20 交流分析 - 日本学校教育相談学会|JASCG

Ⅵ 言 語 的 ア プ ロ ー チ 20 交 流 分 析 柴 崎 武 宏 1 到 達 目 標 ( 1 ) 交 流 分 析 に 関 す る 基 礎 理 論 と 方 法 を 学 ぶ 。 ( 2 ) 授 業 等 , 学 校 で 行 う 交 流 分 析 の 方 法 に つ い て 学 び , 活 用 で き る よ う に す る 。 ( 3 ) 交 流 分 析 を 行 う う え で の 限 界 と 留 意 点 に つ い て 学 ぶ 。 【 キ ー ワ ー ド 】 自 我 状 態 , ス ト ロ ー ク , 交 流 分 析 , ゲ ー ム 分 析 , 脚 本 分 析 , エ ゴ グ ラ ム , 人
生 態 度 等 2 交 流 分 析 と は Transactional Analysis【 交 流 分 析 】 は , Eric Berne( E・ バ ー ン ) に よ り 提 唱 さ れ た 。 多
く の 研 究 仲 間 に よ り 今 日 の 理 論 が で き た 。 定 義 は , パ ー ソ ナ リ テ ィ 理 論 で あ り , 個 人 が 成 長 し 変 化 す る た め の シ ス テ マ テ ィ ク な 心
理 療 法 で あ る 。 T A の 基 本 理 念 ⅰ 人 は 誰 で も O K で あ る 。 ⅱ 誰 で も 考 え る 力 が あ る 。 ⅲ 人 は , 自 分 の 運 命 を 決 め , そ の 決 定 を 変 え る こ と が で き る 。 の 3 点 で あ る 。 T A の 目 標 ⅰ 自 己 理 解 「 い ま , こ こ 」 で の 気 づ き ⅱ 自 発 性 ど の 様 な 状 況 で も 適 切 に 対 応 ⅲ 親 密 さ 誠 実 で 暖 か い か か わ り T A の 考 え 方 ⅰ 「 い ま , こ こ 」 を 大 切 に し , 感 情 ・行 動 ・ 思 考 に 責 任 を 持 つ ⅱ 「 過 去 と 他 人 は 変 え ら れ な い 」 過 去 の 出 来 事 は 変 え ら れ な い 。 ど う と ら え る か は 変 え
ら れ る 。 気 づ い た 自 分 が 変 わ る と 相 手 の 対 応 も 変 わ る ⅲ 「 自 分 の 感 情 ・ 思 考 ・ 行 動 の 総 責 任 者 は 自 分 で あ る 」 20- 1
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3 交 流 分 析 の 原 理 と 方 法 パーソナリティ理論として,人が心理的にどの様な構造かを説明するために自我状態と
い う モ デ ル を 使 っ て 説 明 す る 。 ( 1 ) 自 我 状 態 の 成 り 立 ち と 働 き ⅰ < 親 > の 自 我 状 態『 P arent』記 号 <P >で 示 す 。自 分 を 取 り 巻 く 外 的 な 刺 激 か ら 取 り 入
れたもの。特に両親の影響が大で,6歳頃から発達し12歳ごろにその人らしい独特の
も の と な る 。 < 親 > の 自 我 状 態 の 働 き は 2 つ あ る 。 一 つ 目 は < 支 配 的 親 > 『 C ontroling Parent』 記 号 < C P > で 示 す 。 『 特 質 』 は 厳 格 ・
規 則 遵 守 ・ 道 徳 的 ・ 審 判 的 ・ 躾 ・ 文 化 ・ 伝 統 を 重 ん じ 権 威 的 ・自 信 家 ・良 心 的 で あ る 。 『
行き過ぎる』と頑固・独断的・独りよがり・融通が利かない。人間関係に歪みを生じる
。 『 使 わ な い 』 と , お っ と り し ・批 判 し な い ・ 柔 軟 ・ 友 好 的 で あ る 。 『 気 に な る 点 』 は
, ル ー ズ ・ ル ー ル , 約 束 を や ぶ る ・ 優 柔 不 断 な ど が あ る 。 二 つ 目 は < 養 育 的 親 > 『 N urturing Parent』 記 号 <N P >で 示 す 。 『 特 質 』 は , 優 し い ・
育 て 養 う ・ 世 話 を す る ・心 配 り が で き る ・ 面 倒 を 見 る ・ 思 い や る ・ 気 づ く ・褒 め る ・ 認 め
る・許可するなどである。『行き過ぎる』と過干渉・過保護・おせっかいなど心配性・
手を出しすぎる。『使わない』と,マイペース・淡白・干渉しない・情に流されない。
『気になる点』は,温かみがない・痛みがわからない・冷たい・思いやりがないなど。
ⅱ < 成 人 > の 自 我 状 態 『 A dult』 記 号 <A >で 示 す 。 < 成 人 > の 自 我 状 態 は 1 つ で あ る 。
1歳半~3歳頃に芽生え次第に成長し,12歳頃にその人らしい考えが出来上がる。
『 特 質 』 は , 物 事 を 客 観 的 に 認 識 す る ・ 情 報 を 整 理 し 分 析 す る ・ 5 W 1 H を フ ル に 使 い
今までに得たデータを使い処理し問題解決・意思決定・行動法を決定したり,計画した
りする。冷静である。『行き過ぎる』と,機械的・冷酷と思うように映る行動がある。
『使わない』と,お人よし・人間味がある・素朴・質素である。『気になる点』は,現
実離れ・混乱しやすい・無計画・行動,思考に一貫性がない・その場主義なところがあ
