森林植物の交配様式と更新過程およびそれらの

森林遺伝育種 第 4 巻(2015)
【第 2 回森林遺伝育種学会奨励賞受賞研究】
森林植物の交配様式と更新過程およびそれらの保全に関する研究
木 村 恵 *,1
のクローン解析を行うことで、スギのクローン生産性
には環境要因と遺伝的要因の両方が影響しているこ
とを明らかにした(Kimura et al. 2013a)
。さらに、この
研究成果を発展させることで長野県の戸隠神社奥社
社叢に成育するスギの遺伝解析を行い、現存の文献情
報では抑えきれない森林利用の過程を明らかにした
(木村ら 2013)
。この他にも外来樹種ニセアカシアな
ど多様な植物種を対象に研究を行ってきたが(例えば
Kimura et al. 2013b)
、本稿では先に述べたオニグルミ
の繁殖様式とスギの更新過程に関る成果について詳
しく紹介したい。
はじめに
森林資源の持続的な利用と長期的な保存を進める
には森林を構成する樹木の交配様式と更新過程を
明らかにすることが重要である。種子植物の多くは
更新に関る繁殖様式として、種子繁殖に代表される
有性生殖(sexual reproduction)と栄養繁殖(vegetative
reproduction)を行うことが知られており、栄養繁殖を
行う植物はクローナル植物と呼ばれ、温帯域に生育す
る植物の約7割を占める(van Groenendael and de Kroon
1990)
。森林の主要な構成種である樹種もまた栄養繁
殖として萌芽や伏条などのクローナル成長を行うた
め、個体性の判別が難しく更新過程を明らかにする
ことは難しい。また、樹木は大型で長命なため、有性
生殖によって生産された種子の品質に関る、自殖率
や送粉範囲などを直接観察することも困難である。
1990年代以降、マイクロサテライトマーカー(Simple
sequence repeat、SSR)などに代表されるDNAマーカー
を活用することによって、直接的な観察だけでは調べ
ることが困難であった交配様式や栄養繁殖による更
新過程の実態など、樹木の繁殖に関する様々な現象が
明らかになってきた(津村 2012)
。
私自身も野外での経年的な調査に加えて、これらの
パワフルなDNAマーカーを用いることで森林植物の
生活史を明らかにしてきた。例えば、河畔性樹木のオ
ニグルミにおいて、集団内に開花タイミングの異なる
2つのタイプが存在し、相補的に交配するという特異
な開花システムを明らかにした(Kimura et al. 2003)
。
さらにDNAマーカーを用いた花粉流動解析により、
オニグルミの密度が低い集団ではタイプ内交配や自
殖のようなイレギュラーな交配が生じることを明ら
かにし、生息域の断片化が個体群の維持にとって脅威
となる可能性を示した(Kimura et al. 2012)
。
最近ではスギの更新過程に着目し、複数の天然スギ
河畔性樹木オニグルミの繁殖様式に関わる研究
近年、河畔林は人為的な攪乱により分断化と消失が
進んでいる。様々な公益的機能を有する河畔林生態系
について保全方法や管理方法を確立するためには、基
礎情報として河畔林構成樹種の生活史を明らかにす
る必要がある。大学院に進学したばかりの私は、主要
な河畔林の構成樹種としてオニグルミに着目し、その
種子サイズの決定要因を探るというテーマで修士論
文を開始した。オニグルミは雌花と雄花をつける雌雄
異花同株植物である。開花や受粉のタイミングといっ
た開花フェノロジーに焦点を当て観察を開始したが、
これが簡単にはいかなかった。側芽として着生する雄
花は開花前であっても容易に見分けられるが、雌花は
頂芽の葉に包まれているため、展葉するまでわからな
い。しかもオニグルミの枝振りなどほとんどみたこと
が無い状態でのスタートである。半ば博打のような気
分でマーキングした枝の観察を続けていた。雪解け後
の5月、次々に展葉が始まり予想していなかったこと
が起こった。マーキングしていた半分の個体が雄花だ
けを開花させ、残りの半分の個体が雌花だけを開花さ
* E-mail: [email protected]
1きむら めぐみ 森林総合研究所林木育種センター
59
森林遺伝育種 第 4 巻(2015)
せたのだ(図−1)
。興奮した私は研究室のメンバーに
れている(Gleeson 1982)
。ただし、集団内での交配は
