(PDFファイル 7.9 MB)2015年度版

2015
東京大学薬学部
大学院薬学系研究科への招待
ライフサイエンス研究のフロンティア
目 次
薬学部・薬学系研究科へようこそ--------------2
新しい薬学教育-------------------------------- -4
学部-----------------------------------------------5
大学院--------------------------------------------8
組織図------------------------------------------10
教室紹介----------------------------------------11
薬学部・薬学系研究科小史--------------------27
キャンパスライフ-------------------------------28
卒業・修了後の進路----------------------------30
若き先輩からのメッセージ-------------------32
薬学部・大学院薬学系研究科へ
ようこそ
皆さんは“薬学部”、
“大学院薬学系研究科”にどのようなイメージを持っているでしょうか。一般には「薬学部=薬
剤師を養成する学部」というイメージが強いと思いますが、伝統的に日本の薬学部は創薬科学 研究を行い、薬の専
門家を輩出してきており、その中でも東京大学薬学部は創薬科学 研究の中心的な役割を果たしてきました。世界的
に見ても創薬科学 研究に特化した学部はなく、世界の創薬科学 研究をリードしています。本冊子は東京大学薬学部
・大学院薬学系研究科における教育・研究を紹介しております。
つく
薬を創るためには、生命のしくみを知り、病気に
なる原因を明らかにしなければなりません。しかし
残念ながら、分子レベルから病態まですべての面に
おいて我々の知識は不十分であり、解明していかな
ければならないことがたくさんあります。生化学、分
子生物学、生理化学、発生学、遺伝学、免疫学など
の観点から生命現象を解明する必要があります。ま
た、薬を合成するためには合成化学や反応化学が
不可欠です。漢方薬を理解し、それを超えるものを
創り出すためには天然物化学が必要ですし、薬の
2
性状や生体との相互作用を分子レベルで解明する
には分析化学や物理化学が必須です。薬を体の目
的部位に到達させるためには、体内動態を解明し、
製剤設計が必要になりますし、薬の生体作用を明
らかにするために薬理学や毒性学が欠かせませ
ん。このように、基礎的な学問から応用的な学問ま
で、幅広い研究を集約する必要があります。また、
従来の学問体系では分類できないような境界領域
の研究も増えています。つまり、薬の創製はまさに
これら最先端科学の集大成といえます。
東京大学薬学部・大学院薬学系研究科は「医
薬品(薬)」という難易度が高く、かつ高い完成度
の要求される「物質科学」と「人間の健康」という
「生命活動の科学」の融合を探求する場としての
役割を果たしてきました。つまり、薬が創られるまで
の基礎研究に重点を置き、その専門家を養成する
ための教育に力を入れてきました。薬学部は講義
も実習もカリキュラムは盛り沢山ですが、薬の専門
家を養成するために必要なのです。さらには、医薬
品に関わる経済問題、薬剤師や国民に対する適切
な情報提供、薬学と経営学の視点をもったバイオ
ベンチャーの人材育成にも力を入れています。こう
した教育・研究を通じて実力を養った卒業生は、
大学や研究所、製薬企業、医療行政などの分野で
活躍しています。
このように、創薬に必要なほとんど全ての領域
このように、
創薬に必要なほとんど全ての領域
の研究をカバーし、
それぞれが先端的な研究を行っ
の研究をカバーし、
それぞれが先端的な研究を行っ
てきましたが、創薬科学に新しい方法論を確立し、
てきましたが、
創薬科学に新しい方法論を確立し、
また世界的な創薬競争の激化の渦中において、こ
また世界的な創薬競争の激化の渦中において、
こ
れまでの学問の枠組みに囚われない新しい境界分
れまでの学問の枠組みに囚われない新しい境界
野の研究領域を創成し、新しい発見を速やかに創
分野の研究領域を創成し、
新しい発見を速やかに
薬探索に応用していくことも必要です
。薬学系研究科が
創薬探索に応用していく
ことを薬学系研究科が中
中心になっ
て推進し
ま
した21世紀C
O
Eプロジェク
ェクト
ト・
・
心になって提案しました。21世紀COEプロジ
生命科学分野の研究課題「戦略的基礎創薬科
学」や、その後他研究科と共同で進められたグロー
バルCOEプロジェクトでは、これまでの研究資源を
結集して有機的な連係・学部内共同研究が推進さ
れる場として活かされています。また、これらのプロ
れました。また、博士課程教育リーディングプログラ
ジェクトへの大学院生や博士研究員の参加を通じ
ム
では、大学院生や博士研究員を若手創薬研究者
て若手創薬研究者を養成しています。各研究の詳
と
して養成しています。各研究の詳細については、
細については、ホームページ
(http://www.f.uホームページ
(http://www.f.u-tokyo.ac.jp)を参照し
tokyo.ac.jp)を参照して下さい。
て下さい。
薬学部は学部としては一番小さいですが、発表
学術論文数、輩出している人材、教育体制など内
容は傑出しています。大学院進学率は80%以上の
90
高率であり、卒業後は大学、国公立研究所、企業、
医療の現場など、国内は言うまでもなく外国におい
てもオピニオンリーダーとして活躍しています。小さ
な学部ならではの長所も沢山あります。家庭的な
雰囲気があり、学部としての結束力も強く、いろい
ろな問題について「皆で考え、皆で話し合う」体制
が整っています。教室間の共同研究も数多く行わ
れています。また、世界各国からの留学生を受け入
れており、海外との研究交流も盛んに行われてい
ます。三年生は講義も実習も全員が一緒に行うの
で、同級生としての繋がりが非常に深まります。先
輩、後輩それに教員と親しくなる機会も多く非常に
家族的な雰囲気といえます。スポーツも盛んです。
春には検見川で運動会、秋には戸田でボート大会、
それ以外にも教室対抗のサッカー、野球、バレーボ
ール、バスケットボールなど親睦を深めるのに大い
に役立っています。 薬剤師国家試験の受験資格が薬学部薬学科卒
薬剤師国家試験の受験資格が薬学部薬学科卒
業生だけに与えられており、高度な医療を支える一
業生に与えられており、高度な医療を支える一員と
員としての優秀な薬剤師の役割に期待が高まって
しての優秀な薬剤師の役割に期待が高まっていま
います。東京大学薬学部においても少数ではありま
す。東京大学薬学部においても少数ではあります
すがこのような人材の養成にも力を入れています。
がこのような人材の養成にも力を入れています。
3
平成 1 8 年度に新しい薬学教育がスタート
学校教育法が改正され、平成 18 年度より6年間を修業年限とする薬学部がスタートし、この課程を修めて卒業した
者に薬剤師国家試験受験資格が与えられることになりました。しかし、日本で独自に発展し、優れた薬の専門家を輩出
してきた4年制の薬学部の役割に配慮し、12 年間の時限措置として、4年制の薬学部の卒業生でも、大学院修士課程
を修了後に6年制課程と同等の医療薬学系の学科目および実務実習を履修すれば、薬剤師国家試験の受験資格が与えら
れることとなりました(いわゆる4+2+α制)。
東京大学薬学部においては、6年制の薬学科と4年制の薬科学科を併設し、従来の創薬基礎研究者養成だけでなく、
一部ですが高度な薬剤師の教育も行います。そして、平成 24 年度に設置した大学院博士後期課程薬科学専攻に、薬剤
