国分ダイコンの特徴と pH 調整による色の変化 鹿児島県立国分高等学校理数科2年 生物班 有村愛・新富七海・中間大希・西奈々子・福留夏生・山本悠司・米松沙耶香 はじめに 鹿児島の地ダイコンである国分ダイコンは,抽根部が淡赤紫色,葉がやや赤みがかった緑 色といった特徴をもっている。私たちはまず,国分ダイコンを栽培し,本葉の形状が生長とともにどの ように変化していくのかを調べた。また,アントシアン系の植物色素は,pH の変化に対して連続的に 色の変化をすることをふまえ,pH 条件を変えて生育させることで国分ダイコンの色がどのように変化 するかの観察実験を行った。 1.国分ダイコンの本葉の測定 (材料) 国分ダイコン,横川ダイコン,耐病総太り (方法) ① 発芽後本葉が出てきたら,3 番目に大きい本葉を選び,小葉に上から順にⅠ,Ⅱ, Ⅲと番号をふる。② 各小葉の長径,短径を毎日測定し,記録する。 (結果) (cm) 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 国分ダイコンⅠ 国分ダイコンⅡ 国分ダイコンⅢ 横川ダイコンⅠ 横川ダイコンⅡ 横川ダイコンⅢ 耐病総太りⅠ 耐病総太りⅡ 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 25 26 27 28 29 30 31 01 02 03 04 05 06 07 08 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 10 10 10 10 10 10 10 11 11 11 11 11 11 11 11 耐病総太りⅢ 図 1A 小葉Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの長径(平均値) (cm) 16 y = 0.6093x - 24653 R2 = 0.9165 14 12 y = 0.3652x - 14775 R2 = 0 . 9 4 8 9 10 8 国分ダイコンⅠ 6 y = 0.5026x - 20337 R2 = 0.8941 4 2 横川ダイコンⅠ 耐病総太りⅠ 0 5 47 40 6 47 40 7 47 40 8 47 40 9 47 40 0 48 40 1 48 40 2 48 40 図 1B 小葉Ⅰの長径(近似曲線を追加) 3 48 40 4 48 40 5 48 40 6 48 40 (cm) 国分ダイコンⅠ 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 国分ダイコンⅡ 国分ダイコンⅢ 横川ダイコンⅠ 横川ダイコンⅡ 横川ダイコンⅢ 耐病総太りⅠ 08 日 07 日 耐病総太りⅢ 11 月 06 日 11 月 05 日 11 月 04 日 11 月 03 日 11 月 02 日 11 月 01 日 11 月 31 日 11 月 30 日 10 月 29 日 10 月 28 日 10 月 27 日 10 月 26 日 10 月 10 月 10 月 25 日 耐病総太りⅡ 図 2A 小葉Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの短径(平均値) (cm) 12 10 y = 0.5172x - 20927 R2 = 0.9565 y = 0.4733x - 19151 R2 = 0.927 8 6 y = 0 .3 2 0 1 x - 1 2 9 5 3 4 R 2 国分ダイコンⅠ = 0 .9 8 3 横川ダイコンⅠ 2 耐病総太りⅠ 0 日 24 月 10 日 25 月 10 日 26 月 10 日 27 月 10 日 28 月 10 日 29 月 10 日 30 月 10 日 31 月 10 1日 月 11 2日 月 11 3日 月 11 4日 月 11 図 2B 小葉Ⅰの短径(近似曲線を追加) (考察) 小葉Ⅰの長径,短径の経時的変化を比較すると,国分ダイコンは他のダイコンに比べて グラフの傾きが小さい。これより,国分ダイコンは初期の生長速度が遅いと考えられる。 今回は 1 度しか測定していないため,再度測定し確認する必要がある。 (今後の課題) ・本葉への目印の付け方を変える (今回はひもで行ったがひもが原因で本葉が折れてしまったため) ・小葉Ⅰ,Ⅱ,Ⅲを区別する印をつける。 ・継続して,長期間のデータをとる。(食葉性の害虫から葉を守る) ・小葉の測定場所を細かく決める。 