道の駅『奥永源寺 渓流の里』開設と地域活性化(東近江市奥永源寺地区)

平成 27 年 7 月 1 日
滋賀県・大津財務事務所
道の駅「奥永源寺 渓流の里」開設と地域活性化
~中部圏との新たな玄関口(滋賀県東近江市奥永源寺地区)~
1.地域の概要
東近江市は、旧 1 市 6 町(八日市市・永源寺町・五個荘
町・愛東町・湖東町・蒲生町・能登川町)により構成され
ており、2 度の合併を経て現在の市域になりました。滋賀
奥永源寺地区
県の南東部に位置しており、地形は東西に細長く、西は琵
琶湖に接し、東には鈴鹿山系が広がり三重県との県境にな
っています。
今回取り上げる奥永源寺地区は、東近江市の東端、鈴鹿
山系の山深いエリアであり、豊かな自然を残しています。
しかし、昨今は人口減少と高齢化が特に進んでいる地域で
東近江市
もあるため、地域活性化に向けて様々な取り組みがなされ
ているところです。
いしぐれ
2.中部圏との玄関口 ~石榑トンネルの開通~
滋賀県東近江市と三重県いなべ市は、従来から国道 421
号で結ばれていましたが、県境である石榑峠を通過する部
分においては、冬季は通行止めになる上に道幅が極めて狭
いため、
「酷道」と呼ばれることがあり、両市の往来は活発
とは言えないものでした。
しかし、平成 23 年 3 月 26 日に石榑トンネルが開通し、
年間を通じて通行可能になった上に大型車でも簡単に石榑
峠を越えられるようになりました。また、両市間を移動す
る際は、
かつては南の国道 1 号もしくは北の国道 21 号から
回り込むしかなかったのですが、トンネル開通により直線
的に移動することが可能となり、所要時間も以前より 1 時
間程度短縮され、交通アクセスは劇的に向上しました。こ
れにより、東近江市~いなべ市間の通行量はトンネル開通
前に比べ 6 倍~10 倍になる等、両地域の往来が盛んになっ
ています。特に、自然豊かな奥永源寺のキャンプ場等への
観光ニーズや三重県桑名市や四日市市等の工業地帯と近畿
圏を結ぶ物流ニーズが高まっています。また、東近江市と
いなべ市との間で、災害応援協定が締結され、両観光協会
間の交流が盛んになる等、両市の結びつきが強くなってい
ます。
今後について、現在も国道 421 号の拡幅工事を行っている
トンネル開通に伴い利用者が大幅に
増えた「永源寺温泉 八風の湯」
ところであり、工事完了後は両市間の移動がスムーズになり、
交流がさらに活発になることが期待されます。
近 畿 財 務 局
大津財務事務所
3.地域振興拠点の整備
平成 15 年に石榑トンネルの建設が決定
され、地元では地域活性化に向けた議論
がなされ、その中で地域振興も兼ねて道
の駅開設計画が浮上しました。当初は議
会において「中山間地域で集客できるの
か」等、必ずしも賛成意見ばかりではな
く、また、既存の施設を活用(本計画は
旧政所中学校校舎を活用)するケースは
当時は全国的に見て少なかったため、ひ
とつひとつを丁寧に説明しながら、手さ
ぐりで開設に向けた作業を進めていくこ
ととなりました。
「奥永源寺 渓流の里」
(パース図)
当初はクリアすべき点が多かったものの、全国でも
平成 27 年秋 開業予定!
先駆的な取り組みとなる防災機能の充実や廃校舎の活
用等を取り入れた道の駅として開設が決まりました。
道の駅の名称は、一般公募により、自然に恵まれた奥
永源寺地区の魅力が表現された「奥永源寺 渓流の里」
と決定しました。
施設内容は、上図のとおり、
「休憩機能」や「情報発
信」等の従来の道の駅が有する地域活性化の拠点とし
ての機能のみならず、避難所や非常用電源設備を備え
る等の「防災・安全機能」
、出張診療所としての役割を
果たす「医療機能」や市役所の出張所としての「行政機能」等、地域生活の拠点としての機能
も併せ持つこととなり、今後の奥永源寺地区の地域振興拠点となることが期待されます。
4.将来に向けて ~体験交流プログラム(着地型観光)の拠点へ~
同地区は、古くから「宇治は茶所、茶は政所」と詠われ、
朝廷にも献上された「政所茶」や今や絶滅危惧種となった
植物「ムラサキ」から作る染料、ろくろを用いて木工品を
加工・製造する「木地師のふる里」として木工制作の聖地
自然豊かな奥永源寺。
手前には銘茶「政所茶」の茶畑
が広がっています。
となっている等、多くの魅力がある上に、四季折々の表情
を見せる鈴鹿山脈の豊かな自然に恵まれています。これら
の豊富な観光資源をベースに、地域おこし協力隊と協同し
た商品開発や、
「滞在型」の道の駅をテーマに、鈴鹿山脈の
自然を活かした「トレッキングの拠点」として、また、林
間学校や環境学習の受け入れ等、
「子供の学習の拠点」とし
て新たな魅力の創造に取り組んでいます。
そして、これら個々の魅力を「体験交流プログラム」等
の形で集約し観光事業者等に提案することで、通過点とし
てではなく、そこが目的地となるような「着地型観光」の
促進に注力しており、将来的にはこれらの拠点としての役
割が期待されているところです。
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5.おまけ ~奥永源寺の魅力の一部をご紹介~
鈴鹿山脈の豊かな自然を間近で感じるこ
とができます。現在、御在所岳や御池岳
を周遊できる登山道「鈴鹿トレイル」の
整備を進めており、
「奥永源寺 渓流の里」
はその拠点となる予定です。
木地師の工房です。
木地師とは、ろくろを用いてお椀やお盆等の
木工品を加工する職人のことです。
これ たか
9 世紀後半、惟喬親王が奥永源寺でこの技術
を編み出したと言われていることから、奥永
源寺は「木地師のふる里」と呼ばれています。
奥永源寺のキャンプ場です。
琵琶湖に注ぐ愛知川の澄み切った
源流と豊かな自然が子供たちを待
っています。
子供たちの夏の思い出の 1 ページに
いかがでしょうか。
※掲載している写真等は、東近江市より
ご提供いただいたものを掲載しております。
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