EMC対策部品/車載LAN用コモンモードフィルタACT1210シリーズ ECUの省スペースを実現する、 小型化と高特性の両立 自動車の電子制御化が急速に進み、 ECU(電子制御ユニット)の搭載数は数10個、高級車では100個を超えるように なっています。 多くの電装機器ととともに、 エンジン、モータ、オルタネータなどが共存する自動車内は、きわめて過酷 なノイズ環境にあり、 CAN(高速)やFlexRayなどの車載LANのEMC対策としてコモンモードフィルタが使用されま す。 TDKではECUの回路基板の省スペース化という市場要求に応え、従来の4532形状(4.5×3.2mm)の実装面積を約 44%削減する3532形状(3.2×2.5mm)の車載LAN用コモンモードフィルタACT1210シリーズを開発しました。 高特性を確保しながら小型化を実現した製品です。 図2 エミッション問題とイミュニティ問題 ●シート ●キー、 ドア ●ライト ●シート ●エアコン ●ライト ●ワイパー など ●エアコン ●ワイパー など 安全系 (Safe-bi-wireなど) 安全系 ●センサ (Safe-bi-wireなど) ●エアバッグ センサ ●● エアバッグスクイブ ●エアバッグ (点火装置) ●エアバッグスクイブ など (点火装置) など Electromagnetic EMC Compatibility Electromagnetic (電磁両立性 ・電磁適合性) Compatibility (電磁両立性・電磁適合性) ●ステアリング ●ブレーキ、 ABS ●パワーシート ●ステアリング ●トランスミッション ●パワーシート ●エンジン など ●トランスミッション ゲートウェイ ゲートウェイ ●エンジン 40 EMC パワートレイン系 (FlexRayなど) パワートレイン系 (FlexRayなど) ●ブレーキ、 ABS EMI など Electromagnetic EMI Interference (電磁妨害Electromagnetic :エミッション問題) Interference (電磁妨害:エミッション問題) 輻射ノイズを抑制する。 マルチメディア系 (MOST、Ethernetなど) マルチメディア系 ●カメラ (MOST、Ethernetなど) ●ビデオ 輻射ノイズを抑制する。 ●カメラ ●オーディオ 40 30 EMS Electromagnetic EMS Suscesyibility Electromagnetic (電磁感受性 :イミュニティ問題) Suscesyibility (電磁感受性:イミュニティ問題) 侵入ノイズに対する耐性を高める。 侵入ノイズに対する耐性を高める。 ●ビデオ ●テレビ ●オーディオ ●カーナビゲーション など EMI(発生ノイズ対策)とEMS(侵入ノイズ対策)の 双方を両立させるのがEMC対策である。 ●テレビ ●カーナビゲーション など 20151211 1 Level (dBuV/m) ボディ系 (CAN、LINなど) ボディ系 (CAN、 ●キー、 ドア LINなど) 30 Level (dBuV/m) 図1 代表的な車載LANの構成 20 20 10 10 0 0 電装機器の誤動作を防止するためのEMC対策部品 の双方を両立させるという考え方に立つのがEMC対策です。 ECUはボディ系、安全系、パワートレイン系、マルチメディ ECUをつなぐケーブルは、 ノイズを輻射したり、 ノイズを拾っ ア・情報通信系に大別され、センサやアクチュエータなどから たりするアンテナとして機能します。 自動車用EMC対策部品 得られた情報は、 ボディ系 ゲートウェイを通じてこれらのECUで共有さ パワートレイン系 EMC 差動伝送方式が採用されて にはさまざまな種類がありますが、 れ、安全・快適・省エネ走行を維持します。初期の自動車電装の いるCAN 制御は、1対1接続の個別制御で行われていたため、高機能化と ズから電装機器の誤動作を防止するための最も確実で効果的 ●エアコン ●トランスミッション ともに接続するワイヤハーネスが増加し、 軽量化の支障となっ な対策は、 車載LANの各ノードにコモンモードフィルタを装着 ていました。