惑星学科・惑星学専攻 Department of Planetology http://www.planet.sci.kobe-u.ac.jp/ 「この星はなぜ地球なのか?」を探求する 2015 年 4 月 1 日に、私たちは新たな一歩を踏み出しました。これまでの、よく見かける 地球惑星科学の名称を改め、講座・研究教育分野も再編しました。新たな名称である「惑星学 (Planetology)」は、地球科学と惑星科学を融合した、より包括的な意味を持ちます。私たちは 断じて「地球」を捨てた訳ではありません。むしろ、「この星はなぜ地球なのか?」—太陽系惑星 の中でなぜ地球にだけ液体の水があり、生命が永続的に存在し、プレートテクトニクスが作動す るのか?また、その水はどこから来たのか?— という根源的な問いに答えを出したいのです。そ して学生諸君には、多様な惑星現象に対する広範な視野とさまざまな手法を用いた解析能力・論 理的思考力、そしてなにより豊かな感性を備えた「惑星人」に育ってほしいと思っています。また、 目先の成果ばかりを追い求めるのではなく、「独創的な研究者」として巣立ってほしいと願ってい ます。 教育の特色 — 惑星学科 — 地球の中心から太陽系の果てまでの現象を連続的に 取り扱う惑星学科では、学生の皆さんに惑星学の幅広 い知識と技能を習得してもらうと同時に、既存の枠組 みにとらわれない広い視野と創造力・独自性を養って 計算機をつかった情報実習 もらいたいと考えています。そのためには、学問的基 盤となる数学、物理学、地学、化学、生物学などを理 解して、その上で野外調査・観測・実験・理論的解析 の手法に親しんで欲しいと思っています。もちろん、 受け身の姿勢ではこれらを身につけることは困難で す。多彩な顔ぶれの教員を十分に利用して下さい。私 たちは、いつでもドアを開けて待っています。 徳島県牟岐町での地質学野外実習 — 惑星学科 — 惑星現象の絡繰を知るには、ある程度自然の理(こ 1年 と呼ばれるものでしょう。ですから、学生の皆さんに は、当然のように理学全般に及ぶ基礎を学んでいただ いろんな現象を実感・体感することも重要だと考えて 後 期 ◎惑星学概論Ⅱ ○惑星学基礎Ⅰ ○惑星学基礎Ⅱ △惑星学基礎Ⅰ演習 △惑星学基礎Ⅱ演習 ◎情報基礎 とわり)を身につけなくてはいけません。これが理学、 くことになります。同時に、惑星進化の過程で起こる 前 期 ◎惑星学概論Ⅰ 2年 ○惑星学基礎Ⅲ ○惑星学基礎Ⅴ △惑星学基礎Ⅲ演習 △惑星学基礎Ⅴ演習 ○惑星学基礎Ⅳ ○惑星物理学基礎Ⅱ △惑星学基礎Ⅳ演習 ○地球惑星進化学 ○惑星物理学基礎Ⅰ ◎惑星学実験実習の ○地球物質科学 ○固体地球科学 います。そのために、野外での観察や観測、室内での △惑星学実習D 様々な実験、それに計算機の仕組みを熟知して使いこ 基礎Ⅰ ◎惑星学実験実習の 基礎Ⅱ なす実習などに力を入れています。こうした必要最低 ○惑星物理学基礎Ⅲ ○宇宙惑星科学 限の素養を身につけながら、それぞれの好奇心に導か △惑星学実習A △惑星学実習E △惑星学実習B ○地質学Ⅱ △惑星学実習C ○固体地球物理学Ⅱ ○地質学Ⅰ ○惑星情報論 ○固体地球物理学Ⅰ ○大気科学 ○惑星物質科学 ○惑星物理学 れて卒業研究を行うことになります。この段階ではま だ本格的な研究とまでは行きませんが、少なくとも楽 しい研究の雰囲気は味わってほしいものです。 3年 4年 海上観測実習 野外調査実習 論文講究 特別研究 前期・後期 ○講義、△演習・実習、◎必修 31 教育の特色 — 惑星学専攻 — 惑星学専攻では、地球や他の太陽系惑星の誕生と進化について、いろんな研究を行っています。