第050号 産学公連携ニュース

Tokyo
050号
Metropolitan
University Liaison News
産学公連携ニュース
発行日
2015年1月31日
産学公連携ニュースとは?
「知っておくと役に立つ!」そんな情報をお届けします!
研究成果の取扱いについて①
~研究活動の記録&保存~
お世話になっております。
URA室の阿部です。今回と次回に
わたって、大学における研究成果
の取扱いについてご説明します。
(執筆者)
URA室
リサーチ・アドミニストレーター(URA)
阿部 紀里子
昨年来、STAP細胞(現象)に関する研究成果のねつ造や改ざんが世間を騒がせてきました。
STAP細胞論文に対する疑義が指摘される中で、研究活動を行っていたことを証する資料として公開され
た実験ノートは記載内容も分量もお粗末なもので、研究成果のマネジメントができていないことを露呈する
結果となってしまいました。この事件は、日々の研究活動をきちんと記録・保存することが、研究者として
重要であることを再認識する事件であったと思います。
パソコンの普及と測定データや写真のデジタル化、それに伴うデータ量の膨大化等により、研究者・学生
の個々のパソコンに実験結果が集約され、記録・保存され、実験ノートが形骸化されていることはないで
しょうか。実験ノートは、論文や学会等で発表するための研究成果を記録・保存するものではありません。
いつ(When)、誰が(Who)、どこで(Where)、何のために(Why)、何の実験(What)を、どうやって(How)
行ったのかという日々の研究活動を記録・保存するものです。きちんとした記録は、研究成果に対して疑義
に対する強力な反証資料となりますし、知的財産権を取得する際にも証拠資料として有効性を発揮します。
研究成果の電子化によりデータの共有や検索が可能になるメリットもありますが、電子ファイルは改ざん
が容易であることから証拠資料としての信頼性は低くなります。大手の製薬・化学メーカーでは実験ノート
の電子化を導入しているところもありますが、改ざん防止や電子署名など記載されたデータの信頼性を確保
するための様々な機能を付帯する一連のソリューションであり、単に実験ノートを電子ファイル化している
わけではありません。大学の研究室ではこのようなソリューション導入は難しいので、現時点では、紙媒体
の実験ノートを正しく活用して研究活動を記録・保存する必要があります。
○実験ノートの記載方法について(ポイントのみ)
1.実験ノートは、ページの差替えができない紐綴じされたものを利用して下さい。
(市販されている実験ノートには挿入・削除を防止するために予めページ数が印刷されていますが、ページ数の印刷されて
いないノートを使用する場合は、使用前に全ページに一気にページ数を記入して下さい。その都度の記入ではダメです。)
2.実験ノートは、必ず消せないボールペン等で記載して下さい。修正液や修正テープの使用は禁止です。
(最近、後から消せる便利なボールペンもありますが使ってはいけません。鉛筆やシャープペンシルもNGです。また、修正
する際は、元の記載が読めるように取消し線で消します。
元の記載が分からないように塗り潰すのはNGです。)
市販の実験ノート
3.実験ノートは、必ず実験当日に記載します。
(数日分をまとめて後から記載してはダメです。)
4.記録年月日、記録者の署名と確認者の署名(い
ずれもフルネーム)が必要です。
(記録者の署名は、実験ノートを記入後に毎日記入して下
さい。確認者の署名はページ毎に記載して下さい。)
5.写真やデータ等をノートに貼付する場合は、
ノートと貼付紙に跨るように割印/署名をする。
(写真やデータを貼付した年月日も記入する。また、電子
データがある場合はその保存場所も明記するとよい。)
次回は、大学の研究成果の取扱い(実験ノートの保管、企業との共同研究の成果、学生が関与した研究成果、
授業の課題として取組んだ研究成果などの取扱い)について説明します。