Vol.03「トンネル」

特 集
どう対処していく
のか
高齢化を迎えた社会資本
第3回
昨年の笹子トンネルの事故が、管理者やトンネル技術者に与えた衝撃は大きい。
トンネル
今や問題は笹子のみならず、
全国のトンネルの維持・管理の見直しへと波及している。
シリーズ第 3 回は、
いかにトンネルの安全性を確保するか、国や自治体の取り組みと
課題を検証する。
壮年期を迎えた道路トンネ ル
全国にある道路トンネルは約
れかもしれない。
核心がある。
1 万 300 本。総延長は3,500km
追いつけない現実
建 設して 50 年 以 上のトンネ
以上にも及ぶ。
ル は、延 長(長 さ)で は 全 体 の
平均年齢は国と都道府県が
しかし半永久的なのは、
メン
10% 程 度 に過ぎない が、件 数
32 歳、市 区 町 村が 46 歳。人 間
テナンスがあってこその 話だ。
では 3 割を超えるといわれる。
でいえば、気 力・体 力とも充 実
適正に維持補修・補強して初め
中でも市区町村のトンネルが大
した働き盛りの年代だ。半永久
て長寿命化も可能になる。とこ
部分を占める。
的ともいわれるトンネルからす
ろが膨大なストックの対応に追
1961 年以降に供用されたト
ると、年 老 いたというのは的 外
いつけない現実。ここに問題の
ンネル本数を 10 年単位でみる
トンネルのストックピラミッド
(本)100
50
(年)92
0
50(本)
78
84
71
76
64
平均年齢:32 年
68
60
50
52
43
44
36
36
29
28
22
20
100(本)
平均年齢:46 年
12
8
高速道路会社
1
国
平均年齢は、建設年度が把握されている施設の平均
2013.7 建設資材情報
平均年齢:32 年
57
15
06 page
0
(年)92
85
平均年齢:22 年
(本)100
4
都道府県・政令市
市区町村
出典:国土交通省
高齢化を迎えた社会資本
と、2000 年まで の 40 年 間、右
ル管理者は維持補修に努めて
肩上がりを続けてきた。このまま
は い る が、
コ スト 面 が 障 壁 に
では、老朽化してしまうトンネル
なって進まないのだ。
が 加 速 度 的に増 加するのは確
ある県の維持管理担当者は、
実だ。
「維持管理というと、地味な存在
維 持 補 修・補 強 には、点 検・
です。重要性はわかっていても、
診 断・評 価・設 計・施 工という
技術者としては新設する部門が
流 れがある。トンネルごとに変
花形に見えてしまう。当然、予算
状に合わせた対 応が 必 要であ
確保も厳しい」
と訴える。将来ど
り、そのためには新しい補強技
ころか現実も絶望的状況だ。
術などの開発も求められてくる。
次に人の問題である。
「トンネル
この点に関しては、官民共同に
技術者の数が圧倒的に少ない。
よる維持補修技術の研究などが
大学にもあまりいません」
と指摘
推進されてきた。
するのは、
ある研 究 機 関のトン
メンテナンスを阻む
2つの壁
ネル専門家。経験のウエートが
膨大なストックに対して、
メン
る側面もある。
テナンス対 応 が 追 いつ けない
維 持 管 理 の 現 場 につ いても
理由は何か。ここでは 2 つの視
同じことがいえる。多くの老朽ト
点から考察してみる。他のイン
ンネルを抱える市区町村の人材
フラと同 様だが、一 つ はコスト
不 足 は 深 刻だ。維 持 管 理 の 技
の問題である。
術 者の育 成と確 保を重いテー
今 後、増え続ける老 朽トンネ
マとして抱えながら、根 本 的な
ルの状況を勘案すれば、
メンテ
改善策は見いだせていない。現
ナンス費用もそれに比例するの
実的には、国の支援に頼らざる
は自明である。そのためトンネ
を得ないのが実情である。
特に高いといわれるトンネルだ
けに、育成するのに時間がかか
トン ネ ル
道路・トンネルの変遷
1952 道路法公布
1956 ワトキンス調査団来日
「日本 の 道 路 は 信じがたいほどに
悪い。工業国にして、
これ程完全にそ
の道路網を無視してきた国は、
日本の
他にない」
と指摘
