改正生活保護法について不当な運用をしないことを求める会長声明 1.本年12月6日、「生活保護法の一部を改正する法律」(以下「改正法」と いう。)が成立した。 改正法には違法な「水際作戦」を合法化し、保護申請に対する一層の萎縮的 効果を及ぼすという重大な問題があることから、日本弁護士連合会が繰り返し 廃案を求めて来たにもかかわらず、改正法が成立したことは、誠に遺憾である。 2.ところで、改正法の審議の過程において、政府は、申請の際に申請書及び添 付書類の提出を求める改正法24条については、①従前の運用を変更するもの ではなく、申請書及び添付書類の提出は従来どおり申請の要件ではない。②福 祉事務所等が申請書を交付しない場合もただし書の「特別の事情」に該当する。 ③給与明細等の添付書類は可能な範囲で提出すればよく、紛失等で添付できな い場合もただし書の「特別の事情」に該当する旨答弁した。また、扶養義務者 に対する通知義務の創設や調査権限の拡充を定めた24条8項、28条及び2 9条については、明らかに扶養が可能な極めて限定的な場合に限る趣旨である 旨答弁し、両趣旨を厚生労働省令等に明記して、保護行政の現場に周知する旨 繰り返し答弁して来た。 しかしながら、改正法の条文の文言が一人歩きし、違法な「水際作戦」がこ れまで以上に誘発される危険性が払拭されたとは言い難く、改正法の施行によ って、生活保護の利用が抑制され、餓死・孤立死・自殺等の悲劇が増加する事 態が強く懸念される。この点についてては、厚生労働大臣は、審議の過程で、 生活保護受給者数、人口比受給率、生活保護開始率、餓死・孤立死などの問題 事例の動向を踏まえ、問題があれば5年後の見直しの際に十分に考慮する旨答 弁している。 3.そこで、本会は、国に対し、 (1) 改正法の施行により、申請書を交付しない、添付書類が揃わない限り有効 な申請と扱わない、扶養義務者への援助を求めて門前払いする等の、申請権 を侵害する違法な運用が拡大しないようにするため、各地の福祉事務所のカ ウンターに誰でも手に取れる形で申請書を備え置くとともに、上記国会答弁 の趣旨を十分に踏まえ、改正法を理由として申請権を侵害する運用を行わな いよう各地の福祉事務所等に周知徹底することを強く求める。 (2) また、改正法の施行による影響を逐次に把握するよう努め、問題が生じれ ば、5年後の見直しを待つことなく直ちに改正法を見直すことを強く求める。 4.また、本会は、県内の福祉事務所に対し、改正法の条文の文言を形式的に 捉えて、申請権の侵害や生活保護利用の抑制となるような調査を行うことなく、 上記国会答弁の趣旨を踏まえて、適正な改正法の運用をなすことを強く求める。 2013年(平成25年)12月12日 大分県弁護士会 会 長 千 -1- 野 博 之
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