ICA のブループリントと大学生協のビジョンとアクションプラン

ICA のブループリントと大学生協のビジョンとアクションプラン
会長理事
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庄司興吉
「挨拶」を「挨拶と問題提起」に
「私の挨拶」が、いつも挨拶としては長くなってしまうので、そのことについてご意見
をいただきました。実際には私は、
「挨拶」をつうじて、大学生協の活動について、そのつ
ど私が携わったかぎりでの経験、および今までやってきた理論をもとに、問題提起をして
います。そのことを今回からはっきり示すために、「挨拶と問題提起」とさせていただきま
した。
会員や組合員の皆さんが肩車をして、会長理事を高いところまで持ち上げてくれます。
そうすると、初めて見えてくることがあります。その典型的な例は、ICA 総会への出席で
す。そういうところで初めて、大学生協とはこういうものなのだということが分かってき
ます。それを私は、皆さんに伝えなければいけないと思います。あるいは、こうしたこと
が、私が各地の生協を回って感じることと、どう関連するかという問題もあります。そう
いうことも言ってきているつもりです。
それらのことは重要だが、実際に大学生協の理事会などで討議されるいろいろな方針な
どに反映されているか、というご意見もいただきました。私のそばで、専務や常務あるい
は副会長も加わって、アクションプランの改定をやっていたり、来年度に向けて総会議案
などを作っていたりします。私はそういう人たちにいろいろなことを言い、さらに理事会
で問題提起をして皆さんにそれを受け止めていただいて、それがアクションプランや総会
議案に反映されていくという形でよいのだと思っていました。
とくに総会議案などを作っているときは、学生諸君が大変よくやってくれていますので、
それを尊重したいと思っていました。しかし、私の意見がどれだけ反映されているかとい
うご意見をいただきましたので、今回アクションプランや総会の議案を細かく見てみまし
た。そして私の意見を、アクションプランの委員会とか総会議案を検討している人たちに
伝えることにしました。私の意見がそのまま採用されるとはかぎりませんが、いろいろな
形で反映されていて、そういうものが今日の議論にも出てくると思います。
私としてはもっといろいろなコミュニケーションを重ねていかないと、私の考えている
ことが必ずしも正確に伝わっていかないと感じていますので、皆さんにこれからも問題提
起していきたいと思います。それについて私の問題提起が、適切であるかどうか、または
こういうこともあるのではないかなどのことがありましたら、私の問題提起の直後でも、
実際の議案等を討議するさいでも、率直に言っていただければと思います。あるいは議事
が終わったところで、私の問題提起にたいするご意見として言っていただくのでも良いと
思います。
そういう前提で、今日はいくつかの重要なことを申し上げます。
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ドイツ学生支援協会(DSW)との交流の件
一つは、ドイツ学生支援協会との交流の件です。最近、交流が行われました。ドイツ学
生支援協会の皆さんが名古屋・京都に移動される途中で熱海に宿泊されるというので、私
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が熱海に持っている仕事場に寄っていただいたりしました。今年は、カウンセリングのこ
とを学びに来たということで、いろいろな成果があったと事務局長から聞きました。ドイ
ツ学生支援協会は、ドイツのことだけではなく、ヨーロッパ全域の大学教育改革のことを
非常に詳しく知っています。そういう会議を何度も開いていて、私も何度か報告をさせて
もらっています。大学教育の改革に学生支援団体がどうかかわっていくのかという話をも
っとしたい、と言っておきました。来年以降の課題です。
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国際協同組合同盟(ICA)総会の件
つぎに、ICA 総会に大学生協連の代表として出席してきました。ワークショップの一つ
に、「次世代を鼓舞する:青年と協同組合(Inspiring the Next Generation: Youth and
Co-operatives)というのがありました。若い世代、次の世代に、協同組合をどう伝えてい
くかというテーマで議論するセッションです。そこで、日本には大学生協がある、こうい
うことをやっていてこういう意味がある、世界的にもこういう意味が有るのではないか、
という報告をしました。そのときのパワーポイントを添付しておきますので、今後学生諸
君などに活用してほしいと思います。
ワークショップでの発表にたいして、予想以上の反響がありました。大学に協同組合が
あって、それが大学生活の基礎を支えているのだということを、知らない人が圧倒的に多
いのです。写真を見せると、皆さんびっくりしていました。大学生協の歴史とか、現在の
状態とかを説明したのですが、それにたいして、学生が中心になってやっているというの
はどういうことか、出資金はどうなっていて、卒業するときはどうするのか、大学生協を
経験した学生たちから協同組合について研究する者はどのくらいでるのか、などという質
問がつぎつぎに出ました。
それらにたいして、私は可能なかぎり答えました。つまり、学生は総代になるし、理事
会に理事として出るし、学生委員会を作って活動しているし、というようなことをはじめ
として、出資金は大学生協に入るときに払うけれど、卒業するときに全額返している、大
学生協を経験した学生が大学院に来て生協のことを研究するケースも増えてきている、と
いうようなことを答えておきました。大変な反響があるので、こういうことをもっともっ
とやらなければいけない、と思います。
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他協同組合との交流
つぎに、ICA の理事会があり、理事の選挙が行われました。日本からは全中の会長が立
候補して、私たち全員で応援し、結果として高位で当選しました。非常に良かったと思い