基本的には開花タイプ間でのみ生じるため、優性ホモ
「図鑑には雌雄異花同株植物って書いてあるけど、実
際には雌雄異株植物のようです!」と報告した。しか
(AA)は生じず、雌性先熟個体はヘテロ(Aa)であると
し、2週間もすると更に奇妙なことが起こった。最初
期待される。さらにヘテロの雌性先熟個体と劣性ホモ
は雄花を開花させていた個体でも雌花が成長し、次々
の雄性先熟個体との交配から生じる次世代の開花タ
に開花し始めた。同じく最初は雌花を開花させていた
イプの比率は1:1となる。調査を行ったオニグルミ集
団においても、ふたつの開花タイプはほぼ同じ頻度で
個体も雄花を伸長し開花した(図−1)
。研究室のメン
バーには「やっぱり図鑑の通りオニグルミは雌雄異花
みられており、この予測を支持していた。
同株植物でした。
」とあっさり前言撤回するも、この
このように、ヘテロダイコガミーは実に良くできた
開花様式のように思われるが、一方で1回の開花イベ
不思議な現象に心を奪われ、研究のテーマを種子サイ
ズの決定要因から繁殖様式の解明にシフトして調査
ントで交配相手を集団内の半分の個体に限定してい
を進めることにした。
るというリスクもある。この開花様式は集団内の繁殖
オニグルミでみられたように、集団内に雌性先熟個
個体数が少ない場合においても機能するのであろう
体と雄性先熟個体のふたつの開花タイプが存在する
か。そこで、開花個体の密度が少ない調査地おいてマ
繁殖様式はヘテロダイコガミーと呼ばれ、様々な分類
イクロサテライトマーカーを用いた種子の親子解析
群で報告されている(Renner 2001)
。2年にわたる詳細
を行うことによって、実際に種子生産に寄与している
な野外調査から、オニグルミは雌花と雄花の開花時
送粉について調べた。その結果、個体群密度の低い集
期をずらすことで自家受粉や同じ開花タイプ同士の
団であっても開花タイプ間での交配が卓越しており、
交配を回避し、異なる開花タイプ間で相補的に開花す
効率的に他殖を行っていることがわかった(図−2)
。
ることで、他殖を行っていると考えられた。また、開
また、送粉距離に着目すると基本的には近距離交配が
花タイプは一組の対立遺伝子で決定していると考え
卓越していることもわかった。しかし、頻度は少ない
られており、劣性ホモ(aa)の場合は雄性先熟個体に、 ものの、個体群密度が低下すると自殖やタイプ内交配
優性の場合(AA,Aa)は雌性先熟個体になると考えら
といったイレギュラーな交配も生じていることが観
察された。これの結果は、繁殖可能な個体数を制限す
るような生息域の断片化はオニグルミ個体群の維持
にとって脅威となる可能性を示している。
図−2 低密度のオニグルミ集団における交配様式の
内訳。Kimura et al. 2012を改変。
スギ天然林における伏条繁殖のパターンと
遺伝要因と環境要因の影響
図−1 2000年の宮城県鬼首におけるオニグルミ19個
体の開花期間。数字とボックスは個体を、黒線は
雌花序、白線は雄花序を示す。Kimura et al. 2003を
改変。
スギ(Cryptomeria japonica)は風媒、風散布の針葉
60
森林遺伝育種 第 4 巻(2015)
樹で、日本で最も重要な林業樹種のひとつである。そ
の天然林は青森県鯵ヶ沢から鹿児島県屋久島まで広
く多様な環境下に生育している。当初、私たちは日
本各地のスギ天然林の存続の可能性を明らかにする
ため、林分全体を対象とした遺伝的多様性の評価と
調査枠を設定し毎木調査による林分構造と遺伝構造
を調査していた。道なき道を超えてたどり着いた先
で、天然スギの大径木が雄大に生育する様は圧巻で
ある。15 m の測管の先に鎌をくくりつけ、DNA サン
プル用に針葉を採取する。0.25 ha の調査区を設定し、
その中に生育する全ての幹(ラメット)から針葉を
採取し、遺伝構造を調べるサンプルとした。このよ
うな調査を秋田から徳島までのスギ天然林 13 集団
で行った。ラメット数の平均値は 67.4 ラメットで、
最少で 24 ラメット(徳島木頭)
、最多で 106 ラメット
(島根匹見 1)であった。核マイクロサテライトマー
カー 8 遺伝子座(Cjg0077,Cjs0333,CS1219,CS1525,
CS1364,CS1579,CS2169,Cjs0520;Moriguchi et al.
