「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の 経済波及効果

「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の
経済波及効果
平成 26 年 11 月
公益財団法人 堺都市政策研究所
「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の経済波及効果
平成 26 年 11 月
Ⅰ
はじめに
本報告書は「
(仮称)堺市民芸術文化ホール」が地元である堺市及び大阪府、全国でどれ
ほどの経済波及効果をもたらすかを推計したものである。
堺市における「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の初期投資による経済波及効果は、平成 26
年度から平成 29 年度までの 4 年間で約 230 億 8,500 万円、粗付加価値効果は約 107 億 1,200
万円となった。また、開館後の施設運営や来場者消費支出などによる経済波及効果は、1 年
間で、約 23 億 9,200 万円、粗付加価値効果は約 11 億 900 万円となった。
さらに、堺市における初期投資の経済波及効果と施設運営による経済波及効果の総計は
約 254 億 7,700 万円、粗付加価値効果は約 118 億 2,100 万円となった。
大阪府における「(仮称) 堺市民芸術文化ホール」の初期投資による経済波及効果は、平
成 26 年度から平成 29 年度までの 4 年間で約 239 億 9,600 万円、粗付加価値効果は約 138
億 8,200 万円となった。また、開館後の施設運営や来場者消費支出などによる経済波及効
果は、1 年間で、約 31 億 3,800 万円、粗付加価値効果は約 17 億 6,200 万円となった。
さらに、大阪府における初期投資の経済波及効果と施設運営による経済波及効果の総計
は約 271 億 3,400 万円、粗付加価値効果は約 156 億 4,400 万円となった。
全国における「(仮称) 堺市民芸術文化ホール」の初期投資による経済波及効果は、平成
26 年度から平成 29 年度までの 4 年間で約 378 億 700 万円、粗付加価値効果は約 331 億 1,000
万円となった。また、開館後の施設運営や来場者消費支出などによる経済波及効果は、1 年
間で、約 51 億 6,400 万円、粗付加価値効果は約 45 億 2,200 万円となった。
さらに、全国における初期投資の経済波及効果と施設運営による経済波及効果の総計は
約 429 億 7,100 万円、粗付加価値効果は約 376 億 3,200 万円となった。
Ⅱ
直接効果の項目
1.初期投資による直接効果
「(仮称) 堺市民芸術文化ホール」の初期投資は、表 1 で示されている。新施設建設事業
費は 140 億円、旧市民会館解体工事費は 5 億円、その総額は 145 億円である。
表 1 初期投資額
単位:百万円
項目
金額
新施設建設事業費
14,000
旧市民会館解体工事費
500
合計
14,500
1
データの出所:
「堺市民会館整備計画」
2.施設の年間運営費による直接効果
(1)施設運営にかかる年間人件費
新施設の運営にかかる年間人件費は表 2 で示されている。人件費は 1.8 億円である。
表 2 施設運営にかかる年間人件費
単位:百万円
項目
金額
年間人件費
180
合計
180
データの出所:
「
(仮称)堺市民芸術文化ホール運営管理方針」
(2)施設運営にかかる年間維持管理費
新施設の運営にかかる年間維持管理費は、表 3 で示されている。年間維持管理費は 3 億
円である。なお、費用項目別の年間維持管理費は表 4 で示されている。
表 3 施設運営にかかる年間維持管理費
単位:百万円
項目
金額
年間維持管理費
300
合計
300
データの出所:
「
(仮称)堺市民芸術文化ホール運営管理方針」
表 4 費用項目別の年間維持管理費
費用項目
単価(円/平方メートル)
年間(百万円)
光熱水費
4,247
84.94
備品・消耗品費
885
17.7
保険料
15
0.3
保守・点検費
2,014
40.28
施設管理費
3,127
62.54
清掃費
1,469
29.38
警備費
694
13.88
その他
2,549
50.98
合計
15,000
300
注
①データの出所:
「
(仮称)堺市民芸術文化ホール運営管理方針」策定関係資料
2
②年間維持管理費=単価×20,000 平方メートル
(3)施設運営にかかる年間事業費
施設の運営にかかる年間事業費は、表 5 で示されている。推計の結果、年間事業費は 2.4
億円である。
表 5 施設運営にかかる年間事業費
単位:百万円
項目
金額
年間事業費
240
合計
240
データの出所:
①「
(仮称)新堺市民芸術文化ホール運営管理方針」によると、年間事業費は 2.7 億円であ
る。しかし、この年間事業費の中に大ホールなどの使用料として施設使用料 0.3 億円が
含まれている。そのため、施設使用料 0.3 億円を年間事業費から取り除いている。
