「明石市水道事業の今後のあり方懇話会提言書(案)」(PDF:483KB)

明石市水道事業の今後のあり方懇話会提言書
(案)
平成 27 年 9 月
明石市水道事業の今後のあり方懇話会
目
次
頁
1.はじめに ............................................................................................................................ 1
2.明石市水道の現状と課題 ................................................................................................... 2
2.1 給水人口・給水量 ..................................................................................................... 2
2.2 水道施設 ................................................................................................................... 2
2.2.1 施設の配置 ......................................................................................................... 2
2.2.2 水源の状況 ......................................................................................................... 3
2.2.3 耐震化の状況 ..................................................................................................... 3
2.2.4 更新需要(施設や管路の更新費用) .................................................................. 4
2.3 組織・経営................................................................................................................ 4
2.3.1 組織体制 ............................................................................................................. 4
2.3.2 経営の状況 ......................................................................................................... 5
1)収益的収支・資本的収支 ...................................................................................... 5
2)水道料金 ............................................................................................................... 5
3)自己資本・企業債残高.......................................................................................... 6
2.4 課題のまとめ ............................................................................................................ 6
3.課題に対する方策の検討 ................................................................................................... 7
3.1 将来の水源及び施設配置について ............................................................................ 7
3.1.1 検討パターンの抽出・整理 ................................................................................ 7
1)将来の水源 ........................................................................................................... 7