1958 関門国道トンネル開通
わが国初の海底トンネル
(延長 3,461m)
1958 道路構造令公布
1962 首都高速 1 号線開通
初の都市高速道路の完成
(京橋∼芝浦間 4.5km)
1963 名神高速道路開通
初の高速道路開通
(栗東∼尼崎間 71.1km)
1964 新潟地震
液状化による被害
1968 飛騨川バス転落事故
「異常気象時における道路通行規制
制度」
を通達、
「道路防災点検」
を開始
1969 東名高速道路全線開通
1979 東名高速日本坂トンネル
火災事故
死 者 7 名、負 傷 者 2 名、車 両 延 焼
173 台。事故を教訓に
「トンネル等に
おける自動車の火災事故防止対策に
ついて
(1979)」
を通達、
「道路トンネ
ル非常用施設設置基準(1981)」
を
改訂
1985 関越トンネル(下り線)開通
道 路トンネルとしては 現 在でも日
本 最 長(下り線 10,926m、上り線
11,055m)
1995 阪神 ・ 淡路大震災
震災を受け、1996 年に道路橋示方
書を改 訂(内陸 直 下 型 地 震の影 響
を考慮)
1996 道路交通情報システム
(VICS)運用開始
道路交通情報をリアルタイムにカー
ナビゲーションシステムのディスプレ
イに文字や図形で表示
1997 東京湾横断道路開通
世界最大級の大断面(直径 13.9m)
によるシールド工法により、大水深
(約60m)
、
長距離
(トンネル部9.8km)
の海底トンネルが実現
2000 ETC 運用開始
2011 東日本大震災
トンネル点検
トンネル補修
出典:国土交通省
国土交通省「建設省五十年史」
「道路ポケットブック 2010」より作成
2013.7 建設資材情報
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07
特 集
顕在化してきた変状リスク
どうする高速道路トンネ ル
NEXCO 3社(東日本・中日本・
保全及び更新のあり方に関する
西日本高速道路会社)
が管理す
技 術 検 討 委 員 会」
(委 員 長・藤
る高 速 道 路 約 8,700km(2011
野 陽 三 東 京 大 学 大 学 院 教 授)
年 度 末)の 約 9.2%(800km)
を
は、
トンネル 覆 工とトンネル 本
トンネルが占める。
体について検討を試みている。
トンネル本数にすると1,675
トンネル本体で明らかになっ
本。その 2 割 が 供 用 から 30 年
たのは、強度が低下したり膨張
トンネルの経過年数比率
30年以上約21%
1%
5%
13%
15%
28%
38%
を経過した。トンネルの寿命が
性のある岩で、かつインバート
他の土木構造物より長いといっ
を設置していない区間に、盤ぶ
ても、経 年 変 化リスクは着 実に
くれ現象が発生している傾向が
増大しつつある。
顕著だという点だ。早めのイン
笹 子トンネル 天 井 板 の 崩 落
バート設置を求めている。
事故は、
トンネルのメンテナンス
盤ぶくれは、突然生じる場合
問題を一気に表面化させた。
もある。山形自動車道盃山トン
40年以上50年未満
ネルでは、供 用 から 17 年 後 に
50年以上
一部で盤ぶくれが顕著に
さかずきやま
950mmも隆起した。国内で初
告をした「高速道路資産の長期
めてといわれる特異な現象であ
0%
65%
泥岩
片岩
凝灰岩
花崗岩
凝灰角礫岩
流紋岩
粘板岩
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2013.7 建設資材情報
30年以上40年未満
2%
土圧
土圧
21%
20年以上30年未満
盤ぶくれ発生概念図
盤ぶくれ発生箇所の岩種割合
8%
10年以上20年未満
変 状 が 現 れ、1 カ 月 半 で 最 大
今年 4 月に中間取りまとめ報
1%
3%
10年未満
盤ぶくれ状況
土圧
土圧
盤ぶくれ
出典:高速道路資産の長期保全及び更新のあり方に関する技術検討委員会
高齢化を迎えた社会資本
トン ネ ル
る。隆起したインバートを撤去
この点については、大規模な