る 。 ⅲ < 子 ど も > の 自 我 状 態 『 C hild』 で 記 号 < C > で 示 す 。 0 歳 ~ 3 歳 ま で に 基 本 が で き
5 ~ 6 歳 ま で に そ の 人 ら し さ が で き る 。 < 子 ど も > の 自 我 状 態 は 2 つ あ る 。 一 つ 目 は , < 自 由 な 子 ど も > 『 F ree Child』 で , 記 号 <F C >で 示 す 。 『 特 質 』 は , 天
真爛漫・無邪気・好奇心旺盛・創造的・喜怒哀楽をだす・元気・行動的・周りにエネル
ギーを振りまくなどの特性がある。『行き過ぎる』と,自分勝手・お天気家・わがまま
なところがある。『使わない』と,おとなしい・控えめ・落ち着き・もの静かである。
『気になる点』は,面白みがない・無表情・おどおどする・楽しめない・暗いなどがあ
る 。 二 つ 目 は , < 順 応 し た 子 ど も > 『 A dapted Child』 で , 記 号 <A C >で 示 す 。 『 特 質 』 は , 我 慢 強 い ・ 信 用 す る ・ 合 わ せ る ・ 感 情 を コ ン ト ロ ー ル す る ・ 素 直 ・ 返 事 が
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よ い な ど の 特 性 が あ る 。 『 行 き 過 ぎ る 』 と , じ っ と 我 慢 す る ・ 感 情 を 抑 え る ・ 顔 色 を 見 る・決められない・依頼心が強い・へつらう・自信がないところがある。『使わない』
と,マイペース・自主的・積極的・活発である。『気になる点』は,非協力的・人の意
見 を 聞 か な い ・ 妥 協 し な い ・ 相 手 の 気 持 が わ か ら な い ・ 自 分 勝 手 で あ る 。 ま た , < 順 応 す る 子 ど も > の 中 に < 反 逆 す る 子 ど も > 『 R edelious Child』 を 記 号 <R
C >で 示 す こ と が あ り , 反 抗 す る ・ 攻 撃 す る ・ひ ね く れ る ・ 暴 力 な ど の 特 性 が あ る 。 ( 2 ) エ ゴ グ ラ ム と 自 我 状 態 の 活 用 エゴグラムはジャック・デュセイにより提唱された。
面接などで相手の態度・言葉・音調などから使われる自我状態を識別し,良く使う自我
状態,余り使わない自我状態を棒グラフにしていた。質問紙を使って自我状態をグラフに
す る 方 法 も あ る 。 解釈は,一番高い自我状態の特性の良いものを3~4つと行き過ぎる点を1つ,低い自
我状態の特性を1~2つと気になる点1つを,前に示した自我状態のコメントから抜き出
す。使わない欄のコメントからも1~2つ抜き出しアセスメントする。パターンから読む
こ と も で き る 。 自 我 状 態 の <CP><FC>は 自 分 に 対 し , <NP><AC>は 相 手 に 対 し 使 い , <A>
は気づきのために使う自我状態である。グラフで高い状態の自我状態はよく使い,低い自
我 状 態 は 使 わ な い と 考 え る 。 ま た , オ ー バ ー ラ ッ プ エ ゴ グ ラ ム は , 人 間 関 係 を 類 推 す る た め に 使 う 。 自 分 の エ ゴ グ ラ
ムを書き,相手のエゴグラムを上方から書いて重ね合わせる。自我状態がオーバーラップ
す る 数 や 割 合 か ら 二 人 の 関 係 性 を 類 推 す る 。 ●オーバーラップがないか1つのときは,余り関係性が深くなく,その場だけのやり取り
にする。●2つ以上あるときは,オーバーラップした自我状態のやり取りが行われ,長く
関係性が保たれる。●オーバーラップする自我状態が多いと,関係性がスムーズに行くこ
と が 多 い 。 ( 3 ) ス ト ロ ー ク ス ト ロ ー ク と は 『 存 在 認 知 の 一 単 位 で あ る 』 刺 激 の 形 を と る 。 E・ バ ー ン は 『 刺 激 に 飢
えると,人は精神的にも肉体的にも刺激を求める行動をする』と述べ,無視されたり,肯
定的な刺激が無かったりすると,ストロークを求め人が嫌がることや否定される行動をす
る。無視されるより『まったくしょうがないんだから,この子は』と言われたほうが良い
の で , 怒 ら れ て も ・ 叱 ら れ て も ス ト ロ ー ク を 求 め る 。 ⅰ も ら う と 嬉 し い ス ト ロ ー ク ( 肯 定 的 ・ ポ ジ テ ィ ブ ・ + の ス ト ロ ー ク ) に は 体 の 接 触 の
な い こ と ば ・ し ぐ さ ・ 体 の 触 れ 合 う 行 為 ・ 条 件 の あ る ・ 条 件 の な い ス ト ロ ー ク が あ る 。 こ と ば : か わ い い ね ・ 元 気 だ ね ・ が ん ば っ て い る ね ・ す ご い ね ・ い い よ ・ な ど 存 在 や 行
為 な ど 認 め ・ 許 可 ・ 励 ま す 。 し ぐ さ : 会釈・拍手・微笑・目線を合わせる・うなずくなど存在を認め触れ合う;握手
・抱擁・肩を抱く・手をつなぐ・キス・マッサージ・心が通じ合うと期待する
行 為 で 信 頼 の 証 で あ る 。 条 件 付 : 勉 強 が ん ば っ て え ら い ・ お 手 伝 い し て え ら い な ど 条 件 付 き で 認 め る 。 20- 3