2)将来の施設整備 .................................................................................................... 7
3)将来の施設配置(浄水場) .................................................................................. 8
3.1.2 検討結果 ............................................................................................................. 9
1)財政シミュレーションの結果 ............................................................................... 9
2)今後調整・検討すべき事項 ................................................................................ 10
3.2 将来の経営形態(事業展望)について ................................................................... 11
3.2.1 経営形態の種類 ................................................................................................ 11
3.2.2 明石市水道事業の求める姿 .............................................................................. 11
4. 今後のあり方(提言) ................................................................................................... 12
4.1 将来の水源に関することについて .......................................................................... 12
4.2 将来的な施設配置に関することについて ............................................................... 12
4.3 将来の事業展望に関することについて ................................................................... 13
4.4 その他について ...................................................................................................... 13
(資料 1)明石市水道事業の今後のあり方懇話会
委員名簿 ............................................ 14
(資料 2)明石市水道事業の今後のあり方懇話会
検討経緯 ............................................ 14
1.はじめに
「明石市水道事業の今後のあり方」懇話会は、明石市における水道事業の今後のあり方を
検討するために、学識経験者や水道関係団体、さらには公募で選ばれた市民からなる7名
により設置された。
平成 26 年 11 月 10 日に第1回懇話会を開催して以来、約1年にわたり、明石市における
水道事業の「将来の事業展望(経営手法・経営形態等)に関すること」、「将来の水源に関
すること」、「将来的な施設配置に関すること」を基本テーマに、明石市水道事業の現状と
課題、課題に対する解決策について、各委員がそれぞれの立場に基づいて様々な意見を出
し合った。本提言書は、その成果をとりまとめたものである。
近年、水道使用者の節水意識の高揚や節水型トイレを代表とする節水型水使用機器の普及
が進み、水需要の減少傾向が続く一方で、高度経済成長期以降に急速に整備された大量の
水道施設は、今後一斉に更新期を迎え、多額の更新費用が必要となる見込みであり、明石
市水道事業を取り巻く経営環境は益々厳しさを増していくことが予想される。
そうした中、市民の生活に欠かすことのできない水道水を将来においても安全・安心・安
定・低廉で送り続けることができるよう、この提言書が今後作成される経営戦略等へ十分
に反映されることを期待する。
平成 27 年
月
日
「明石市水道事業の今後のあり方」懇話会
1
委員一同
2.明石市水道の現状と課題
給水人口・給水量
2.1
明石市では、大久保地区など一部の地区で人口が増加しているものの、過去 10 年間(平
成 16~25 年度)における市内全域での給水人口をみると、290 千人~293 千人で推移し
ており、概ね横ばい傾向にある。一方で給水量(1 日平均給水量・1 日最大給水量)は、
明らかに右肩下がりで減少している。
今後 25 年の見通しは、老年人口が増加する一方で、生産年齢及び年少人口が減少する
と推定される。そして、生活様式の変化や節水型水使用機器の普及、ならびに大口水需
要者や各家庭の節水意識の高揚等に伴い給水量は今後も減少傾向を示すものと考えられ