師国家試験受験資格を得るための薬学科履修プログラムを設けています。
後
期
課
程
薬 科 学 専 攻 (50)
薬学
博士課程
9
8
7
←
薬学専攻
(10)
薬学科
履修
プログラム
(8以内)
←大学院薬学系研究科→
修 士 課 程
6
薬
薬 科 学 専 攻 (100)
薬学科
(8)
進学定数 第一段階 理二 (32) 第二段階 理科 (24)
理一・三 (16)
全科類 (8)
教 養 学 部
4
→←教養学部→
薬 学 部
5
部
薬 科 学 科 (72)
学
4
士
← 薬 学 博 士 課 程 →
2006
(平18)
← 薬 学 部 →←教養学部→
2008
(平20)
← 博 士 後 期 課 程 → ←修士課程→
2010
(平22)
← 大 学 院 薬 学 系 研 究 科 →
2012
(平24)
博
10
3
2
1
薬 学 部
薬学部の教育研究上の目的【薬学部規則第1条の2】
薬学は、医薬の創製からその適正使用までを目標とし、生命に関わる物質及びその生体との相互作用を対象とする学問
体系である。本学部は創薬科学及び基礎生命科学の発展に寄与する研究者、医療行政に貢献する人材、高度医療を担う薬
剤師の養成を教育研究の目的とする。
学科の教育研究上の目的【薬学部規則内規 1】
(1) 薬科学科は、薬学がカバーすべき広範な基礎科学の教育に重点を置き、高い能力をもった研究者、医療行政に貢献
する人材を輩出する教育・研究を行う。
(2) 薬学科は、薬学がカバーすべき広範な基礎科学の教育に加え、病院や薬局での実務教育を通じて高度で実践的な医
療薬学の知識と技術を身に付けた薬剤師資格を有する医療従事者、研究者を輩出する教育・研究を行う。
薬科学科(4年制)
6年制課程で薬剤師教育を主眼とする薬学部の学科の名称が薬学科となったため、従来の 4 年制学科は「薬科学科」
に名称変更しました。卒業後は従来の 2 年間の修士課程および 3 年間の博士課程に進学できます。定員は全体の 9 割(72
名)ですが、教養学部からの進学段階では薬学科と薬科学科に分けることはせず、薬学部・大学院薬学系研究科におけ
る研究内容等を十分に理解した 4 年生の段階で薬科学科と薬学科を選択することになります。授業科目等は従来の薬学
部とほとんど変わりませんが、6年制の薬学科設置に伴い、研究者を目指す場合でも医療の現場に触れることができる
ような仕組みも作っています。
12 年間の時限措置として薬科学科の卒業生でも、大学院を修了し、必要な学科目と実務実習を履修すれば、薬剤師
国家試験の受験資格が与えられることになっています。4 年生までにほとんどの学科目を履修することは可能ですが、
実務実習は修士課程修了後に行うことになります。
薬学科(6年制)
平成 18 年度以降の入学者に対して新たに設置された修業年限 6 年の薬学教育課程です。医療の高度化に伴い、国民
医療の担い手として、質の高い薬剤師を養成することが目的です。従来の学科目の他に、6ヶ月間の病院および薬局に
おける実務実習が課せられています。定員は全体の1割(8名)です。定員が少ない理由は、卒業生が薬剤師としてほ
とんど就職せずに大半が研究者や教育者となっていること、日本全体でみると大幅な薬剤師供給過剰であり就職先の確
保が難しいこと、平成 12 年度より修士課程で実施していた医療薬学コースの実績が年間 8 名前後であること、などで
す。東京大学は今までは薬剤師教育にあまり力を注いできませんでしたが、少数ですが質の高い薬剤師教育を行い、こ
の分野のリーダーとなりうる人材を輩出することを目指します。ただし、単なる職業訓練所となることは断固として排
除します。日本全体としては6年制薬学部の定員が大過剰となってしまいますが、東京大学薬学部では混乱を回避すべ
く、東京大学医学部附属病院や地域の薬局と連携して、円滑な実務実習の実現を目指しています。また、平成 18 年度
入学者が卒業する時期に合わせて、4年制の薬学博士課程を平成 24 年度に設置しました。
5
学部のカリキュラム
薬学部における教育の中心は、薬学者としての幅広い知識と考え方を身に付けるために、また、薬学の中のどの領域の専門
家に将来なってゆくべきかを見極めるための講義と実習です。学部学生として受講する講義は薬学のエッセンスとも言えるも
のです。また、薬学実習は、薬学部における研究の多様さを反映して、多岐にわたっています。有機化学的なディシプリンを
学び、物理化学的なアプローチの仕方を身に付け、生物現象を分子レベルで捉え、生体機能を解析する方法を学ぶことができ
るように、全体が効率的にデザインされています。四年生になると、各教室のいずれかに希望によって配属となり、研究に参
加することを通して、薬学の最先端に触れる機会を得ることになります。
学部科目
単位
授業科目
授 業 概 要
2年生:第2ターム(A1ターム)
分
子
生
物
学
薬 物 動 態 制 御 学
薬
物
有
有
細
分
免
機
物
学
理
機
機
胞
析
能
理
概
化
化
化
生
化
疫
形
化
学
学
学
物
学
態
学
論
Ⅰ
Ⅰ
Ⅱ
学
Ⅰ
学
学
Ⅱ
1 生命科学を理解するために必要な分子生物学の基礎を学びます。
④⑥
医薬品開発ならびに医薬品の適正使用を実現するために、医薬品の体内動態特性を定量的に理解するための理論体系である薬物速度論を説明すると
④⑥
ともに、体内動態の個人間変動を生じる要因について解説します。
薬学という学問のアウトライン、歴史、将来像を分かりやすく説明し、産業、医療など、社会との関わりを考えます。また、最新の薬学研究の一端
④⑥
1
を学びます。
1
1
1
1
1
1
1
1
1
量子化学と分光法を理解することにより、物理化学的概念の修得を目指します。
立体化学、構造化学、酸化と還元などの有機化学の基礎を学びます。
酸と塩基、求核置換反応、脱離反応など、有機反応の理解のための基本的な概念について学びます。
生命科学を理解するために必要な細胞生物学の基礎を学びます。
分析の基礎、溶液中の化学平衡、化学物質の定性・定量分析、機器を用いる分析法について学びます。
免疫系の成り立ちと感染やアレルギーにおける免疫応答を、組織、細胞、分子のダイナミックな動きを通して理解します。
薬物療法や病態を理解するための基礎知識として、各臓器の構造と機能(解剖学・生理学)を学びます。
重要な熱力学的概念の理解と、薬学で重要な系の物理化学的考え方と手法について講義します。
④⑥
④⑥
④⑥
④⑥
④⑥
46
④⑥
④⑥
2年生:第3ターム(A2ターム)
医 薬 品 評 価 科
製
剤
設
計
分
析
化
学
物
理
化
学
有
機
化
学
機
能
生
物
有
機
化
学
構 造 分 子 薬
学
学
Ⅱ
Ⅲ
Ⅲ
学
Ⅳ
学
1
1
1
1
1
1
1
1
医薬品開発と薬効評価の方法、国内外の開発環境やガイドラインについて、具体例に基づいて解説します。
医薬品のドラッグデリバリーシステムの他、医薬品の剤形について、設計製造法、有用性評価法について学びます。
化学物質の定性分析、機器を用いる分析法、分離分析法、臨床現場で用いる分析技術について学びます。
蛋白質構造の階層性、様々な分子間相互作用、酵素の構造や酵素反応論について学びます。
置換反応、脱離反応、付加反応などの化学反応論と有機電子論を学びます。
生命科学を理解するために必要な細胞高次機能の基礎を学びます。
カルボニル化合物の典型的な反応性について学びます
核磁気共鳴法やX線結晶構造解析法による、生体高分子の構造解析の基礎と実例を説明します。
4⑥
4⑥
④⑥
④⑥
④⑥
④⑥
④⑥
4*
医
療
薬
学
1
医療における薬学の理解を目標とし、医療制度、医薬品開発と有効性や安全性、疾患と治療薬、医療と薬剤師、調剤・製剤の基礎、服薬指導と薬歴管理、
④⑥
臨床薬物動態学などについて概説する。
放
射
化
学