この問題を解決したのがCANに代表される車載 することです。 (FlexRayなど) ●キー、 ドア ●ブレーキ、 ABS ●ライト ●パワーシート ●シート ●ステアリング ●ワイパー など ●エンジン など EMI EMS Interference Suscesyibility ゲートウェイ LANです。電装機器間接続のネットワーク化を図ることによ Electromagnetic Electromagnetic TDKの車載LAN用コモンモードフィルタには、 トロイダル 安全系 マルチメディア系 り、高機能化への対応とともに、 ワイヤハーネス量の削減を可 (Safe-bi-wireなど) (MOST、Ethernetなど) (電磁妨害:エミッション問題) (電磁感受性 :イミュニティ問題) コアに巻線をほどこしたタイプと、 ドラムコアに巻線をほどこ 能にしました。 ●センサ 30 ●ビデオ 自動車は点火プラグからの輻射ノイズ、 モータやオルタネー ●エアバッグスクイブ ●オーディオ コア・タイプはトロイダルコア・タイプとくらべて小型である ています。電装機器の誤動作111を防ぐために、輻射ノイズを に、 1つの基板に多数のコモンモードフィルタが搭載されるよ 抑制するEMI対策(エミッション対策)と、侵入ノイズに対する うになり、 さらなる小型化を要求されるようなりました。この 耐性を高めるEMS対策(イミュニティ対策)が求められます。 こ 市場要求に応えて開発したのがACT1210シリーズです。 ●テレビ (点火装置) タからのサージノイズなど、 さまざまなノイズの発生源となっ ●カーナビゲーション など など 0 ことを特長としますが、 自動車の電子制御の高機能化ととも 図3 小型化とともに低抵抗化を実現したTDKのソリューション Rm:磁気抵抗 L:インダクタンス N:巻数 ℓ:磁路長 μ:透磁率 S:コアの断面積 ● コイルのインダクタンス(L) が大きいほど、磁気抵抗(Rm)は 低くなる。 ● 透磁率(μ)が高いほど、 磁気 抵抗は低くなる。 200 180 160 新製品:ACT1210シリーズ サイズ:L4.5×W3.2×T2.8mm サイズ:L3.2×W2.5×T2.4mm 《小型化》 実装面積 約44% 容積 約50%削減 Current (mA) 140 従来品:ACT45Bシリーズ 120 100 《新コア材料の開発》 高透磁率の新開発フェラ イトをコア材に採用。 60 20 0 10 《独自構造の採用》 継線接合部を下部に配置し、プ レートコアとドラムコアの接 触面積を広く確保。 独自構造と新フェライト材により小型化を達成 モードフィルタにおいては、 一般的に小型化を図ると、 ドラム TDKの新製品ACT1210シリーズは、 4532形状(4.5× コアとプレートコアの接触面積が狭くなるので、 インダクタン 3.2mm)の従来製品ACT45Bシリーズの実装面積を約44%、 スも低下し、 磁気抵抗が高まってしまいます。 容積を約50%削減した3225形状(3.2×2.5mm)のコモンモー そこで、 TDKではドラムコアとプレートコアの接触面積を広 ドフィルタです。しかし、単に形状を小型化するだけではコモ くするために、 継線接合部の位置に着目しました。 継線接合部 ンモードフィルタとしての特性は低下してしまいます。 そこ は従来製品ではプレートコアとドラムコアの間に配置されて で、TDKでは小型化と高特性の確保を両立させるために、 構造 いましたが、 これをドラムコア下部へ移すことによって接触面 面と材料面から新たな技術を投入しました(図3)。 積を拡大させ、 小型化と低磁気抵抗化を両立させました。 まず、低磁気抵抗化を図るために従来製品と異なる独自構造 また、 磁気抵抗はフェライトのコア材料の透磁率に反比例 を採用しました。磁気抵抗とは電気回路における電気抵抗に対 します。 つまり、 透磁率が高いほど、 磁気抵抗は低くなります。 応するもので、磁気回路(磁路)における磁束の通りにくくさを TDKでは先進の材料技術により透磁率を高めた新フェライト 表します。磁気抵抗はコイルの巻数の2乗に比例し、インダク 材を開発し、 構造面の工夫とともに低磁気抵抗化を達成しまし タンスに反比例します。