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無 条 件 : 優 し い ・ か わ い い ・ あ い ら し い ・ 好 き ・ す て き ・ 立 派 ・ 頼 も し い ・ 安 心 す る な
ど そ の 人 の 存 在 を 認 め る 。 自 己 効 力 ( 有 用 ) 感 ・自 尊 感 情 が 高 ま る 。 ⅱ も ら う と 嫌 な ス ト ロ ー ク ( 否 定 的 ・ ネ ガ テ ィ ブ ・ - の ス ト ロ ー ク ) こ と ば : ばか・あほ・のろま・うざい・臭い・きたない・しかる・怒る・気の無い返事
・ 不 適 切 な 返 事 ・ 皮 肉 し ぐ さ : 目 を そ ら す ・ 無 視 ・ 無 関 心 ・ 脅 す ・ 不 安 が る 。 触 れ 合 う : ぶつ・ける・つねる・つつく・突き飛ばす・肘鉄・髪を引っ張る・首を絞め
る ・ 腕 を 固 め る ・ た た く な ど さ れ る と 苦 痛 に な る 。 条 件 付 : 約 束 を 破 っ て ・ う そ を つ い て ・ 決 ま り を 守 ら ず ・ ぐ ず ぐ ず し て 駄 目 な 子 ,な ど
行 為 に つ い て 否 定 的 評 価 を す る 。相 手 を 否 定 す る と き は 行 為 を 否 定 す る た め に
条 件 付 き の ス ト ロ ー ク を 使 う 。 行 為 を 直 せ ば OK で あ る 。 無 条 件 : ば か ・ あ ほ ・ 死 ね ・ 臭 い ・ う ざ い ・ 消 え ろ ・ 来 る な ・ き も い ・ 不 潔 ・ 無 視 な ど
存 在 を 否 定 す る ス ト ロ ー ク は 想 像 を 絶 す る 痛 み を 味 わ う 。 自 尊 心 や 行 動 力 が 無 く な る 。 決 し て 使 わ な い 様 に 心 が け る 必 要 が あ る 。 ( 4 ) や り 取 り ( 交 流 ) 分 析 人がお互いに関係を持つとき,やり取りが生まれ『交流』が起きる。『交流』がスムー
ズに運ぶとき・ギクシャクするとき・なんとなくすっきりしないとき等がある。こんなや
り 取 り を E・バ ー ン は 3 つ の や り 取 り で 説 明 し て い る 。 ⅰ 相 補 ( 平 行 ) 交 流 : お 互 い の や り 取 り で , 期 待 す る 答 え ( 返 事 ) が 返 っ て く る 。 自 我
状 態 を お 互 い に 1 つ 使 う 例 A⇔ A の や り 取 り い ま 何 時 い ま 1 0 時 で す 。 P⇔ C の や り 取 り こ れ じ ゃ ダ メ だ は い , わ か り ま し た 。 P⇔ P の や り 取 り 今 の 若 い 者 は ま っ た く な っ と ら ん 。 ま っ た く , そ の 通 り で 。 ⅱ 交 差( 交 叉 )交 流:予 測 し た の と 違 う 返 事 が 返 っ て く る 。2 つ 以 上 の 自 我 状 態 を 使 う 。 例 P→ C・ C← P の や り 取 り こ の 報 告 書 は 何 だ 。 こ の よ う に 書 け と あ な た が お っ し ゃ っ た ん で し ょ 。 C→ P・ A← A の や り 取 り お 母 さ ん 虹 , き れ い 。 虹 は ね , お 日 様 が 水 蒸 気 に 当 た り 生 ま れ る の よ 。 ふ う ~ ん ・ ・ ・ ・ ・ ・ C→ C・ A← A の や り 取 り ア ソ ボ ー 。 宿 題 は 終 わ り ま し た か 。 ⅲ 裏 面 交 流 : 社 交 上 ( 言 葉 ) で の や り 取 り と , そ の 裏 に 流 れ る 精 神 的 な メ ッ セ ー ジ が あ る 。 例
一 大 プ ロ ジ ェ ク ト が 皆 の 努 力 で 終 結 部 下 『 今 日 は 暑 か っ た で す ね 。 疲 れ た 』 ・ ・ 20- 4
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部 下 の 心 『 課 長 ・一 杯 や り ま し ょ う 』 ・ ・ 課 長 『 ご 苦 労 さ ん ゆ っ く り 休 ん で く れ 』 『 い や ~ あ , ご 苦 労 さ ん ・帰 り に 一 杯 や っ て い こ う , 今 日 は 僕 の お ご り だ 』 さ て , で き る 課 長 の 答 え は ・ ・ ・ ・ このようなやり取り(交流)が日々行われて,『わかってくれない』等,ちょっとした
行 き 違 い が 生 じ る の で あ る 。 ( 5 ) ゲ ー ム 分 析 ゲ ー ム は , 交 流 の 終 わ り に 『 嫌 な 気 持 ち を 味 わ う 』 交 流 で あ る 。 ま っ た く し ょ う が な い
やつだ・情けないことに何の役にも立てなかった・わかっちゃいない,などの感情が心の
奥 底 に 生 じ る 。 こ の 交 流 は 何 度 と 無 く 繰 り 返 さ れ る 『 な じ み の 深 い ・ 気 づ き の な い 』 交 流 だ 。 < A> が
使 わ れ て い な い 。 こ の 交 流 に 引 っ か か り や す い 人 は , 私 が 何 と か し て や る ・ 手 を 貸 し ま し ょ う な ど <P>の
