様式1-B 実証・展示ほ成績書 イチゴ株元加温省エネ生産新技術普及促進事業 担 当 協 力 遠州夢咲農業協同組合 中遠農林事務所園芸畜産課 1 目的 近年、燃油価格の高騰に伴い、イチゴ栽培においても省エネルギー資材の活用が求められている。イ チゴのクラウン部のみを局所的に加温する資材について、燃油削減効果や収量性等を確認する。 2 方法 (1) 試験場所 (2) 供試品種 (3) 試験規模 (4) 栽培概要 (5) 設置資材 イチゴ4連棟高設ハウス(掛川市千浜) 。22a(北側 11a、南側 11a) 。 ‘紅ほっぺ’ 試験区、対照区の2区制。1区 10 株、2反復。 9/28 定植(株間 20cm) 。肥料、農薬等管理は現地慣行。マルチ有。無電照。 「ステンレス箔テープヒーター(中國工業株式会社。以降、TH と呼ぶ。 )単相2線 AC100V 190W43m。 (6) 設置方法 イチゴのクラウン部に TH の発熱部が接するように設置(21cm 間隔) 。培地面1cm 下の温度が設定温度を下回ると加温される。 (7) 温度条件 重油暖房期間 H26.11.19~H27.03.26 試験区夜温:11/19~6℃、12/1~4℃、2/9~6℃に設定。 対照区夜温:11/19~6℃に設定。 TH:H26.11/27~ 17℃、12/11~ 20℃、1/22~ 17℃ 2/9~ 17℃設定で 7:00~9:00 加温、2/18 加温終了。 (8) 調査項目 生育(葉長、葉幅、葉柄長、展開葉数、第一次腋花房長) 、温度(クラウン部、高設 培地、果実、葉) 、収量性(旬別果数、重量) 3 結果の概要と考察 〈前年の結果〉イチゴのクラウン部に TH を設置し、12 月上旬から 20℃に設定した場合、対照区と比較 して生育が促進され、収量増加と第一次腋果房の収穫前進が確認された。一方で、平均1果重が 少なくなった。 〈今年度の結果〉 (1) TH の設定温度は、12 月中旬から 20℃に設定したが、生育が旺盛になったため、1月下旬から 17℃に変更し、2月中旬に加温終了した。 (2) クラウン部と培地温度は、おおよそ設定温度以上に保たれていた(図表略) 。 (3) 生育は、1/22(設置約2か月後)以降、葉面積、葉柄長、葉柄径、第一次腋果房長、芽数、展開 葉数のいずれも対照区より大きくなった(第1表) 。 (4) 収量性は、対照区とほぼ同等であったが、試験区の奇形果が少なかった(第1図、第2図、第2 表) 。前年度に確認された、第一次腋果房の収穫前進と平均1果重の減少が今年度確認されかっ たことについて、今年度の夜温の設定が低かったことに起因すると考察された。なお、12 月中 旬の対照区で収量が減少した要因として、不稔果が発生し、調査株数が1区 10 株と少なかった ため、数値に大きく影響が出たと考察された。 (5) 11a あたりの TH 導入経費は 2,039,390 円(税込み)であった(第3表) 。 (6) TH の電気使用量 8,880kWh、料金は 265,798 円であった(第4表) 。なお、重油削減量は 1,500L、 料金は 129,000 円であった(昨年使用量との比較で算出。価格は過去3年の平均 86 円を使用。 ) 。 (7) 生産者からは、芽数が多くなり、摘花による手間が増えたとの感想があった。 (8) 以上の結果から、イチゴのクラウン部に TH を施用した場合、2か月間夜温を2℃下げても対照 と同等の収量が得られた。一方で、生育が旺盛になり過ぎない加温条件を検討するとともに、導 入経費が高いため、費用を回収できる使用条件を検討し、その上で重油削減を図る必要があると 考えられた。 4 主要結果の具体的数字 第1表 TH処理したイチゴの生育平均値の比較 1) 8,000 区 11/25 12/11 12/25 1/22 TH 228 167 132 110 89 対照 203 168 147 TH 31.7 30.4 28.3 25.4 対照 29.7 29.1 26.8 20.2 TH 4.3 4.0 3.8 3.6 4.3 4.3 4.0 3.4 対照 TH 対照 TH 対照 TH 対照 7,000 葉面積(cm2) 葉柄長(cm) 葉柄径(mm) 1腋果房長(cm) 芽数 展開葉枚数 2/2 109 83 25.4 19.1 3.6 3.5 24.9 24.5 2/18 113 74 26.8 19.9 3.5 3.1 3/4 B(8g~,変形) 6,000 2L(16g~) ホール(32g~) DXG(40g~) 2.4 1.9 DXA(19g~) 1,000 7.9 7.6 DX(19g~) 0 TH 1) 4月中旬までの全重量. 2) 1区 10 株2反復調査.10 株あたりの値. TH区 1000 対照 第1図 イチゴTHの合計収量 1) 2) g 800 第2表 イチゴ株元TH設置の収量1) (11 月下旬~4月中旬) 600 400 区 200 TH 対照 果数 (個) 368 382 全重量 (g) 7,295 7,443 一果重 (g) 19.8 19.5 1) 1区 10 株2反復調査.10 株あたりの値. 11/下 12/上 12/中 12/下 1/上 1/中 1/下 2/上 2/中 2/下 3/上 3/中 3/下 4/上 4/中 4/下 1000 L(11g~) 4,000 2,000 1200 g A(変形2L~) 5,000 3,000 1) 1 区 10 株 2 反復の平均値. 12000 g 対照区 第4表 TH電気使用量(11~2月中旬)1) 800 月 600 400 200 11/下 12/上 12/中 12/下 1/上 1/中 1/下 2/上 2/中 2/下 3/上 3/中 3/下 4/上 4/中 4/下 0 第2図 イチゴ株元TH設置の旬別収量1) 1) 10 株あたりの値.規格は第1図を参照. 第3表 11a あたりのTH導入経費(税込み) コントロールボックス TH 43m(210株用) コネクタリード線 ランナーピン 電気工事 合計 * THの耐用年数 4年 単価(円) 個数 162,000 5 24,840 30 594 60 23,328 425,222 金額(円) 810,000 745,200 35,640 23,328 425,222 2,039,390 下 11月計 上 中 下 12月計 上 中 下 1月計 上 中 2月計 合計 使用量(kWh) 96 96 1,075 1,438 1,362 3,875 1,275 1,259 1,271 3,806 947 155 1,103 8,880 電気料金(円) 5,394 113,907 112,522 33,973 265,796 1) 通電時間はクランプロガー3636 及びクランプオン センサ 9650(日置電機株式会社)で測定し、中部 電力株式会社の電気料金シミュレーションにて算 出した。 6 成果の活用と今後の課題 試験結果を部会で報告する。 今後、第一次腋果房について、花芽分化に影響せず収穫開始を前進できる加温方法を検討する。 イチゴ株元加温の試験を実施した高設ハウス イチゴの株元に設置したテープヒーター(TH) 温度設定などを行うコントローラ内部
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