26号(2015年2月発行

図書館だより「くぬぎの森」第26号
熊本高専
熊本キャンパス
図書館だより
図書館長からのお知らせ
特集1: 教員著作本紹介
第26号
校内読書感想文コンクール結果
特集2: 熊本C周辺の図書館
2015年2月発行
P. 2, 3.
図書館利用者数データ
P. 4-7
P. 8
くぬぎの森
(校内読書感想文コンクール授賞式にて。前列左から中川さん、小野原さん、高瀬さん、三宅さん、坂口さん、本多さん、鍬田さん、野村さん)
H27年度の取組
部活動紹介 第一回ブックハンティング 留学写真展(アメリカ編) !1
図書館だより「くぬぎの森」第26号
読まれない本
図書館長 伊藤利明
本離れが進んだといわれる昨今だが、今は本を読まなくても人生や知識について学ぶ
手段は昔に比べてたくさんある。ゲームもしかりである。図書館長の仕事を仰せつかっ
て、悩ましいのは「読まれない本」である。一つは、「本の購入基準」の問題。芥川賞
や直木賞受賞作品は所蔵しているが、ライトノベルの方がよく読まれる。授業や卒研で
の勉強に役立つように専門書を入れているが、TOEICやSPI総合検査など英語や就職試験
の方がよく貸し出される。教員のなかには高専なのだから一般書は必要ないという人も
いるが、学生の「希望の声」には一般書か HOW TO ものが多い。予算の許す限り「希
望の声」にはできるだけ応えようとしてはいるが、時として出版社の戦略や流行に迎合
しているだけではないかと不安になる。「読まれない本」を購入しても意味がない。だ
からこそ図書館としては、学生や教職員の良識を頼りに「希望の声」を図書購入に活か
していきたいと考えているし、情報を発信していこうと考えている。
もう一つの「読まれない本」の問題は、「本の廃棄基準」の問題。図書館の改修時の混
乱と書棚不足の関係で、書庫に床に山積みになっていたり、段ボールに入ったままだった
本を、今年度、学生の協力できれいに整理することができた。しかし、もはや収容能力は
限界に達している。知らない学生も多いと思うが、図書館のある建物の1階から3階まで
は書庫になっている。誰にも顧みられることなく埃をかぶった本が並んでいる。情報が古
くなり使命を終えた本もあれば、古いからこそ価値のある本もある。100円の本もあれば、
何十万もする高価な本もある。本の価値は、情報の新しさだけではないし、その購入価格
でもない。私は、本を捨てることがほとんどない。理由は、愛着と畏怖の念である。まし
て、専門外の本ならば、浅学非才な自分がその価値など理解できるわけもなく、不遜にも
つ く も がみ
つき
廃棄など恐れ多いという気持ちがある。埃をかぶった古い本をみると、「付喪 神(憑
がみ
神)」的な何かが宿っていそうである。しかし、粛々とその作業を進めなければ、図書館
としての機能が果たせなくなる。そのために教職員のお力添えをお願いするほかない。
「読まれない本」は、購入や廃棄の際の選択基準という点で大きな問題があり、学生や
教職員の協力なしには解決できない。小さな学校の図書館だからできることは限られてい
るが、逆に利用者の意見を反映させやすい利点もある。「手作りの図書館」をコンセプト
に利用しやすく居心地の良い図書館を目指しているので、皆様のご協力を切にお願いする
しだいである。
模型部展示会 イラスト研究部展示会 第2回ブックハンティング !2
図書館だより「くぬぎの森」第26号
平成26年度 校内読書感想文コンクール最優秀賞受賞作文
「エバーグリーン」を読んで
1年1組 坂口梨子
私は普段、感動できるような作品を読むことが少ない。
そんな私がこの本を読もうと思ったのは、卒業式の直前
であり、私が精神的に弱っていた時である。自分の進路
や友達関係など悩みが尽きない私だったが、この本を読
むことで自分を見つめ直すことができ、大いに救われた
と思う。
この本には男女二人の主人公がいる。私はこのうち女
子の方に自分を重ねていた。この人物は私と非常に似た
境遇を生きていて性格も似ているのだ。例えば進学する
学校に友達がほとんどおらず、不安を抱えている。自分の
夢を叶えたいとあっても大切な人たちと同じ学校に行け
たらどんなに幸せだっただろうと悩んでしまうところ。
