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2015 年欧州マイクロ波会議 EuMW にて行われたセッション内容の報告
(測定技術関係)
柴田幸司†
†八戸工業大学工学部電気電子システム学科 〒031-8501 青森県八戸市大字妙字大開 88-1
E-mail:
†[email protected],
あらまし 2015 年のヨーロッパマイクロ波会議(EuMW2015)における一部セッション, 特に測定技術およびセンシング技
術につきまとめた結果を下記に記す. 特に着目したのはキーサイトの企業によるセミナーでも焦点が当てられていたマイクロ
波顕微鏡の改善のための測定技術などであり, その中でもたとえば EuMC09 ではマイクロ波顕微鏡 Microwave のセッションが
組まれており, 能動回路(トランジスタ, システム)の測定法のセッションも人気だった. また, マイクロ波医療応用なども注
目されていた.
し た 結 果 ( Poly-Grames Research Center, Canada) ,
1. 測 定 技 術 関 連
柴田幸司 (八戸工大)
EuMC11-3で は , 短 距 離 伝 送 の た め の 4×4 MIMOを
本節では, マイクロ波およびミリ波帯での電磁波計
25GHz帯 の 矩 形 パ ッ チ ア ン テ ナ で 構 成 し 各 変 調 方 式 に
測の技術動向を報告する. 従来の電磁波の照射による
て 帯 域 幅 や ア ン テ ナ 間 距 離 に 対 す る BERな ど を 評 価 し
物体などの非破壊でのセンシングは自由空間への電磁
た 結 果 ( NTT, Japan) な ど が 報 告 さ れ た .
波の放射や伝送線路を用いた技術が主流で, 解像度を
EuMC18 Reflectometers and Millimeterwave
向上するため波長との兼ね合いでミリ波の使用が前提
Characterization (5件 )
で あ っ た .し か し 近 年 , 測 定 物 と の 静 電 容 量 を 測 定 す
主 に ミ リ 波 帯 に お け る ア ン テ ナ や Sパ ラ メ ー タ の 測
る近傍界プローブを応用した走査型マイクロ波顕微鏡
定 法 に つ き 5件 の 発 表 が あ り , EuMC18-1で は ミ リ 波 帯
の開発が活発化しており, その他も含め報告する.
お よ び サ ブ ミ リ 波 帯 の 20dBiの 送 信 ホ ー ン ア ン テ ナ か
EuMC09 Nanoscale Characterization and On-Wafer
ら の 75か ら 110GHzの 周 波 数 帯 の 電 磁 波 を 2つ の オ フ セ
Calibration (5件 )
ットパラボラ反射鏡を介し, 放射時のガウシャンビー
マイクロ波顕微鏡の高性能化のためのセンサ部な
ム を 同 じ く 20dBiの ホ ー ン ア ン テ ナ に て 受 信 し て ア ン
どの改善および, 半導体チップなどの評価のための
テ ナ の 位 置 を xz面 で 変 化 時 の 受 信 振 幅 を 観 測 し ,コ ヒ
On-Wafer校 正 法 な ど 5件 の 発 表 が あ り , EuMC09-1で は
ーレント放射時はアンテナの校正によりビームスポッ
マイクロ波顕微鏡の基礎データとしてベクトルネット
ト は 最 小 で 8.4mm径 に ま で 縮 め ら れ る こ と を 示 し た 成
ワ ー ク ア ナ ラ イ ザ で 2.5GHz帯 に て 金 属 板 間 2.5mmの ギ
果( IAF, Germany), EuMC18-2で は 280GHz帯 で の ロ ボ
ャップに対しプローブを走査し, 位相と振幅の変化を
ットでのコントロールによるアンテナの放射パターン
検 出 し 可 視 化 し た 結 果 ( University Lille 1, France) ,
や利得を測定し, シミュレーション結果と比較や周囲
EuMC09-2で は , デ ィ エ ン ベ デ ィ ン グ に よ り セ ン サ と
に 配 置 し た 吸 収 体 の 影 響 の 検 討 結 果( University of Ulm,
被 測 定 物 に よ る S 11 を 定 義 し , 静 電 容 量 と S 11 と の 関 係
Germany) , EuMC18-3で は 多 層 半 導 体 の 評 価 の た め
を 測 定 し た 結 果( CNR-IMM, Italy)EuMC09-3で は , SEM
110GHz-220GHzの 帯 域 に お け る VNAに 接 続 す る 小 型
で の 走 査 の た め に 4GHzま で の 測 定 で コ プ レ ー ナ の プ
の周波数コンバータと温度制御されたコルゲート導波
ロ ー ブ 先 端 の 幅 を 27μ mで 実 現 し , 3次 元 で の 移 動 量 を
管 か ら ト リ プ レ ー ト を 介 し CPWに 変 換 さ れ た プ ロ ー
10nm程 度 ま で 改 善 し た 結 果( University Lille 1, France)
ブ に て On-wafer測 定 シ ス テ ム を 構 成 し , こ れ ら を CPW
などの報告があった.
