20151130週次レポート

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Precious Metals Weekly Update
27 November 2015
WEEK IN REVIEW:
Macro indicators:
12月3日に決定される予定の欧州中央銀行による金融緩和の拡大と、12月16日に予定されている米国利上げ
Yen
(0.3%)
という2つの大きなマクロ経済要素を投資家が織り込んだことで、貴金属は下方圧力に晒された。ユーロ圏にお
Euro
(1.0%)
ける金融緩和の拡大(量的緩和若しくは預金金利の引き上げ)は、安全資産や価値貯蔵手段としての面から表 Ni kkei
1.0%
面的なゴールドのサポート要因となり得る一方で、その結果ドル高ユーロ安となればゴールドの下方圧力にな S&P
3.3%
4.0%
り、ドル建のゴールド価格は下落するだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)のフィッシャー副議長は先週、FRB FTSE
(0.5%)
として市場に対して来たる利上げに対する出来る限りの準備を行ってきたとコメントした。FRBが12月 に利上げ Oi l
Copper
(4.5%)
を行うとすれば、ここ数年で最も予想通りとなるマクロ経済イベントであり、ゴールドはじめ貴金属全般が反発し
Nov 16th - Nov 20th
現在の売られ過ぎの水準から脱却する可能性があると言える。特に新興国の通貨や株式からの資産移転が
あれば、この可能性は大きくなるだろう。12月の利上げが確実視されている中での唯一の不安要素は、今週発表の米10月PCEデフレ
ータである。同指標はFRBが利上げの実施に際して、インフレ率を判断する重要な指標である。前月の結果である前年比1.3%増の水
準を下回るようなことがあると、昨今続いていたドル高傾向が終わり、結果的にゴールドのショートポジションをカバーする動きに歯止
めがかかるだろう。しかし今のところ、直近の抵抗線は下降トレンドとなっている。
プラチナ
プラチナは再び 2015 年の下降トレンドチャネルの底値付近で反発した。Jonson Matthey によるレポートにて詳細な言及があった堅
調なファンダメンタル面の動向も、市場に対してあまり影響を与えていない。
プラチナは先週 19 日に現在$843/oz に達している年初来からの下降チャネルの底値付近で小幅上昇したが、依然として同水準を試し
ている。欧州中央銀行(ECB)による金融緩和政策や米利上げを受けてドルは強含んでいることから、ゴールドの動きに連れてプラチナ
も引き続き下方圧力に晒されるだろう。供給サイドに関して、Lonmin が第三者割当増資に関する株主投票にて 88%の賛同を受けて
資金調達に成功したため、供給面の現在見通しは明るい。Lonmin は第三者割当増資によって現金$369mil.を調達し、同時にほぼ同
額の有利子負債を 2020 年までに削減することで純負債額を減少させ、コスト削減を達成して会社の体力に見合った操業を行うことが
可能となる。
貴金属製品メーカー且つ精錬業者である Jonson Matthey(JM)は先週、2015 年の PGM 需給予想を発表し、5 月の発表時のプラチナ
市場は 8.9t の供給不足となる見通しに対して今回は 20.3t の供給不足となると発表した。この供給不足は安値圏にある足元のプラチ
ナ価格(年初来で 30%下落)や市場において使用可能なメタルの余地が存在する事に鑑みるとやや不思議に感じられるが、これは潜
在的な需要の上昇基調が織り込まれたためである。この見通し結果は、直近で足元の安値圏と同水準であった 2008 年の世界経済危
機のピーク時と比べて、工業需要に関しては当時と状況が異なるということを意味している。
プラチナの二次供給量即ちリサイクル供給量の減少は今回の一番のサプライズ要素である。自動車廃触媒が市場に出回らず退蔵さ
れたことや中国での宝飾品リサイクル量が落ち込んだ結果、JM は 5 月の需給見通しと比較してリサイクル供給量は 12.4t(20%)以上
の減少と見ている。いずれも主にはプラチナ価格の低さが影響している。鉄鋼価格が下落したことから自動車が殆どスクラップに回ら
なかったことや自動車の寿命が長くなったことで、プラチナの回収量の減少につながったと見られる。この地合いは JM 自身の下半期
の業績に影響しており、JM の精錬事業に関して、精錬に使用する素材量は依然として減少傾向にあると予想されている。在庫の退蔵
によってリサイクル価格は再び上昇するものと見られる。JM の見通しでは自動車触媒分野は幾分か弱気あったが、翌年度の自動車
