所沢市保育園育休退園訴訟原告らに対する 保育継続許可決定に関する声明 2015年7月28日 原告・申立人ら代理人 弁護士 原 和 良 同 片 岡 勇 同 田 同 北 同 菊 間 龍 一 同 磯 部 た な 畑 智 永 砂 久 所沢市は,誤った育休退園制度を撤回し,保育所増設を柱とし た保育政策の全面的見直し,充実を図るべきである 1 今 年 4 月 に 突 如 始 ま っ た 所 沢 市 の 育 休 取 得 に 伴 う 在 園 中 の 0 ,1 , 2 歳児の退園制度について,保育を受ける権利の侵害等を理由に 14 世 帯 18 名 の 保 護 者 が , 保 育 解 除 の 差 し 止 め 及 び 仮 差 し 止 め を 求めてさいたま地方裁判所に提訴した。 さいたま地方裁判所は,7月23日付けで,仮の差止め申立事 件(平成27年〔行ク〕第12号事件,同第15号事件)につい て,申立人らの申立をいずれも却下する不当な決定を下した(な お,本案の差止め訴訟については,第1回口頭弁論期日が,本年 9 月 1 6 日 午 後 3 時 と 指 定 さ れ て い る )。 2 所 沢 市 は , 上 記 決 定 に 先 立 ち , 本 年 7 月 16 日 付 け で , 本 年 7 月末退園の対象となっていた 2 世帯の原告らに対して,保育の継 1 続申請を認める決定を行った。 継続決定通知書によると,継続を認める理由は,いずれも「在 園児の家庭における保育環境等を考慮し,引き続き保育所等を利 用することが必要な場合に該当するため」となっている。 同許可決定は,育児休業取得が保育を必要とする場合に該当す るという当方らの主張を認めざるを得なかったもので当然の結果 であり,所沢市の「育休中は家庭での保育が可能」という主張の 間違いを自ら認めたものである。 他方,同じような保育環境,家庭環境にありながら,この6, 7月末に保育継続が認められなかった保護者が存在するとの情報 がある。所沢市の審査の基準は,極めてあいまいで恣意的なもの ではないか,という疑念を払拭できない。 3 100 点 加 算 ル ー ル の 問 題 所 沢 市 は , 代 理 人 弁 護 士 ら の 申 し 入 れ を 受 け て , 平 成 27 年 5 月 28 日 , ホ ー ム ペ ー ジ 上 で , 継 続 申 請 の 受 付 が 開 始 す る 一 方 , 上の子が育休取得で退園した場合,上の子も下の子も将来の入園 時 に ポ イ ン ト が 100 点 加 算 さ れ る と い う ル ー ル を 発 表 し た 。 この制度は,保育が必要であるからこそ継続在園するという当 然 の 権 利 を 行 使 し た に も か か わ ら ず ,継 続 が 認 め ら れ た 場 合 に は , 下の子の入園において著しい不利益を被る制度となっている。ま た , 今 般 , こ の 100 点 加 算 ル ー ル は , 3 歳 以 上 の 在 園 児 童 の い る 家庭においても適用されることが保護者の問い合わせで判明し, この制度が「育休退園奨励制度」であることが明かとなった。 制度自体が不平等であるだけでなく,その運用もあいまいで, 利用者である市民には全く理解できない制度となっている。 ま た , 矛 盾 を 回 避 す る た め に 導 入 さ れ た の が , 100 点 加 算 ル ー 2 ルであるが,障害児や多産児など他の保育を必要とする保護者と の調整等は全く考慮せずに批判を回避するためののみに導入され た制度であるため,長期的かつ総合的な視点からの子ども・子育 て支援制度とはなっていない。 4 所沢市においては,条例で設置された審議会として,子ども・ 子育て会議が存在するが,子どもと保護者の権利に重大な影響を 与える制度である今回の育休退園制度は,この審議会で一度も議 論されていない。この点での手続的な瑕疵は重大なものである。 5 過 去 の 裁 判 例 で は ,公 立 保 育 園 の 廃 止 に 関 し て , 「保育を受ける 権利ないし法的利益」が認められている。本件は,保育の実施の 解除という保育契約において最も重大な処分であり,侵害される 権利は保育園の廃止(民営化)と比して重大であり,仮にこのよ うな制度が可とされるとしたとしても,その手続的においては他 に取り得る手段の検討,保護者への説明と理解を得るための慎重 な手続が保障されなければならない。 育休退園に肯定的な立場の識者であっても, 「十分な議論を経た 上 で 1, 2 年 の 猶 予 期 間 ( 告 知 期 間 ) が 必 要 」 と い う の が 最 大 公 約数的な見識である。 5 弁護団は,今後も保護者らと協力し,訴訟の遂行,退園となっ た保護者の異議申し立て,世論喚起等の活動を広げ,制度そのも のの廃止を目指して活動を継続するものである。 以上 3
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