Ca拮抗薬による降圧治療は, 高齢高血圧患者の転倒リスクを

CVD O ver View
Ca拮抗薬による降圧治療は,
高齢高血圧患者の転倒リスクを低下させる.
Reexamining the Effect of Antihypertensive Medications
On Falls in Old Age
高齢者の転倒に対する降圧薬による影響の再検証
メディケア医療保険受給者現況調査による高血圧患者 4,961 例を対象とした 2014 年
の 観 察 研究では,無 治療 の患者と比 較して降圧 治療を受けた 患者の転 倒リスクが上昇
したと報告している.他の研究でも降圧薬を処方された高齢者で転倒リスクが上昇する
ことが示唆されている.
一方 で,R A 系 阻 害 薬 な ど に よる 長 期 降 圧 治 療 は ,脳 血 行 動 態 を 維 持し ,脳 灌 流 を
増 加 させ,大 脳白質 病 変の 進行を抑制する可能 性が示唆されている.最 近 報告された
前 向 きコホート 研 究 で は,ACE 阻 害 薬や A RB は 高 齢 者 の 転 倒リスクを 低 下さ せる
こと が 見 出 さ れ た.この ように 降 圧 薬 と 転 倒 に 関 するエビ デ ン ス に は 矛 盾 が あり ,
不 適 切 な 降 圧 治 療 につな がりか ね な い.そこで 本 研 究 で は,降 圧 薬 の 種 類 別 に 長 期
使 用と転 倒との関連を明 確にするとともに,投与量の 影 響及び 転 倒リスクが脳血 流 の
差 異に関連しているかどうかを評価することを目的とした.
方法
米国,ボストンの高齢者研究(MOBILIZE Boston Study)に登録された70-97歳の
高血圧患者598例からベースラインデータを収集後,転倒に関する1年間の前向き観察
研究を実 施し,人口統 計学データ,臨床的特 徴,降圧 薬 の長 期使 用を評価した.転倒に
ついては,意図せず床,地面,またはより低い平面に倒れることと定義し,1年間の追 跡
期 間 中,1回 以 上 の 転 倒 を 主 要 アウトカムとした .降 圧 薬 はα遮 断 薬 ,A C E 阻 害 薬 ,
ARB,β遮断薬,利尿薬,Ca拮抗薬の6種類に分類した.
高用量のCa拮抗薬使用患者は,転倒リスクが有意に低下していた.
図 1 Ca 拮抗薬の用量別転倒リスク[OR(95%CI)]と脳血流速度
室内での転倒
ベースライン時の
脳血流速度(cm/s)
すべての転倒
高用量
(n=61)
42.3±10.0
43.7±13.5
低/標準用量
(n=112)
p=0.01, vs 使用なし,
Tukey検定;post-hoc
使用なし
(n=420)
40.0±9.8
0.15
0.5
1
2
0.15
0.5
1
2
文献中 図下部より抜粋一部改変
発行 : バイエル薬品株式会社
Cerebro vascular disease
背景
Over View
Lipsitz LA et al:Hypertension. 66, 2015
Ca拮抗薬による降圧治療は,高齢高血圧患者の転倒リスクを低下させる.
高用量のACE阻害薬使用患者は,室外での転倒リスクが有意に低下していた.
図 2 ACE 阻害薬の用量別転倒リスク[OR(95%CI)]と脳血流速度
室外での転倒
ベースライン時の
脳血流速度(cm/s)
負傷を伴う転倒
42.5±11.2
低/標準用量
(n=121)
41.8±9.0
使用なし
(n=388)
40.1±11.0
0.15
0.5
1
2
0.15
0.5
1
2
文献中 図上部より抜粋一部改変
高血 圧 患者 598 例の患者 背景は,平均年齢 78.4 歳,372 例(62.2%)が女 性,449 例
(75.1%)
が白人であった.1年間で 541件の転倒が報告され,331例
(55.3%)
は転倒せず,
267 例(44.7%)が1回以上転倒した.試験開始時に 262 例(89.5%)が定期的に降圧薬を
使用しており,薬剤の使用比率は ARB(12.8%)
,ACE 阻害薬(34.7%)
,
α遮断薬(7.1%)
,
β遮断薬(51.9%)
,Ca 拮抗薬(29.3%)
,利尿薬(47.0%)であった.
降圧 薬 の 使 用が 転 倒リスクを上 昇させることはなく(調整 多変 量ロジスティック回帰分
析;オッズ比(OR), 0.76; 95% 信頼区間(CI), 0.42-1.35)
,種類別に見ると,ACE 阻害
薬は負傷を伴う転倒(OR,0.62;95%CI,0.39-0.96)のリスク低下に,Ca 拮抗薬は
すべての転倒(OR,0.62;95%CI,0.42-0.91)及び室内での転倒(OR,0.57;95%CI,
0.36-0.91)のリスク低下に有意に関連していた(p<0.05)
.その他の降圧薬と転倒リスク
との関連には有意差が認められなかった.
高用量の Ca 拮抗薬の使用では,使用なしと比較して,すべての転倒(OR,0.44;95%CI,
0.24-0.82;p=0.03)及び室内での転倒(OR,0.31;95%CI,0.14-0.69;p=0.01)の
リスクが 有 意に低 下していた(図 1)
.ベースライン 時 の 脳 血 流 速 度(cm/s)は使 用なし
(40.0±9.8)
と比較して,
使用している患者
(43.3±12.5)
で有意に高かった
(p=0.02, 検定)
.
また,高用量の ACE 阻害 薬を使 用している患者は,使 用なしと比 較して,室 外での転 倒
(OR,0.40;95%CI,0.18-0.92;p=0.04)
のリスクが有意に低下していたが(図 2), ベース
ライン時の脳血流速度は使用なし(40.1±11.0)
と使用している患者
(42.0±9.9)
で有意差が
認められなかった(p=0.14, 検定)
.
結論
高 齢 高 血 圧 患 者 に 対 する 降 圧 薬 治 療 は 転 倒 の 強 力 なリスクに なら な い こと が 示 唆
された.降圧 薬を高用量で使 用しても転 倒リスクの増加と関連はなく,Ca 拮抗 薬では
すべての転倒と室内での転倒のリスクが低下した.
高齢高血 圧 患者を治療する際,転 倒予防の 観 点から降圧 薬 の 使 用を控えることは妥当
な処置ではないだろう.高齢高血圧 患者には,降圧 薬を少量から慎重に増量し,適切な
用量で長期使用することで,転倒リスクの上昇を回避できると考えられる.
Cerebro vascular disease
結果
Over View
高用量
(n=80)
Lipsitz LA et al:Hypertension. 66, 2015
●10mg ● 20mg ● 40mg
(2015年6月作成)L. JP. MKT. CN. 06. 2015. 2050