例えばある人は、隙があればフィール ドへ出かけて石や地層の呟きに耳を傾けています。またある人は、氷や石のかけらたちを只管にぶつけて太陽系創成期に起こった出来事 を想像しています。そしてある人は、計算機の中に惑星の大気を再現しようとしています。なかには、生命が発生する仕組みを分子の運 動から探っている人もいます。こんなことに熱中してしまう原動力は、好奇心以外の何ものでもありません。私たちの専攻には、まるで 少年少女たちのように目を輝かせて研究を楽しむ人たちで溢れています。そして私たちは、この雰囲気こそが面白い研究を生み出してい るのだと信じているのです。一度こんな「智の楽園」へ足を踏み入れてみてはいかがでしょう? — 惑星学専攻 — 博士前期課程では、1 年次前期に惑星学要論を開講しま す。この集中講義形式の授業では、本専攻の一員として是 非とも知っておくべき惑星学の基礎事項を解説します。よ 博士課程前期課程 り専門的な内容については、惑星学詳論Ⅰ~Ⅲを選択する □先端融合科学特論Ⅰ-1 惑星学要論 科学英語 □先端融合科学特論Ⅰ-2 惑星学詳論Ⅰ-1 特別講義 □先端融合科学特論Ⅰ-3 惑星学詳論Ⅰ-2 論文講究Ⅰ □先端融合科学特論Ⅰ-4 惑星学詳論Ⅱ-1 論文講究Ⅱ □先端融合科学特論Ⅰ-5 惑星学詳論Ⅱ-2 特定研究Ⅰ 惑星学通論Ⅰ 惑星学詳論Ⅲ-1 特定研究Ⅱ 惑星学通論Ⅱ 惑星学詳論Ⅲ-2 ●先端融合科学特論Ⅱ-1 惑星学特論Ⅰ 特別講義 ●先端融合科学特論Ⅱ-2 惑星学特論Ⅱ 特定研究 ことにより学ぶことができます。 特論では、各分野の最先端の研究を紹介し、自分の専門分 野を惑星学という広い視点で位置付けることができるよう に配慮しています。 さらに、特別講義として学外の卓越した研究者の講義を 博士課程後期課程 また博士前期課程の惑星学通論、博士後期課程の惑星学 ●先端融合科学特論Ⅱ-3 ●先端融合科学特論Ⅱ-4 ●先端融合科学特論Ⅱ-5 多く取り入れていることも特色です。 各講座の教員と教育研究分野・所属 基礎惑星学講座 教授 准教授 講師 助教 □は全専攻共通授業科目 (2015 年 4 月 1 日現在、*は兼務教員、# は惑星科学研究センター) 新領域惑星学 大槻圭史# 惑星宇宙物理学 留岡和重# 岩石学・鉱物学 教授 林 祥介# 流体地球物理学 兵頭政幸*# 地質学 吉岡祥一*# 固体地球物理学 岩山隆寛# 流体地球物理学 鈴木桂子# 地質学 高橋芳幸# 流体地球物理学 瀬戸雄介# 岩石学・鉱物学 山崎和仁# 岩石学・鉱物学 筧 楽麿# 固体地球物理学 末次 竜*# 惑星宇宙物理学 春名太一# 惑星宇宙物理学 大気海洋環境科学連携講座 廣瀬孝太郎* 地質学 教授 山中大学 海洋研究開発機構 准教授 荻野慎也 海洋研究開発機構 准教授 助教 荒川政彦# 実験惑星科学 島 伸和# 観測海洋底科学 巽 好幸# 水惑星進化学 中村昭子# 水惑星進化学 廣瀬 仁*# 観測海洋底科学 中東和夫# 観測海洋底科学 保井みなみ# 実験惑星科学 惑星地球変動史連携講座 教授 准教授 末次大輔 海洋研究開発機構 大橋永芳 国立天文台 杉岡裕子 海洋研究開発機構 惑星科学研究センター センター長 斎藤政彦 副センター長 林 祥介 32 研究の特色 惑星学専攻は、基礎惑星学講座(地質学・岩石学鉱物学・固体地球物理学・流 体地球物理学・惑星宇宙物理学)と新領域惑星学講座(実験惑星科学・水惑星進 化学・観測海洋底科学)及び連携講座(惑星地球変動史・大気海洋環境科学)か らなります。私たちは、個別の専門分野における研究と共に、新しい研究分野を 切り開くことに強い熱意を持っています。