る(図 2.1 参照)。
行政区域内人口(万人)
35.0
29.0
30.0
6.3 25.0
24.0
老年人口
(65歳以上)
20.0
8.5 生産年齢人口
(15~64歳)
15.0
18.7 10.0
年少人口
(0~14歳)
13.1 5.0
4.0 2.4 H22
H52
0.0
※行政区域内人口は、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計(コーホート要因法)による。
※1 日最大給水量は、用途別に時系列傾向分析等を用いて予測。
図 2.1 人口及び給水量の予測結果
2.2
水道施設
2.2.1
施設の配置
水(明石川)を水源とする
道からの浄水受水(県水)
P
魚住
浄水場
東部配水場
明石川取水場
(野々池・亀池)
西部
配水場
3つの浄水場と兵庫県営水
をもとに、3つの配水場と
中部配水場
県水
明石市は、地下水及び河川
配水
給水
配水
給水
P
P
鳥羽
浄水場
明石川
浄水場
地下水
地下水
魚住浄水場から配水し、給
水を行っている(図 2.2 参
照)。
配水
給水
地下水
図 2.2 明石市の水道施設配置
2
配水
給水
2.2.2
水源の状況
明石市水道における3つの水源は計画取水量でみると、おおむね 1/3 ずつとなってい
る(地下水 33,500m3/日、河川水 52,000m3/日、浄水受水 50,000m3/日)。
各水源について、原水水質の特性、取水の安定性及び製造コストの3点で現状と課題
を整理し、評価を行う。
【原水水質の特性】
・ 河川水…貯水池において富栄養化が進み藻類による水質悪化が生じている。また、
明石川上流の産廃処分場放流水の影響により、原水中の臭化物イオン濃度が非常
に高く、臭化物イオンを前駆物質として明石川浄水場のオゾン処理で生成される
臭素酸濃度が対策に苦慮するレベルにある。
・ 地下水…塩水化が著しく、鉄、マンガンの濃度も高い。
・ 県水…供給水質は、概ね良好で、カビ臭対策としては活性炭の投入を行っている。
【取水の安定性】
・ 河川水…貯水池(野々池、亀池)に貯めることで安定性を高めているが、産廃処
分場からの放流や河川工事等により、特に冬期は十分に取水できないことがある。
・ 地下水…塩水化抑制のため、取水量を現状程度に抑えることが望ましい。
・ 県水…渇水時には、開発しただけの水量を確保できないおそれがある。
【製造コスト(平成 25 年度)】
・ 河川水…112.97 円/m3、地下水…70.57 円/m3、県水…141.61 円/m3
(県水は購入費用+各種経費を含めた金額)
【
評
価
】
・ 河川水…今後原水水質が悪化するようであれば、より高度な浄水処理の導入が必
要となり、製造コストは上昇することが懸念される。
・ 地下水…比較的安価な製造コストで浄水処理ができるが、塩水化抑制のためには、
今後も取水量を現状程度に抑えていく必要がある。
・ 県水…製造コストが他の水源に比べて高いが、複数水源の一つとして保持すべき
である。
2.2.3
耐震化の状況
明石市では、震度 7~6 強を想定した内陸型地震(直下型地震)を想定しており、大
部分の施設が震度 7 の揺れを受ける可能性がある。
浄水場や配水場の耐震化については、診断結果をもとに継続的に補強工事等が行われ
ており、平成 27 年度で配水場の耐震化が完了する予定である。浄水場では、明石川浄
水場及び鳥羽浄水場の耐震化が必要であり、管路は、更新等に伴い順次耐震性の高い
管種へ布設替を進めているが、耐震適合管を含む耐震化率は 36.1%となっており、耐
震管への布設替を進めていく必要がある。
3
更新需要(施設や管路の更新費用)
2.2.4
明石市では、昭和 40 年代後半からの高度経済成長期に浄水場整備(鳥羽、魚住)や
管路整備が集中しており、その更新需要は、厚生労働省の「アセットマネジメント簡
易支援ツール(Ver.2.0)」を用いて試算すると、平成 46~60 年度にかけて需要が高ま
る見通しである(図 2.3 参照)。過去 10 年間(平成 16~25 年度)の投資額は、平均
14 億円/年であることから、今後は事業費が増加するものと考えられる。
25,000
更新需要(百万円)
20,000
※ 更新基準(更新サイ
クル)は、明石市独
自の基準や厚生労
働省「実使用年数に
基づく更新基準の設
定例」を参考にして
設定した。
※ 過去 10 年間の投資
水準(平均)は、平成
16~25 年度における
投資額(平均 14 億円
/年)をもとに、5 年分
に相当する 70 億円
( = 14 億 円 / 年 × 5
年)と設定した。
管路
機械・電気・計装
土木・建築
過去10年間の投資水準(平均)
15,000
10,000
5,000
0
(年度)
図 2.3 更新需要の試算結果
2.3
組織・経営
2.3.1
組織体制
明石市水道部は、4課8係3浄水場の体制で運営している。職員数は、事業経営の合
理化を目指し継続的に削減を
(人)
25
職員年齢構成(H26年4月1日現在)
20
15
10
5
0
行っており、平成 26 年 4 月現
熟練職員が多く、若年層の職
員が少ないことから、今後の
40~44
3
35~39
30~34
0
事務職員 12名
1
15
(人)
25
20
7
45~49
3
2
技術系を中心に 50 歳以上の
10
20
50~54
0