1 医学・薬学の諸分野で不可欠なアイソトープと放射線の基礎と応用、生物影響等について講義します。
④⑥
2年生:第4ターム(Wターム)
病
理
学
発
生
遺
伝
学
インタラクティブ 有機化学
薬
理
学
Ⅰ
薬 事 法・ 特 許 法
医 薬 品 安 全 性 学
有
機
化
学
Ⅴ
公
衆
衛
生
学
微 生 物 学・ 化 学 療 法 学
生
物
統
計
学
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
細胞と組織の病理変化、臨床疾患の分類や、その病態、治療について解説します。
発生遺伝学の概説とモデル動物を用いた創薬科学への応用を講義します。 演習やグループディスカッション形式を交えながら、有機化学の基礎を概観、復習します。
薬理学の基礎を学び、自律神経系や循環系に作用する薬物の作用を理解します。
薬事関連法規及び特許法の基本について学びます。
④⑥
46
46
④⑥
4⑥
医薬品の安全性の科学的裏付けを、生体のストレス応答という観点を軸に、分子生物学、細胞生物学、病態生理学ならびに社会学的な視点から解説します。 4⑥
生物活性を有する天然有機化合物の化学と、生合成の基礎を学びます。
④⑥
健康の概念、疫学、薬剤疫学、薬剤経済学の基本について学びます。 4⑥
大腸菌などの微生物を材料とした生化学・遺伝学の基本的方法論について整理します。さらに、抗生物質の作用機構についても学びます。 4⑥
医薬品の評価に使われる統計学的な方法と実験法に関する講義と演習です。
46
3年生:第1ターム(S1ターム)
有
Ⅱ
1
薬 品 代 謝 学・ 創 薬 化 学
1
臨 床 医 学 概 論
生 体 分 析 化 学
有
機
化
学
Ⅲ
衛 生 薬 学・ 公 衆 衛 生 学
創
薬
科
学
薬
学
実
習
Ⅰ
1
1
1
1
1
5
医療薬学を学ぶ上で必要となる臨床医学的知識や医療人としての薬剤師のあり方について理解を深めます。
可溶性生体分子の定性・定量分析、分離分析について学びます。
置換反応、脱離反応、付加反応などの化学反応論と有機電子論を学びます。
環境物質の生体に与える影響について解説します。
製薬企業で成功した研究者を中心に、創薬の実際と将来像を語ってもらいます。
有機化学の基本的実験操作の習得、基礎的単位反応と応用的合成反応の習得。
薬
3
生物有機化学基礎実験(天然有機化合物の抽出、単離、同定及び生合成;吸光法及び蛍光法の基礎と応用、高速液体クロマトグラフィーの基礎と実際;
④⑥
薬物代謝反応実験、酵素反応速度解析;薬用植物園見学)
。
6
機
学
化
実
学
習
Ⅱ
求核置換反応の範囲、α位カルボアニオン、合成における求核付加と求核置換、脱離反応、不飽和炭素に対する求電子付加、ラジカルやカルベンの基本的性質と反応を学びます。 ④⑥
医薬品の代謝および創薬化学の基礎を講義します。P-450 を中心に酵素誘導、遺伝多型、代謝反応様式、酵素反応機構などを分子レベルで解説します。
④⑥
また医薬品の分子設計、化合物ライブラリー、リード化合物など創薬研究の基盤となる知識を講義します。
4⑥
46
④⑥
46
④*
④⑥
3年生:第2ターム(A1ターム)
病
有
天
分
薬
疾
放
免
理
機
化
学
然
物
化
子 生 理 化
理
学
患
代
謝
射
化
疫
薬
学
薬
薬
特
学
学
別
実
実
講
習
務
実
学
Ⅳ
学
学
Ⅱ
学
学
学
1
1
1
1
1
1
1
1
細胞と組織の病理変化、臨床疾患の分類や、その病態、治療について解説します。
生物活性を有する天然有機化合物の化学と、生合成の基礎を学びます。
局方収載生薬を中心とする天然由来薬物の起源、成分、評価、応用及び植物バイオテクノロジーについて学びます。
ホルモンなど細胞外シグナル分子の受容と情報伝達について、最新の知見を解説します。
中枢神経系に作用する薬物の薬理作用について、脳の機能との関連から整理して理解します。
代謝一般と、その破綻により引き起こされる様々な疾患について解説します。
医学・薬学の諸分野で不可欠なアイソトープと放射線の基礎と応用、生物影響等について講義します。
免疫系の成り立ちと感染やアレルギーにおける免疫応答を、組織、細胞、分子のダイナミックな動きを通して理解します。
④⑥
④⑥
46
46
④⑥
46
④⑥
46
①生命・医療倫理学 ②薬害被害者の声 ③医学部標本室見学 を通じて薬学のあり方について学ぶ。
46
義
1
Ⅲ
3
習
1
物理化学基礎実験(薬物の体内動態、タンパク質の物理化学的解析法およびタンパク質間相互作用の構造生物学的解析、X線解析法による分子構造
④⑥
の解析と立体構造の理解)
。
薬物代謝酵素の遺伝子多型判定を通して、今後の医療を考える上での遺伝子多型の意義やその解釈の仕方、さらにはヒトゲノム・遺伝子を対象とし
④⑥
た研究を行う上での正しいプロセス、倫理指針の遵守の重要性を学ぶ。
3年生:第3ターム(A2ターム)
医 薬 品 評 価 科
製
剤
設
計
医
療
科
薬
物
治
療
医
薬
化
学
学
学
学
学
Ⅱ
1
1
1
1
1
医薬品開発と薬効評価の方法、国内外の開発環境やガイドラインについて、具体例に基づいて解説します。
医薬品のドラッグデリバリーシステムの他、医薬品の剤形について、設計製造法、有用性評価法について学びます。
有機合成反応機構に関する演習および解説と、医療機器分析学などのオムニバス形式の講義です。
薬理学Ⅰ、Ⅱでカバーしていない医薬品の作用機序を疾病治療を念頭に理解します。
生理活性物質・医薬分子の有機化学、分子設計の有機化学を学びます。
医
Ⅰ
1
医薬合成を目標とする高いレベルの合成化学、遷移金属化学、複素環、天然物合成化学などの講義と、各種光機能性分子の設計・開発の基礎を、光化学・
46
電気化学などの概説を通じで学ぶケミカルバイオロジーに関する講義です。
学
1 核磁気共鳴法やX線結晶構造解析法による、生体高分子の構造解析の基礎と実例を説明します。
構
薬
造
化
分
学
子
薬
医
療
薬
学
Ⅰ
薬
学
実
習
Ⅳ
4⑥
4⑥
46
4⑥
46
4*
医療における薬学の理解を目標とし、医療制度、医薬品開発と有効性や安全性、疾患と治療薬、医療と薬剤師、調剤・製剤の基礎、服薬指導と薬歴管理、
④⑥
1
臨床薬物動態学などについて概説する。
(1) 生理化学実験 血糖値の調節(代謝生理学実験)
培養細胞の増殖応答(アイソトープ実験)
(2) 分子生物学実験 培養細胞を用いた分子生物学
④⑥
5
の基礎実験 (3) 遺伝学実験 モデル動物を用いた分子遺伝学の基礎実験 (4) 微生物実験 微生物基礎実験、抗生物質、遺伝子操作の基礎実験
3年生:第4ターム(Wターム)
有 機 化 学 演 習
薬 物 動 態 制 御 学
医
薬
化
学
医
療
薬
学
医 薬 品 情 報
Ⅱ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅱ
学
1
1
1
1
1
発展的な内容や先端的な内容を含んだ有機化学の総合的な演習を行う。
薬物体内動態を決定する分子論と薬物速度論とを統合するための研究手法について講義します。
医薬品開発に必須の有機化学の講義で、有機反応化学、生体関連反応及び生理活性物質の化学の基礎を解説します。
薬剤業務における臨床薬物動態学などの応用法、医薬品の評価法などについて実例を交えて概説する。
医薬品情報の標準化や薬物作用の定量化に関する方法論等、医療現場に対して有用な新規医薬品情報構築法について概説する。
医 薬 品 安 全 性 学
1
医薬品の安全性の科学的裏付けを、生体のストレス応答という観点を軸に、分子生物学、細胞生物学、病態生理学ならびに社会学的な視点から解説
4⑥
します。
微 生 物 学・ 化 学 療 法 学
生
物
統
計
学
1 大腸菌などの微生物を材料とした生化学・遺伝学の基本的方法論について整理します。さらに、抗生物質の作用機構についても学びます。 46