そのために、世界的な大型プロジェク トを推進する海洋研究開発機構・国立天文台・宇宙航空研究開発機構や海外の研 究機関と連携して研究を進めています。熱い好奇心が集まる惑星学の「ホットス ポット」として、特色のあるフロンティア研究を進めて行きたいと考えています。 惑星科学研究センター(CPS) https://www.cps-jp.org 太陽系探査や系外惑星科学の進展に よって、惑星科学の研究はいま新たな 発展期を迎えています。本センターは 人の交流と学術知見の集積を促す場と して機能している新しいタイプのネッ トワーク型共同利用研究所です。研究 コミュニティーの共有財産として、国 内外の研究所や大学の研究者との密接 な連携のもとに、惑星 科学の基盤を支える活 動を行っています。 研究トピックス 氷衛星の多様な表面地形の成因を探る! 地球には南極の氷床、ヒマラヤ山脈などの高地にある氷河など、氷が作る地形が存在します。 このような氷が作る地形は、地球特有のものではありません。火星にも両極に氷床が、中緯度 域には氷河が発見されています。また、木星などの 4 つの巨大惑星の周りには、氷から成る地 殻をもつ衛星(氷衛星)が多数存在します。さらに、氷を主成分とするカイパーベルト天体と 呼ばれる小天体が、海王星よりさらに太陽から離れた領域に数多く存在します。このように氷 は、地球特有の物質ではなく、太陽系に普遍的に存在します。 保井 みなみ 助教 私は、氷衛星特有の表面地形の形成過程について研究しています。氷衛星の表面には、大規 実験惑星科学教育研究分野 模な山脈や断層、パズルのような割れ目構造、小天体の衝突で形成した衝突クレーターなど、 様々な地形が見つかっています。また、山脈の多い衛星、クレーターで埋められた衛星など、 氷衛星によってその様相は全く異なります。表面地形に多様性がある原因の 1 つは、氷衛星の 地殻の “ 硬さ ” の違いです。氷衛星の地殻は、氷と岩石が様々な含有量で混合し、また雪のよう な空隙だらけの場合もあります。そのため、氷衛星によって地殻の “ 硬さ ” が異なります。氷衛 星の表面地形は、地殻が小天体の衝突や中心天体からの潮汐力を受けて変形または破壊して作 られます。地殻の ” 硬さ ” が異なることは、その変形し易さや破壊し易さが変わることを意味し、 これが氷衛星の表面地形の多様性を生む一因となります。私は、氷衛星地殻を模した様々な氷 物質を使ってその強度を調べる実験を行っています。また、衝突によって氷衛星地殻にクレー ターが形成する現象を調べるために、弾丸を加速する装置を使って衝突実験も行っています。実験は氷点下の低温室内で行い ます。そのため、写真のような防寒具が必要となります。 氷衛星やカイパーベルト天体は地球からかなり遠いため、これまで詳しい事は分かっていませんでした。しかし、2004 年以降、カッシーニ探査機が土星の様々な氷衛星を詳細に観測し、その表面地形の多様性が明らかになりました。現在、さら に外側の氷天体を調べるため、ニューホライズンズ探査機が冥王星、カイパーベルト天体に向かっています。また、木星の氷 衛星の長期観測を行う探査計画 JUICE が決定し、現在準備が進んでいます。今後のこれらの探査によって、氷天体の多くの 謎がさらに明らかになることを、私は楽しみにしています。 研究内容 基礎惑星学講座 地質学:地層や岩石から、地球環境・生命の歴史、火山の噴火現象、テクトニクスなどを探る 担当教員:兵頭政幸、鈴木桂子、廣瀬孝太郎 地球上の地層や岩石は、地球の長い歴史の中で形成されてきたものです。そのため、こ れらを様々な方法で調べることで、遠い過去の地球の姿が明らかになります。そこで私た ちは、野外調査に出かけ、地層や岩石の構造や分布を調べます。