いる。職員の年齢構成では、
5
55~59
1
2
在の職員数は 63 名となって
0
9
10
3
0
25~29
1
20~24
1
技術・技能労務職員 51名
出典:平成26年度明石市水道事業概要
技術継承が円滑に進むか、現
51名のうち水道部専任の
技能労務職員は11名
在のサービス水準を維持でき
るかなどの課題があげられる
(図 2.4 参照)。
図 2.4 職員年齢構成
4
2.3.2
経営の状況
1)収益的収支・資本的収支
収益的収支は、給水量の減少に伴う収益の悪化により、近年収益的収入が減少傾向
にある。ただし、組織のスリム化や民間活力の活用など効率的な事業運営に努め収
益的支出を抑制することで利益を確保している。
資本的収支は、資本的収入の一つである企業債への依存度を抑え、近年大幅に減少
している(支出に対する不足分は自己資金から補填している)。資本的支出では、年
度毎の施設整備内容によって増減があり、16~32 億円で推移している。
2)水道料金
明石市の水道料金は、基本料金(水道メータの口径に準じた料金設定)及び従量料
金(使用水量が多くなるほど料金単価が高くなる逓増制の料金設定)の二部料金制
となっている。近隣都市との比較では図 2.5 に示すとおり、やや低額であり、使用水
量別の件数割合でみると、基本料金の支払のみとなる 10m3 以下が約 17%を占めて
いる。今後も核家族化の進展や独居老人の増加等により、使用水量の少ない世帯は
増加するものと考えられる。
また、他都市の事例として、水道の大口利用者(主に商業施設や工場など)が地下
水専用水道を設置し、水源を地下水に切替えるケースがある。明石市では地下水塩
水化の問題もあり、今のところそのような事例は見られないが、企業も国際競争の
激化等でコスト縮減により一層取り組んでおり、今後水道離れが起きる可能性もあ
る。
水道事業は、浄水処理施設や管路
水道料金の近隣都市比較
(家事用口径20mm 20m3/月当たり)
(円)
等を大量に保有する装置産業である
3,000
ため、一般的にみて経費に占める固
2,500
定費割合が高いという特徴がある。
2,310
2,330
2,400
2,360
1,500
水量部分で固定的経費を回収できて
いないこともあり従量料金における
1,000
逓増度も高く設定されている。今後
500
の水需要動向を踏まえると、長期的
0
2,470
2,530
2,000
2,000
現在の明石市の料金体系では、基本
2,400
1,330
明石市 神戸市 加古川市 高砂市 姫路市 三木市 宝塚市 西宮市 芦屋市
な視点で、今後の料金体系のあり方
(市町名)
についても検討すべきと考えられる。
出典:平成26年度 明石市水道事業概要、高砂市ホームページ
図 2.5 水道料金の近隣都市比較
5
3)自己資本・企業債残高
自己資本構成比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%であるかを示
す経営指標である。明石市では自己資本の確保に努め、平成 24 年度には 61.9%に達
している。また、企業債残高は、平成 19 年度から 2 年間、繰上償還制度を活用する
など借入金の償還を進めており、給水収益に占める企業債残高の割合は、近年大幅
に低減している。
このように、現状では健全な資本形成が行われているが、今後更新需要の増加に伴
い、資金需要の増加が予想される。
課題のまとめ
2.4
2.1~2.3 を整理した結果、今後の給水量減少や原水水質悪化、更新需要の増加などの諸
課題に対し、健全経営を維持していくためには、『水道の安全性、安定性(地震等の災害
時対応を含む)を確保しつつ、いかにコストを抑えるか(利用者の満足度を高めるか)』
という視点で対応方策を考えていくべきであり、特に課題となるのは、次の3点である。
このうち、“将来の水源”及び“将来の施設配置”は、検討内容が密接に関連することか
ら、3 章で総合的に検討を行うことにする(課題の整理結果を図 2.6 に示す)。
 将来の水源はどうあるべきか?…数百億円の再投資額となる明石川水源系統の資
産を存続させるのか。他の水源に切替えることはできないのか。
 将来の施設配置はどうあるべきか?…上記と同様に3つある浄水場を統廃合する
ことはできないのか。
 将来の経営形態(事業展望)はどうあるべきか?…官民連携や広域化などによって
業務の効率化を図ることはできないのか。
施設管理の担い
手となる技術系
職員の減少
給水量の減少
河川水取水への
不安
地下水塩水化
の抑制
県水受水コスト
が自己水製造
コストより割高
耐震化の推進
更新需要の増加
再投資額の試算結果
施設名
貯水池(野々池等)
再投資額(百万円)
金額
①のうち、法定耐用年 割合(%)
(H25現在価値)
数を超えたもの
①
②
②/①
6,265
4,030
64%
明石川浄水場
11,403
2,263
鳥羽浄水場
10,336
2,845
魚住浄水場
8,734
2,779
※更新需要の算定結果をもとに作成。浄水場には井戸を含む。
※”法定耐用年数を超えたもの”は、H26時点での結果。
20%
給水収益の
減少
今後の設備投資
のあり方
将来の水源は
どうあるべきか?
将来の施設配置は
どうあるべきか?
28%
32%
図 2.6 課題の整理結果
6
資金の
確保
サービス
水準の
維持
技術の
継承
将来の経営形態は
どうあるべきか?