1 医薬品の評価に使われる統計学的な方法と実験法に関する講義と演習です。
46
薬
3 全身動物、摘出器官を用いた基礎薬理学実験。病理標本の観察、組織化学、細胞内シグナル伝達機構の解析、出芽酵母を用いた遺伝子実験。 ④⑥
学
実
習
Ⅴ
46
4⑥
4*
4⑥
4⑥
4年生:第1ターム(S1ターム)
薬 事 法・ 特 許 法
製
剤
設
計
学
生
物
物
理
学
有 機 化 学 演 習 Ⅱ
臨 床 医 学 概 論
医 薬 品 評 価 科 学
医
療
科
学
医 薬 品・ 医 療 ビ ジ ネ ス
1
1
1
1
1
1
1
1
薬事関連法規及び特許法の基本について学びます。
医薬品のドラッグデリバリーシステムの他、医薬品の剤形について、設計製造法、有用性評価法について学びます。
生体の階層性(分子から個体まで)と各階層について学びます。
発展的な内容や先端的な内容を含んだ有機化学の総合的な演習を行う。
医療薬学を学ぶ上で必要となる臨床医学的知識や医療人としての薬剤師のあり方について理解を深めます。
医薬品開発と薬効評価の方法、国内外の開発環境やガイドラインについて、具体例に基づいて解説します。
有機合成反応機構に関する演習および解説と、医療機器分析学などのオムニバス形式の講義です。
企業や研究機関の経営とは何か、経営戦略論の基本を学び、医療・医薬産業の構造と特徴を解説します。
臨
学
1
疾患の病態生理から薬物動態、臨床薬理、臨床試験まで、薬物治療の基本と臨床開発について臨床的側面から学びます。また、癌の診断、治療、臨
*⑥
床治験の実際を、臨床病理、内科、外科、放射線科等の専門家から学び、病気としての癌の理解を目指します。
医
療
薬
学
Ⅱ
が ん 細 胞 生 物 学
衛 生 薬 学・ 公 衆 衛 生 学
創
薬
科
学
医
薬
経
済
学
医 薬 品 情 報 学
1
1
1
1
1
1
薬剤業務における臨床薬物動態学などの応用法、医薬品の評価法などについて実例を交えて概説する。
癌の発生から進行に関する生物学及び癌の臨床と治療法、とくに薬物療法に関する講義です。
環境物質の生体に与える影響について解説します。
製薬企業で成功した研究者を中心に、創薬の実際と将来像を語ってもらいます。
医薬品の合理的使用を目指し、その社会経済的価値を評価するための基本的な考え方と現状を学びます。
医薬品情報の標準化や薬物作用の定量化に関する方法論等、医療現場に対して有用な新規医薬品情報構築法について概説する。
床
薬
理
4⑥
4⑥
46
46
4⑥
4⑥
46
46
4⑥
46
46
④*
46
4⑥
4年生:(薬科学科)
薬
学
卒
業
実
習
20 薬学部(一部薬学部外もある)の教室に配属となり、薬学研究の第一線に参加します。
④
4~6年生:(薬学科)
薬
学
実
習
Ⅵ
薬 学 実 務 実 習 Ⅱ
薬 学 実 務 実 習 Ⅲ
14 薬学部の教室に配属となり、薬学研究の第一線に参加すると同時に、病院薬剤部・薬局に行く前の自主的な研究・学習を行う。
⑥
4 病院実務実習・薬局実務実習に先立って、大学内で調剤および製剤、服薬指導などの薬剤師職務に必要な基本的知識、技能、態度を修得する。 ⑥
10 病院薬剤師の業務と責任を理解し、チーム医療に参画できるようになるために、調剤および製剤、服薬指導などの薬剤師業務に関する基本的知識、技能、態度を修得する。 ⑥
薬 学 実 務 実 習 Ⅳ
10
薬
20 薬学部(病院薬剤部を含む)の教室に配属となり、薬学研究の第一線に参加します。
学
卒
業
実
習
薬局の社会的役割と責任を理解し、地域医療に参画できるようになるために、保険調剤、医薬品などの供給・管理、情報提供、健康診断、医療機関
や地域との関わりについての基本的な知識、技能、態度を修得する。
⑥
⑥
④=薬科学科の必修 4=薬科学科の選択 ⑥=薬学科の必修 6=薬学科の選択 *=指定なし(履修できるが修得単位は卒業要件の単位とはならない)
7
大学院薬学系研究科
平成 18 年度大学入学者より、薬学教育は大きく変わりました。それに伴い、東京大学薬学部は、創薬基礎
研究者養成の4年制の薬科学科と、薬剤師国家試験の受験資格を得られる6年制の薬学科の2学科を新たに設
置しました。そして、学年進行により、新しい大学院を設置しました。
平成 22 年4月に、4年制の薬科学科卒業者を対象とした修士課程薬科学専攻を設置しました。従来本研究
科では4つの専攻がありましたが、それらを統合し、専攻は一つになりました。
平成 24 年4月には、修士課程薬科学専攻修了者を対象とした博士後期課程薬科学専攻(修業年限3年)と
6年制薬学科卒業者を対象とする薬学博士課程薬学専攻(修業年限4年)を設置しました。また、博士後期課
程薬科学専攻には4年制の薬科学科卒業者が薬剤師国家試験受験資格を得るための薬学科履修プログラムも設
けました。
薬学系研究科の教育研究上の目的【薬学系研究科規則第1条の2】
薬学は、医薬の創製からその適正使用までを目標とし、生命に関わる物質、及び、その生体との相互作用
を対象とする学問体系である。本研究科は薬学の全ての分野において、最高水準の研究活動を行い、これに
裏付けられた教育活動により、創薬科学および基礎生命科学の発展に寄与する研究者、医療行政に貢献する
人材、高度医療を担う薬剤師の養成を教育・研究の目的とする。
専攻の教育研究上の目的
薬科学専攻
有機化学、物理化学、生物化学を機軸に最高水準の教育・研究活動を行い、化学系薬学、物理系薬学、
生物系薬学など薬学がカバーすべき広範な分野をリードする優れた創薬科学研究者、基礎生命科学研究者
を養成することを目的とする。
薬学専攻
医療薬学、社会薬学、創薬学を機軸に最高水準の教育・研究活動を行い、医療系薬学、社会系薬学、創
薬系薬学などの分野で実践的な研究能力を有する優れた先導的薬剤師、医療行政従事者、創薬開発・研究
従事者を養成することを目的とする。
大学院のカリキュラム
大学院における履修の主要な部分は、「特別研究」であり、各教室における研究への参加を通して行われます。
大学院の講義は修士課程・薬学博士課程の学生を対象とするものです。専門性が高く、各々の学問の最先端をカ
バーし、国際的に見てもトップレベルのものです。以下にそれらのアウトラインを示します。
8
大学院科目
単
位
授業科目
授 業 概 要
共通科目
○は毎年、△は隔年に開講する。
すべての薬学系研究分野において化学的な基礎となる化学体系の概念を理解します。
基 礎 薬 科 学 特 論 Ⅰ
2
基 礎 薬 科 学 特 論 Ⅱ
2
基 礎 薬 科 学 特 論 Ⅲ
2
基 礎 薬 科 学 特 論 Ⅳ
2
ケミカルバイオロジー特論
2
ライフサイエンスと関わりをもつ先端的薬学研究を行うために必須な化学体系を学びます。
○
生体分子解析学特論
2
X線結晶解析、核磁気共鳴法、1分子蛍光イメージング法や生体分子の高感度分析法などの原
理を解説し、生体分子の構造と機能の解析法と応用例を紹介します。
△
細 胞 生 物 学 特 論
2
細胞生物学的な視点から、生物系薬科学分野における最新の研究動向を紹介します。
△
分 子 生 物 学 特 論
2
疾 患 生 物 学 特 論
2
医 療 薬 学 特 論
2
社 会 薬 学 特 論
2
科 学 英 語 特 論
2
医薬品評価科学特論
2
ク
リ
ニ
カ
ル
サ
イ
エ
ン
ス
特
論
2
○
生体分子のX線結晶構造解析法、NMR による構造解析と、蛍光法、質量分析法による高感度分析、
○
天然有機化合物の生合成機構、ケミカルバイオロジーによる創薬について学びます。
生物系薬科学分野に含まれる生化学、分子生物学、細胞生物学、分子遺伝学、疾患生物学等の
○
基礎を学びます。
医療薬学分野の中から、薬物動態学、基礎薬理学、病態学、医薬品情報学、評価科学、医薬経
○