されることが決まった。
し、鋼 製 支 保 工・吹き付 けコン
更新や修繕の必要性は、
「現時
下り線 の 供 用 開 始 は 1975
クリートと 一 体 に なった イン
点ではない」
との判断だ。まった
年。笹子トンネルより2 年早い。
バートを再構築しなければなら
く必 要ないのではなく、通 常 修
工事は 6 月 20 日から7 月 10 日
なかった。こうした大掛かりな対
繕で対応可能との見方である。
までの 21 日間にわたって実施
策工事を余儀なくされた経験が
え
な さん
される。
技術検討委員会では、健全度
恵那山トンネルの
天井板撤去へ
が高いトンネルに対しても、
「重
笹子トンネルの天井板崩落事
を確認していた。しかし
「さらな
点的な経過観察」の必要性を指
故をきっかけに問題となった換
る安全対策として、換気設備の
摘した。
気設備などトンネル付属物は、
更新を前倒しして撤去すること
覆工については、健全度を地
今回の検討対象には入っていな
にした」
と説明する。
山の岩種に着目して分析したと
い。これも現時点では通常修繕
撤去工事には大型の自走式
ころ、風化しやすい岩で健全度
で対応可能との判断からだ。
台車を使う。台車の架台を上昇
が悪化傾向にあることが判明し
換 気 設 備 の 天 井 板 に絞って
させて天井板を下から支え、天
た。覆工の変状が進行すると修
動きを見ると、崩落事故を受け
井 板 上 部 の 吊り金 具と天 井 板
復が困難になるため、内巻きな
て同様の天井板をもつトンネル
の 端 部を切 断して、
トンネルと
どによる早めの補強対策を求め
の緊急点検が全国各地で行わ
切り離す工法である。
ている。
れている。
天井板の撤去後は、新たに換
トンネルでは、覆工の背面空
その 一 つである中 央自動 車
気用のジェットファンが設置さ
洞や目地部の剥落、漏水もしば
道恵那山トンネルの下り線(延
れることになっている。
しば問題になる。
長 8,489m)の 天 井 板 は、撤 去
NEXCO 東日本にはある。
NEXCO 中日本は、昨年 12 月
3 日と4 日の緊急点検で安全性
恵那山トンネルの天井板撤去工事
隔壁板
天井板
工事前
工事後
出典:中日本高速道路(株)
2013.7 建設資材情報
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09
特 集
トンネルの維持補修工法
土 木は経 験 工 学だといわれ
矢板工法では、防水工法の概
といわれる。一般的には劣化の
るが、その 中でもトンネル は経
念がなかったため、
メンテナン
スピードは緩やかだ。ある一定
験の要素が強いというのが通説
スにあたっては漏水対策をどう
期間ごとに補修しているかとい
だ。トンネルごとに地山条件に
するかが課題の一つにある。覆
えば、必ずしもそうではない。
違いがあるためだ。
工コンクリートは無筋であり、剥
現 場ごとの違いは、
メンテナ
劣化の具合は
工法の問題ではない
落の問題もある。
ンスを考える上でも問題を複雑
矢 板 工 法と NATM 工 法に共
にしている。独立行政法人土木
通するのは、打 継ぎ部がどうし
研 究 所つくば中 央 研 究 所 道 路
道路トンネルは、かつては矢
ても劣 化しやすい点だ。さらに
技術研究グループ(トンネル)上
板工法で施工されてきたが、昭
天端はどうしても空隙ができや
席研究員の砂金伸治氏が指摘
和 50 年代になるとNATM 工法
すい。
する。
が標準的な工法となった。矢板
こうした 問 題 に 対 応 するた
「そのトンネルが安全なのか、
工法によるトンネルが概して古
め、
さまざまな技術が研究開発
そうではないのか。この点を見
いのは事実だが、矢板工法でも
されてきた。
極 めるの は 簡 単で はありませ
しっかりしているものもあるし、
くうげき
ん。トンネルの健全度評価とい
劣化の具合はあくまでも
「トンネ
健全度評価へ基準づくり
うのは大変難しいものがありま
ルごとに見るべき」
というのが技
トンネルの寿命は、橋りょうな
す。健全性を評価する研究はし
術者のほぼ共通した見方だ。