触媒供給量は 10%以上の回復が見込まれる。2015 年の一次供給量は、2014 年のストライキを踏まえて当然増加するものと予想され、
来年度はほぼ横ばいとなる見通しである。JM の発表の中で言及されたように、南アの鉱山会社は現在生産しているメタルを全て売り
切っている。これによって操業の柔軟性が失われており、2016 年に更なる人員整理が行われると考えられる。
2014 年と比較して最も需要が伸びる分野は、取引量が昨年比で 2.7t 増加し 30t と予測される現物投資需要であると考えられている。
確かに日本におけるラージバーへの投資需要は大きく、特に価格が下落した 7-9 月期は著しかったものの、JM が見通しの数字を確
定させた後となる今月初から現在までの南ア ETF の残高減少量 4.7t によて増加分はほぼ相殺されるため、この見通しの数字は過大
であると考えられる。今年の終わりまで ETF 市場において残高が減少し続けた場合(価格の推移から考えるとその可能性が高い)、現
物投資部門の数値は JM の予想を大きく下回る可能性が高い。したがって、他の状況は JM の見通しと変わらないものの全体の需要
量は減少することとなり、リサイクル需要が減少することも考慮するとプラチナ市場は依然として若干の供給不足となるだろう。
Platinum prices $/oz
Palladium prices $/oz
Gold prices ($/oz)
Silver prices ($/oz)
last week:
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16-Nov
20-Nov
Change: -0.4%
Support: $750
Resistance: $870
Outlook:
16-Nov
20-Nov
Change: 3.7%
Support: $521
Resistance: $598
Outlook:
16-Nov
20-Nov
Change: -2.5%
Support: $1,045
Resistance: $1,136
Outlook:
16-Nov
20-Nov
Change: -0.6%
Support: $13.92
Resistance: $14.66
Outlook:
Precious Metals Weekly Update
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27 November 2015
自動車触媒需要に話を移すと、ディーゼル乗用車の販売台数が増加し(市場シェアは微減している)、全体でディーゼル車 1 台あたり平
均プラチナ搭載量を 7%増加させることに繋がる Euro6 の乗用車排ガス規制が適用されるため、JM は前年比で 6%(6.2t)の増加し 7
年ぶりの高水準となる 107.9t になると予測している。しかしタイやインドをはじめとした新興国での自動車販売台数が弱含んでいること
から、JM は自動車触媒需要予想値を下方修正している(修正前は前年比 10%の増加としていた)。VW の排ガス違法問題によってプ
ラチナ需要に影響が出たと考えるのは早計であるが、VW 関係の排ガス規制技術部局が先週発表した様に中期的なディーゼル車の
市場シェアは減少傾向にある。実際、欧州のディーゼル車の市場シェア減少を受け、JM はプラチナの自動車触媒需要予測を-0.9t 減
少として若干下方修正している。
もう一つの価格に影響を与え得る重要な需要分野である中国宝飾需要は、5 月発表時は前年比 5%減と予想されていたのに対して今
回の発表では同 16%減の 49.7t と予想されている。宝飾業界全体の減速やそれに伴う宝飾店の閉鎖・撤退に加え、高価であるという
点でプラチナに魅力を感じていた消費者の関心が価格下落によって遠のいたことなど、多くの要因が中国宝飾需要の減衰の理由とし
て考えられる。
全体としては、JM のレポートによるとリサイクル分野による追加供給や価格を大きく左右し得る宝飾分野や現物投資分野の見通しが
不明瞭であるという懸念材料はあるものの、需要面は比較的堅調であり 2015 年及び 2016 年は供給不足となる見込みである。今週後
半に World Platinum Investment Council (WPIC)や SFA (Oxford)による四半期毎のプラチナ市場の見通しが発表される。これら
のデータは殆どスポット価格の動向については変更しないものの、中長期的な市場変化に関する見通しを発表する。
パラジウム
パラジウムは先週の下落によって上昇基調を示すダブルボトムが形成されている。当面は安定した推移となるか?