済学およびビジネス学などの基礎事項を学びます。
生体を遺伝子やタンパク質などの分子機能から理解し、遺伝学や生化学の最新手法を会得しな
がら、疾患の病態生理学を含めて分子レベルでの最先端の生物学を学びます。
感染と免疫を主な対象に、生物学的な視点から、背景となる学問体系と疾患発症に至る機構を
概説します。
△
△
医療と薬学に関する先端的な研究をオムニバス形式で学びます。
△
薬学と社会とのかかわりについて、情報、統計、政策、経営、製薬企業など、多様な視点から
理解を深めます。
薬科学に関するトピックスを英語で学ぶ講義で、リスニングとスピーキングの両方が鍛えられ
ます。
新医薬品の有効性・安全性・リスクベネフィットの評価を行うための実践的な方法論及び規制
の仕組みを学びます。
疾患の病態生理から薬物動態、臨床薬理、臨床試験まで、薬物治療の基本と臨床開発について
臨床的側面から学びます。また、癌の診断、治療、臨床治験の実際を、臨床病理、内科、外科、
放射科等の専門家から学び、病気としての癌の理解を目指します。
△
○
○
○
薬科学専攻
薬 科 学 特 別 研 究Ⅰ
20
(修士課程)演習・セミナーや研究室で個別に設定された研究活動等を通じて、専門性に根ざし、薬学的な
思考法、論理的で先端的な方法論や高い分析能力を学ぶ。
薬 科 学 特別研 究Ⅱ
20
(博士後期課程)研究室で個別に設定された研究活動等を通じて、深い専門性に根ざし、薬学的な思考法、
論理的で先端的な方法論や高い分析能力を学ぶ。
薬学専攻
医療 薬学 実 践 研究
4 高度化医療などの現場で、社会のニーズに応え得る実践的な方法論と問題意識・主体性を習得する。
社会薬学 実 践 研究
4 医療行政など現場で、社会のニーズに応え得る実践的な方法論と問題意識・主体性を習得する。
創 薬 学 実 践 研 究
4 創薬などの現場で、社会のニーズに応え得る実践的な方法論と問題意識・主体性を習得する。
薬 学 特 別 研 究
20
演習・セミナーや研究室で個別に設定された研究活動等を通じて、医薬の創製からその適正使用に向けた
生命に関わる物質及びその生体との相互作用を対象とした統合的な方法論を学ぶ。
9
組織図
薬学系研究科の教員は薬科学専攻または薬学専攻に配置されているが、すべての教員が薬科学と薬学の教育・研究を担当している。
薬学系研究科の教員は薬科学専攻または薬学専攻に配置されているか、すべての教員が薬科学と薬学の教育・研究を担当している。
有
機
有
機
反
合
然
学
物
化
学
薬
協)
(
薬 品
作 用
学
薬 学
(協)臨床薬物動態学
用
植
物
化
学
化 学
機
有
基 礎
薬 品 代 謝 化 学
蛋
細
化
理
白
伝
学
質
代
謝
学
学
細胞生
︵協︶
生
情
報
化
学
学
分
子
生 物
学
遺
胞
生 体
分 析
化 学
生
蛋
命
白
物
理
構
化
造
学
生
物
学
生
物学
衛
胞生
患細
︶疾
︵寄
物化学
態学
物動
薬
分子
学
化
品
薬
物
生
微
天
化
学
成
化
学
態
学
病
応
︵協
︶
生
体 化
学
学
学
薬
化
科
学
価
策
評
政
品
能
薬
薬
機
ョン
ベーシ
・イノ
ジネス
マコビ
ファー
︵寄︶
︶医
︵寄
医
︵
寄
︶育
薬
薬科学
(協)は協力講座
(連)は連携客員講座
(寄)は寄付講座
10
薬化学教室
教 授 大和田智彦
講 師 尾谷 優子 http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~yakka/
新しい有機分子構造が生み出す化学や機能を探求しサイエンスとしての一般性を追求する
研究課題
①特異な構造特性を持つ分子の合成と応用(アミドの化学、水中で安
定ならせん分子の合成,機能性 NO ドナーの合成)
②陽イオン中間体(ジカチオン)の化学:多官能基化された芳香族化
合物の合成への応用
③特徴ある機能(生物活性等)を持つ有機分子の設計・合成・構造の
研究:膜タンパク質の機能をコントロールするモデル分子のデザイ
ンと合成と機能;創薬へのインパクト
④理論計算を活用する構造化学・反応機構の解析・機能分子や生物活
性物質の理論的な構造設計と機能予測、分子の動的挙動の解明、生
物活性分子の設計
薬化学教室の研究目標は、新しい分子構造に由来する新しい化学現象の発見と機能ある物質
の創製の融合化学(インテグレーション)の構築である。特にアミド及び関連官能基の非平面
化を中心とする有機構造化学を基礎に置いた有機構造論の展開と機能性物質の合成を中心課題
としている。つまり分子の構造(形)が、化学反応性、結合特性、構造特性、生物活性などの
物質の機能にどのような影響を与えるかの原理を追求するとともに、その原理を利用して機能
の最適化や新しい機能を化学合成によって創造することである。私たちは常に「なぜ」そうな
るのかという疑問を持ち、現象の単なる羅列を超えた概念の獲得に魅力を感じている。一方で
私たちの3次元構造の認識力や電子構造に対する想像力には限界があるため,理論計算化学を
利用した計算実験にも積極的に取り組み、実験結果と組み合わせて私たちの新しい化学概念の
獲得に活用している。
有機反応化学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~inoue/
水中でも安定に存在するペプチド結合を持つヘ
リックス分子を作る
生体内分子を超越した有機分子を創製して、免疫制
御の仕組みの解明に貢献しつつ創薬につながるモデ
ル分子を提案する
教 授 井上 将行 助 教 長友 優典
講 師 占部 大介
助 教 伊藤 寛晃
生物活性天然物の全合成から展開する科学
研究課題
①全合成のための新しい反応・合成法・戦略の開発
②生物活性天然物の全合成研究
③イオンチャネル形成分子の合成・機能研究
④天然物の構造と機能をモチーフとした新機能分子の創出
分子内アルドール反応による非対称化を利用した
新しい全合成戦略
当教室での研究基盤分子は、タンパク質などの生体高分子に強力に作用する極性官能基が密
集した天然物と、生体高分子そのものの機能をもちうる巨大ペプチド系天然物です。タンパク
質などの生体高分子に比べ分子量が圧倒的に小さい生物活性天然物は、多様な環状構造や官能
基をもつことで、その機能情報を高密度に集積しています。一方、その構造は最適・最小化さ
れており、部分構造の欠如は、しばしば劇的な機能低下につながります。つまり天然物を、医
薬や生物機能制御物質として応用するためには、その三次元的原子配列を完全に再現 ( 全合成 )
する必要があります。しかし、強力な機能を持つ極性官能基密集型天然物や巨大ペプチドの全
合成には、現在でも一般的な方法論が存在しません。我々は、このような高機能天然物の全合
成の高度一般化のための反応・合成法・戦略の開発に取り組んでいます。さらに、自由自在に
三次元構造を操れる有機合成化学を武器に、天然物が持たない化学的性質を付与した新機能分
子や小型化されたタンパク質の創出を目指します。
極性官能基密集型天然物と巨大ペプチドの全合成
研究
11
有機合成化学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kanai/index.html
教 授 金井 求
助 教 生長幸之助
助 教 清水 洋平
触媒開発に基づき、分子、機能、秩序の合成をめざす
研究課題
①複雑分子の全合成を革新しうる触媒反応開発
②触媒開発を基盤とする Clean,Robust,Concise分子合成
③触媒開発を基盤とした新エネルギー社会への貢献
④触媒反応開発を基盤とした新コンセプトからの創薬
当研究室の目標:
「触媒から生命へ」。
オセルタミビルの触媒的構造変換と新規リード創出
分子をデザインし合成できる有機合成化学の creativity を最大限に発揮して、(1)分子を
