No14 - 神奈川県立湘南養護学校

<第 14 号>平成 27 年 6 月 15 日
湘南養護学校 支援連携部
相談支援係 ―教師編ー
“できました”と報告することはなぜ大切なのか。~マンドとタクト~
要求するときの言葉を応用行動分析学ではマンドと言います。一方、
「できました」とか「車が見えます」
といった報告やコメントをする言葉をタクトと言います。今回は、後者のタクトに焦点を当てます。
マンド(要求言語)
タクト(叙述言語)

「おかわりください」
○ 「できました」

「手伝ってください」
○ 「電車が見えます」

「プレイルーム行きたい」
○ (泣いている子を見て)
「泣いてる」

「やめて」
○ 「お腹が痛い」 など
など
マンドすると、物がもらえたり自分のしたいこと
ができたりする。
タクトすると、相手に何かしら情報が提供され
る。また、相手から情報や利益がもたらされる。
要求する(マンド)と本人にとって利益がもたらされますが、報告したりコメントしたりする(PECS
では、フェイズⅥ:コメント)と、タクトされた人には情報という利益がもたらされます。上図の右欄
にあるように、泣いている子どもがいるという報告をタクトされると、タクトされた人は泣いている子
どもを助けられるという利益が得られます。
タクトする力を伸ばすことの最も大事な目的の 1 つとして、
「おなかが痛いです。」
「頭が痛いです。」
と自分の体調の悪さをタクトすることが挙げられます。体調が悪くてもただ泣いているだけでは周りは
理由が分からずにあれこれ推測するしかありません。自閉症の子どもの場合、体調の悪さを自分で十分
に把握することが難しいことがありますが(「高機能自閉症・アスペルガー症候群『その子らしさ』を生かす子育て」
p.27
吉田友子)
、発達の状況に応じて取り組みたい目標の 1 つと言えます。
マンドやタクトといった発信する力を育てることの意味
☆ 言いたいことが伝わる経験は、コミュニケーション力の向上とともに心理的な安定をもたらします。
☆ 発信する手段を獲得すると、教員が察して動いたり絶えず行動を見張ったりする負担が軽減します。
発信を自発する機会をたくさん設定しマンネリ化することなく発展させてい
くことで、お互いに win-win の関係を築けることを実感してください。
では、タクトの他の例を見てみます。
<課題別学習の時間>
決められた課題を終えると、カードを用いて自分から「できまし
た!」と先生に報告しています。タクトすると褒めてもらえたり、休
憩が得られたりします。最初は“完了”を表すシンボルのついた絵カ
「できました」
カードを渡す
ードから始め、絵カード→絵・文字カード→文字カードのように段階を踏みます。合わせて、色々な状況を
設定することで般化が促されます。音声での表出が不安定な子どもでもカードを合わせて利用すること
で音声でのタクトもスムーズになりやすいです(「自閉症児と絵カードでコミュニケーション PECS と AAC」
二弊社
アンディ・ボンディ/ロリ・フロスト著
p.130-135)
。
<会話の場面>
口頭で「くるま(が見える)
」や「
(友達が)遊んでいる」と報告し
ています。報告すると相手から反応してもらえます。肯定的な反
応によってタクトする行動は増えます。コミュニケーションの充
実は人との関係性を育む力につながり、学習活動への参加が促されます。
非言語的なタクトとしてのアイコンタクト
上記の例に加えて、非言語的なタクトとしてアイコンタクトがあります。自閉症の方の中には、視線
が合いにくいという特徴のある子どもがいます。彼らは、言葉では「できました」などとタクトできても、
なかなか視線を合わせられないということがあります。アイコンタクト自体は、相手の要求に従うとき
や相手にタクトするときではなく、子どもからの要求(マンド)に応えるときによく見られます。また、
そのやりとりによって脳の社会性を司る機能の向上が指摘されています(「自閉症スペクトラムの子どもへの
感覚・運動アプローチ入門」東京書籍
岩永竜一郎 p.145)
。※本校にも実践の映像あり。
そこで、子どもの喜ぶ場面を設定し好子を与える前に十分に期待を引きつけてください。すると自然
にアイコンタクトが生じるので、そのやり取りを意図的に繰り返してアイコンタクトの定着を図ります。
~校内の風景~
レスポンス・コスト法という手立てがあります。これは、タイム・アウト法と並んだ罰の手立てです。
高等部のあるクラスでは、よく言えば活気のある生徒が多いのですが、時にはその活気が授業中の私語
や騒がしさにつながってしまうことがあります。そこで、レスポンス・コスト法を用いて私語を許容範
囲まで減らす取り組みがなされています。手続きは次の通りです。
私語を減らす
黒板に掲示する
「今から 10 分間、おしゃべり禁止です。
おしゃべりをしたと先生が判断したら、黒板に貼った表の名前からシール●
を 1 枚はがします。
シールが 10 枚全部取られたら、今日の給食はおかわりがなくなります。もしく
は、昼休みに先生と個別に勉強します。
おしゃべりかどうかは先生が判断します。
発言したいときは挙手をして、指名されてから発言してください。」
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A君
B さん C 君
・おかわりがなくなる
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D さん
・昼休みに特別授業
先生は、私語と判断したら注意せずにただ黙って淡々とシールをはがします。生徒は、シールがなく
なっていくのを目にすることで自分の言動への意識づけを行います。レスポンス・コスト法は罰の手立
てですが、罰することが目的の取り組みではないので、無誤学習(エラーレス・ラーニング)の考え方*
を導入して、不合格になる生徒がいないようなレベルを見つけてスタートするのが望ましいです(*無誤学
習については、
「応用行動分析で特別支援教育が変わる」図書文化
山本淳一
池田聡子著に例複数あり。例えば p.88)
。
最初はシールを 30 枚にするとか、時間を 5 分間から始めるといった工夫が必要となります。全員合格
するレベルから始め、徐々に 10 分→20 分といった時間延長を行います。また、昨年度の中学部のレス
ポンス・コスト法の実践では、適切な行動にはシールが増えるというトークンエコノミーの方法を合わ
せてありました(相談支援つうしん③参照)
。組み合わせることで、動機づけは高まります。