の シ ョ ー ト お よ び 4種 類 の 遅 延 シ ョ ー ト か ら な る 基 準
EuMC11 Channel Measurement and Propagation (5件 )
に て 校 正 し た 結 果 , 低 温 度 領 域 の S11 が 良 好 に 測 定 で
MIMOに よ る 空 間 多 重 時 の 伝 送 特 性 の 測 定 や 電 波 伝
搬 に 関 し 5件 の 発 表 が あ り , EuMC11-1で は ミ リ 波 帯 で
のレイレーシングによる都市での電波伝搬解析におい
て, 電柱や道路標識などの影響を検討した結果
き る 成 果( Lake Shore Cryotronics, Inc., USA)な ど が 報
告された.
EuMC24 Millimeter-Wave Imaging (5件 )
本セッションでは電波を用いたイメージング技術
( Heinrich Hertz Institute, Germany) , EuMC11-2で は 2
に 関 し 5件 の 報 告 が あ り , EuMC24-1で は 120-140GHzに
×2 MIMOに て 行 列 演 算 に SVDを 用 い な い 場 合 の 様 々
て FM-CWに よ る パ ッ チ ア ン テ ナ 素 子 を 含 む MIMOレ
な 条 件 で の BERな ど を SVDを 用 い た 場 合 や SISOと 比 較
ーダをデュロイド基板上にマイクロストリップライン
に て 構 成 し , 測 定 デ ー タ か ら 7.5mmの 解 像 度 な 2次 元
で の イ メ ー ジ ン グ を 実 現 し た 例 ( Universit at Ulm,
EuMC37 Temperature Sensing and Modeling (5件 )
マ イ ク ロ 波 を 利 用 し た 温 度 計 な ど の 開 発 に 関 し 5件
Germany) , EuMC24-2で は 90GHz帯 で 帯 域 幅 7.5GHzの
の 発 表 が あ り , EuMC37-1で は 1-2GHz帯 に て ノ イ ズ ソ
MIMOシ ス テ ム を 実 現 し , 1×4 MIMO構 成 で 20mm解 像
ー ス , シ ー ル ド さ れ た 超 低 雑 音 LNA, 検 波 器 , PCBに よ
度 で の 2次 元 画 像 を 取 得 し た 例 ( FHR, Germany) ,
る自己補対アンテナなどからマイクロ波放射計を構成
EuMC24-3で は 75-110GHz帯 に て ホ ー ン ア ン テ ナ の 12
し , 人 体 な ど の 温 度 を 想 定 し 0.5℃ の 精 度 で 28-37℃ 程
送 信 , 12受 信 の イ メ ー ジ ン グ シ ス テ ム を 構 成 し , 4.5mm
度 の 温 度 変 化 を 観 測 し た 結 果( Duke University, USA),
の 解 像 度 で イ メ ー ジ ン グ を 実 現 し た 例( IPM, Germany)
EuMC37-2で は 1.4GHz帯 に て 同 様 の 構 成 で プ リ ン ト 基
などが報告された.
