長期放射線率の計算方法 1.はじめに 報道等によると福島の放射線量の低下は今後は鈍くなるという。半減期の短いセシウ ム134は早めになくなるが、セシウム137残るためとの趣旨である(1)。一方、 福島県など行政は原発事故直後に比べ放射線量が大幅に低下したことを強調するが、 今後の見通しを明言していない(2) 。本レポートの目的は今後に福島の放射線量がど のように低下するかを 2.セシウム134と137の割合 セシウム134も137もセシウムの同位体である(3) 。同位体は科学的性質が同一 であり(4) 、存在比率は一定とされる。以下に2013年12月時点でのセシウム1 34と137の関係を示す。 (Bq/kg)または(Bq/L) 10000 y = 0.4335x 食品 セ 1000 シ ウ ム 100 1 3 10 4 濃 1 度 福島第一汚染地下水 0.1 0.01 0.01 0.1 1 10 100 1000 10000 セシウム137濃度(Bq/kg)または(Bq/L) ※(5) (6)で集計 図―1 セシウム137に対する134の割合 図に示す通り、福島第一原発の汚染地下水も食品もセシウム137に対する134の 割合は同じです。 以下に2011年3月(原発事故直後)、2013年12月(事故後2年9ヶ月)お よび2015年8月(原発事故後4年5ヶ月)の食品中のセシウム濃度の割合を示し ます。 (Bq/kg) セ シ ウ ム 1 3 4 濃 度 2011年3月 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 2013年12月 2015年8月 y = 0.9976x y = 0.4335x y = 0.2616x 0 1000 2000 セシウム137濃度(Bq/kg) ※(5)を集計 図―2 セシウム137に対する134の割合の時間変化 時間と共にセシウム134の137に対する割合は低下しています。放射性物質には 半減期があり、半減期を過ぎると半分になります(7) 。セシウム134の半減期はお よそ2.065年ですので(8)、2.065年で半分、4.13年で4分の1になり ます。一方セシウム137の半減期は30.2年でやっと半分になり、2.065年 では5%も減りません。セシウム134は137に比べ早くなくなりますので、時間 経過とともにセシウム137の割合が多くなり、最後はセシウム137だけが残りこ れがなかなか無くらない事態になります。 3.半減期から計算される放射線量 ある時点の放射線量とセシウム134と137の割合が分かれば放射線量を半減期か ら計算することができます。放射線量は例えば航空機モニタリング等により定期的(年 1回程度)測られています(9)。セシウム134と137の割合は食品中のセシウム 濃度の測定結果(5)や福島第一の汚染水の測定結果(6)などを集計で容易に求め られます(図―1参照) 。 セシウム137を1とした時のセシウム134の量をPとします。セシウム137 の量が単位面積当たりαベクレルならば、セシウム134の量はαPベクレルになり ます。1ミリ四方の1ベクレルの セシウム134があると5.4µSv/hの 同じく1ベクレルの セシウム137があると2.1µSv/hの 空間放射線量率になります。空間放射線量率をRとすると R=5.4αP+2.1α+0.04 となります。ここで0.04は自然由来の放射線量になります(10)。すると α=(R―0.04)÷(5.4P+1) になります。t年後のセシウム137の量α(t)は半減期から α(t)=α×0.5(t÷30.2) セシウム134の量をβ(t)として同じく β(t)=αP×0.5(t÷2.065) となりt年後の放射線量R(t)は両者を足して R(t)5.4αP×0.5(t÷2.065) +2.1α×0.5(t÷30.2)+0.05 になります。 ―リファレンス― (1)http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0500Y_V00C13A6CR0000/(福島原発 周辺の放射線量 「準備区域」で 45%減 :日本経済新聞) (2)http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11015b/fukkoukeikaku1151.html(ふくしま復 興のあゆみ - 福島県ホームページ)中の「ふくしま復興のあゆみ - 福島県ホームページ」 (3) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0 ( セ シウム - Wikipedia) (4)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8C%E4%BD%8D%E4%BD%93(同位体 Wikipedia) (5)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/(報道発表資料 |厚生労働省) (6)http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/monitoring/index-j.html(サンプリ ングによる監視|東京電力) (7)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%B8%9B%E6%9C%9F(半減期 Wikipedia) (8) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0 (セシウム - Wikipedia) (9)http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/362/list-1.html(航空機モニタリングによる空間 線量率の測定結果 | 原子力規制委員会) (10)https://www.kankyo.metro.tokyo.jp/policy_others/radiation/view/men.html(国 (環境省)が示す毎時0.23マイクロシーベルトの算出根拠|東京都環境局 その他につ いて)
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