2003;Tani et al. 2004)を用いた遺伝構造解析の結果を
見てみると、このうち10集団で複数の幹が同じ遺伝
子型(ジェネット)を示すこと、つまりクローナル繁
殖が生じていることがわかった。また、同じ遺伝子型
を示したラメットは比較的サイズが小さく、集中して
分布していたことから、伏条や萌芽などによって更新
したものだと考えられた。クローナル繁殖は植物の個
体群動態と遺伝構造を特徴付ける重要な要因である。
そこで私たちはスギ天然林のクローナル繁殖に着目
して解析を進めることにした。
これまでも伏条によるスギのクローナル繁殖は高
標高(Taira et al. 1997;Moriguchi et al. 2001)や多雪地
帯(Hirayama and Sakimoto 2008;Shimizu et al. 2002)な
どで報告されていたが、今回の調査では解析した13
集団のうち10集団で観察された。つまり、スギ天然林
においてクローナル繁殖による更新は一般的な現象
であるといえる。しかし、クローナル繁殖の頻度は集
団によって異なっており、調査区内に生育する半分以
上のラメットがクローナル繁殖によって更新してい
る集団もあれば(図−3a)
、クローナル繁殖が全くみら
れない集団もみられた(図−3b)
。
こうしたクローナル繁殖の頻度の違いはなぜ生じ
るのだろうか。まず、クローナル繁殖を行うかどうか
は、生育地の環境よって変化すると考えられる。例え
ば積雪が多い場所では雪圧で幹や枝が地面に押し付
けられて、クローナル繁殖が生じやすいかもしれな
い。しかし、積雪量が異なるほど地理的に離れてい
図−3 スギ天然林におけるラメットとジェネット
の位置図。
(a)島根匹見1、
(b)徳島海陽。カッ
コ内の数値はクローナル繁殖によって生じたラ
メットの割合を、円のサイズは胸高断面積(BA)
を示す。異なる色かつ異なるシンボルはそれぞ
れ異なるジェネットを、黒点はクローナル繁殖
のみられなかったラメットを示す。Kimura et al.
2013を改変。
る集団はそもそも遺伝的にも異なる遺伝グループに
属していて、伏条のしやすさも違うとも考えられる。
そこでまず、屋久島を除く全国のスギ天然林36集団
について遺伝子型を元にStructure解析(Pritchard et al.