ます。しかし、日本からの人たちがその後、総会に残って発言するかというと、いなくな
ってしまう人がいたり、いても発言しなかったり、というケースが大部分でした。この傾
向が、今年はとくに総会の議事だけでなく、ブループリントの 5 つの項目についてのプレ
ナリー・セッション――分かれてやるセッションではなく全体でやるセッション――など
でもかなりありました。
全体会では、英語・フランス語・スペイン語に加えて、日本語や韓国語でも同時通訳を
していますので、発言しようと思えば日本語ででもできるのです。ですから、
「私は日本語
で発言するので皆さんレシーバーをつけてほしい」と言って発言すれば良いのですが、ほ
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とんどの人がレシーバーを持っていない。私が聞いていて、いくつか問題があるので発言
したかったのですが、ほかの協同組合ともっと意見を交換してからでないと思い、控えま
した。これからは、もっとほかの協同組合、農協とか生協とかその他共済関連の協同組合
などと、接触していかなければならないと感じました
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ブループリントとビジョンとアクションプランとの対応について
これから先は、アクションプラン改定論議でも問題になっていることです。
ブループリントの最後の項目に、資本(Capital)という言い方が出てきます。今までは大
企業を中心に資本という言い方をしていたのに、それを協同組合について言い出すのはど
ういうことなのか。私も最初はそういう疑問をいだきました。しかし、よく読んでみると、
協同組合の資金を良く活かさなければならない、ということなのです。今回の総会では、
ICA 会長のグリーンさんがたんに「資本(Capital)」といわず、「協同組合資本(Cooperative
Capital)」という言い方をくり返ししていました。私たちも、そういう意味での資本という
言い方を理解していかなければならないと思います。
それから二番目に、私たちのビジョンとアクションプランとの関係について、私の説明
のなかでも言っているのですが、ブループリントの 5 つ項目と私たちのビジョンとアクシ
ョンプランの 4 つのミッションが、密接に関係しています。「法的枠組」と「大学との協
力」が対応するというのは分かりにくいかもしれません。私たちが大学で生協活動してい
くために大学との関係を良くしなければならない、とビジョンとアクションプランを書い
たときには思っていました。しかしその後、生協法改正があり、協同組合憲章の草案作り
などがあって、もっと一般的に協同組合が活躍しやすい法的枠組みを作る必要があるのだ
という議論になってきました。だから、これは、そういうふうに広がってきた問題だと考
えていただければよいと思います。そう理解してください。
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協同とアイデンティティとの対応
最後に、アイデンティティという言葉なのですが、私がビジョンとアクションプランを
作ったときには――2005~6年当時ですが――、アイデンティティという言葉を日本
語で使うことは思いつきませんでした。だから、協同しているのだと思いながら協同して
いる、協同意識を持って協同している、――そういう意味で冒頭に協同を挙げたのです。
そう考えれば、これはまさに、ブループリントにいうアイデンティティに関係してくるは
ずです。私たちが日頃していることを漫然とやるのではなくて、協同しているのだ、協同
組合の活動をしているのだ、ということを意識しながらやると、ぜんぜん違ってくるはず
です。
逆に言うと、そうしないと大学生協もけっして安泰ではありません。私は ICA 総会で、
日本の大学生協はどういう状況になっているのか、という話をしました。単位組合数は減
少気味だけれど、組合員数は伸びてきている。しかし、21 世紀に入って供給高は落ちてき
ています。これについては、コンピュータなどの単価が落ちてきたことがあって、供給量
は変わらないのだけれど、金額でいうと落ちてきているという実態もある。日本経済のデ
フレが続いていますのでやむをえない面もあるのですが、組合員数が伸びていくのにあわ
せて、少なくとも落ちてくるのではなく、横ばいでとか、少し右上がりにならないといけ
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ないと思います。
そしてその鍵は、私たちが「大学で協同組合をやっているのだ」という意識をみんなに
持ってもらうことです。日生協などでは、これはとても大変かもしれません。しかし、大
学生協は、学生が組合員の大半で、教員もかかわっていますから、生協職員が中心になっ
て教員や学生を一緒にして生協とはなんだろうかという話をしていって、生協意識、組合
員意識を強めていけば、それだけ事業意欲が高まる。つまり大学にコンビニが入って、綺
麗だから、安いから行ってしまう、というのではなく、自分たちが協同組合活動をやって
いるのだからそちらを使おうではないか、という意識を学生諸君、教職員の皆さん、つま
り組合員が持ってくれれば、もっと伸びるはずです。
逆に伸びないと、生協活動というのは、決して楽観できる状況ではなくなってきている。
そういう議論をこれからもっとやっていかなければならない。そういうことを、各ブロッ
クで中心になっている先生方、各大学の理事長や専務理事などにもっと訴えかけて、議論
を巻き起こしていかなければならないと思います。そういう議論をしていかないと、大学
生協は今後非常に厳しい状況になってしまうかもしれません。それを皆さんにも、これか
らやっていただく議題につうじて、考えていただきたいと思います。そうしないと大学生
協というのは、楽観できる状況ではなくなってきているのです。
これが私の今日の問題提起をつうじての訴えです。そういう意味で、これからいろいろ
な議論をお願いします。
(全国理事会-131116)
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