つくる、(2)機能をつくる、(3)秩序をつくる、の3領域の研究を進めていきます。不可能を
可能とするぎりぎりの最先端研究を目指し、10 ~ 20 年の時間軸を見据えた骨太の研究をおこ
ないたいと考えています。
1、分子をつくる:触媒反応開発の立場から、分子合成をクリーンで Robust(=力強い)かつ
短工程化していきたいと考えています。独自の合成法を鍵とする、オリジナリティの高い革新
的 complex molecule synthesis に取り組みます。
呼吸系炭素骨格構築を目指して:
触媒的酸化カップリング反応
2、機能をつくる:新触媒反応開発により未知の可能性を持つ分子群の入手を容易とし、これ
を用いた新コンセプトからの医薬リードの創出に取り組みます。また水素や酸素といった入手
容易な低分子を、合成素子およびエネルギー素子として有効に活用する触媒開発にも取り組む
予定です。
3、秩序をつくる:触媒反応開発を基盤として、複雑系からの分子秩序の創発、さらには分子
システムの治療応用を検討していきます。
連続的迅速ポリオール、ポリアミン合成を目指して
天然物化学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~tennen/head.htm
教 授 阿部 郁朗 助 教 松田 侑大
准教授 岡田 正弘 助 教 森 貴裕
助 教 淡川 孝義
生合成システムの合理的デザインにより、新規有用物質生産系を構築する
研究課題
①天然物生合成(遺伝子探索、機構解析、生合成工学、合成生物学)
②二次代謝酵素(反応機構解明、構造機能解析、触媒機能改変)
③生物活性物質の探索と単離構造決定
天然物生合成の分子レベルでの解明から、新
たな物質生産への応用へ
有機化学を基盤とした、生命現象の解明とその人為的な制御に関する研究は、ポストゲノム
の時代にあって、今後ますます飛躍的な発展が期待されます。一方、今後の医薬資源の開発に
ついて考えた場合、多様性に富む化合物群をいかに効率良く生産し、創薬シードとして提供で
きるか、が鍵になります。私たちの研究室では、上記研究課題を中心に、今後の医薬資源研究
をリードする、ケミカルバイオロジー領域の研究に日夜挑戦しています。研究手法としては、
基質やプローブの合成、単離構造決定など、低分子化合物の取り扱いから、遺伝子操作、酵素
タンパクの結晶化や変異酵素の作成に至るまで、幅広い知識と技術を習得することができます。
有機化学を基盤としながら、生化学、分子生物学、構造生物学、物理分析化学、さらには、醗
酵工学や代謝工学に至るまで、多領域の学問分野の手法を取り入れています。
単純な開始物質から多様な複雑骨格天然物が
合成される仕組みの解明
12
基礎有機化学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kisoyuki/
教 授 内山 真伸
講 師 宮本 和範
助 教 平野 圭一
助 教 斉藤 竜男
原子・電子レベルで現象を理解し、分子の自在構築によって物質を科学する
研究課題
①物質科学・生命科学を支援する高度分子変換法の開発
(反応化学・合成化学)
②有機化学、無機化学、金属化学の枠を超えた周期表横断型化学
(元素化学)
③中間体・遷移状態の構造化学と反応機構の解明
(物理化学・分光学・理論計算)
④合成化学・分光学・計算化学を基盤とした物質創製
(物質科学・生命科学)
計算化学・理論化学を基盤とした新反応開発・
物 質 創 製(Chemistry A European Journal
の表紙に採用)
基礎有機化学教室では、1)物質の性質・現象を分子・原子・電子といった“化学の言葉”
として理解し(観る・知る)、2)原子どうしの結合を自在に操る反応を開発する(創る)、3)
機能ある物質をつくりだす(産む)ことを目指し、日々研究を行っています。
分子レベルでの「ものづくり」は現代社会を支えるキーサイエンスの一つです。私たちの研
究室では、1m の 1/10 億 ( ナノメートル;nm) 以下という小さな小さな分子を緻密に化学変換
する技術の開発に取り組んでいます。また、そのためにはこの小さな世界での出来事を正確に
探る必要があります。ここで有効になるのが、計算化学・理論化学であり、物理化学・分光学
です。最近の分光学・理論計算の進歩によって、物質を形成する電子の状態や、分子が反応す
るスナップショットを正確に予測・再現できることがわかってきました。合成化学・分光学・
理論計算の3つ手法を柱として、分野横断型の元素化学を展開し、生命現象の解明・新たな物
基礎有機化学・元素化学で切り拓く生命科学・物質
科学
質科学の創出に挑んでいます。
薬品代謝化学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~taisha/
教 授 浦野 泰照
准教授 花岡健二郎
助 教 寺井 琢也
助 教 上野 匡
Chemical Biology を駆使して、 新たな生命現象解析 ・ 画期的な新医療技術創成を実現する
研究課題
①蛍光・増感・ケージドプローブの論理的デザイン法の確立を目指し
た光物理有機化学研究
②新規光機能性プローブの開発とその細胞生命現象解析への応用
③動物体内での invivo 病態可視化・動的制御を実現する光機能性プ
ローブ・MRI プローブの開発
④微小がんの術中迅速可視化・治療を実現する光機能性プローブの開
発と新医療技術創成
⑤蛍光プローブを活用した創薬及び創薬標的の探索に関する研究
生体内で起こっている複雑なシステムの動的な変化を捉えるイメージング手法は、生命現象
の根底を解明するための要素技術の一つとして、近代の生命科学研究において重要な役割を演
じています。私たちは、有機小分子を精密に分子設計することで独自のケミカルツールを創製
し、これまで直接見ることができなかった現象を可視化して、生命現象をより深く理解するこ
とに挑んでいます。同時に、細胞・個体の様々な応答を操るケミカルツールを開発することで、
より包括的に生物現象を理解することも目指しています。
また私たちは全く新たな臨床医療技術の創成を目指して、独自の切り口によるケミカルバイ
オロジー研究も展開しています。例えば外科手術、内視鏡施術時に、疾患部位を迅速可視化す
るケミカルツールを多数開発しています。さらに開発したツールが真に実用的であることを検
証するために、日本国内や諸外国の 20 以上の臨床医グループと臨床蛍光イメージングネット
ワークを形成し、密接な共同研究を展開しています。
以上のように、新たな生命現象解析を目指した化学-生物連携研究、画期的な新医療技術創
成を目指した医薬連携研究を、兼務先である本学医学部生体情報学分野の教室員も交えながら、
日夜行っています。
13
生体分析化学教室
教 授 船津 高志
講 師 角田 誠
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~funatsu/
助 教 岡部 弘基
助 教 飯塚 怜
生体分子の機能を1分子レベルで計測し、生命機能を解明する
研究課題
①分子シャペロンやキネシンなどの生体分子機械の動作原理の研究
②細胞内 mRNA のプロセシングと輸送の1分子蛍光イメージング
③生体分子の機能と相互作用を解析するためのマイクロ・ナノデバイス
の開発
21 世紀は生命科学の世紀です。生物を理解するためには、いろいろな階層で研究する必要
があります。一番下の階層は蛋白質や DNA といった生体分子が働いている階層です。それらが
集まって、生体超分子、細胞、器官などが作られ、さらには個体、社会、生態系が構成されて
います。私たちは、最小機能単位である「生体分子」の階層と、生命としての機能が初めて発
現する「細胞」の階層に焦点をあて、生体分子がどのようなメカニズムで機能しているのか?
