出生率の推移 - 神奈川県経営者協会

【次世代育成支援レター】NO.52
平成27年6月
緩やかに回復を続けてきた合計特殊出生率が昨年、9年ぶりに下降に転じました。政府や地方自治体は少子化
を食い止めようと、さまざまな手立てを講じていますが、歯止めがかかるか不透明な状況がいまだに続いていま
す。
出生率の推移
「合計特殊出生率」とは、1人の女性が生涯に出産すると見込まれる子どもの数を表す数字で、その年の15~
49歳の女性が産んだ子どもの数をもとに算出します。人口が長期的に増えるか減るかを見通す指標で、将来の
人口を維持できる水準は2.07とされています。
2014 年の合計特殊出生率は1.42で、前年を0.01ポイント下回りました。前年を下回るのは過去最低だっ
た 2005 年(1.26)以来9年ぶりで、緩やかな回復傾向であったものにブレーキがかかってしまいました。
昨年1年間に生まれた子の数は 100 万 3532 人で過去最少を更新し、前年より2万 6284 人少なく、前年の減少
数(7415 人)より大幅に拡大しています。人口を維持できる水準とはかけ離れており、今後も人口減が続いてい
く見通しです。少子化対策に決め手がない状態です。
母親の年代別では30代と40代の出生率は上がりましたが、20代は下がりました。第1子を産んだ時の平
均年齢は30.6歳で、前年より0.2歳上がりました。これも少子化進行の要因の一つ
です。
一方、死亡者数は 127 万 3020 人で戦後最多。出生数から死亡者数を引いた自然減数の26万 9488 人も過去最
多となりました。婚姻をしたのは64万 3740 組で戦後最少。初婚年齢の平均は夫31.1歳、妻29.4歳で、い
ずれも前年よりわずかに上がっています。
厚労省は出生率が低下した原因について、晩婚・晩産化に加え、人数が多い団塊ジュニアの世代が40代に入
ったことなどを挙げています。
政府の「まち・ひと・しごと創生本部」は昨年12月にまとめた人口減対策で、
「国民の希望が実現した場合の
出生率」として「1.8」を示していましたが、これに遠く及ばない1.42となってしまいました。
内閣府幹部は「待機児童対策などをやってきているが、政策の効果がすぐに出生率に反映されるわけではない
ので難しい」と話しています。
都道府県別では沖縄県が1.86で最も高く、最低は東京都の1.15でした。
<都道府県別の合計特殊出生率:2014年>
全国平均
1.42
北海道 1.27
青森
1.42
岩手
1.44
宮城
1.30
秋田
1.34
山形
1.47
福島
1.58
茨城
1.43
栃木
1.46
群馬
1.44
埼玉
1.31
千葉
1.32
東京
1.15
神奈川 1.31
新潟
1.43
富山
1.45
石川
1.45
福井
1.55
山梨
1.43
長野
1.54
岐阜
1.42
静岡
1.50
愛知
1.46
三重
1.45
滋賀
1.53
京都
1.24
大阪
1.31
兵庫
1.41
奈良
1.27
和歌山 1.55
鳥取
1.60
島根
1.66
岡山
1.49
広島
1.55
山口
1.54
徳島
1.46
香川
1.57
愛媛
1.50
高知
1.45
福岡
1.46
佐賀
1.63
長崎
1.66
熊本
1.64
大分
1.57
宮崎
1.69
鹿児島 1.62
沖縄
1.86
政府が今年3月に閣議決定した「少子化社会対策大綱」では、出会いの機会を提供する地方自治体や商工会議
所などにノウハウなどを提供することを盛り込んでいます。3人以上の子どもがいる世帯には保育料無償化の対
象を広げるなど、経済的な支援も掲げています。晩産化で不妊に悩む人も増えていることから、大綱に基づき、
妊娠や出産に関する医学的な知識を盛り込んだ高校の保健体育の副教材を今年の秋以降に配布する予定です。
地方自治体も取り組みを強化しています。富山県や福井県、京都府は4月から独自に第3子の保育料無償化の
対象を拡大。企業と連携して出会いの場を提供する「とやまマリッジサポートセンター」
(富山県)などのカップ
リング支援、産婦人科医による何でも相談会(静岡県)といった情報提供なども行なっています。
独自の出生率目標を設けるところも多くなっています。岡山県は今年度からの5年間で1.49(2013 年)を1.
61に引き上げる目標です。
ただ、結婚の支援などは「産んでほしい」という思いが透けて見えるような政策で、若い世代が引いてしまう
面もあります。男女ともに働きながら子育てできる支援や雇用の安定、保育から教育まで子育てにかかるコスト
を下げるなど、子育てに優しい社会に向けて社会構造を変えていく政策が望まれます。