つまり、インダクタンスが大きいほど、 た。 磁気抵抗は低くなります。しかし、ドラムコア・タイプのコモン 20151211 2 80 40 小型化とともに低磁気 抵抗化を実現して、高 いコモンモードインダ クタンスを確保。 20 10 輻射ノイズを抑制する。 侵入ノイズに対する耐性を高める。 してからプレートコアを取り付けたタイプがあります。 ドラム ●カメラ ●エアバッグ 40 Electromagnetic Compatibility (高速)やFlexRay車載LANにおいて、 こうしたノイ (電磁両立性・電磁適合性) Level (dBuV/m) (CAN、 LINなど) 図4 ACT1210シリーズの輻射ノイズ(エミッション)試験 図5 BCI試験(イミュニティ)におけるACT1210シリーズの効果 Rm:磁気抵抗 L:インダクタンス N:巻数 ℓ:磁路長 μ:透磁率 S:コアの断面積 40 200 180 160 新製品:ACT1210シリーズ 140 Current (mA) Level (dBuV/m) 30 120 20 100 サイズ:L3.2×W2.5×T2.4mm gnetic %ility ュニティ問題) 減 10 《新コア材料の開発》 高透磁率の新開発フェラ イトをコア材に採用。 0 る耐性を高める。 磁気 て、高 ンダ 50 80 60 40 Through ACT1210510-2P CISPR Class5 QP No CMF ACT1210-510-2P 20 0 10 100 50 1000 小型化とともに低磁気 Frequency (MHz) 100 Frequency (MHz) 抵抗化を実現して、高 いコモンモードインダ クタンスを確保。 1000 《独自構造の採用》 継線接合部を下部に配置し、 プ レートコアとドラムコアの接 まとめ触面積を広く確保。 したカーコネクティビティの拡大が見込まれており、 EMC対 ACT1210シリーズの輻射ノイズ試験(CISPR25 Class5) 策はますます重要になっています。 また、 過酷な条件で使われ データを図4に示します。ACTシリーズの装着により、輻射 る車載電子部品では、 一般の電子機器とくらべて、 はるかにす ノイズは限度値(QP)以下に抑えられています。図5は車載電装 ぐれた耐振動性、 耐衝撃性、 耐熱性などが求められます。 TDKの 機器に接続されたハーネスに強い電磁ノイズが誘起された際 車載LAN用コモンモードフィルタACT1210シリーズは、 先進 の耐性を評価するBCI試験のデータです。こちらも、きわめて の自動巻線システムの導入などにより、 高安定性・高信頼性も 安定した特性を示しています。 特長としています。 テレマティクスの進展とともに、今後、無線通信技術を利用 200 180 主な特長 ・用途・仕様・電気的特性 160 140 Current (mA) 《主な特長》 120 ● 独自のコア構造と新開発フェライト材の採用、 および高精度自動巻線シ 100 ステムなどにより、 小型化と低磁気抵抗化(高コモンモードインダクタンス 80 化)を実現 60 ● エンジンルームの過酷環境など、 広い使用温度範囲に対応(-55~ No CMF 40 ACT1210-510-2P +150℃) 20 ● 高耐熱ワイヤの採用によるすぐれた耐熱性、 高精度自動巻線システムに 0 よる高安定性 ・高信頼性 10 100 1000 《主な用途》 CAN、FlexRayなどの車載LANシステム用コモンモードフィルタ Frequency (MHz) 《主な仕様》 製品名 コモンモードインピーダンス at 10MHz[Ω]min. コモンモードインダクタンス at 100kHz[μH]+50/30% 直流抵抗[Ω]max. 定格電流DC[A]max. ACT1210-110 300 11 0.4 0.30 ACT1210-220 500 22 0.5 0.25 ACT1210-510 1000 51 0.7 0.20 ACT1210-101 2200 100 1.5 0.15 20151211 3
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