2.pH の違いによる色の変化 【確認実験】 国分ダイコンの本葉から抽出した色素を用いて,実際に pH の違いによって色の変化 が見られるか確認を行った。 (材料・使用器具) 国分ダイコンの葉,エタノール,蒸留水,袋,お湯,ボウル,ロート,ろ紙, ビーカー,駒込ピペット,試験管 pH3.0~p10.0 の緩衝液 pH 試薬 3.0,4.0,5.0,6.0 クエン酸 ,クエン酸カリウム 7.0,8.0 リン酸二水素カリウム,水酸化ナトリウム 9.0,10.0 ホウ酸,塩化カリウム,水酸化カリウム (方法) エタノールで抽出する方法と蒸留水で抽出する方法の両方で実験を行った。 ①国分ダイコンの本葉を細かく刻む。 ②袋に①とエタノールを入れたもの,①と蒸留水を入れ たものを用意する。 ③それぞれ湯煎して揉む。 ④③で得られた液体をそれぞれろ過する。 ⑤試験管にろ液を入れ,pH3.0~pH10.0 の緩衝液を入れる。 ⑥色の変化を観察する。 (結果) < pH の違いによる色の変化> 図 3 エタノールで抽出したもの 図 4 蒸留水で抽出したもの エタノールで抽出した場合 蒸留水で抽出した場合 緑色 青紫色 抽出液の色 抽出液 酸 性 → 茶色 酸 性 → 赤紫色 塩基性 → 緑色 塩基性 → 青紫色 + 緩衝液 (考察) 国分ダイコンの本葉から抽出した液では,塩基性条件では青みをおび,酸性条件では赤みを おびていることがわかった。ただし,エタノールで抽出を行うと,葉緑素も同時に抽出されてし まうため,抽出実験を行う際には蒸留水を用いる方法が適していると考えられる。 【本実験】 (材料・使用器具) 国分ダイコンと本紅大丸かぶの種子,pH3.0~10.0 の緩衝液(確認実験で使用した もの),水道水(約 pH6.5),シャーレ,ろ紙,駒込ピペット (方法) ①シャーレにろ紙をしき,pH3.0~pH10.0 の緩衝液,水道水を含ませる。 ②各シャーレに 12 粒ずつ種子を蒔く。 ③暗所はシャーレにダンボールを用い,明所は植物育成用蛍光灯 (NEC ビオルックス,20W)を照射する。 ④毎日それぞれのシャーレに液を補充し,乾 燥を防ぐ。 ⑤毎日種子の様子を観察し,発芽率と幼芽の色を記録する。 (結果および考察) <発芽率> 水道水 (pH6.5) pH3.0 pH4.0 pH5.0 pH6.0 pH7.0 pH8.0 pH9.0 pH10.0 国分ダイコン(明所) 25% 17% 8% 8% 8% 17% 8% 25% 0% 国分ダイコン(暗所) 100% 75% 50% 33% 8% 67% 42% 8% 0% 本紅大丸かぶ(明所) 100% 17% 50% 42% 8% 25% 0% 0% 0% 本紅大丸かぶ(暗所) 100% 75% 83% 33% 8% 33% 25% 0% 0% 国分ダイコンの発芽率は,明所では全体的に悪く,暗所では水道水,pH3.0,pH4.0,pH7.0 におい て高かった。本紅大丸かぶは,明所・暗所の両方で水道水の発芽率が 100%だった。塩基性溶液での発 芽率が悪かった 1 つの原因として,植物の生長を妨げる作用をもつホウ酸が含まれていたことが考えら れる。 <色の変化>(色相/トーン) 国分(明所) 国分(暗所) 本紅(明所) 本紅(暗所) 国分(自然) 本紅(自然) pH3.0 pH4.0 根,葉:紫/ライト pH5.0 葉:青紫/ビビッ 赤紫/ブライト, ド 青紫/ディープ pH6.0 pH7.0 pH8.0 葉:赤紫/ダル 葉:紫/ダーク 根:紫/ライト 縁:紫/ディープ 葉:紫/ブライト pH9.0 pH10.0 水道水 葉:紫/ソフト 葉:紫/ディープ, 紫/ビビッド 葉:紫/グレイッシュ 赤紫/ダル 葉:赤紫/ビビッド 葉:紫/ビビッド, 赤紫/ディープ, 根:紫/ペール 赤紫/ブライト 根:紫/ライト 紫/ダル,ダーク 赤紫/ブライト 茎:紫/ソフト 茎:赤紫/ダル 縁:紫/ディープ 色の変化については,国分ダイコンの暗所のみで酸性条件から塩基性条件になるにつれて,色が赤紫 色から青紫色に変化することが見られた。しかし,発芽率が悪く,複数個体における確認ができなかっ たので,実験方法を改善し発芽率を高め,再現性があるか確かめる必要がある。 (今後の課題) ・ダイコンには嫌光性という性質があるので暗所で発芽させる。 ・乾燥が原因で発芽率が悪かったと考えられるので,寒天培地を使用する。 ・同時に酸性条件で2種類、塩基性条件で2種類の緩衝液を作成し,再実験を行う。 ・色の観察には個人差があったので,色の解析方法を改善する。
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