集合してどのようにシステムを構築しているのか?を明らかにしたいと考えています。
具体的には、1 個の生体分子 ( 大きさにして数 nm) に蛍光色素を結合させ、超高感度ビデオ
カメラを取り付けた蛍光顕微鏡で観察します。生体分子は、たった1分子でも機能を発揮でき
る分子機械です。例えば、神経細胞の中で物質の輸送を担っているキネシンと呼ばれるモーター
蛋白質は、ATP 加水分解による化学エネルギーを運動という機械的なエネルギーに転換して動
いています。この分子モーターは微小管と呼ばれるレール蛋白質の上を2つの足で8nm のス
テップで運動します。人類は、このような分子機械を作る技術を現時点では持っていませんが、
生物分子機械の動作メカニズムを研究することにより、近い将来実現したいと考えています。
一方、多種・多様の生物分子機械が自己集合することにより、複雑なシステムが作られます。
このシステムも人工のものと大いに異なっています。「生命」とは、これらの複雑なシステム
の営みと言っても良いでしょう。私たちは、こうした生物システムを研究することにより、生
命の謎に迫ります。
生命物理化学教室
http://ishimada.f.u-tokyo.ac.jp/public_html/index_j.html
生細胞内の1分子をイメージングするための蛍光
顕微鏡システム
エバネッセント照明による酵素反応(ATPase)の1分
子イメージングの原理
教 授 嶋田 一夫 助 教 西田 紀貴
助 教 上田 卓見 助 教 幸福 裕
助 教 内山 聖一
核磁気共鳴法を中心に独自の手法を開発し、新しい視点から生命現象を解明する
研究課題
①膜タンパク質と特異的に相互作用する分子との相互作用解析
②不均一な生体内巨大分子とタンパク質の結合界面の同定
③細胞接着を司る分子と細胞外マトリックスとの相互作用解析
④タンパク質の翻訳を制御する生体分子群の相互作用解析
⑤タンパク質・生体分子複合体の結合界面を正確に同定する手法の開発
生命物理化学教室では、生体において重要な生命現象に着目し、これらの生命現象において
主要な役割を担う蛋白質の相互作用メカニズムを明らかにすることを目的としています。蛋白
質の相互作用解析においては、目的蛋白質が、どのような生体分子(蛋白質・核酸・糖・脂質)
と、どのくらいの強さで、蛋白質のどの部分を介して、相互作用を形成するかを明らかにします。
相互作用解析手法としては、核磁気共鳴法(NMR)を中心とした構造生物学的手法を用いており、
蛋白質上における相互作用部位を Å の分解能で決定し、蛋白質の機能を原子レベルで説明する
ことが可能です。このような原子レベルの相互作用情報は、合理的な薬物デザインを行う上に
おいても重要な情報であり、医療・製薬の見地からも重要性の高い研究であるといえます。
当研究室では、生体膜およびその周辺で起こる事象を、中心的な研究対象としています。具
体的には、イオンチャネル、GPCR などの膜蛋白質、コラーゲンやヒアルロン酸などの細胞外
マトリックスの構成成分を認識する受容体など、従来までの手法では解析対象とすることが難
しかった巨大かつ不均一な分子の関与する相互作用系に対して、独自の手法を用いて取り組ん
でいます。当研究室に興味ある方の見学を歓迎します。
14
蛋白質再構成ビーズを利用した KcsA‐AgTx2 間相
互作用解析法の概念図
NMR 解析の結果に基づいて構築した、
CPD photolyase-DNA 複合体モデル
蛋白構造生物学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kouzou/
教 授 清水 敏之
講 師 大戸 梅治
助 教 藤間 祥子
酵素などのタンパク質や核酸の機能と生体での役割を三次元構造に基づいて解明する
研究課題
①タンパク質の三次元構造を解明するX線解析による構造生物学
②X線結晶構造解析によるタンパク質,核酸などの構造と機能
③核内タンパク質の構造生物学
④相同組換えに関わるタンパク質の構造生物学的解析
⑤自然免疫に関与する蛋白質の構造生物学的研究
1. 自然免疫に関わる TLR8 とリガンドとの複合体構造
構造生物学は、タンパク質や核酸などの三次元構造に基づいて、その活性、機能、物性、相
互作用、生体での役割などの諸現象を解明します。私たちは、巨大分子量のタンパク質の三次
元構造を詳細に解析できるタンパク質X線結晶構造解析法を中核に、生化学、分子生物学、遺
伝子工学や蛋白質工学から放射光科学までの学際的な手法を駆使します。こうして、医薬創製
の面で希求されている三次元構造情報を構造生物学のアプローチによって得ています。
このような研究の基盤と目的のもとに、核内で機能するタンパク質や脂溶性低分子をリガン
ドとする核内レセプター、相同組換えに関わるタンパク質、自然免疫応答に関与する蛋白質に
よる病原性リガンドの認識機構,およびシグナル伝達機構の構造生物学的な研究を進めていま
す。また、シンクロトロン放射光や計算科学など、新たな構造研究法の開発にも積極的に取り
組んでいます。
衛生化学教室
https://sites.google.com/site/eiseikagaku/
2.核内レセプター VDR とリガンドとの複合体構造
教 授 新井 洋由
講 師 河野 望
助 教 今江理恵子
生体膜とその構成脂質の新しい機能を科学する
研究課題
①生体膜脂質の生合成・恒常性維持機構の解明
②生体膜ダイナミクス(エンド・エキソサイトーシス等)の分子機構の解明
③脂質メディエーターによる炎症性疾患の制御機構の解明
④新規生理活性脂質の同定及び機能解明
生体膜は、リン脂質二重層とほぼ同量のタンパク質によって形成されており、細胞を外界と区
別する障壁であるのみならず、細胞内の様々なオルガネラを形成し、その機能を制御する非常に
重要な構造物です。衛生化学教室は、生体膜の必須成分である「脂質」の生理機能の解明を目指
図 1生体膜脂質の機能
しています。生体膜には 1000 種類以上の脂質分子が存在し、それらの適切なバランスがタンパ
ク質の安定性・活性・局在、及び様々な遺伝子の発現制御に重要であると考えられています。我々
は、生体膜の主要構成成分であるリン脂質を中心に、その生合成や恒常性維持に関わる分子の同
定・機能解析を行うと共に、生体膜のダイナミックな活動(エンド・エキソサイトーシス等)に
おける生体膜脂質の役割を解析しています。
また、生体膜脂質からは様々な生理活性脂質が生成することが明らかになっており、脂質メディ
エーターとして多様な生命現象や病気に関わっていることが知られています。我々は近年注目さ
れている、生活習慣病の基礎疾患である「炎症反応」を中心に研究を展開しています。生体内に
存在する脂質メディエーターは非常に微量かつ多くの種類が存在するため、リピドミクスの手法
を用いてそれらがいつ、どこで、どれだけ産生されるのかを包括的に明らかにすると共に、新規
図 2脂質関連疾患
の生理活性脂質の同定も目指しています。
15
生理化学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~seiri/
教 授 堅田 利明
講 師 福山 征光
助 教 齋藤 康太
薬の標的である細胞の“シグナルの受容と応答のプロセス”を科学する
研究課題
①G蛋白質が介在する細胞内シグナル伝達機構の解析
②ゲノム情報を活かした新しいGタンパク質の同定と機能解析
③Gタンパク質によるエンドサイトーシス・エキソサイトーシスの制御
機構
④Gタンパク質を介した小胞体からのコラーゲン分泌機構
⑤モデル生物線虫を用いた個体レベルでの栄養感知機構
種々のシグナル伝達系に介在するG蛋白質
当生理化学教室では、生体における諸種の生理応答のメカニズムとその分子基盤の解明を目
指しています。生理応答とは生体を構成する個々の細胞機能が合目的性をもって発揮される結
果であり、これは、細胞に常時与えられる外界からの刺激(シグナル)に対して、細胞が適切
に応答することによってはじめて可能となります。生理応答の乱れは、多くの疾病の原因とな
り、治療に用いられる薬はこの乱れを正常化すべきものです。当教室が研究の対象としている