自我状態を使いやすい人である。『私はいいけどあなたはダメ・私が何とかしましょう・
お 世 話 を し ま す よ 』 な ど の 交 流 パ タ ー を 取 る 人 に 多 い の で あ る 。 言葉で表された意味とは違うやり取り,裏面交流を伴うやり取りが行われている。
な ぜ ゲ ー ム を す る の か ● 時 間 の 構 造 化 の た め ● 強 い ス ト ロ ー ク を 求 め て ● 自 分
の 枠 組 み を 維 持 す る た め ● ど ち ら か 一 方 が OK で な い こ と を 証 明 す る た め ● ス タ ン プ
集 め の た め な ど ⅰ 気 づ く た め に ● 嫌 な 気 持 ち に 気 づ く こ と ● 長 時 間 交 流 が 続 く こ と に 気 づ く ● ( 否 定 的 ) の ス ト ロ
ー ク を も ら う 交 流 を し な い ● 自 分 の 力 を 卑 下 し な い な ど ⅱ ゲ ー ム を や め る に は ● 否 定 的 ス ト ロ ー ク の 交 換 を や め る ● 長 時 間 費 や す 交 流 を し な い ● 自 我 状 態 の <A>
を 使 う 。 事 実 に つ い て の み 話 の 対 象 と す る ● 時 間 を 区 切 っ て 対 応 す る ● そ の 場 を 一
時 離 れ る な ど ( 6 ) 人 生 の 立 場 人 は そ れ ぞ れ 自 ら に 備 わ っ て い る , そ の 人 独 特 の 欲 望 ・ 欲 求 ・ 感 情 を 持 っ て い る 。 幼 少
時に欲求が十分満たされたか否かの体験が人生の立場を決定するときに大きな影響を及ぼ
し て い る 。 如 何 に 考 え ・ 感 じ ・ 行 動 す る か , 他 人 と ど の 様 に 関 わ る か を 決 め る の に 大 き な 影 響 が あ
る 。 ⅰ 私 は OK で あ る 。 あ な た は OK で あ る 。 『 I+ ; U+ 』 生 ま れ た て の 赤 ん 坊 は こ の 立 場 に い る 。 欲 求 が 満 た さ れ て い る 間 は こ の 立 場 に い る 。 例:お乳が飲みたいとき,泣くと母親は抱いてお乳を十分くれる。こんな立場のあなた
は 将 来 , 人 を 信 頼 し ・協 力 し 親 和 的 で 暖 か い 人 間 関 係 を と る だ ろ う 。 ⅱ 私 は OK で あ る 。 あ な た は OK で な い 。 『 I+ ; U- 』 例:お乳が十分にもらえないとき,赤ん坊は,私は母を呼べた。しかし,母は十分なお
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乳 を く れ な か っ た 。 私 は OK だ が , 母 は OK で な い 立 場 に い る 。 こ ん な 立 場 の あ な
たは将来,排他的・他罰的・責任転嫁など,他人を馬鹿にし,さげすむ人間関係を
と る だ ろ う 。 ⅲ 私 は OK で な い 。 あ な た は OK で あ る 。 『 I- ; U+ 』 例:赤ん坊はおなかがすいたと泣きますが,母親は気づきません。疲れて寝てしまう。
母親はミルクを上げるのを忘れていたと気づき,寝た子を抱き起こしミルクを与え
ます。私は力がなく母親には力があるとおもう。こんな立場のあなたは将来,自信
の 無 い 依 頼 心 の 強 い・自 己 卑 下 す る ・劣 等 感 の 強 い ,何 事 か ら も 逃 げ る 人 間 関 係 を と
る だ ろ う 。 ⅳ 私 は OK で な い , あ な た も OK で な い 。 『 I- ; U- 』 例:赤ん坊はおなかがすいたと泣く。しかし母は,気づかない。力の限り泣いても母親
は 気 づ か な い 。 赤 ち ゃ ん は 絶 望 し な が ら 寝 る 。 私 も あ な た は ダ メ だ と い う 立 場 を と
る 。 こ ん な 立 場 の あ な た は 将 来 , 不 信 感 ・ 無 関 心 ・ 無 気 力 ・ 行 動 し な い ・ 何 も し な
い ・ 拒 否 す る 人 間 関 係 を と る だ ろ う 。
「人生の立場」は、生活で起きる様々な出来事をどの様に受け止め、意味付けるかで決
ま る 。 『 I+ ; U+ 』 『 I+ ; U- 』 『 I- ; U+ 』 『 I- ; U- 』 の 4 つ の 立 場 は 自 分 自 身 で
決定するのだ。したがって、自分にとって都合が悪ければ、変えることもできる。
平 常 で は 『 A』 が 使 わ れ て い る の で そ の 場 に 適 し た 「 人 生 の 立 場 」 を 選 ぶ こ と が で き
る。しかし、「困ったり・怒ったり等、切羽詰まった時」は、自分で決めたいつもの馴
染み深い「人生の立場」をとる事になる。
( 7 ) 人 生 脚 本 私たちは,生活するに当たり様々な事柄にそれぞれが独特の対応をしている。その背景
には,乳児のときから周りの人々(特に父母)から言語や非言語(態度・動作・音調)に
よ り 禁 止 ・ 許 可 さ れ い つ の 間 に か 身 に 着 け て い く 。 人は4歳ぐらいまでは「大人の影響が大きく仲間や自分の影響は少ない」自分の生き方