(4)施設年間運営費の総計
施設年間運営費の総計は表 6 で示されている。推計の結果、施設年間運営費の総計は 7.2
億円である。
表 6 施設年間運営費の総計
単位:百万円
項目
金額
年間人件費
180
年間維持管理費
300
年間事業費
240
合計
720
3.来場者の消費支出による直接効果
「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の年間来場者数は表 7 で示されている。推計の結果、
新堺市民会館の年間来場者数は 47 万 8,785 人である。
表 7 堺市民芸術文化ホールの年間来場者数
単位:人
項目
人数
大ホール
312,400
小ホール
54,120
大スタジオ
21,200
3
多目的室、小スタジオ
29,835
文化交流室
61,230
合計
478,785
注
①年間来場者数 47 万 8,785 人は年間稼働率やイベントの利用率を想定して、堺市文化観光
局による推定されたものである。
来場者一人当たり消費支出額は表 8 で示さている。来場者一人当たり消費支出額は
3,192 である。
表 8 来場者一人当たり消費支出額
単位:円
消費項目
消費金額
交通費(市内)
689
食事
1,249
土産物代
473
雑費
781
合計
3,192
注:
①「堺市ビジター実態調査報告書」(平成 24 年度版)
観光拠点調査による日帰りビジターの消費支出額を参考にしている。
②来場者は大和川以南の南大阪地域からの方を中心に広く近畿地域全体からも来られ
ると想定しており、全員日帰りと仮定している。
推計した来場者の年間消費支出額は表 9 で示されている。推計の結果、来場者の年間
消費支出額は約 15 億 2,828 万円である。
表 9 来場者の年間消費支出額
単位:百万円
消費項目
消費金額
交通費(市内)
329.88
食事
598.00
土産物代
226.47
雑費
373.93
合計
1,528.28
4.公演主催者による直接効果
(1)公演関係者(演出者、設営者)による消費支出
公演関係者の年間来場者数は表 10 で示されている。推計の結果、公演関係者の年間来場
4
者数は 1 万 6,480 人である。
表 10 公演関係者の年間来場者数
単位:人
項目
1 公演の平均関係者数
年間公演数
公演関係年間来場者数
大ホール
50
234
11,700
小ホール
20
239
4,780
合計
―
―
16,480
注:
①公演関係者の年間来場者数=1 公演の平均関係者数×年間公演数
②1 公演の平均関係者数は旧市民会館の関係者来場者数及び他ホールの関係者との意見交
換などを参考に、想定したものである。
③ホールの年間公演数は、年間来場数を推計する時に使用した公演数とは同じである。
公演関係者の来場者は全員日帰りと想定し、さらに、その一人当たり消費支出額は表 8
で示された一般来場者の一人当たり消費支出額と同じと仮定し、その年間消費支出額を推
計した。推計の結果、公演関係者の来場者の年間消費支出額は 5,260 万円である。
表 11 公演関係者の年間消費支出額
単位:百万円
消費項目
消費金額
交通費(市内)
11.35
食事
20.58
土産物代
7.80
雑費
12.87
合計
52.60
(2)貸館による利用料金収入
大ホール・小ホールなどでの公演に伴い、貸館による利用料金収入が発生する。その金
額は、
「
(仮称)新堺市民会館運営管理方針」の収支モデル(試算)を参考に、約 1.2 億円と
なる。
Ⅲ
直接効果の総計
1.消費主体別の直接効果の総計
消費主体別の直接効果の総計は表 12 で示されている。推計の結果、
「(仮称)堺市民芸術
文化ホール)
」の直接効果の総計は 169 億 2,089 万円となった。
表 12 消費主体別の直接効果の総計
5
単位:百万円
項目
金額
初期投資
14,500.00
施設運営にかかる年間人件費
180.00
施設運営にかかる年間維持管理費
300.00
施設運営にかかる年間事業費
240.00
来場者の消費支出
1,528.28
公演主催者の消費支出
172.60
合計
16,920.89
2.消費項目別の直接効果の総計
消費項目別の直接効果の総計は表 13 で示されている。
表 13 消費項目別の直接効果の総計
Ⅳ
単位:百万円
項目
金額
初期投資
14,500.00
施設運営にかかる年間人件費
180.00
光熱水費
84.94
備品・消耗品費
17.7
保険料
0.3
保守・点検費
40.28
施設管理費
62.54
清掃費
29.38
警備費
13.88
その他
50.98
交通費(市内)
341.24
食費
618.59
土産物代
234.26
雑費
386.80
施設運営にかかる年間事業費
240.00
貸館による利用料金収入
120.00
合計
16,920.89
経済波及効果
1.産業連関表への按分
これまで計算した直接効果 169 億 2,089 万円を、「平成 17 年堺市産業連関表」に按分し
6
て、経済波及効果を推計する。産業連関表への按分は表 14 で示されている。
表 14 産業連関表への按分
項目
産業連関表への按分
初期投資
建設