2000;Falush et al. 2003;Earl and vonHoldt 2012)を 行
うと、天然スギ集団は北日本型、日本海型、太平洋型
の3つの遺伝グループに分かれることがわかった(K
= 3)
。次にクローナル繁殖の頻度を調べた13集団に属
する全てのジェネットについて、遺伝グループの要
素の組成(Q値)を計算した。ジェネットごとの太平
洋型の要素(Q 太平洋値)を遺伝要因として、メッシュ
気候値(気象庁 2002)から抽出した集団の積雪量を環
境要因として着目し、伏条繁殖の頻度に与える影響
を一般化線形混合モデルによって解析した。具体的
には説明変数に環境要因(積雪深)
、遺伝要因(Q 太平
値)
、さらに個体サイズ
(胸高断面積合計:BA)
を
洋
用い、目的変数に各ジェネットが伏条繁殖するか否か
とジェネットあたりのラメット数の2項目を用いて一
般化線形混合モデルによりモデル選択を行った。その
結果、伏条するか否かにはQ 太平洋値、積雪深との交互
作用、BAが選択され、積雪の多い地域では個体サイ
ズが小さく、太平洋側要素の少ないジェネットほど伏
条を行うという結果が得られた。またジェネットあた
りのラメット数はBAが小さいほど増加する傾向がみ
今回検出された遺伝グループはその地域環境に適応
61
森林遺伝育種 第 4 巻(2015)
る(稲垣ら 2004)社叢林が保有するこれらの多面的機
能を高めるためには、より自然林に近い形で維持・管
理することが望ましいが(坂本 1999;Nakamura et al.
2005)
、自然科学的な見地によって成立要因を検討さ
れた例は限られている(例えば金田 2009)
。そこで本
研究では戸隠神社社叢に生育するスギの保護・管理
の基礎的なデータを得るために林分構造と遺伝的多
様性・特性を調べ、その成立要因について考察した。
参道に沿って500 m × 100 mのプロットを設定し、
プロット内に生育する胸高直径3 cm以上のスギにつ
いて位置と胸高直径を調べたところ、直径階分布は
二山型を示した(図−4)
。この結果から、多くの個体
は限られた時期の植林によって成立しており、現在の
樹高成長量は低く、今後は補植が必要になると考えら
れた。前述の研究と同じ核マイクロサテライトマー
カー 8遺伝子座を用いて遺伝解析を行ったところ、解
析した60ラメットは21ジェネットで構成され、この
うち5ジェネットは複数のラメットで構成された。10
m以上離れたラメットであっても同一のジェネット
に属していたことから、挿し木による植林の可能性
が示された。また、解析したジェネットごとのラメッ
ト数には偏りがあることから、特定のジェネットの
挿し木定着率が高かった可能性が考えられる。さら
に周囲の神社の社叢林のスギ(9箇所20幹)と長野県
の在来挿し木品種クマスギ(60幹)を加えて血縁解
析(Colony2.0.3.3,Wang 2004;Wang and Santure 2009;
Jones and Wang 2010)を行ったところ、奥社参道内、参
道と周囲の社叢林、参道とクマスギとで血縁関係(親
してきた長い歴史を反映している可能性が考えられ
る。CAPSマーカーやSNPマーカーを用いた先行研究
においても、全国の天然林は太平洋側と日本海側の遺
伝グループに分かれる結果が示されており、それぞれ
の局所環境に適応してきた可能性が示唆されている
(Takahashi et al. 2005;Tsumura et al. 2007;Tsumura et al.