の基本(要点を書き出す)を作り,7歳ぐらいまでは「大人の影響力は大きい,仲間や自
分の影響力も生じてくる」要点をまとめる,12歳ぐらいまでに「大人の影響力は小さく
なり,仲間や自分の影響力が大きくなる」人生をどう過ごすかの『脚本』の第1稿を書き
上げ,その後修正(校正)しながら自分の『人生脚本』を書きあげる「人との出会いや体
験 が 大 き く 影 響 す る 」 。 自分が公言した目標を達成する『勝者』の脚本。自分が公言した目標が達成できない『
敗 者 』 の 脚 本 。 ど ち ら 付 か ず の 『 平 凡 』 な 脚 本 の 3 段 階 あ る 。 人生脚本で特に,ボブ・グールディング,メアリー・グールディング夫妻が提唱した禁
止令の考え方は興味深い理論である。幼少のころ父的・母的人から言葉や態度で示された
メッセージを理解できないままに,早飲み込みし,人生脚本に書き込んでしまった結果,
生 活 し に く い 人 生 を 送 る こ と に な る 。 禁 止 令 に は (a)い る な ( 存 在 す る な ) , (b)お 前 ( 性 ) で あ る な , (c)子 ど も で あ る な ,
(d)成 長 す る な ,(e)成 功 す る な ,(f)す る な( 何 も す る な ),(g)重 要 で あ る な ,(h)属 す
る な , (i)健 康 ( 正 気 ) で あ る な , (j)考 え る な , (k)感 じ る な , (l)欲 し が る な , (m)信 じ る
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な,をあげている。
禁 止 令 は 人 生 に 良 く な い 影 響 を 与 え る 。 こ れ を , 除 去 す る た め に 自 我 状 態 の <A >を 使 い
計 画 的 ま た は ワ ー ク に よ り 解 消 す る 再 決 断 療 法 を 提 唱 し た 。 固 執 し た 考 え に 気 づ き , そ の 考 え の 根 本 と な る 出 来 事 を 過 去 に 遡 り 見 つ け , そ の 考 え 方
を変える・認める・さよならをするなど捕われた考えから脱却したり,リフレームにより
見 方・と ら え 方 を 変 え る 。そ し て ,新 し い 考 え 方 に た っ た 思 考・感 情 を 持 つ 。こ の こ と は ,
『 人 生 脚 本 を 変 え る こ と が で き た 』 こ と だ 。 ドライバー(拮抗禁止令)は『駆り立てるもの』で親的な人から言葉や態度で示される。
(a)完 全 で あ れ (b)努 力 し ろ (c)他 人 を 喜 ば せ ろ (d)強 く あ れ (e)急 げ 急 げ の 5 つ で あ
る 。 何 か を す る と き に 親 か ら 示 さ れ , そ の 意 の ま ま に い れ ば OK で あ る と 認 め ら れ る サ イ
ン を も ら え る 。 子 ど も は OK サ イ ン を も ら う た め に 一 生 懸 命 に な る 。 し か し , 常 に 期 待 に
沿えるわけではないので,『ドライバー』から抜け出ることがあり,そんな時自分を責め
る『ストッパー』の立場に立ったり,相手を非難する『ブレーマー』の立場に立ったり,
絶 望 的 に な る 『 デ ス ペ ラ ー 』 の 立 場 に 立 っ て 人 生 を 過 ご す 。 こ れ ら 4 つ の 立 場 を 何 度 も 行 き 来 す る 。 4 交 流 分 析 の 活 用 学 校 や 授 業 で 交 流 分 析 を 活 用 す る 一 番 は 自 分 の 思 考・感 情・行 動 に 気 づ く こ と で あ る 。相
手をどの様に捕らえているかをきちんと,正確に確認することが大切である。相手を評価
し て い る と き は ,<CP>の 自 我 状 態 に 立 ち 。『 私 は い い が あ な た は だ め 』と い う 立 場 に 立 ち ,
協 力 的 で な く 相 手 を 非 難 す る 立 場 に 立 っ て い る 。 相 手 の 考 え や ・感 じ 方 ・行 動 の 仕 方 を 正 確
にとらえない可能性が大きい。威圧的に言い聞かせる指導が行われがちである。声の調子
も大きく・威圧的で相手を怖がらせるのに十分な迫力がある。相手がおびえれば指導はう
ま く 言 っ た よ う に な る 。 し か し , 相 手 が 不 承 知 と い う と 『 う っ せ ぇ ~ な ・・・・ぶ っ 殺 す ぞ 』
など大変ショッキングな返答が返ってくる。このような時は,事実を指摘し,自我状態を
変えるために,相手を椅子に座らせ,事実の確認から,現在の心境と,時間をかけてじっ
くりと話し合い『気づき』が生まれるまで付き合うと,次の行動は生徒が自ら提案するこ
と が 多 い 。 相 手 へ の 近 づ き 方 ・ 相 手 の 名 前 な ど を 呼 び か け す る 。 力 を 抜 い て ( 態 度 ・ 音 調 ) 接 す る
・ 自 我 状 態 の <A>を 使 っ た や り 取 り を 心 が け る 。 決 し て 『 あ い つ は ・ ・ ・ , ま っ た く ・ ・
・』など決め付けて,接しないことである。
自 分 が 『 い ま こ こ で 』 ど の 様 な 状 態 に い る か を 考 え る こ と も 大 切 で あ る 。 早 口 か , 一 方