板上に折り曲げ構成されたダイポールアンテナと円形
EuMC34 Non-linear Measurements and Models (5件 )
パ ッ チ の 2種 類 の ア ン テ ナ を 用 い 検 出 し た 電 圧 を 信 号
マイクロ波帯における半導体素子の非線形特性の
処 理 し , コ ン テ ナ に 充 填 し た 水 の 30-40℃ 程 度 の 温 度
測 定 法 に 関 し 5件 の 報 告 が あ り , EuMC34-1で は 2ト ー ン
変 化 を 0.5℃ の 精 度 で 観 測 し た 結 果 ( Univ. of Colorado,
に よ る 相 互 変 調 ひ ず み を 利 用 し , 0.25μ m GaN HEMT
USA) , EuMC37-3で は 60GHzで の 放 射 計 に よ る 人 体 の
の V gs に 対 す る G m , IMD出 力 電 力 特 性 な ど を 7GHzま で
温 度 測 定 を 想 定 し , 人 体 組 織 に 対 し て 1次 元 の 熱 輸 送
の 周 波 数 に て -40~ 150℃ に わ た る 温 度 条 件 で 測 定 し ,
方程式により温度モデルを高速に解析し得る手法を示
特 性 を 解 析 し た 結 果 ( University of Manchester, UK) ,
し , L=5, 10, 15mmの モ デ ル に て 0-3500Secの 時 間 変 化
EuMC34-2で は 60Wの 0.25μ m GaN増 幅 器 を パ ル ス レ ー
で の 0.35℃ の 温 度 上 昇 に 対 し 理 論 値 と 良 好 な 結 果 が 得
ダの送信出力の増幅に使用時のパルス間の安定度を定
ら れ た 成 果 ( ITER, France) な ど が 報 告 さ れ た .
義 し , V g を 変 化 さ せ Sバ ン ド に て 測 定 し た 結 果
EuMC40 Microwave Measurement Methods and
( MACOM, USA), EuMC34-3で は ア ダ プ テ ィ ブ・サ ン
プ リ ン グ に て 校 正 さ れ た 非 線 形 VNAを 用 い , 0-15GHz
の 広 帯 域 で の 入 力 電 力 Pinお よ び 周 波 数 変 化 に 対 す る
マ イ ク ロ 波 帯 の 増 幅 器 の Sパ ラ メ ー タ や 反 射 波 形 の 時
間 波 形 を 抽 出 し 誤 差 解 析 の 結 果( KU Leuven, Belgium)
などが報告された.
