催の
効果について話してくれた。
さらに,
「地域の子どもたちに講義をするこ
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登録事業所にステッカーを貼る
とで,認知症に対する認識も変わっていきま
解を普及させる取り組みの一つが「認知症あ
い,すぐに忘れてしまう”ととらえていた子ど
んしんサポーター養成講座」である(写真2)
。
もたちが,講座を聞くことで“困っている人が
また,認知症のことについて相談できる身近
いたら声をかけてもよい”というふうに考え
な場所として,区内の福祉・介護保険事業所
方が変わっていったそうだ。さらに“笑顔で接
(2015年度9月現在89事業所)に「認知症あ
する必要がある”という理解にまでつなげら
した」と言う。これまでは,
“認知症の人は怖
んしん相談窓口」が設置されている(資料2)
。
れたという。
「実際に講義を行い,その中で話
▶認知症あんしんサポーター養成講座
し合いをしてもらうこともありますが,
『これ
特に力を入れて取り組んでいるのが,認知
からはこうしましょう』という前向きな声も
症あんしんサポーター養成講座である。認知
聞かれるようになりました」と話してくれた。
症あんしんサポーター養成講座とは,認知症
増田さんは,
「認知症に関する講座に限らず,
あんしんサポートリーダー養成研修を受けた
幼少期からこのような経験をすることはとて
者が,認知症に関して正しい知識を伝え,認
も大切です。こうした経験によって,地域の
知症の人に対してできることを考えてもらう
子どもたちが大人になった時,高齢者への接
ための講座である。京都市では「認知症あん
し方が適切なものとなっていくと思います。
しんサポーター」と呼ばれているが,他地域
将来的によい地域づくりに役立つ取り組みに
では別の名称で呼ばれている場合もある。
つながると信じて実践しています」と,今起
この講座は2006年から実施しており,南区
こっている事柄への対応だけではなく,将来
では2009年度からみなサポが主となり講座の
的な地域づくりも見据えて取り組んでいるこ
開催回数が飛躍的に伸びた。増田さんを含め
とを話してくれた。
たみなサポのメンバーも積極的に地域で講座
▶みなサポ捜索ネット
を実施している。その甲斐あって,2012年度
認知症の人の増加により,認知症の人が行
には南区の1年間の講座の開催回数が京都市
方不明になるという事例も地域で課題となっ
内で一番になった。
ている。そこで,みなサポでは,認知症の啓
増田さんは「一番になると地域の意識も変
蒙活動だけではなく,地域の行方不明者を捜
わってきました」と言う。また,「民生委員
索するネットワークを約3年前から運用して
からは『ほかの区よりも講座を受ける機会が
いる。年々捜索のオーダーは増えており,初
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