私も同性で出身中学校が同じという友達は進学先に一人
もいなかったので不安で仕方がなかった。だが、勉強し
たり、働いたりするのは他のだれでもない、自分のため
だと思えば気にもならなくなっていった。そして、彼女の
性格は引っ込み思案で人に流されてしまいがち、周りの
人の顔色をうかがいながら行動してしまう、ありもしな
い空想の世界を夢みてしまっているなど。怖いくらいそっ
くりだった。同時に自分が周りからどういう風に見られ
ているのか分かってしまった。「どう生きようが私の勝
手だ。」そう思っていた私にとって客観的な意見は私の胸
にグサグサと突き刺さっていくようだった。「自分はそう
じゃない。そんな人じゃない。」そう思っていても真実
がわからないものだった。これも自分を見つめ直す一つ
のきっかけになったのかもしれない。
しかし、もっと大きなきっかけが、ポイントがあった。
それは本の中の主人公と私との相違点にあると思う。
私は最近、「感情がないみたい。」「もっと心を込め
て。」など自分の心について何かと言われることが多く
なった。冗談半分でかけられた言葉だったかもしれない
が、そんな言葉の一つ一つが私の心を重くしていった。
たしかに何かに感動して涙を流したり、心の底から周り
の人と笑い合ったりすることは日に日に減ってきていた
のでは、と思う。それに基本、考えを直接言えない私は
手紙などでしか本音を言えてなかった。もちろん、感情
のままに周りを注意したり、落ち込んでいる人を励まし
たりということもほとんどなかった。
ていた。それも「言ってしまったら心がずっと楽になるか、
苦しいままか」という状況で、だ。私はなぜそんなこと
ができるのか不思議だった。私は周囲から嫌われ、突き
放されてしまうことが怖かった。だから、こんな思い切っ
た行動はできないだろう。しかし、彼女は違ったのだ。
「もうどうにでもなれーという気持ちで」
「でもそのままにしておきたくない」
これはこの本の文章だ。とても心に残っている。多分、
彼女は諦め半分で「どうにでもなれ」と思ったのではな
い。おそらくここで言わずにいつ言うんだという思い、
この状況や関係を変えたいという強い意志などがあった
のではないかと思う。私は感情を表に出せてないし、誰
かのために行動することもできていない。彼女のように、
いざとなったら行動できて変えたい、変わりたいと思え
るような人になりたい。
また、この本の中でとても印象に残っている場面と文
章がある。中学卒業と同時にお互いの夢のために離れ離
れになる一組の男女。そんな時男子が女子に一つの約束
をする。「十年後な。十年後の今日、ここっ。」
お互いに夢を叶えて再会しよう、誇れるようになろうと
いう約束だ。最終的にこの二人は再会を果たすのだが、
それまでの十年間、その約束を忘れているだろうとお互
いを信じていなかった。なぜだろうか。多分、それはお
互いをどこかで信じていたからではないかと思う。性格
や過去など、どこかに信頼をおける部分があった。その
約束を一種の希望にして生きていた。だからこそ、二人の
気持ちはすれ違わなかったのだろうと私は思う。この約
束のシーンにとても感動した。
私にはどうしても叶えたい夢がある。そのために今の
学校を選んだ。知っている人が少ないのだから、新しい
友達も出来ると思う。だが、出会いだけでなく今まで自
分を励まし応援してくれた人たちも大切にしていきたい。
決してこの本のように誰かと約束したわけではないが、
もし会う時が来たら、しっかり自分の夢を叶えて、堂々
と会えるようになりたい。そのためにも自分の性格や癖
を少しずつ改善して、自分の自信を持てるようにする。周
りを変えていけるような人になれたらと思っている。こ
の本の彼女のように。理想の自分に近づいて、大きな目
標を絶対に達成する。
「エバーグリーン」。この本に私は大きな影響を受け
た。心の底から感謝。
だが、本の中の主人公は違う。彼女は自分と大切な人
のために勇気を出して恐れることなく、思いを口で伝え
【優秀賞】
「楽しい人生を生きる宇宙法則」 1年1組 本多 沙也
「坊ちゃん」を読んで 2年2組 三宅 智明
「ネット時代のコペルニクスー知識とは何か」を読んで 2年3組 鍬田 雅輝
【佳作】
「愛と恩返し」 1年2組 小野原 真子