施設運営にかかる人件費
すべての部門へ(最終需要割合)
光熱水費
電力・ガス・熱供給部門へ 70%
水道・廃棄物処理部門へ 30%
備品・消耗品費
対事業所サービス
保険料
金融・保険
保守・点検費
対事業所サービス
施設管理費
対事業所サービス
清掃費
対事業所サービス
警備費
対事業所サービス
その他
対事業所サービス
交通費(市内)
運輸
食費
対個人サービス
土産物代
対個人サービス
雑費
対個人サービス
施設運営にかかる事業費
対事業所サービス
貸館による利用料金収入
対事業所サービス
2.経済波及効果
「平成 17 年堺市産業連関表」を用いて、
「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の初期投資に
よる堺市における一時的な経済波及効果を推計すると、約 230 億 8,500 万円となった。さ
らに、粗付加価値効果は約 107 億 1,200 万円となった。
表 15 堺市における初期投資の経済波及効果
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
192.93
1,412
89.52
二次波及効果
37.92
264
17.60
合計
230.85
1,676
107.12
使用する産業連関表は「平成 17 年堺市産業連関表」である。
「平成 17 年堺市産業連関表」を用いて、
「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の運営にかか
る年間経費(人件費・維持管理費・事業費)、来場者及び公演関係者の消費支出による堺市
7
における恒常的な経済波及効果を推計すると、約 23 億 9,200 万円となった。さらに、粗付
加価値効果は約 11 億 900 万円となった。
表 16 堺市における年間の経済波及効果
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
20.59
219
9.55
二次波及効果
3.33
23
1.54
合計
23.92
242
11.09
使用する産業連関表は「平成 17 年堺市産業連関表」である。
「
(仮称)堺市民芸術文化ホール」の初期投資による一時的な経済波及効果及び年間経費、
来場者と公演関係者の消費支出による恒常的な経済波及効果の合計は表 17 で示されている。
推計の結果、堺市における経済波及効果は 254 億 7,700 万円となった。さらに、堺市に粗
付加価値効果は 118 億 2,100 万円となった。
表 17 堺市における経済波及効果の総計
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
213.52
1,631
99.07
二次波及効果
41.25
287
19.14
合計
254.77
1,918
118.21
使用する産業連関表は「平成 17 年堺市産業連関表」である。
「平成 17 年大阪府産業連関表」を用いて、
「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の初期投資
による大阪府における一時的な経済波及効果を推計すると、約 239 億 9,600 万円となった。
さらに、粗付加価値効果は約 138 億 8,200 万円となった。
表 18 大阪府における初期投資の経済波及効果
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
198.68
1,444
114.94
二次波及効果
41.28
271
23.88
合計
239.96
1,715
138.82
使用する産業連関表は「平成 17 年大阪府産業連関表」である。
「平成 17 年大阪府産業連関表」を用いて、
「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の運営にか
8
かる年間経費(人件費・維持管理費・事業費)
、来場者及び公演関係者の消費支出による大
阪府における恒常的な経済波及効果を推計すると、約 31 億 3,800 万円となった。さらに、
粗付加価値効果は約 17 億 6,200 万円となった。
表 19
大阪府における年間の経済波及効果
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
26.96
277
15.06
二次波及効果
4.42
29
2.56
合計
31.38
306
17.62
使用する産業連関表は「平成 17 年大阪府産業連関表」である。
「
(仮称)堺市民芸術文化ホール」の初期投資による一時的な経済波及効果及び年間経費、
来場者と公演関係者の消費支出による恒常的な経済波及効果の合計は表 20 で示されている。
推計の結果、大阪府における経済波及効果は 271 億 3,400 万円となった。さらに、大阪府
における粗付加価値効果は 156 億 4,400 万円となった。
表 20 大阪府における経済波及効果の総計
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