的に話しているかを少し時間を置いて考えることである。水を飲む・席を立ってみる・考
えをまとめる・指輪をぐるぐると回す(5~10回)。など余裕を持つために意識して行
動 す る 。 オ ー バ ー ラ ッ プ ・ エ ゴ グ ラ ム を 用 い て , 相 手 と の 交 流 が ど の 様 に 行 わ れ る か を 予 測 し て
お く と , ゲ ー ム に 陥 ら な い こ と が 出 来 る 。 ゲ ー ム に 載 ら な い た め の ス ト ロ ー ク の 出 し 方 ・ 反応の仕方を変えるのだ。日ごろから肯定的なストロークの交換に心がけ,肯定的ストロ
ー ク を 一 杯 た め て お く こ と だ 。 20- 7
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相 手 の 否 定 的 ス ト ロ ー ク に は 瞬 時 に 反 応 し な い よ う に す る 必 要 が あ る 。 そ の た め に , 否
定的ストロークをもらったら10秒間ぐらい間を置くため,『アンカー・錨』を作るとい
い 。 「 私 は , 指 輪 を く る く る と 1 0 回 程 度 回 す こ と に し て い る 」 指 輪 を 回 し て い る と (a)
時 間 が た つ (b)自 我 状 態 が 変 化 す る (c)感 情 的 に 反 応 し な い な ど の 効 果 に よ り ,売 り 言 葉
に ・買 い 言 葉 の 反 応 で な い < A> か ら の 反 応 が 出 来 る 。
保 護 者 か ら の ク レ ー ム が あ っ た と き に と て も 効 果 が あ が る 。 「 ○ ○ さ ん の お っ し ゃ り た
いことは~~なのですね」とか「○○さんは~~とお感じなのですね」などストロークを
ゆ っ く り と 受 け 止 め , 冷 静 に 対 応 で き る 。 相 手 に 巻 き 込 ま れ な い で す む 。 交 流 の パ タ ー ン を 分 析 す る に は , 受 け 手 が ど う 感 じ た か が 重 要 に な る 。 威 圧 的 に 感 じ れ
ば 相 手 は < CP> か ら 発 信 し て い る し ,優 し さ を 感 じ れ ば < NP> か ら 発 信 し て い る 。冷 静 な
感 じ で あ れ ば < A> か ら の 発 信 で あ り , 何 か し た く な る よ う で あ れ ば < FC> か ら の 発 信 で
あ り ,い ら い ら し た り ,ど う な ん だ よ な ど 感 じ た り し た と き は < AC> か ら の ス ト ロ ー ク の
発信である。言葉のやり取りを自分と相手を両側に書き分けるとやり取りや感情に気づく
こ と が 出 来 る 。 ま た , 多 く の 交 流 で 使 わ れ る 自 我 状 態 と ス ト ロ ー ク の 関 係 を 次 に 示 す 。 <CP>→ <AC>・ <RC>, <NP>→ <FC>, <A>→ <A>, <FC>→ <FC>・ <NP>, と の 間 で や り
取 り が 起 こ る 。 ● だ め じ ゃ な い か → す み ま せ ん・う る せ ぇ な ● よ く や っ た ね → は い ,こ れ か ら も が ん ば
り ま す ● 失 敗 の 原 因 は ? → 考 え て 見 ま す ● 遊 ぼ う よ → う ん , 遊 ぼ ! ・ 気 を つ け て ね な
ど で あ る 。 ゲ ー ム 分 析 も 同 様 に や り 取 り を 書 い て み る こ と で あ る 。 相 手 や 自 分 の 力 を 値 引 き ( 正 当
に評価していない)などがあったときにゲームをしている。また,相手に対するレッテル
貼 り を し な い こ と も 大 切 で あ る 。 や り 取 り で , 感 情 的 に 相 手 を NO と い っ て い る と き は ゲ
ー ム で あ る 。 自 分 に 対 し て 否 定 的 な 言 葉 を 使 う 時 脚 本 に 沿 っ た 行 動 を し て い る 『 僕 は だ め な ん で す 』
『結局僕は・・・です』『僕はやっぱり』など自分に対して決め付けることで,起こり得
る事柄に対し予防線を張ることでダメージを少なくしているときは脚本に沿った行動をし
て い る 。 5 教 室 で の 事 例 か ら ( 1 ) ス ト ロ ー ク の 交 換 の 活 用 明夫は日ごろマイナスのストロークを多くもらっている。ある日の午後,担任が昭雄に
明 日 持 っ て く る も の の 確 認 を し て い る 。 担 任 : 明 夫 , 明 日 持 っ て く る も の 忘 れ る な よ 。 ( 少 し 強 い 調 子 で ) 明 夫 : う る せ え な , わ か っ て い る よ 。 い ち い ち 言 う な っ て 。 ( ふ て く さ れ て ) 担 任 : な ん だ そ の 態 度 は 。 ( 嗜 め る 様 に ) 明 夫 : 分 か っ た よ , 持 っ て く れ ば い い ん だ ろ 。 ( 吐 き 捨 て る よ う に ) さて,担任の言ったことは,明夫に届いたのでしょうか?疑問です。どの様に対応した