ど他の構造物に比べれば長い
ているのですが、必ずしも確立
プレキャストコンクリートを使
土木研究所と民間の共同研究
いトンネルを補修する工法を
には、
ひび割れしたトンネル覆
した。実用もされている。写真
シートを樹脂で接着し剥落を
土木研究所と民間で共同研究
は実物大試験
工コンクリートに透明な補強
防ぐ技 術もある。研 究 所での
実験風景
出典:
(独)土木研究所
10 page
2013.7 建設資材情報
プレキャストコンクリートによる
トンネル補修の施工。漏水を防
ぎ、覆工コンクリートの剥離・剥
落防止に威力を発揮する。土木
研究所と共同研究
出典:PCL 協会
トン ネ ル
高齢化を迎えた社会資本
できていません」
仮に覆工コンクリートにひび
割 れが 生じたとする。これがコ
ンクリートの乾燥収縮によるも
のか、外力を受けたことによるも
のなのか、一目で判断するのは
加速度計
難しい。1mm で危 険なひび 割
れもあれば、5mm でも危険にな
らない場合もあるというのだ。
長期的に観測が必要で、
もし
サン・ファン
トンネル
ひ び 割 れ が 大きくなってい け
になり、補修・補強が必要かどう
震央
かの判断が求められる。
計測器を設置したサン・ファントンネル
※支倉常長一行がローマ派遣時
に乗船した木造帆船サン・ファン・
バウティスタ号を展示しているサ
ン・ファンパークと県 道 2 号を結
ぶトンネル
宮城県
ば、外力によるものだということ
ひずみ計
出典:
(独)土木研究所
健全度評価が難しいというこ
とは、長寿命化で求められる予
防保全もまた困難なことを意味
要とされてきた区間でも、覆工の
ンクリートが圧縮崩壊する一つ
している。
崩落を伴う被害があった。
の目 安 は、−2,000μといわれ
そこで土木研究所は、安全性
これを受 けて土 木 研 究 所で
ており、それに比 べ ればごくわ
を評価する際の判断基準づくり
は、宮城県石巻市のトンネルに
ずかなひずみである。
に動き始めた。基準ができれば
ひずみ計などを設置して計測を
しかしこのデータだけで判断
予防保全へのシフトも可能にな
続けている。
するのは早計だろう。今後の計
るはずだ。
2011 年 4 月の震度 6 強 ∼ 6
測や研究の進展によっては、
ト
「定量的な評価は難しく、
どう
弱の揺れの際には、計測した圧
ンネルの耐震対策や耐震設計
しても定性的な評価にならざる
縮ひずみは−20μであった。コ
につながる可能性もある。
を得ませんが、現場で役立つ判
断基準をなるべく早く作ります」
(砂金氏)
どうするのか耐震対策
トンネルの長寿命化を考える
上で、
もう一つの視点がある。地
震対策や耐震設計はどうなのか
という点だ。
トンネルは地震に強
いとされてきたが、新潟県中越地
震では、
これまで耐震対策が不
トンネル 背 面 の 空 洞 調 査で
は、覆工を破壊せずに非破壊
で探査できる電磁波レーダー
技術も確立している。写真は
レーダーを搭載した探査車
出典:国土交通省
2013.7 建設資材情報
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11
特 集
現 役最古
国道 143 号
「明通トンネル」
を行く
あ け ど おし
JR 上田駅から青木村までバ
課長。最古のトンネルとはいって
スで 約 40 分。村 営 バスに乗り
も、
「特別なことはしていません。
換えて終点となる一番奥の集落
週 1 回のパトロールで目視によ
まで行くと、その先の道 路は傾
る管理をしています」
と続ける。
斜を増す。山 腹を這うように曲
明通トンネル 青木村側の坑口
がりくねった道を歩くこと約 1 時
生々しい劣化の痕跡
て鉄筋がむき出しになっている
間半。左カーブの道路の先に、
トンネルの中に入ってみる。
箇所もある。その奥からは岩が
突然とトンネルが現れる。
長さ95mとはいえ、照明設備も
覗いていた。漏水の痕跡らしき
長 野 県の松 本 市と上 田 市を
換気設備もなく暗い。懐中電灯
ものも少なからずある。
結 ぶ 国 道 143 号。その 青 木 峠
