病状に沿った胃がん外科治療の実際 -完全鏡視下手術から抗癌剤治療後の手術まで- 岐阜大学 腫瘍外科(消化器外科) 山口和也 『胃の手術を受けたらしい・・・』 『胃の手術を受けたらしいけど、元気やねぇ・・・』 『胃の手術を受けて、まだ入院中、長いねぇ・・・』 『お腹切らずに胃の手術をしたみたい・・・』 『手術受けずに薬の治療を・・・』 本日の内容 胃がん治療ガイドラインの解説 胃がんの治療を理解しようとするすべての方のために 1、 胃がんとは・・・ ・転移形式、病状 2、 胃がん手術とは・・・ 3、 腹腔鏡手術の 位置付けとその実際 4、 ステージごと の治療方針 1、 胃がんとは・・・ ・転移形式、病状 胃がんの深達度(根の深さ) がんは粘膜 から発生 粘膜 早期がん 腹腔鏡手術の適応 筋層 漿膜 胃がんの転移形式 肝転移 1,血行性転移 肝、肺、骨、脳 2,リンパ行性転移 胃周囲~大動脈周囲 リンパ節転移 3,播種性転移(腹膜播種) 腹腔洗浄細胞診 播種性転移 胃がんのリンパ節転移 胃癌取扱い規約:14版 ・N0:領域リンパ節に転移を認めない ・N1:領域リンパ節に1-2個の転移を認める ・N2:領域リンパ節に3-6個の転移を認める ・N3:領域リンパ節に7個以上の転移を認める 胃がんの標準手術 リンパ節の切除(=リンパ節郭清) 第2群リンパ節まで 胃がんの進行度 T1a(M)・b(SM) N0 N1 N2 N3 ⅠA ⅠB ⅡA ⅡB T2(MP) ⅠB ⅡA ⅡB ⅢA T3(SS) ⅡA ⅡB ⅢA ⅢB ⅢC T4a(SE) ⅡB ⅢA ⅢB ⅢC T4b(SI) ⅢB ⅢB ⅢC ⅢC 遠隔転移 Ⅳ Ⅳ Ⅳ 胃がん 切除 消化器外科 消化器内科 内視鏡下切除 高分化腺癌 粘膜癌 適応拡大・・・低分化腺癌 胃切除 術式 ・病変の部位・大きさ・・・・・幽門側胃切除、噴門側胃切除 胃全摘など ・アプローチ方法・・・・・通常開腹術、 腹腔鏡手術 2、 胃がん手術とは・・・ 胃がんの転移 ①リンパ節転移 手術で胃とともに切除 ②腹膜播種 ③肝転移 (他臓器転移) 化学療法 つまり、胃がん手術とは、 1、胃切除(胃腫瘍の切除) 2、リンパ節の切除(郭清) 3、再建(吻合) を目的としています。 消化器腫瘍手術とは・・・ 切除する側と残す側との境界を つける操作の繰り返し 開腹手術の場合、 ・膜、脂肪組織など→電気メス、結紮切離 ・動脈・静脈 →結紮切離 ・胃・十二指腸 →リニアステイプラー 腹腔鏡手術の場合・・・ ・膜、脂肪組織など→超音波凝固切開装置 =ハーモニック、LCS (電気メスヘラ、リガシュアー) ・動脈・静脈 →クリップ 超音波凝固切開装置 ・胃・十二指腸 →リニアステイプラー リンパ節郭清 :1群リンパ節 :2群リンパ節 定型手術 腫瘍 :3群リンパ節 リンパ節郭清 :1群リンパ節 :2群リンパ節 縮小手術 腫瘍 :3群リンパ節 胃がんの術式・再建-1 幽門側胃切除術 ビルロートⅠ法(Billroth Ⅰ法) ビルロートⅡ法(Billroth Ⅱ法) ルーワイ法(Roux-Y 法) 胃がんの術式・再建-2 胃全摘出術 ルーワイ法(Roux-Y 法) 器械吻合 胃がん治療の個別化 Stage Ⅰ 深達度 M、SM 内視鏡下粘膜下層剥離術 腹腔鏡下胃切除術 Stage Ⅱ、Ⅲ 深達度 MP~ 開腹胃切除術(腹腔鏡下胃切除術) ⇒術後補助化学療法(TS-1内服) Stage Ⅳ 化学療法 ⇒2剤・3剤併用療法、分子標的薬 化学療法が奏効した後の手術 腹腔鏡手術の 位置付けとその実際 深達度(根の深さ)の深い進行がん 通常の開腹手術 深達度(根の深さ)の浅い早期がん 低侵襲手術 ・ダメージの少ない手術 腹腔鏡手術 ・術後回復の早い手術 まずは・・・ 胃がん開腹手術の実際 通常の開腹手術 腹腔鏡手術 腹腔鏡手術の特徴 ①気腹・・・炭酸ガスにより操作空間を確保 ②拡大視効果 ③直径5mm・10mmの特殊な鉗子 ④さまざまな器械 超音波凝固切開装置、クリップ、圧排鈎、 自動縫合器 ポートの設置と気腹 ② ④ ①カメラ用ポートを留置 気腹(炭酸ガス) ③ ⑤ ②④直径5mmのポート ① ③⑤直径12mmのポート 病変のマーキング ポートの設置 頭側 臍 腹腔鏡下幽門側胃切除術 開始~十二指腸切離 膵上縁リンパ節郭清 ⑤ ② ⑥ ③④ ① 胃の主要血管の処理 ⇒ リンパ節郭清(切除) 腹腔鏡下幽門側胃切除術 胃切離~体外への摘出 小孔 再建・・・・・胃十二指腸吻合 リニアステイプラーによる体内吻合 リニアステイプラー 共通孔の閉鎖 腹腔鏡下幽門側胃切除術 出口側の切除 腹腔鏡下噴門側胃切除術 入口側の切除 腹腔鏡下胃全摘術 術後の創部 術直後 術後1ヶ月 再建・・・腹腔内の器械吻合 ↓ 完全鏡視下手術 心窩部(みぞおち)の小開腹 を行わない 腹腔鏡下胃切除術後の経過 ークリニカルパスー 術当日 1・・4 5・・7・・・10・・・12日 水分 食事 点滴 歩行 シャワー 退院 腹腔鏡手術=低侵襲手術 胃がんに対する完全鏡視下手術の評価 ・出血量:少ない ・排ガス日:早い ・血液検査上の炎症所見:軽い ・創部痛:軽い 患者さんにやさしい手術 胃がん治療の個別化 Stage Ⅰ 深達度 M、SM 内視鏡下粘膜下層剥離術 腹腔鏡下胃切除術 Stage Ⅱ、Ⅲ 深達度 MP~ 開腹胃切除術(腹腔鏡下胃切除術) ⇒術後補助化学療法(TS-1内服) Stage Ⅳ 化学療法 ⇒2剤・3剤併用療法、分子標的薬 化学療法が奏効した後の手術 Stage Ⅱ、Ⅲの胃がん・・・・・肉眼的に遺残なく切除 再発する可能性あり。 一旦再発すると、抗癌剤では治しきれない。 再発予防の抗癌剤治療 ACTS-GC 漿膜浸潤胃がん・StageⅡ・Ⅲの根治度B術後の補助化学療法 (無作為化第Ⅲ相試験) 5年生存率:70% 5年生存率:60% 2007 N Engl J Med 胃がんに対する胃切除術 胃の腫瘍、数十個のリンパ節 TS-1を1年間服用 病理検査=顕微鏡の検査 腫瘍の根の深さ(深達度)、リンパ節転移の有無・程度 最終診断:StageⅡ/Ⅲ 胃がん治療の個別化 Stage Ⅰ 深達度 M、SM 内視鏡下粘膜下層剥離術 腹腔鏡下胃切除術 Stage Ⅱ、Ⅲ 深達度 MP~ 開腹胃切除術(腹腔鏡下胃切除術) ⇒術後補助化学療法(TS-1内服) Stage Ⅳ 化学療法 ⇒2剤・3剤併用療法、分子標的薬 化学療法が奏効した後の手術 胃がんの進行度 T1a(M)・b(SM) N0 N1 N2 N3 ⅠA ⅠB ⅡA ⅡB T2(MP) ⅠB ⅡA ⅡB ⅢA T3(SS) ⅡA ⅡB ⅢA ⅢB ⅢC T4a(SE) ⅡB ⅢA ⅢB ⅢC T4b(SI) ⅢB ⅢB ⅢC ⅢC 遠隔転移 Ⅳ Ⅳ Ⅳ StageⅣの胃がん 肝転移・肺転移・腹膜播種・骨転移などの遠隔転移 手術では取りきれない、予後はきびしい 標準治療:薬による治療 ⇒ 抗がん剤 外来化学療法(短期間入院) StageⅣ胃がんに対する抗がん剤治療 TS-1(ゼローダ)+点滴 腫瘍制御率=80-90%、奏効率=30-50% 効果の持続期間に限界あり 抗がん剤で胃がんを治しきることはできない StageⅣ胃がんに対する集学的治療 抗がん剤治療 ⇒ 外科手術 ⇒ 抗がん剤治療 ・抗がん剤効果↑ ⇒ 遠隔転移↓↓↓ ・手術 ⇒ がんを遺残なく切除可能 治療成績の向上 病状に沿った胃がん外科治療 Stage Ⅰ 深達度 M、SM 腹腔鏡下胃切除術⇒抗がん剤なし Stage Ⅱ、Ⅲ 深達度 MP~ 開腹胃切除術(腹腔鏡下胃切除術) ⇒術後TS-1内服 Stage Ⅳ 抗がん剤治療:TS-1+点滴 外来化学療法 抗がん剤の効果↑ ⇒ 手術 『胃の手術を受けたらしい・・・』 『胃の手術を受けたらしいけど、元気やねぇ・・・』 『胃の手術を受けて、まだ入院中、長いねぇ・・・』 『お腹切らずに胃の手術をしたみたい・・・』 『手術受けずに薬の治療を・・・』 ご清聴ありがとうございました。
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