また、試料を採取して研 究室に持ち帰り、磁気や化石、鉱物の組成や化学成分などを、様々な機器を使って分析し ます。このようにして、過去の気候や湖沼・海洋の環境、地球磁場などが変化してきた過 程と時代、人類の進化、火山噴火の規模や様式を明らかにすると共に、これらがどのよう に関係しているかを解析し、複雑な地球のシステムを解き明かそうとしています。 地質学野外実習の様子 33 研究内容 岩石学・鉱物学:岩石・鉱物から読み解く惑星の過去と未来 惑星宇宙物理学:惑星系および衛星-リング系の起源と進化 担当教員:留岡和重、瀬戸雄介、山崎和仁 担当教員、大槻圭史、春名太一、末次 竜 隕石や宇宙の塵は、今から約 46 億年前、太陽系ができはじめ 近年、太陽系外の惑星系(系外惑星系)が多数発見され、我々 たころつくられたものであり、その中には太陽系形成に関する の太陽系だけでなく系外惑星系も含めた、惑星形成過程の解明が 様々な情報が含まれています。一方、地球の石も地球型惑星のな 大きな課題となっています。また惑星探査や望遠鏡による観測、 りたちや、そこで起こっていることを知る重要な情報源です。私 さらには高精度軌道計算等の理論研究により、小惑星や衛星・リ 達はそのような様々な惑星物質を、電子顕微鏡や X 線回折装置 ングといった天体についての理解が大きく進み、これらの起源と など最先端の手法を使って調べています。その他にも、隕石母天 惑星形成過程を統一的に理解することも重要な課題です。当研究 体が形成され成長していく過程で起こった現象や、地球深部の高 室では理論研究を中心としてこのような問題の解明に取り組んで 温高圧条件下で起こっている現象を再現する実験も行っていま います。また生命システムに関する数理的な研究も行っています。 す。また、高温高圧下の岩石・鉱物の 破壊・流動現象について、主に微分幾 何学の観点から理論的研究も進めてい ます。 隕石中の微粒子、コンドリュール(径は 0.3mm)の光学 顕微鏡像。46 億年前の原始星雲の中でできたと考えられ ている。 探査機カッシーニが撮影した土星の環と、コンピュータによる環の中 の小衛星への粒子集積の再現例 固体地球物理学:地震と地球のダイナミクスの謎に迫る 担当教員:吉岡祥一、筧 楽麿 固体地球物理学教育研究分野では、地震波・測地・地殻熱流量 データの解析や数値シミュレーションを通して、地震の発生メカ ニズム、地殻~マントルの構造・ダイナミクスの解明を目指した 新領域惑星学講座 実験惑星科学:太 陽系進化のミッシングリンクを探査と 室内実験で探る 研究を行っています。大地震・ゆっくり地震はなぜ起こるのか? 担当教員:荒川政彦、保井みなみ 地震が起こったら断層で何 太陽系進化の道筋で、これまで最も謎とされてきたのが、原 が起こるのか?地殻~マン 始太陽系星雲の塵から微惑星、そして現在の惑星へと至る過程 トルの構造はどうなってい です。原始太陽系星雲と惑星のミッシングリンクを埋める証拠 るのか?海洋プレートは沈 は、現在、小惑星帯に無数とも言えるほど数多く存在する小惑星 み込んだらどのように変形 や巨大惑星を周回する し、その層構造はどうなる 衛星に残されています。 のか?など、地震や地球内 我 々 は、 は や ぶ さ 2 を 部に関する純粋で、根源的 始めとする惑星探査や な 疑 問 を 解 き 明 か す べ く、 コンピュータを駆使した研 究を進めています。 室 内 実 験 を 通 し て、 こ 沈み込んだスラブの上部・下部マントル境界での 滞留(上図)と下部マントルへの崩落(下図)の 数値シミュレーション例 のミッシングリンクを 繋ぐ鍵を探すために研 究を行っています。 