3.課題に対する方策の検討
3.1
将来の水源及び施設配置について
3.1.1
検討パターンの抽出・整理
1)将来の水源
将来の水源としては、明石川取水を今後も継続する場合とともに、明石川取水を廃
止し、代替水源を新規に開拓する場合について検討を行う。
新規水源開拓としては、隣接する神戸市からの受水、用水供給事業者である阪神水
道企業団(阪水)からの受水、そして、現在受水している兵庫県営水道(県水)か
らの受水増量の3つが考えられる。このうち、実現可能性が低い神戸市からの新規
受水を除いた 2 案の検討を行うこととする。
①県水増量案
県水を新たに東部配水場で受水し、明石川の代替水源とする案である。この場合
の水源は、地下水及び県水となる。
②阪水受水案
阪水を新たに東部配水場で受水し、明石川の代替水源とする案である。この場合
の水源は、地下水、県水及び阪水となる。
2)将来の施設整備
新規水源開拓に関連する施設整備概要を以下に示す(老朽化等により更新する施設
や管路の費用は、図 2.3 に示す更新需要をもとに設定する)
。
①新規水源開拓に伴う整備(県水増量案)
神戸市の狩場台特 1 高区配水池から東部配水場までの受水管(約 11km)を整備
する必要がある。自然流下で送水可能であり、東部配水場からの配水量として
20,000m3/日受水する場合の水理計算を行うと、口径はφ450 以上必要となる。
②新規水源開拓に伴う整備(阪水受水案)
阪神水道企業団の施設から直接送水することを考えると、神戸市灘区篠原量水池
付近までの受水管整備(約 30km)が必要となるため、現実的な整備案ではない。
そこで、実現可能な方法として、神戸市の施設を共同利用する案を想定する。
これは、明石市として必要な受水量を阪神水道企業団から神戸市が一旦受水し、
神戸市内における既存の送配水ルート、現在整備中の緊急時連絡管(φ500)を経
由して明石市が必要量を受水するものである。途中、神戸市の所有する配水池や管
路を利用することから、一定の使用料を支払い、財産を共有する形で共同利用でき
7
るようにするものである。
③浄水場統廃合に伴う整備(阪水受水案・県水増量案の両案ともに必要)
明石川浄水場又は鳥羽浄水場廃止に伴う整備としては、明石川浄水場廃止時の導
水管整備(φ200×125m)、2浄水場いずれの廃止時に共通する浄水場間連絡管整
備(φ800×約 3,000m)及び送水ポンプ整備(送水量 15,430m3/日)が必要とな
る。
3)将来の施設配置(浄水場)
CASE1 は明石川からの取水を継続し、3浄水場すべてを存続させる場合とする。
CASE2~8 は浄水場の統廃合パターンによって表 3.1 の 10 パターンが考えられる。
廃止時期は、廃止対象である明石川及び鳥羽浄水場の減価償却がある程度終了する
年度が理想的である。固定資産台帳をもとに確認すると平成 46 年度頃であることか
ら、この平成 46 年度時点での給水量を確保できるかどうかという視点から検討可能
なパターンとして、CASE1~3、CASE4-1 及び CASE4-2 の5パターンに絞り込む。
※廃止時期(水源切替時期)は、平成 46 年度だけでなく、前倒しした場合として、
現在から 5 年後(平成 32 年度)及び 10 年後(平成 37 年度)も検討する。
表 3.1 浄水場の統廃合パターン(すべて)と検討対象の抽出結果
統廃合パターン
魚住
鳥羽
明石川
浄水場
浄水場
浄水場
供給可能量(m3/日)から
みて検討可能なパターン
CASE1
○
○
○
検討可能
124,560
CASE2
○
×
○
検討可能 88,760~92,560
CASE3
○
○
×
検討可能 88,760~92,560
CASE4
○
×
×
検討不可 73,330~77,130
備考
明石川取水継続ケース
CASE4-1
○
×
×
検討可能 88,760~92,560
明石川廃止後、鳥羽廃止
CASE4-2
○
×
×
検討可能 88,760~92,560