ら よ い の で し ょ う か 。 20- 8
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担 任 : 明 夫 , く ど く な る け ど 確 認 ・ ・ ・ 明 日 何 を 持 っ て く る の か ・ ・ ・ ? ( 明 る い 声 で ) 明 夫 : 何 っ て , 先 生 俺 を 試 し て る ん だ ろ う ? ( 少 し 引 き 気 味 に ) 担 任 : 気 悪 く す る な よ , 忘 れ る と い け な い ん で チ ェ ッ ク だ よ 。 ( 軽 く 合 わ せ て ) 明 夫 : 忘 れ た ! ( わ ざ と 捨 て せ り ふ 長 で ) 担 任 : う そ だ ! 知 っ て る く せ に 。 ( 軽 く ) 明 夫 : ○ ○ だ よ ! 担 任 : ピ ン ポ ン ! ピ ン ポ ン ! 持 っ て き て ね ! ( 肩 を 軽 く た た い て ) じ ゃ あ ね , ま た 明 日 気 を つ け て 。 よく交わす会話です。ストロークの交換も,ストロークを出す自我状態により,メッセ
ー ジ の 受 け 取 り 方 が 変 わ る 。<CP>よ り <NP.>を 使 っ た り ,<FC>を 使 っ た り し た や り し た 取
りのほうが相手は防衛しないのだ。日ごろから二人の会話にはプラスのストロークの交換
が 出 来 て い る と も っ と 伝 え た い こ と が ス ム ー ズ に 交 換 で き る 。心 が け た い も の だ 。OK-OK
の や り 取 り を 。 ( 2 ) エ ゴ グ ラ ム の 活 用 エゴグラムは,とっさのときに使い易い自我状態の傾向を示している。普段気をつけて
いるときはコントロールされている。しかし,感情的になったり・困惑するとエゴグラム
のグラフにある特徴が顕著に出てくる。『エッ??』と思うような行動や,言動が見かけ
ら れ る 。 こ ん な と き も ,そ の 人 の 特 徴 な の だ と 考 え て み る こ と だ 。 そ し て エ ゴ グ ラ ム が 特 に <NP>
・ <FC>・ <A>の 部 分 で オ ー バ ー ラ ッ プ す る よ う に 心 が け ・ 行 動 す る 。 日 ご ろ か ら , <NP>・ <A>・ <FC>の 自 我 状 態 が オ ー バ ー ラ ッ プ が 出 来 る よ う な 交 流 を 心
が け る 。 認 め る ・ 励 ま す ・ 事 実 を 告 げ る ・や っ て み る 。 保護者の面談で,相手の話を十分に聞かないうちについ教師の考えを言ってしまう。相
手は十分に話を聞いてくれないことから担任をなじる。言葉尻に反応してしまい,言い合
い に な る 。話 を 十 分 に 聴 き ,問 題 が 何 か を 明 確 に し ,感 情 を は っ き り と つ か む こ と で あ る 。
共 感 す る こ と は <A>の 作 業 で あ る 。 十 分 に 話 を 聴 く こ と で 相 手 は 尊 重 ( 大 事 に ) さ れ て い
る と 感 じ 信 頼 関 係 へ と 進 む 。 感 情 的 に な ら ぬ こ と が 大 切 で あ る 。 ( 3 ) 事 例 エゴグラムは,行動・思考・感情の働きの傾向を予測することができる。つまり性格の傾向(特徴)
を知ることができる。 感覚を用いる(ディュセイが提唱している)か,質問紙を用いてエゴグラムを書く。
一番高いところの特徴と低いところの特徴を,自我状態の傾向の表から抜き出す。 (グラフは各自書いてください。) 例;データ,CP;18 ,NP;12 ,A;9,FC;14,AC; 4 であった。 まず一番高いCPの特徴を抜き出す。日ごろの観察や行動傾向も含め,よい影響を示すコメントの中
から,4~5選ぶ。気になる面の特徴もコメントの中から1~2選ぶ。 次に一番低いACのよい特徴を示すコメントの中から1~2選ぶ,気になる面の特徴を1~3選ぶ。
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良い時のコメントは気になる面のコメントより2~4つ,多目に選ぶ。 CPの良い点から,責任感がある・真面目である・ノーと言える・善悪が言える,の4点を挙げる。
気になる点から,頑固である,を挙げる。ACの良い点から,自主性がある・自分の意見が言える,
を挙げる。気になる点から,協調性に欠ける・妥協しない,を挙げる。 以上から,アセスメントは,「あなたは,真面目で,責任感があり,自主的に行動し,善悪の判断
など,イエス,ノー等,自分の意見がはっきり主張できる点等良い面があります。一方で,自分の考
えに固執してしまい,他と共同できず,妥協しない人と思われてしまうことがあり,気を付ける必要
があります。」等となる。 大切なことは,先生たちの観察も加味しながらコメントを作り,生徒の「気づき」にまで高めるこ
とが必要である。生徒の行動傾向を指摘し,生徒が納得するようにアセスメントできれば,一番良い
エゴグラムの活用になる。コンピュータ等で解析したアセスメントのときは,必ず先生方の観察も加
味して生徒にはアセスメントする。テストの結果を生徒にそのまま手渡すなどもってのほかである。