パラジウムは先週軟調に推移し、8 月につけた安値圏まで下落したが 8 月安値を$6/oz 上回る $527/oz で反発し、相対力指数に基づく
と売られすぎの水準を脱しており、安定した推移を見せる可能性がある。しかし、抵抗線である 8 月安値と 10 月高値を結んだ 76.4%フ
ィボナッチリトレースメントの$569/oz を突破しきれず、短期的には上値重たく推移する可能性がある。
今回の JM によるパラジウム需給見通しはプラチナ同様 13.2t の供給不足と発表された。これは 5 月に発表された数字から 3.1t 以上
の上方修正が成された形となるが、55.9t の供給不足となった昨年度の需給見通しを依然として大きく下回っている。現物投資需要は
需給状況を左右する要因であり、昨年は 29.0t の需要があったが、今年は 12.4t と見込まれている。年初来で 17.4t のパラジウム ETF
が現物に兌換されているため、この ETF から現物への転換によって供給量が以前より増加する可能性がある。JM は今年のパラジウ
ム自動車触媒需要は減少すると予想しているが、南ア鉱山の産出量増加によって一部相殺されている。
ゴールド
売られ続けているが、底値に近付いているのか?
11月17日に発表されたCFTC建玉明細によると、COMEXの資金運用者玉(Managed Money)はグロス・ロングが減少した一方、グロ
ス・ショートは560tまで増加した。これによりネット・ロングは3か月振りの低水準である87tとなり、先週だけで134tも減少した。ヘッジファ
ンドをはじめその他機関投資家もショートポジションを積み上げていることは、昨今のゴールド安の原因であり影響でもある。また、米国
の年内利上げ実施観測が市場に織り込まれることで、今後数週間中にロングポジションが売り手仕舞われ、新たにショートポジション
が積み上げられる可能性がある。実際に利上げが実施されれば、最終的にショートカバーによって上昇する可能性がある。
インドにおけるマネタイゼーション・スキームの浸透には限界があるようだ。インド国内の報道によると、同スキームが今月上旬に施行
されてから現在に至るまで、積み立てられた数量は僅か400gである。同スキームの積立最小数量が30gである事を考えると、取引参加
者は限られたごく少数となる。当レポートにて以前から言及しているように、同スキームをインドで施行するにあたり直面する課題とは、
ゴールドを価値貯蔵手段として手元に置こうとすることで銀行へ預け入れない点であり、同スキームが浸透するには未だ時間がかかる
と考えられるが、数か月間に亘ってGMSが同スキームに対して関心を寄せていたことを考えると、足元の状況はスロースタートと言え
る。
シルバー
下落が続く。今週月曜日につけた年初来安値である$13.98/oz は 6 年振りの低水準となった。その後反発し、同水準が新たに直近の
支持線となった。
先週 Silver Institute と GFMS が発表した中期レポートでは、石炭業界の不振と共に銀貨需要の増加が過去最高水準にあると言及さ
れていた。銀貨市場は 2015 年現在、1,328t の供給不足となっており、3 年連続で供給不足となった。しかし ETF や為替相場からの資
金移動がこの供給不足の影響を相殺しておりネットでは 724t となっている。シルバー鉱山の一次生産量は増加すると見られている一
方、ベースメタル等の副産物としてのシルバー生産量に関してはスクラップ精鉱やディヘッジと同様に 5%の減少となり、これにより一次
生産の増加分は相殺されるとみられる。前回のレポートでも強調したように、米造幣局によるイーグル銀貨の売上は今年群を抜いて堅
調である。GFMS の予想では第 3 四半期における銀貨取引量は 1,023t に達し、前年比 95%増加という歴史的高水準となる。また
2015 年の銀貨需要量は全体で 21%増加し、4,040t に達するとみている。光電子部門及びエチレンオキサイド部門での需要も同様に堅
調に伸びるとみられるが、これらを除く他の電子部門の需要量は 401t 落ち込んでおり、特に中国の冷え込みを受けて全体的な産業需
要は後退している。宝飾需要も同様に 2.5%下落して 6,811t と見込まれている。2015 年の全体の現物需要は 2.5%減少の 32,879t と見
込まれている。
27th November 2015
三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部
転用・転送 堅くお断りいたします