鳥羽廃止後、明石川廃止
CASE5
×
×
×
検討不可 50,000~53,800
CASE6
×
×
○
検討不可 65,430~69,230
ス
CASE7
×
○
×
検討不可 65,430~69,230
CASE8
×
○
○
検討不可 65,430~69,230
↑
H46給水量(83,751m3/日)
を確保できるか
ー
新
規
水
源
切
替
ケ
○・・・存続、×・・・廃止
8
3.1.2
検討結果
1)財政シミュレーションの結果
2 章で算出した水需要予測や更新需要をもとに、新規水源開拓や浄水場統廃合に伴
う更新需要削減及び新たな施設整備などを見込んで財政シミュレーションを行う。
結果は図 3.1 に示すとおりであり、ケース間の比較が容易となるように平成 71~75
年度の平均給水原価で整理を行った結果、最も水道使用者への負担を軽減でき、安
定供給が可能となる案は、CASE4-1 で阪水受水を早期実施(5 年後に水源切替)す
る案であった。
水源切替
(浄水場統廃合)
時期
H71~75平均給水原価(円/m3)
280
290
300
310
320
330
340
阪水受水 県水増量 阪水受水 県水増量 阪水受水 県水増量 阪水受水 県水増量
CASE4‐2
CASE4‐1
CASE3
CASE2
CA
SE
1
270
今後原水水質の悪化に
よってさらに給水原価が
増加する可能性あり
5年後
10年後
19年後
5年後
10年後
19年後
5年後
10年後
19年後
5年後
10年後
19年後
5年後
10年後
19年後
5年後
10年後
19年後
5年後
10年後
19年後
5年後
10年後
19年後
2 つ目の浄水場廃止は、
県水増量案が 31 年後(H58)、
阪水受水案が 27 年後(H54)
※実際の事業経営にあたっては、送配水施設等のダウンサイジングなどコスト縮減を図り、
給水原価の上昇を抑制する。
図 3.1 財政シミュレーションの結果(平成 71~75 年度の平均給水原価)
9
(財政シミュレーションの結果)
 明石川取水を継続する CASE1 に比べて、新規水源に切り替える CASE2~CASE4-2
の方が平均給水原価は減少する。
 その中でも明石川及び鳥羽の 2 浄水場を廃止する案は、大幅な更新需要削減が見込
まれることから、いずれか 1 つの浄水場を廃止する場合に比べて平均給水原価を大
幅に減少できる。
 県水増量案と阪水受水案の平均給水原価では、受水単価の違いで阪水受水案の方が
低くなる。
 水源切替時期が早いほど、平均給水原価は減少する(ただし、その差は大きくない)。
 シミュレーション結果の中で、平成 71~75 年度の平均給水原価が最も低くなるの
は、CASE4-1(明石川→鳥羽浄水場の順で廃止)で阪水受水に 5 年後切り替える場
合(CASE1 に比べて 49.4 円/m3 の削減)である。
最も水道使用者の負担を軽減でき、安定供給が可能となる案は、CASE4-1(明石川、
鳥羽の順で段階的に浄水場廃止)で明石川取水の代替水源として阪水受水を早期に実施
する案である。この案は水源のリスク分散と言った観点からも合理性がある。
2)今後調整・検討すべき事項
上記に示す最適案に沿って具体化を進める上では、今後次の点を調整・検討すべき
と考えられる。
(今後調整・検討すべき事項)
◇新規水源開拓について
 水資源開発基本計画(フルプラン)について、国土交通省等との協議が必要である。
 兵庫県南部地域広域的水道整備計画について兵庫県等との協議が必要である。
 阪神水道企業団と受水開始時期及び加入金について調整が必要である。
 阪神水道企業団からの受水方法(神戸市の施設共同化)が認められるか厚生労働省
等との協議が必要である。
 神戸市と共同施設利用に関する使用料について調整が必要である。
◇浄水場の統廃合について
 明石川浄水場又は鳥羽浄水場のどちらを優先的に廃止するかについては、コスト面