の光に浮かび上がったのは、か
これまでの 調 査を踏まえて、
を貫いているのが明通トンネル
なり激しく傷 んだ 内 部 の 様 子
上田建設事務所は推測する。建
(長さ95m)だ。明 治 時 代 に完
だった。歴史の重みを感じさせ
設当時は、側壁部は自然の岩を
成した現役最古の国道トンネル
られる。
利用した岩着か石積みで、
アー
である。
トンネ ル の 標 高 は 約 1,040
チ部はレンガによる覆工だった
昭和 32 年に大改修
m。流入水の凍結がコンクリー
のではないか。そして改修時に
トやモルタルの劣化に影響して
側壁は鉄筋コンクリートで、
アー
坑口はコンクリート製であり、
いるように思われる。
チ部は吹き付けモルタルで修築
これを見る限り最古のイメージ
側壁のコンクリートは、剥落し
されたのでは、
と。
はない。実は昭和 32 年、
自動車
交通に対応して改修したためだ。
したがって原型は留めていない。
とはいうものの改修からすで
に 56 年 が 経 過している。現 役
を守り続けるには、定期的な維
持補修が必要だったことは容易
に推察される。
「ところが 補 修 工 事などの記
録はほとんど残っていないので
す」
と話 すの は、長 野 県 上 田 建
設事務所維持管理課の松本寛
12 page
2013.7 建設資材情報
明通トンネルの断面図。
概要年次の明治「32」を
「 2 3 」に 修 正した 跡 が
ある。照 明 施 設は「 0 」、
換 気 施 設 、通 報 装 置 、
非 常 警 報 装 置 、消 火 設
備は「無」
出典:長野県 上田建設事務所
高齢化を迎えた社会資本
トン ネ ル
制(幅 員 5.5m∼ 5.7m)
されて
いるので、車両の通行量も少な
く、結果的に維持補修の軽減に
つながったようだ。アスファルト
の舗装面は、ひび割れはあるも
のの比較的健全な状態にある。
「いい地盤の所を選んで掘削
したのでしょう。盤ぶくれもありま
せんし、現段階では補修工事の
アーチ部の奥に見えるレンガ
予定はありません」
(松本課長)。
「今 後、長 寿 命 化するための
予防保全の重要性が指摘さ
補 修 工 事などを実 施する計 画
れているが、現実的には厳しい
で、明 通トンネルもその対 象に
ものがある。財政的、
あるいは人
なっています。ただし、優先順位
的な面で、
どうしても対処療法的
があるので、明 通トンネルがい
な対応になりがちだ。長野県の
つ になるか は未 定です」
(長 野
側 壁やアーチ部の傷みはあ
場合も同じような状況にある。
県道路管理課安全防災係)。
るものの「トンネル 本 体 への影
そんな中で長野県は、県が管
それまでは、
「道 路 の 機 能を
響はないだろう」
というのが、上
理するトンネルの長寿命化に乗
常に最良の状態に維持できるよ
田建設事務所の見解だ。3.6m
り出した。その一環でトンネルの
うに心掛けて、パトロールおよび
(トンネル高さ約 4.2m)の高さ
現況調査を実施したが、
その中に
維持管理に努めていきたい」
と
制限があり、大型車の通行が規
は明通トンネルも含まれている。
松本課長は話す。
長寿命化へ補修も
青の洞門
日本最古の道路トンネルは青の洞
た大改修で、
ほとんどの原型が失われ
門。菊池寛の短編小説「恩讐の彼方に」
た。しかし今でも、
トンネル内の一部に
で知られる存在となった。
明かり採り窓など当時の手掘り部分が
大分県の景勝地・耶馬渓にあり、全長
残っている。
342mのうち144mがトンネル部分だ。
禅海和尚が雇った石工たちとともにノミ
と鎚だけで掘り続け、30 年余り経った明
和元年(1764 年)
に完成させた。
「人は 4 文、牛馬は 8 文」の通行料を
徴収して工事の費用に充てており、
日本
初の有料道路ともいわれている。
明治 39 年から40 年にかけて行われ
当時のままの明かり採り窓
出典:大分県中津市
次回8月号の特集・高齢化を迎えた社会資本は【橋りょう】
です
2013.7 建設資材情報
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13