展望 展望 道 き べ む 進 の JA 所得格差、地方創生と農業、 農業協同組合 大西茂志 (JA全中常務理事) トマ・ピケティ著『21世紀の資本』が世界 さらに高齢化と人口減少があります。地方を そしてわが国で大きな話題となっています。 支える産業は、他の産業が衰退し、農業等の 過去200年の税務統計を分析し、資本収益率 1 次産業のみとなりつつあります。 が経済成長率を上回り続け、格差が永続的に JAグループは、こうした状況が進む中で 拡大し続けていることを理論的に解明してい 平成24年の第26回JA全国大会で、すでに ます。事実、米国では、第 2 次世界大戦を契 「次代へつなぐ協同」を掲げ、東日本大震災 機に減少した格差が、新自由主義的レーガノ からの復興、10年後を想定した農業や地域の ミクスが始まった1980年代以降拡大し現在、 再生のための戦略づくりを提起しました。 19世紀の最も格差の大きかった状況に近づき しかし、その後もさまざまな環境が急速に つつあります。程度に差こそあれ全世界に、 変化しており、JAグループは自己改革とし こうした傾向が広まっていることを指摘して て本年 1 月「JA営農・経済改革実践運動」 います。 に取り組むこととしました。地域農業戦略を 過去、格差が最大化した19世紀には、経済 見直し、連合会も含めグループ全体で生産基 的貧困を克服するため、1844年英国でロッチ 盤と販売力の強化を進めます。 デール先駆者協同組合が創立され、わが国で 農業および農業協同組合は、過去にさまざ も1900年産業組合法が公布されました。一 まな経営的な危機、自然災害に出合うたび、 方、21世紀の2012年、国連は、世界に拡大 郷土にしっかり足場を置き、乗り越えてきま する格差を克服するため、協同組合の社会経 した。この結果、世界に誇る、素晴らしい農 済的発展に果たす役割を高く評価し国際協同 畜産物や美しい風景、豊かな人間性を持つ安 組合年を宣言しました。 定的な社会をつくり上げてきました。今こそ 現在、わが国は、経済的な格差のみならず、 農業および農業協同組合が核となり、地域の 大都市と地方の格差の是正が、地方創生とい 人々や行政とも連携し底力を発揮するときが う形で現内閣の主要な政治課題となっていま きました。 す。その背景には大都市への就業人口の集中、 月刊 JA 2015/02 17
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