だけでなく、施設運用面を含めた検討(非常時の水融通を含む)が必要である。
 一時的に整備し、浄水場廃止時に除却する施設・管路については、水運用等を詳細
に検討することで不要となる場合も考えられるため、詳細な検討を行う必要がある。
10
3.2
将来の経営形態(事業展望)について
3.2.1
経営形態の種類
経営形態の種類については、厚生労働省が平成 16 年 6 月に公表した「水道ビジョン」
や平成 26 年 3 月に公表した「水道事業における官民連携に関する手引き」などをもと
に整理すると、次に示す形態が考えられる。
① 個別委託…従来からの業務委託
② 新たな広域化…事業統合を伴わない官官連携での業務効率化
③ 民間への委託範囲拡大(第三者委託、DBO/PFI)
④ 公設民営化(コンセッション)
…民間委託等による業務
⑤ 完全民営化
3.2.2
効率化の種類
明石市水道事業の求める姿
水道法第 1 条の趣旨に基づき、「安定した水道の提供」、「良質な水道の提供」、「適正
な料金での提供」という3つの観点から明石市水道事業への上記①~⑤に対する適用
可能性について評価を行う。
基本的に業務委託範囲を拡大することによって、民間事業者の工夫余地が増え、コ
スト削減が期待できるが、民間であるがゆえに、利益確保の追及が行き過ぎると、安
定性や水質面でリスクを伴うことが予想される。
水道は、市民生活を営むための土台となる重要なインフラであり、水道水に対する安
全性及びその責任を考えると、明石市が主体となって経営することが望ましい。した
がって、民間への委託範囲拡大については、第三者委託、DBO/PFI などの中でできる
ところから取組むべきと考える。
新たな広域化については、新規水源開拓に伴い、神戸市との施設共同化の可能性があ
る。その他でもできるところから導入検討を進めるべきである(表 3.2 参照)。
表 3.2 明石市水道事業への適用可能性(比較評価)
個別委託
公設民営化
民間への委託
(従来型業務 新たな広域化
(コンセッショ
範囲拡大
委託)
ン)
業務範囲
イメージ
完全民営化
官
官
民
民
安定した水道
の提供
安定性
大
安定性
中
良質な水道の
提供
リスク
小
リスク
大
適正な料金で
の提供
価格
高
価格
低
評価
○
○
(できる
ところから)
11
○
(できる
ところから)
×
×
4. 今後のあり方(提言)
本懇話会における審議結果として、懇話会設置要綱に掲げる4項目について、以下の5点
を提言する。これら提言を踏まえ、今後も『水道の安全性、安定性(地震等の災害時対応
を含む)を確保しつつ、いかにコストを抑えるか(利用者の満足度を高めるか)。』という
視点で、明石市水道事業が具体的な対応策に取り組むことを要望するとともに、本提言を
受けて、具体の計画を策定する際は、計画策定時の現状と本懇話会における想定に乖離が
ないか確認し、計画策定後も定期的にフォローアップすることを要望する。
4.1
将来の水源に関することについて
(新規水源の開拓)
明石川は、天候、季節による水量の変動があるほか、明石川上流の産廃処分場放流水の
影響もあり、安定取水に対する不安がある。現状では、高度浄水処理の導入や浄水処理
工程での常時水質監視を行っており、問題はないが、将来水質が悪化した場合、より高
度な浄水処理を行って、安全な水道水を供給する手立てを講じなければならなくなる。
このためには、多くの時間と費用が必要となることから、50 年先を見据えた水源の代替
案提示が必要である。一方で、地下水は塩水化対策としてだけでなく、水循環基本法に
基づく地下水保全対策として今後も揚水量を抑制すべきと考えられる。
そこで、本懇話会では、広域的な視点で明石川取水の代替水源となる新規水源の開拓に
ついて複数案を検討した結果、水源の多系統化に伴って取水停止リスクを分散でき、調
達コストを抑えることができる阪神水道企業団からの受水を早期実現できるように、今
後関係機関と調整を行うことを提言する。
4.2