Material Characterization (5件 )
マイクロ波帯の部品等に使用する材料の生成に必
要 な Sパ ラ メ ー タ や 材 料 定 数 等 の 測 定 法 に 関 し 5件 の
報 告 が あ り , EuMC37-1で は 3ポ ー ト を 有 す る デ バ イ ス
の Sパ ラ メ ー タ の 測 定 の た め 直 接 3ポ ー ト の Sパ ラ メ ー
タ を 校 正 す る 手 法 を 提 案 し , 従 来 の 2ポ ー ト に よ る 校
EuMC35 Focus Session on Advance in Scanning Probe
正 法 と 測 定 不 確 か さ な ど を 比 較 し た 結 果 ( METAS,
Microwave and mm-wave Microscopy (5件 )
Switzerland) , EuMC37-2で は デ ジ タ ル 通 信 な ど で 用 い
マ イ ク ロ 波 顕 微 鏡 に 関 し 5件 の 報 告 が あ り ,
られる差動伝送にて動作する伝送線路や, このモード
EuMC35-1で は 方 向 性 結 合 器 を 介 し て カ ン チ レ バ ー・プ
で の 入 出 力 ポ ー ト を 有 す る 部 品 の 正 し い Sパ ラ メ ー タ
ロ ー ブ を 用 い た 照 射 に よ る 1GHz帯 の 電 磁 波 を イ ン ピ
を最適化にて測定する手法の提案とシミュレーション
ー ダ ン ス 整 合 し た プ ロ ー ブ で 検 知 し RF入 力 に 対 し 線
による検証, 反復法による測定結果と比較し, 提案手
形 な DC出 力 を 得 つ つ , こ れ ら の 機 器 で 構 成 し た マ イ
法 の 方 が 高 速 で 確 か な 値 を 測 定 で き た 成 果 ( Konrad
クロ波インピーダンス顕微鏡を走査させ物体表面の誘
Technologies, Germany), EuMC37-3で は TM 0 m 0 の 円 筒 空
電率(ε)や導電率(σ)の変化を感知し, 従来から
洞 共 振 器 と 摂 動 法 に よ り PTFEな ど の 電 子 材 料 の 複 素
あ る 原 子 間 力 顕 微 鏡 (AFM)の 優 れ た 空 間 分 解 能 と 組 み
誘電率の測定時に, 共振器への試料の部分挿入による
合 わ せ BTOな ど の 表 面 の 高 精 度 な 2次 元 イ メ ー ジ ン グ
Q値 の 変 化 に よ る 本 来 の 損 失 角 を 得 る た め の 提 案 と ,
を 実 現 し た 成 果 ( Univ. of Texas, USA) , EuMC35-2で
挿入する試料の長さなどに対する損失角の変化および,
は試料裏面から放射した電磁波とカンチレバー間の
これを考慮した誘電率の実部と虚部への影響の検討結
S21の 測 定 に よ る 透 過 モ ー ド の イ メ ー ジ ン グ シ ス テ ム
果 ( The Mueller consultant, Japan) な ど が 報 告 さ れ た .
を考案し, 従来の反射波型のマイクロ波顕微鏡による
物体表面の走査結果と比較し良好な結果を得た結果
EuMC45 Biosensors (5件 )
生 体 を 検 知 す る セ ン サ な ど に 関 し , 5件 の 報 告 が あ
( Keysight Technologies Austria, Austria), EuMC35-3で
り , EuMC45-1で は 40GHz帯 で の マ イ ク ロ 波 に よ る 非 熱
は可変減衰器により調整可能な干渉計と組み合わせた
性効果の確認のため, 円筒空洞共振器の一部に血液を
走 査 型 マ イ ク ロ 波 顕 微 鏡 を 用 い 7.8GHz帯 に て 基 板 上
充 填 し 誘 電 率 の 変 化 を 観 測 し た 例 ( NASU, Ukraine) ,
の 静 電 容 量 等 を 校 正 し た 上 で 観 測 し 2次 元 で 可 視 化 し
EuMC45-2で は Ku帯 の BiCMOSプ ロ セ ス に よ る 誘 電 体
たところ, プラチナ製のプローブの先端がシャープな
センサを付加した発振器を作成し, マイクロストリッ
ほ ど 解 像 度 が 向 上 し た 成 果 ( Institut d'Electronique, de
プラインの先端に微小な試料(油脂および塩の濃度を
Microélectronique, France) な ど が 報 告 さ れ た .
変 化 さ せ た 血 液 ) を 配 置 し 29GHz帯 に お け る 発 振 周 波
数 の 違 い を 観 測 し た 例 ( IHP, Germany) , EuMC45-3で
は血管の疾患を発見のセンサとしてのコンフォーマル
ア ン テ ナ の 提 案 と , 人 体 組 織 を 模 擬 し た 30GHzお よ び
60GHz帯 で の S 11 な ど の 変 化 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果
( Ruhr-University, Germany) な ど が 報 告 さ れ た .