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Precious Metals Weekly Update
27 November 2015
ECONOMIC CALENDAR Source – Bloomberg
Nov-23
Japan:
祝日
Nov-24
Germany:
第三四半期 GDP(前年比)
前 1.7%
11 月 IFO[期待値]
前 103.8 予 103.5
US:
10 月 PCE デフレーター (四半
期) 前 1.2% 予 1.2%
11 月 消費者信頼感指数
前 97.6 予 99.5
World Platinum Investment
Council 四半期レポート発表
Nov-25
Nov-26
Japan:
日銀金融政策決定会合
UK:
予算案発表・収支報告.
US:
MBA 住宅ローン申請指数 前 6.2%
10 月 PCE コア・デフレーター(前年比) 前 1.3%
新規失業保険申請件数 前 27.1 万件 予 27.0 万件
10 月耐久財受注(前月比)前 -1.2% 予+1.7%
11 月総合 PMI 前 55
10 月新築住宅販売件数
前 46.8 万件 予 50.0 万件
EU:
10 月マネーサプライ M3
(前年比)
前 4.9% 予 4.9%
US:
祝日
Nov-27
Japan:
10 月 CPI
前 0.9% 予 0.8%
10 月失業率 前 3.4%
UK:
GDP(前年比)
前 2.3% 予 2.3%
EU:
消費者信頼感指数
前 6.0 予 7.9
EU 財政安定性見直し結果
EXCHANGED TRADED FUNDS: Source – various ETF providers
プラチナ ETF 残高
2015 年 11 月 20 日時点:79.0t
プラチナ ETF 残高は 6 月後半以降毎週減少し
ていたが、先週は前週比ほぼ横ばいとなった。
プラチナ ETF 残高
2015 年 11 月 20 日時点: 75.9t
先週は南ア ETF の残高減少が大分落ち着き、
パラジウム ETF 残高は微減に留まった。
ゴールド ETF 残高
11 月 20 日時点:1,328t
SPDR ETF が更に売り手仕舞われ、ゴールド
ETF 残高は再び微減した。
シルバーETF 残高
11 月 20 日時点:13,013t
先週シルバーETF は主要銘柄を中心に大きな
動きはなく、残高はほぼ横ばいとなった。
SHANGHAI GOLD EXCHANGE: Source – Shanghai Gold Exchange
SGEプラチナ売買高 11 月 20 日時点
(implied sales on Pt9995)
th
Implied premium 8.9% (9.6% to 13 Nov)
SGEゴールド売買高 11 月 20 日時点
(implied sales on Au 99.99 contract) Premium: 0.6%
th
(0.9% to 13 Nov)
Thousands
Platinum sales (koz)
200
Price (RMB/g)
400
350
150
300
250
100
200
150
50
100
50
0
27th November 2015
0
Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec
2013
2014
2015
2013 monthly average price
2014 monthly average price
2015 monthly average price
三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部
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Precious Metals Weekly Update
Spot
Gold
Forwards
Silver
Platinum
Leases
Palladium
27 November 2015
Futures
Rhodium
Options
Ruthenium
Swaps
Iridium
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27th November 2015
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