左上:はやぶさ 2 インパクター実験、右上:室内クレー ター形成実験、下:微惑星の衝突破壊シミュレーション 流体地球物理学:普遍的な惑星表層環境論の構築 担当教員:林 祥介、岩山隆寛、高橋芳幸 観測海洋底科学:観測で地球のダイナミクスを探る 地球には海があって生物が存在しますが、そのお隣の火星と金 担当教員:島 伸和、廣瀬 仁、中東和夫 星はそれぞれ酷寒と灼熱の環境で海はなく生物も存在していない ように見えます。こうした惑星表層の顔つき(環境)の違いがど のようにして生じたのかを理 解するため、私達は理論(現 象の数理物理的な記述)・数 値 実 験(単 純 化 し た 気 候 モ デルから大気大循環 モ デ ル まで)・観測(惑星探査機を 使った観測計画の立 案 と 実 施)といった手段を使って、 惑星の気象や気候を支配する 理の解明を目指しています。 地球の表面は、大陸と海洋でおおわれています。その海洋底で は、固体地球内部の大循環を担う海洋リソスフェアが作られ、さ まざまな現象を引き起こしています。私たちは、地球物理学的な 観測事実にもとづいて、海洋底から固体地球のダイナミクスを 理解することを目的とし、惑星地球を特徴づけている海洋リソス フェアの活動(形成、変遷、沈 み込み)を中心に研究していま す。そのために、観測機器の開 発、研究観測船などを利用した 観測、解析手法の開発、データ 解析を一貫して行っています。 海水を除いた地球の表面 34 研究内容 水惑星進化学: 「石ころ」の呟きに耳を傾けて、水惑星の 誕生と進化を考える 担当教員:巽 好幸、中村昭子 地球は、太陽系惑星でたった 1 つの「水惑星」です。そして液 体の水の存在は、地球の進化に決定的な影響を与えてきました。 意外にもおしゃべりな「石ころ」を手にとってその呟きを注意深 く聞くと、46 億年の地球進化のドラマを知ることができます。 私たちは、野外調査に化学分析、それに高圧実験によって石ころ たちと対話します。衝突実験や探査データを使って石ころや水の もとになった、宇宙の「ちり」がくっついたり壊れたりする様子 をあぶり出します。そうして、「水惑星」の誕生と進化のなぞを 解こうとしているのです。 かにする上で、地球内部の構造とその変動の理解は必要不可欠で す。私たちの分野では、若い星の周りの惑星形成領域の観測と地 球の3分の2を占める海洋域における観測に基づいて、惑星系及 び地球の変動史の解明を進めることを目的としています。具体的 には、ALMA やすばるなどの望遠鏡を用いた天体観測と海底地 震計などを用いた海底観測で得られたデータを解析することによ り、惑星構成物質の起源、分布と進化や、現在の地球内部の物質 循環や熱循環の様子を明らかにして、惑星地球の誕生から現在に 至るまでの変動・進化史を解明することを目指しています。 大気海洋環境科学連携講座 (大学院教育) 熱帯から地球を俯瞰する大気観測 海洋研究開発機構 担当教員:山中大学、荻野慎也 惑星地球変動史連携講座 (大学院教育) 観測データから惑星地球変動をさぐる 我が惑星「地球」の気候は、大気・海洋および両者を貫く水と いう 3 つの循環によって維持されています。この 3 つの循環を駆 動する上で最も重要な地域が、太平洋から東南アジアを経てイン ド洋に至る「海大陸」域です。この地域に、各種のレーダー、気球、 観測船、ブイ、人工衛星などからなる観測網を構築し、3 つの循 環やこれらの相互作用によって作られる雲集団の実態、さらにこ の雲集団の変動が引き起こすエルニーニョなど全地球的な気候変 動を解明していきます。また、雲集団の形成やエルニーニョの発 生に影響するアジアモンスーンの観測研究も重点的に行なってい ます。