将来的な施設配置に関することについて
(施設の統廃合)
今後の給水量減少に伴う給水収益の減少や老朽化施設の更新費用増加等を踏まえると、
現在ある3浄水場をすべて存続させることは難しい。本懇話会の検討では、今後 50 年間
の水需給からみて、2浄水場(明石川・鳥羽)の廃止まで可能であり、1浄水場よりも
2浄水場を廃止する場合の方が、コスト削減効果があることを確認することができた。
今後は、コスト削減効果だけでなく、施設運用面や災害時の水供給リスクの低下なども
勘案して、段階的な浄水場の統廃合を進めていくことを提言する。
(新たな広域化への取組み)
従来の事業統合を伴う広域化は、ハード及びソフトの全ての面でサービス水準をそろえ
る必要があることから、多大な労力を要し、各地でその取組みが行われているものの、
中々進展がないというのが実情である。新たな広域化は、従来の事業統合にとらわれず、
できるところから事業体間の連携を図り、業務効率化に資するものである。
12
今後は、新規水源開拓に伴う神戸市との施設共同化や災害時における他事業体との応援
協定締結など、柔軟な発想で新たな連携に取り組むことを提言する。
4.3
将来の事業展望に関することについて
(民間活力の活用)
半世紀先を見通すと、水道事業に携わる職員が不足することは確実である。したがって、
民間活力の活用範囲を拡大することは当然であるが、水道水に対する安全及びその責任
を考えると、明石市においては公設民営化(コンセッション)や完全民営化による事業
形態への変更を推進するよりも、あくまでモニタリングするための核(コア)となる技
術力(人材)を組織内に確保し、明石市水道事業と民間企業等の業務分担を明確にした
うえで、できるところから民間活力の活用範囲拡大について取り組むことを提言する。
なお、必ずしも民間だから官よりコストを削減できるわけではない点には留意すべきで
ある。民間の経営手法を研究し、官であってもコスト削減できる点を見つけ、経営改善
を図ることを提言する。
4.4
その他について
(人材の育成)
施設の統廃合、新たな広域化への取組み又は民間活力の活用などの背景に共通するのが、
職員数の減少と技術継承の課題である。平常時において、明石市水道事業の安定的・継
続的な運営を行うだけでなく、地震といった大規模災害時においても、迅速な対応によ
り、被害を最小限に抑え、早期復旧を図るためには、水道事業に習熟した人材が必要で
ある。そこで、今後も水道事業に習熟した人材を継続的・計画的に育成することを提言
する。
13
(資料 1)明石市水道事業の今後のあり方懇話会
委員名簿
(五十音順)
氏
名
所
安藤
正博
公募
大谷
恵理
公募
瓦田
檀
太賀四
和秀
兵庫県立大学
属
備
理事兼副学長
国立明石工業高等専門学校
座長
都市システム工学科
教授
西畑
彰夫
公認会計士
水田
美穂
公募
宮田
義範
公益社団法人
日本水道協会
総務部
(資料 2)明石市水道事業の今後のあり方懇話会
開催回数
平成 26 年 11 月 10 日
座長職務代理者
企画室長
検討経緯
開催日
議題
・
第1回
考
明石市水道事業の今後のあり方懇話会運営
要領について
・
明石市水道事業について(明石市水道事業概
要、明石市水道事業の現状と課題)
第2回
第3回
平成 27 年 2 月 5 日
平成 27 年 4 月 20 日
第4回
平成 27 年 7 月 14 日
第5回
平成 27 年 9 月 3 日
第6回
・
各委員から出た意見への回答
・
長期的な人口・給水量の見通し
・
長期的な更新需要と財政シミュレーション
・
水源に関する課題の整理と対応策の提示
・
各委員から出た意見への回答
・
水源のあり方について
・
長期的にみて望ましい経営形態について
・
各委員から出た意見への回答
・
財政シミュレーションの追加検討
・
提言書(案)のとりまとめ
・
提言書のとりまとめ
・
提言書の提出
※開催場所は、いずれも明石市役所分庁舎 3 階
14
313 会議室