2012)
。例えば、北日本型、日本海型がみられる地域に
おいて、氷期のような厳しい環境下で個体群を維持す
るための重要な更新様式として伏条が機能してきた
のかもしれない。このように、長い歴史の過程で生じ
た環境適応の可能性を示した結果は、今後の保護管理
や育種開発において活用が期待される成果である。
戸隠神社奥社社叢林に生育するスギの遺伝的
多様性と遺伝的特性
戸隠奥社スギ並木を守る会(以下、
「守る会」
)の方
から、戸隠神社奥社参道のスギ並木の遺伝解析につい
て問い合わせをいただいたのは、上記の調査と解析を
進めている最中だった。守る会の方々は、貴重な文化
遺産であり観光資源でもある奥社参道のスギ並木の
景観を維持するため、社叢林の毎木調査を行い、倒木
によって生じた隙間に補植を進めていこう模索して
いる有志の団体である。スギの生態に詳しい研究者を
呼んでは勉強会を開催し、今後の管理について議論さ
れていた。その中で、補植用の苗を生産するためにス
ギ並木から選定した母樹が遺伝的に偏っていること
を懸念され、DNAマーカーを用いて評価出来ないか
との相談をうけたのである。当時、マイクロサテライ
トマーカーによって全国の天然林の多様性を評価し
ていた経緯から、私がお手伝いすることになった。守
る会の方々と解析を進めていくうちに、またもや「ク
ローナル繁殖」に関る興味深い結果が明らかになっ
た。そこで戸隠神社奥社スギ並木を含む戸隠地方の社
叢林の成立要因に注目し、新たな解析に舵を切ること
にした。
戸隠神社奥社参道のスギ並木のように、神社や仏閣
の境内に植栽、もしくは自生によって成立した林分
は社叢林や社寺林と呼ばれ、社殿再建用の用材源と
して、また地域住民にとって象徴的な森林として祭
事などの伝統・文化を支える場として活用されてき
た。近年ではこれらの森林が有する防災、環境調節機
能、オープンスペース、レクレーション、動植物のハ
ビタットなど様々な機能についても重要視されてい
図−4 戸隠神社奥社社叢林におけるスギの胸高直径
階分布。毎木調査区内における胸高直径3 cm以
上の全幹(617本、白抜き)と遺伝解析に用いた
幹(60本、グレー)
。木村ら(2013)を改変。
62
森林遺伝育種 第 4 巻(2015)
子、兄弟)が検出された。これら奥社参道のジェネッ
トにおける遺伝的多様性の指数は天然林と同程度だ
が、Neiの遺伝距離(DA,Nei et al. 1983)に基づく主座
標分析では天然林とは異なる特異な遺伝的特性を示
しており、限られた母樹からの苗木による創始者効果
の可能性が示された。
以上の結果を踏まえると、現在の奥社参道の社叢林
が保持する遺伝的多様性・特性を維持するには、挿し
木や血縁関係にある幹の重複を避けて母樹を選定し、
苗木を生産することが有効であると考えられる。ま
た、出現頻度は低いものの、600 m以上離れたラメッ
トや、直線で約3 km離れた異なる社叢に生育するラ
メットであっても同じ遺伝子型を示し、挿し木によっ
て長距離の移動を行ったと考えられるジェネットも
存在した。これらのラメットは社殿に近い象徴的なス
ギであることから、信仰的な理由で挿し木されたと考
えられる。戸隠神社社叢林の遺伝的多様性を維持する
には、歴史を反映するこれらの遺伝子型の保存も重要
であろう。戸隠神社社叢林の成立要因について調べた
これらの結果は、地域住民が古くから地域の森林を活
用してきた経緯を示しており、日本文化における森林
のあり方を考えさせる成果のひとつである。
高配頂きました森林遺伝育種学会の皆様に厚く御礼
申し上げます。また、こうして研究を続けてこられた
のは筑波大学の津村義彦教授はじめ森林総合研究所
森林遺伝研究領域のメンバー、東北大学の清和研二教
授、東京大学の練春蘭准教授、後藤晋准教授ほかここ
には書ききれない多くの方々のご指導、ご支援があっ
てのことです。この場をお借りして心より感謝申し上
げます。最後に、いつも励まし支えてくれる家族に心
より感謝したします。
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おわりに
基本的に固着性である植物にとって、交配と更新の
ステージは数少ない「動ける」ステージであるため、
その生活史は多様で進化的にも興味深い。今回紹介し
たオニグルミの交配様式やスギの更新過程に関する
研究のように、詳細な野外調査の結果から生じた疑問
や仮説が、DNAツールを用いることで解き明かされ
ていく過程は非常にエキサイティングである。これか
らも野を駆け、鎌とピペットを握り締めながら新たな
研究の成果を発信することで森林科学と林業・育種
の発展に貢献していきたいと考えている。
謝 辞
この度、第 2 回森林遺伝育種学会奨励賞を賜り、こ
れまでの研究が評価されたことを大変嬉しく思って
おります。これを励みに、今後さらに邁進したいと思
います。ご推薦下さいました森林総合研究所の永光輝
義室長、東北大学の陶山佳久准教授、選考にあたりご
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