「(社)日本建設業団体連合会会長賞」受賞作品 「感動」と「安心」を 島根電工株式会社松江営業所 香川 哲士 (H16 年入社 『 「感動」と「安心」を 』 九州共立大学卒) わが社はこの言葉をスローガンに掲げて業務に取り組ん でいます。我々電気工事業は、照明が点いて当たり前、コンセントが使えて当たり前とい う仕事ですので、その仕事を通してお客様に感動していただき安心していただくというの は実際には案外難しいことなのだ、と最近までは思っていました。 私は入社して以来大型工事の現場管理の仕事をしていました。仕事では建築屋さんをは じめ建設業に携わる方々と接する機会ばかりで、施主やお客様と直接接することはあまり なく、施主やお客様の本当の気持ちもわからず、また、あまり考えることもありませんで した。ところが最近仕事内容が変わり、増改築やコンセント1つ取り付けとか電球の取り 替えなど主に一般住宅の仕事に対応する担当になりました。 お客様と直接接してお客様の声を聞くようになってから、仕事に対する考え方がガラッ と変わってきました。今までは、営業が受注してきた仕事をそのままの内容で、図面通り にやっていればいいと思っていました。今は、たとえコンセント1つ取り替えであっても、 お客様にはそれぞれの思いや考えがあって、この方はどんな要望を持っておられるのだろ うかとか、こんな風にしたらもっと喜んでいただけるかもしれないなど、お客様の気持ち を考えるようになり、お客様の要望プラスより良いものにする提案もおこなうようになり ました。言われたことをただ単にこなしているだけでは、お客様に感動も安心も感じてい ただけないことがわかってきました。 ある日お客様から電話があり、照明の点きが悪い、取り替えたいものもあるという依頼 がありました。とりあえず見て調べてみようと行ってみると、洋間の照明が点いたり消え たり、すぐに原因はグロー球が悪いとわかりました。別の台所の流し元灯は完全に壊れて いました。いつもなら一旦会社に帰り見積書を作って提出し、その後材料を発注して入荷 後施工という流れで、早くても1、2日後の施工になるのですが、この家は老夫婦2人で 住んでおられ、 『照明がないと困るだろう、何とかしてあげたい』と思い、すぐにメーカー に行き照明器具と材料を揃えて取って返し、施工を完了しました。 「電話をしたらすぐに来てもらって、すぐに直してもらって、本当に助かりました。あり がとう。私たちは年寄りだからランプを替えるようなちょっとしたこともようやらんので す。流し台の方もすぐに取り替えてもらってほんとに良かったですわ。ありがとうござい ました」 と、心から喜んでもらえました。同じ日またこういうこともありました。電話があり、コ -1- ンセントから火花が出て、ブレーカーが落ちたということでした。行ってみるとコンセン ト内部の接触不良で、取り替えることになり作業は10分ほどで終わりました。お客様に、 「こういうことはどこに頼んでいのかわからなくて、いろいろ探していたけど、新聞広告 を見てここなら良さそうだと思って電話しました。火事にでもなったら大変だと思ってい たので、すぐに直してもらって安心しました。今後は心強い味方ができました」 と言っていただくことができました。私はその日初めて『 「感動」と「安心」を 』と いうのはこういうことなのかなとなんとなく感じることができました。 今までいろいろな失敗もしてきたし、建築から叱られたり、上司から叱られたり、毎日 夜遅くまで残業したり、現場に泊りがけで仕事をしたこともあり、何度となく辞めてやろ うと思ったことがありました。けれどもお客様からの「ありがとう」の言葉を思い出すと、 頑張って良かった、また頑張ってみようという気持ちになって、結局今まで辞めずにいる 訳ですが、今はもう辞めたいというような気持ちは全くありません。これからもそういう 気持ちは起こらないだろうと思います。お客様に感動と安心を提供するということがどん なことなのかが少しわかりかけてきて、今とてもやりがいを感じています。日々の仕事の 中でお客様に喜んでいただくには何をどうしたらいいのかを常に考え行動して行きたいと 思っています。そして、いつかお客様から「あの人になら安心して頼めるわ、あの人なら 間違いないわ」と言われるような関係を築いていくことがこれからの目標です。 また、何もないところから形のあるものを造り上げていく、そして、それが出来上がっ たときの達成感というものも建設業の魅力のひとつだと思います。我々電気工事業は商品 を売るのではなく、配線する、配管する、器具を取り付けるという技術を提供する仕事で す。技術を売るには信用がなければなりません。何よりもお客様に信用していただくこと が大事です。難しくて大変なことなのですが、1人でも多くの方に感動と安心を提供する ことが信用につながって行くと思います。そのためにも私も頑張って行きます。 -2-
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