「手紙」を読んで 1年3組 野村 千尋
「雪とパイナップル」を読んで 2年1組 中川 崇章
「100回泣くこと」を読んで 2年3組 高瀬 綺夏
「青空のむこう」を読んで TE3 正司 早希
坂口さんと本多さんの作文は第60回熊本県青少年読書感想文コンクールで「佳作」に選ばれました。
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図書館だより「くぬぎの森」第26号
特集1
教員著作本紹介
熊本キャンパスの先生方がこれまでに執筆された本をご紹介します。
(著者50音順、敬称および単著・共著の別は省略させて頂きました。)
大塚弘文
小田川裕之
『単純適応制御SAC』
Selected Topics in Electronics and
森北出版
Systems̶ADVANCES IN SURFACE
(2008)
ACOUSTIC WAVE TECHNOLOGY,
SYSTEMS AND APPLICATIONS
(Vol.2.), World Scientific Pub Co Inc.
(2001)
小山善文
小山善文
『入門電子回路アナログ編』
『医療画像ハンドブック』
オーム社
オーム社
(2006)
(2010)
楠元実子
楠元実子
『アメリカ作家の異文化体験』
『アメリカ文学と狂気』
開文社
英宝社
(1999)
(2000)
楠元実子
楠元実子
『グッド・ウィル・ハンティング』
『アメリカ作家の理想と現実ーアメリカ
松柏社
ンドリームの諸相』
(2002)
開文社
(2006)
楠元実子
楠元実子
『<移動>のアメリカ文化学』
『アメリカ文化 55のキーワード』
ミネルヴァ書房
ミネルヴァ書房
(2011)
(2013)
下塩義文
『情報通信システムの電磁ノイズ問題と
対応技術』
森北出版
(1997)
下塩義文
『光・情報通信ネットワーク』
森北出版
(1998)
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図書館だより「くぬぎの森」第26号
下塩義文
高倉健一郎
『プロフェッショナル英和辞典 『シリサイド系半導体の科学と技術』
SPED TERRA』
裳華房
小学館 (2014)
(2004)
永野拓也
永野拓也
『中世哲学史』(A.ド・リベラ著の邦
『ベルクソンとバシュラール』(M.カ
訳)
リウ著の邦訳)
新評論
法政大学出版局
(1999)
(2005)
永野拓也
永野拓也
『ベルクソンにおける知性的認識と実
『合理性の考古学』
在性』
東京大学出版会
北樹出版
(2012)
(2011)
永野拓也
『変容する社会と人間』
北樹出版
(2014)
八田茂樹
『教養の政治学・経済学』
学術図書出版社
(2005)
葉山清輝
『作って学ぶCPU設計入門ーエミュ
レータでよくわかる!内部動作と
AHDL設計・FPGA実装』
森北出版
八田茂樹
『政治・経済学概論』
学術図書出版社
(1999)
葉山清輝
『半導体デバイス工学ーデバイスの基
礎から製作技術まで』
森北出版
(2004)
葉山清輝
『MOS集積回路の設計・製造と信頼
性技術』
森北出版
(2008)
(2007)
光永武志
村上純
『イギリス・ロマンティシズムの光と
『よくわかる 電気・電子回路計算の
影』
基礎』
音羽書房鶴見書店
日本理工出版
(2011)
(2012)
村上純
『基礎から応用までの ラプラス変
PRINTING
換・フーリエ解析』
日新出版
ぜひ手にとって
読んでみて下さいね♪
(2015出版予定)
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2015/01/13 14:55
図書館だより「くぬぎの森」第26号
特集2
熊本キャンパス周辺の図書館
皆さんは熊本キャンパス図書館に目当ての図書が無い場合、どうしていますか。
ちょっと調べ物をしたいとき、試しに読んでみたいときには、熊本キャンパス周
辺の図書館を利用するのも良いかもしれません。
A
B
C
D
A:合志市西合志図書館(本館) 範囲指定開始
ください。
所在地:
熊本県合志市御代志1661-265
TEL:
(096) 242-5555