そのためにも日々の観察と研讃が大切になる。 結果がアセスメントできたらさっそく生徒との面談をする。その時に大切にするのは,良い点は上
手に認め(ほめ),伸ばすためにどのようなことに気を付けて生活するといいかなど一緒に考え,励
ましが大切である。また,日常の生活で困っていることや,気になることなどを聞き,そして,エゴ
グラムから示された気になる点を日常の出来事などを例にして説明して,「気づき」にまで導くこと
が大切である。決してお説教調にならないように留意する。 生徒が「気づく」速度でアセスメントする。困ったことや気になることを改善するために,どの自
我状態を挙げればよいかを考える。エゴグラムの大切な点は,エゴグラムを使いより理想的な(なり
たい)自分作りに活用することである。ただ,性格傾向診断にだけに用いるのは,本来のエゴグラム
のもつ素晴らしさの半分も達成できない。「気づき」から,なりたい自分に向けてのプラン作りをす
ることが大切である。 6 交 流 分 析 を 使 う 上 で の 限 界 と 留 意 点 と 課 題 交 流 分 析 は 健 全 な 精 神 の 持 ち 主 を 対 象 と し て い る 。 自 分 の 立 場 を 理 解 し 相 手 の 立 場 を 予
測するのに有効である。自分の特質(癖)を十分に知ることに時間をかけ,自分がわかる
と , 相 手 の こ と が わ か る 。 誠 実 な 交 流 を 基 本 に , 考 え 方 ・ 感 じ 方 ・ 行 動 の 仕 方 は 自 分 の 責 任 で 決 定 し て い る 。 シ ス テ ム と し て の 人 間 関 係 の 研 究 が 必 要 で あ る 。 《 参 考 引 用 文 献 》 E・ バ ー ン 南 博 訳 『 人 生 ゲ ー ム 入 門 人 間 関 係 の 心 理 学 ( 改 訂 版 ) 』 河 出 書 房 , 2000 E・ バ ー ン 石 川 弘 義 ・ 深 澤 道 子 訳 『 性 と 愛 の 交 流 分 析 』 金 子 書 房 , 1999 J・ ブ ラ ッ ド シ ョ ー , 新 里 里 春 訳 『 イ ン ナ ー チ ャ イ ル ド 』 NHK 出 版 , 2001 J・ デ ュ セ イ , 新 里 里 春 訳 『 エ ゴ グ ラ ム 』 創 元 社 , 2000
H・ G・ ギ ノ ッ ト , 『 先 生 と 生 徒 の 人 間 関 係 』 サ イ マ ル 出 版 会 , 1983 M・ ジ ェ イ ム ス D・ ジ ョ ン グ ウ ォ ー ド 本 明 寛 深 澤 道 子 訳 『 自 己 実 現 へ の 道 』 社 会 思 想
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社 , 1976 T・ A・ ハ リ ス , 宮 崎 伸 治 訳 『 I'M OK-YOU'RE OK 幸 福 に な る 関 係 − 壊 れ て い く 関 係 』 同
文 書 院 , 1999 M・ ジ ェ イ ム ス , 林 誠 治 訳 『 OK ボ ス 交 流 分 析 に よ る 自 己 啓 発 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社 , 1977 M・ ジ ェ イ ム ス , 深 澤 道 子 訳 『 突 破 へ の 道 セ ル フ ・ リ ペ ア レ ン テ ィ ン グ 』 社 会 思 想 社 , 1984 M・ ジ ェ イ ム ス , 諸 永 好 孝 訳 『 ふ れ あ い 教 育 の 実 践 』 社 会 思 想 社 , 1985 M・ ジ ェ イ ム ス , 深 澤 道 子 訳 『 よ い 上 司 』 プ レ ジ デ ン ト 社 , 1992 M・ ジ ェ イ ム ス , 近 藤 裕 訳 『 結 婚 に お け る 自 己 実 現 へ の 道 』 社 会 思 想 社 , 1989 M・ M グ ー ル デ ィ ン グ R・ L グ ー ル デ ィ ン グ , 深 澤 道 子 訳 『 自 己 実 現 へ の 再 決 断 』 星 和 書
店 , 1980 M・ M グ ー ル デ ィ ン グ R・ L グ ー ル デ ィ ン グ , 深 澤 道 子 訳 『 心 配 症 を や め る 本 』 日 本 評 論
社 , 1995
加 藤 浩 一 『 心 の お し ゃ れ 〜 TA を 楽 し む 本 』 全 6 巻 沖 縄 出 版 1 『 心 っ て な あ に 』 , 1990
2 『 心 と こ こ ろ の お 話 』 ,2003 3 『 ス ト ロ ー ク と デ ィ ス カ ウ ン ト 』 , 1992 4 『 心 の 中 に 楽 し む 時 間 』 , 1994 5 『 心 の 中 の OK 牧 場 』 , 2000 6 『 心 理 ゲ ー ム と イ ン テ ィ メ ー ト 』 , 1989
杉 田 峰 康 『 新 し い 交 流 分 析 TA ゲ シ ュ タ ル ト 療 法 の 試 み 』 創 元 社 , 2000
『 人 生 ド ラ マ の 自 己 分 析 交 流 分 析 の 実 際 』 学 事 出 版 , 2004
柴 崎 武 宏 『 自 分 が 変 る ・ 生 徒 が 変 る 交 流 分 析 』 学 事 出 版 , 2004
ワ ー ク や 参 考 文 献 も 沢 山 掲 載 さ れ て い ま す 。 是 非 参 考 に
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