研究は、専任講座(地球流体物理学)研究室、海洋研究開 発機構(横須賀市)あるいは「海大陸」域の観測地点で行います。 国立天文台・海洋研究開発機構 担当教員:大橋永芳、末次大輔、杉岡裕子 惑星系は生まれたばかりの星を取り巻く原始惑星系円盤の中で 形成されます。惑星系の形成過程や多様性を解明する上で、この 円盤の構造や進化の観測が重要です。また地球の形成進化を明ら 東南アジアに構築中の大気観測ネットワーク 卒業・修了後の進路 大学院博士課程前期課程(修士)修了生の進路 (2012~2014年度) 本学大学院 惑星学科卒業生の約 7 割は大学院博士前期(修士)課程へ進み、勉学と研究を 続けます。神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻への進学が最も多く、他大学の 大学院へ進学する人も最近増えています。就職する人は、公務員や教員、システ ムエンジニア、金融関係などさまざまです。前期(修士)課程修了後は、1 ~ 2 割が博士後期課程に進学します。就職先は公共機関や IT 関連企業などさまざまで す。博士課程修了後は、各種教育研究機関のポスドクになる人が多いですが、民 間企業に就職する人もいます。 35 他大学大学院 民間企業 7 1 53 教員・公務員 3 その他 3 学部卒業生の進路(2012~2014年度) 本学大学院 58 他大学大学院 20 民間企業 21 教員・公務員 3 その他 6 日常生活を少し離れて考えてみま しょう。地震はどうやって起こるの か?なぜ火星は小さいのか?地球温 暖化って本当か?生命と物質は何が 違うのか?…など、何気なく過ごす 日常の足元には面白い謎が山ほど隠 れています。惑星学では、こうした 惑星(地球を含む)全般に纏わる 様々な謎を解こうとしています。こ うした惑星に纏わる疑問が気になる人には特にお勧めです。 現代に残る惑星学の謎は、裸一貫では歯が立ちません。ですか ら、3 回生までは、数学や物理、地質などの基礎や観測方法など を学びます。学科の人数が 40 人弱ということもあり、学科の雰 囲気は高校のクラスのような感じです。もちろん大きな違いもあ ります。2 回生以降になると、人によって受ける授業が大きく異 なってきます。惑星学科では必修科目が少なく、興味に応じて多 様なカリキュラムが組めるからです。授業の選択肢が少ないこと が多い理系の中では、これは惑星学科の大きな特徴です。多様な 背景でもって交流することになり、見識を深めることができます。 惑星学科では、実際に研究室に配属になって研究を行えるのは 4 回生からです。研究室の雰囲気・研究方針・手法は、指導教員 や研究室によって大きく異なります。気になる人は確認しておく といいでしょう。また、本格的な研究がしたいと思う人は、研究 職を目指すかどうかに関わらず、大学を考えるときに大学院前期 課程まで予め視野に入れておくことをお勧めします。 田中 拓 (2014 年度学部卒業) 現在 神戸大学大学院博士前期 惑星学科では、岩石中の鉱物と いったミクロのことから地震、火山、 プレートテクトニクス、気象といっ た地球に関すること、さらに太陽系 や宇宙に関することまで、世の中の 現象のほとんどを研究対象としてい ます。そのため、積極的にさまざま な分野の講義を受けることで、今ま で知らなかった知識を得ることがで き、研究室に所属するころには、必ず興味が持てる分野、自分の 研究に出会えると思います。 自分の研究の醍醐味は、自分自身の頭と手を使い、誰もやった ことがないことを研究できること、さらに研究の結果は自分が初 めて知ったものであり、それがたとえ小さなことであっても、そ のことでは自分が第一人者となれることだと思います。 