225.64
1,721
130.00
二次波及効果
45.70
300
26.44
合計
271.34
2,021
156.44
使用する産業連関表は「平成 17 年大阪府産業連関表」である。
「平成 17 年全国産業連関表」を用いて、
「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の初期投資に
よる全国における一時的な経済波及効果を推計すると、約 378 億 700 万円となった。さら
に、粗付加価値効果は約 331 億 1,000 万円となった。
表 21 全国における初期投資の経済波及効果
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
280.61
2,123
245.75
二次波及効果
97.46
720
85.35
合計
378.07
2,843
331.10
使用する産業連関表は「平成 17 年全国産業連関表」である。
9
「平成 17 年全国産業連関表」を用いて、
「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の運営にかか
る年間経費(人件費・維持管理費・事業費)、来場者及び公演関係者の消費支出による全国
における恒常的な経済波及効果を推計すると、約 51 億 6,400 万円となった。さらに、粗付
加価値効果は約 45 億 2,200 万円となった。
表 22 全国における年間の経済波及効果
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
39.39
397
34.49
二次波及効果
12.25
91
10.73
合計
51.64
488
45.22
使用する産業連関表は「平成 17 年全国産業連関表」である。
「
(仮称)堺市民芸術文化ホール」の初期投資による一時的な経済波及効果及び年間経費、
来場者と公演関係者の消費支出による恒常的な経済波及効果の合計は表 23 で示されている。
推計の結果、全国における経済波及効果は 429 億 7,100 万円となった。さらに、全国にお
ける粗付加価値効果は 376 億 3,200 万円となった。
表 23 全国における経済波及効果の総計
単位:億円・人
項目
生産創出
雇用創出
粗付加価値創出
直接効果と一次波及効果
320.00
2,520
280.24
二次波及効果
109.71
811
96.08
合計
429.71
3,331
376.32
使用する産業連関表は「平成 17 年全国産業連関表」である。
Ⅵ
結論
堺市における「(仮称)堺市民芸術文化ホール」の初期投資による経済波及効果は、平成 26
年度から平成 29 年度までの 4 年間で約 230 億 8,500 万円、粗付加価値効果は約 107 億 1,200
万円となった。また、開館後の施設運営や来場者消費支出などによる経済波及効果は、1 年
間で、約 23 億 9,200 万円、粗付加価値効果は約 11 億 900 万円となった。
さらに、初期投資の経済波及効果と施設運営による経済波及効果の総計は約 254 億 7,700
万円、粗付加価値効果は約 118 億 2,100 万円となった。
大阪府における「(仮称) 堺市民芸術文化ホール」の初期投資による経済波及効果は、平
成 26 年度から平成 29 年度までの 4 年間で約 239 億 9,600 万円、粗付加価値効果は約 138
億 8,200 万円となった。また、開館後の施設運営や来場者消費支出などによる経済波及効
果は、1 年間で、約 31 億 3,800 万円、粗付加価値効果は約 17 億 6,200 万円となった。
さらに、大阪府における初期投資の経済波及効果と施設運営による経済波及効果の総計
10
は約 271 億 3,400 万円、粗付加価値効果は約 156 億 4,400 万円となった。
全国における「(仮称) 堺市民芸術文化ホール」の初期投資による経済波及効果は、平成
26 年度から平成 29 年度までの 4 年間で約 378 億 700 万円、粗付加価値効果は約 331 億 1,000
万円となった。また、開館後の施設運営や来場者消費支出などによる経済波及効果は、1 年
間で、約 51 億 6,400 万円、粗付加価値効果は約 45 億 2,200 万円となった。
さらに、全国における初期投資の経済波及効果と施設運営による経済波及効果の総計は
約 429 億 7,100 万円、粗付加価値効果は約 376 億 3,200 万円となった。
※本報告書の結果を無断で論文、報告書などに使用されることはお断りします。
※なお、本報告では、計算の都合上四捨五入しているので、合計額の最後の一桁が合わな
い場合があることをご承知おき下さい。
※本報告書作成あたり関係各位から多くの参考資料をいただいた。ここに感謝する次第で
す。
11
公益財団法人堺都市政策研究所
Sakai Urban Policy Institute
主任研究員 王 秀芳
〒590-0077
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