夏場の作業能率改善対策事業

夏場の作業能率改善対策事業
1 ねらい
みかん園等における夏場の炎天下での防除服を着込んでの薬剤散布作業、草刈作業、また、園芸ハウス内の作業な
ど、農作業の現場では、過酷な高温環境下での重負荷作業が当然のように行われている。
しかし、そのような過酷な環境のもとでの作業では、能率は悪く、体温上昇による脱水症状や熱痙攣などを引き起こ
し、命にもかかわる重大な事態を招きかねない。
そこで、このような過酷な作業環境を改善し、作業能率の向上を図るため、(株)空調服が開発した空調服の作業改善
効果を確認し、導入の可能性を検証した。
2 取り組みのポイントと成果
(1)
空調服の概要
① フード付き、小型ファン付きで、養蜂農家や電柱作業員の使用事例はある。
② 内蔵されたファンにより、大量の外気を体と平行に流し、かいた汗を瞬時に蒸発させる構造になっている。
③ (株)空調服=埼玉県戸田市に本社があり、中国で縫製作業を委託して行っている。
・空調服
・空調服
(2)
①
②
取り組み状況
5/25に発注し、6月上旬に納品、24戸で調査を開始した。
調査内容は、作業時間、作業内容、天候、評価点(5段階)、未着時評価(5段階)及び改善点等作業者の感覚
的なもの及び服内温度・湿度、外気温度・湿度、心拍数、不快指数とした。
(3)
①
結果
通常の作業服と空調服による作業時の服内湿度を比較すると、通常の作業服では80~100%近い湿度に達す
るのに対して、空調服による作業では、85%以下に抑えられる(表ー1)。
作業月日
7月20日
7月26日
7月28日
8月3日
8月3日
8月18日
表ー1 服内の湿度比較
空調服
作業時の
服内湿度
外気湿度
(A)
(B)
60~70
47~53
75~77
57~59
75~82
70~73
78~82
58~62
70~80
55~60
85
70~80
(A)-(B)
服内湿度
(A)
15
18
7
20
18
10
80~99
90~99
90~99
80~98
80~99
80~99
単位:%
通常服
作業時の
外気湿度
(B)
55~65
60~75
77~80
55~75
60~65
70
(A)-(B)
30
27
16
24
27
20
* 8月3日の作業は、上段が午前、下段が午後
* (A) - (B)は温度、湿度共に平均値で試算
②
③
作業服内の湿度と外気湿度の差を比較すると、通常の作業服では概ね20~30%あるのに対して空調服では概
ね10~20%以内に抑えられている(表ー1)。
作業服内の温度と外気温度との差を比較すると、通常の作業服の方が外気温度との差が大きく、高くなる一
方、空調服は外気温度と同程度かやや低くなる傾向が見られる(表ー2)。
作業月日
7月20日
7月26日
7月28日
8月3日
8月3日
8月18日
④
表ー2 服内の温度比較
空調服
服内温度
作業時の
(A)
外気温度(B)
33~35
33~35
33
33
30~31
30
30~31
32~35
31~33
33~35
30~32
30~32
②
③
(5)
①
②
③
通常服(A)
0
0
0.5
-2
-2
0
33~37
33~35
31~32
32~35
30~32
30~32
(A)-(B)
4
3
3.5
1
-1
0
不快指数を比較すると、通常の作業時の不快指数は概ね、80~100近くになるのに対して、空調服を着用した
場合には、60~85程度まで下がる。
作業月日
7月20日
7月26日
7月28日
8月3日
8月3日
8月18日
(4)
①
(A)-(B)
単位:℃
通常服
作業時の
外気温度(B)
29~33
30~32
27~29
30~35
32
30~32
表ー3 作業時の不快指数の比較
空調服
60~70
85~87
83~84
78~82
85
85
通常服
80~99
90
87~88
80~98
85~90
90
成果
この空調服は、左右の腰部に充電式電池で動く2基の小型ファンが取り付けられているため、服中に外気を取
り込み、汗を蒸発させる気化熱で体を冷やす効果がある。
このため、調査結果にあるような成績となり、実際、作業に従事した人達の評価は高く、空調服の着用により、
作業能率は相当程度改善される見込みがある。
調査成績が良好であったことから、既に、当三ケ日地域では50着の追加発注がなされたとのことである。また、
この情報を得た他の地区からも発注があったとのことである。
改善点
SS(スピードスプレアー)による防除作業時、腰部のファンが邪魔になるので、取り付け場所の改善を発注もと
に要求した。
又、ファン作動時に、ラジオにノイズが発生するため、併せて検討を要請した。
埼玉県の会社は中小企業で、中国での委託生産のため、大量発注には現状応じられない状況とのことで、今
後の会社側の体制整備が求められる。