私は今、 (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC) に勤務しています。JOGMEC は日本にエネルギーや鉱物資源を 安定供給することを使命としており、国の政策の下、資源開発プ ロジェクトの推進、出資、資源備蓄など幅広い業務を行う組織で す。私自身は金属部門に所属しており、特に海洋鉱物資源の探査・ 開発に携わっています。 海洋鉱物資源はいまだ未知のことが多く、探査・開発に向けた 取り組みの中で、新鉱床を発見したり、技術的ハードルの高さを 認識したりと多くの初めてを経験できる分野ですので、この学科 で学んだ知識や経験を活かしながら、第一人者を目指せるよう 日々精進しています。 地球や宇宙に興味のある人にとって、惑星学科はいろいろなこ とに挑戦でき、楽しみながら様々な経験を積める場所になると思 います。そして、ぜひ興味のある分野を見つけ、自分の研究で第 一人者を目指してください。 上田 哲士 (2008 年度学部卒業、2010 年度博士課程前期修了) 現在 (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 勤務 野外観測実習(左)、オープンキャンパス(中)、懇親会(右) 惑星学科・惑星学専攻 ホームページ http://www.planet.sci.kobe-u.ac.jp/ 2015 年度から「惑星学科」に変わりましたが、 2014 年度までの授業内容とどれくらい変わっ たのでしょうか。地質学や火山学などの授業は 無くなってしまったのでしょうか? 授業の内容は、既に今回の改組に向けて数年前からカリキュラムを 再編してきましたので、2014 年度までとほとんど変わりません。 むしろ、野外実習や観測実習など、実際に地球を体感する授業が増えてい ます。また、地質学は惑星学の根幹となる分野ですので、火山学を含めて より充実することはあっても、縮小することはありません。 日本は四方が海で囲まれているため、海は身近な存 在です。神戸大の惑星学科では、海に関わる研究が 行われているのでしょうか? ところが、この活動は深海底で起こっているため、人類はその噴火活動を 一度も目にしたことがなく、こうした火山活動が地球システムのなかでど のような役割を果たしているかなど、まだまだわからないことがたくさん あります。惑星学科では、このような未知の領域に取り組んでおり、海上 や海底で地球物理的な観測をする研究室や、深海や陸上の堀削を通して最 先端の科学を推進しているグループ、海陸の境界で起こる気候変動を調べ ている研究室があります。 宇宙から降ってくる隕石や岩石を調べることで、 なぜ太陽系の歴史を知ることができるのでしょ うか? 実は惑星物質(隕石や岩石)の中には、時間とともに他の元素へと 姿を変える「放射性元素」が含まれています。例えばウランなどが そうです。約 46 億年と言われている太陽系の年齢は、惑星物質の中でも 最も古いと考えられている、始原的隕石中の鉱物(あるいはその集合体) の放射性元素とその「娘核種」を精密に測定する事によって求めることが できます。このように太古の宇宙や惑星の記憶は惑星物質を構成する化学 元素と同位体の中に今なお残されているのです。 海の底では、約 60,000km(地球1周半の長さ!)にもわたる巨大 山脈があり、地球上の火山活動の約 8 割が海の中で起こっています。 36
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