地図データ
1 km ©2015 Google, ZENRIN
開館時間: 日祝:10∼17時、火・木・金・土:10∼18時、水:10∼20時
をクリックし、地図上で範囲の対角線(例:左下と右上)でそれぞれクリックして
休館日:
毎週月曜日、毎月末日、特別整理期間、年末年始
ミニ情報: 天文台がある図書館。蔵書数20万冊。
北緯:32.90184∼32.86137度, 東経:130.73429∼130.81997度
URL:
範囲の大きさ:
東西: 160
南北: 90
http://eritokyo.jp/easymap/
http://www.koshi-lib.jp
× 50
× 50
m=8000m
m=4500m
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図書館だより「くぬぎの森」第26号
B: 合志市合志図書館(分館) 所在地:
熊本県合志市福原2922
TEL:
(096) 248-5754
開館時間: 日祝:10∼17時、火∼土:10∼18時
休館日:
毎週月曜日、館内整理日、特別整理期間、年末年始
ミニ情報: 合志市総合センター ヴィーブル 2階。CD・ビデオなどを楽し
めるAV視聴コーナーあり。阿蘇外輪山を眺望できる。
C:泉ヶ丘市民センター図書館(分館) 所在地:
熊本県合志市幾久富1947-7
TEL:
(096) 247-1315
開館時間: 日祝:10∼17時、火∼土:10∼18時
休館日:
毎週月曜日、毎月末日、特別整理期間、年末年始
ミニ情報: 時代小説・推理小説・絵本が充実。
D:菊陽町図書館 所在地:
熊本県菊池郡菊陽町原水1438-1
TEL:
(096) 232-0404
開館時間: 日・月・水・金・土:10∼18時、木:10∼18時
休館日:
毎週火曜日、毎月第三水曜日、特別整理期間、年末年始
ミニ情報: 500名が収容可能なホールが併設されている。随時フェア開催
URL:
http://www.kikuyo-lib.jp
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図書館だより「くぬぎの森」第26号
図書館統計(平成26年4月∼12月)
(平成27年1月9日現在)
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
合計
4,622
4,575
7,133
6,310
2,553
2,318
3,693
5,245
2,731
39,180
和書
洋書
合計
65,752
3,628
69,380
日本十進分類法
(NDC)
0総記
1哲学
2歴史
8言語
9文学
分野別貸出冊数
6,972
2,822
4月
944
入館者数
蔵書数
3社会 4自然 科学
科学
5技術、
工業
5,441
7,523
9,618
14,868
1,331
3,120
4,184
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
合計
558
558
555
482
630
558
496
631
5,412
6産業
7芸術、
合計
美術
13,501 69,380
月別貸出冊数
開館時間
曜日
対象期間
時間
4月∼9月
8:30∼20:00
10月∼3月
8:30∼19:00
春季・夏季・冬季休業期間中
8:30∼17:00
平日
土曜
4月∼3月 (春季・夏季・冬季休業期間中は閉館)
日曜・祝日
10:00∼12:00,13:00∼16:00
終日閉館
貸出期間と貸出冊数
貸出の種類
拝受者
貸出期間
貸出冊数
2週間
3冊以内
教職員
2ヶ月
5冊以内
学生
春季・夏季・冬季休業期間
5冊以内
卒業研究用
中
2ヶ月
5冊以内
備考
教職員
一般貸出
学生
一般
長期貸出
特別研究用
教育及び研究に必要な図書館資
料に限る
卒業研究及び特別研究に必要な
図書館資料に限る
∼編集後記∼
特集記事は楽しく読んでもらえたでしょうか。
本をもっと身近に感じてもらえたら嬉しいです。
(共通教育科)松尾かな子
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