細胞のシグナル受容と応答のプロセス(シグナル伝達機構)は、生命科学の中でも最も重要な
研究分野の1つとして、国際的にも広範な研究の対象となっています。これまでに当教室では、
独自の研究成果である三量体Gタンパク質の関与を中心として、細胞の初期応答に関わるシグ
ナル伝達経路の解明を主要な研究テーマとしてきましたが、最近では、上記に示した広範な細
G蛋白質 arl-8 を欠失した線虫のマクロファージ様
細胞では、エンドサイトーシスされた物質(BSA)を
含む小胞とリソソーム酵素(ASP-1)を含む小胞の融
合が阻害される
胞機能についても、生化学、分子生物学、細胞生物学、分子遺伝学などの幅広い手法を用いて
研究を展開しています。
分子生物学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~molbio/
教 授 後藤由季子 助 教 岡﨑 朋彦
助 教 岸 雄介 助 教 樋口麻衣子
助 教 古舘 昌平
細胞運命が決定する仕組みを分子レベルで理解する
研究課題
①脳発生および成体における神経幹細胞の運命制御
②細胞の生死・運動・がん化および感染防御のシグナル伝達機構
当研究室では脳が構築されるプロセスや、自然免疫応答、がん化などの生命現象を“細胞の
運命決定”という観点から分子レベルで理解することを目指している。
我々の思考や行動を司る脳は、非常に複雑な神経回路とそれを支える構造により、高度な情
報処理を行っている。哺乳類の脳は、発生の過程において、神経幹細胞が増殖と分化を繰り返し、
神経回路の「素子」となる様々なタイプのニューロンやグリア細胞を産み出しながら、それら
が正しく配置され成熟することで形成される。さらに神経幹細胞は成体の脳でもニューロンを
産み出しており、学習や記憶、ストレスからの回復、また本能的な行動において必須の役割を
果たしていると考えられている。したがって、神経幹細胞がどのように維持され、また、必要
に応じて正しい数と種類のニューロンやグリア細胞をいかにして作っているのか、という「神
経幹細胞の運命制御メカニズム」を明らかにすることは、脳の発生や働き、あるいは脳疾患を
理解する上で非常に重要である。我々はエピジェネティックな遺伝子発現制御などに注目し、
分子生物学的手法を駆使してこれらを明らかにすることを目指している。
また、当研究室では、がんや自然免疫応答の系においても、個々の細胞が細胞外から受け取っ
たシグナルを(細胞内の情報と合わせて)どのように解釈し細胞運命に反映させるのかについ
て研究を進めている。例えばウイルス感染における自然免疫応答では、外敵の侵入を感知した
細胞がインターフェロン応答やアポトーシスなどを引き起こすが、これらの応答がどのように
決定されるのかについては十分にわかっていない。また、がんの悪性化では、細胞の運動性が
上昇し浸潤能を獲得する。これらのプロセスを細胞内シグナル伝達経路に着目し解析している。
これらの研究は、細胞が環境に応じてさまざまな応答を起こす仕組みの理解と、新たな製薬標
的の発見に貢献することが期待される。
16
遺伝学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~genetics/index.html
教 授 三浦 正幸
准教授 千原 崇裕
助 教 山口 良文 助 教 古藤 日子
助 教 小幡 史明 個体の発生・成長・老化・行動を細胞社会という視点から捉える研究
研究課題
①発生・成長・老化における細胞死シグナルの調節と生体機能
②細胞死による組織の細胞数(定足数)とサイズの制御機構
③神経回路の形成と維持機構
④発生・発達の代謝による制御
⑤冬眠を可能とする分子機構
⑥社会環境応答の神経メカニズム
プログラム細胞死は、ダイナミックな組織形成や組織リモデリングにおいて積極的な役割を
果たしています。当研究室の研究から胚発生や成長老化期では生体ストレスに応じてカスパー
ゼが段階的に活性化され多様な生理機能を果たすことが明らかになってきました。細胞死シグ
ナルの生体制御とその生理的な役割を個体レベルで明らかにすることで、生体ストレスの受容
と応答による細胞社会構築原理の解明を目指しています。
細胞社会という視点から時間とと
もに変化する個体発生、成長、老化、行動を捉える研究課題として、「組織の定足数・サイズ
制御」、「神経回路の形成と維持機構」、「発生発達期の代謝制御機構」「冬眠を可能とする分子
機構」、「個体行動を司る脳内状態」を対象とした研究を進めており、様々な生物を研究に活用
して、面白い生命現象を新しい視点、最新の解析手法で解明していきます。このように様々な
生命現象・生物種を1つの教室で扱うことにより、幅広い視野から対象を掘り下げて探求する
図1:傷害、感染、浸透圧、圧力など生体内の細
胞は様々なストレスに曝されている。ストレスを
受けた細胞では、カスパーゼを含む蛋白質複合体
が形成される(左図)。細胞が生きた状態でカス
パーゼ活性化レベルを検出できる蛍光プローブ
“SCAT”の原理(右図)。SCAT を用いてカスパー
ゼが徐々に活性化していく様子を疑似色の変化
(赤から青)で示す(左下)。
図2:ショウジョウバエ外感覚器前駆体細胞の誕
生と細胞死による選別
図3:マウス頭部神経管閉鎖での細胞死ライブイ
メージング図
図4:ショウジョウバエ脳内の嗅覚系神経細胞を
標識・操作する
力を持った学生を育成します。
細胞情報学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~toxicol/index.html
教 授 一條 秀憲 助 教 関根 史織
講 師 名黒 功 助 教 服部 一輝
助 教 本間 謙吾
シグナル伝達研究から創薬へ
研究課題
① ASK ファミリー分子群のシグナル伝達制御機構と生理機能
②細胞死ならびにストレス応答に関与する新たなシグナル伝達分子の探索
③ストレスシグナルの破綻による疾患発症の分子機構
図1 哺乳類の MAP キナーゼ経路
細胞情報学教室では,細胞内シグナル伝達機構の解析をメインテーマとし,新しい創薬ター
ゲットの発見ならびに各種疾患の分子基盤の解明を通じて,シグナル伝達研究を創薬的応用に
発展させることを大きな研究目標としている。特に,癌,免疫疾患,循環器疾患,神経変性疾
患など,多種多様な疾患の鍵を握る分子機構としてのストレス応答シグナルの生理と病理に焦
点を当てて研究を行っている。研究手法としては,遺伝子クローニングから蛋白化学に至るま
での分子細胞生物学的手法や,マウス,ショウジョウバエ,線虫などのモデル生物を用いた分
子遺伝学的手法を基本としながら,質量分析計によるプロテオーム解析や RNAi ライブラリー
を用いた網羅的遺伝子ノックダウンスクリーニング系の構築など,随時新しい解析技術のスト
レスシグナル研究への応用を試みている。これらの手法を駆使して「標的分子と分子機構」を
解析する中で,常に「個体と疾患と創薬」を意識しながら新しい薬学分野の開拓を目指している。
図2 分子・細胞・個体レベルでのストレスシグナル解析
17
蛋白質代謝学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~tanpaku/
教 授 村田 茂穂 助 教 濱崎 純
准教授 八代田英樹
助 教 平山尚志郎
タンパク質分解が制御する多様な生命現象を解き明かす
研究課題
①超分子タンパク質分解酵素プロテアソームの動作機構の解明
②プロテアソーム機能異常と疾患(がん、炎症、老化、神経変性)
③胸腺特異的プロテアソームによる T 細胞選択機構の解明
④ユビキチンシステムによる異常タンパク質除去機構の解明
ユビキチンプロテアソームシステムによる
タンパク質分解の多彩な生理的役割
蛋白質代謝学教室では、細胞内の主要なタンパク質分解装置であるプロテアソームによる細
胞機能制御機構の解明をメインテーマとし、細胞生物学、生化学、マウス発生工学、酵母遺伝学、
ショウジョウバエ遺伝学など幅広い手法を用いて研究を行っています。
プロテアソームはユビキチン化されたタンパク質を分解することにより、細胞周期、転写制御、
シグナル伝達、タンパク質品質管理をはじめとした様々な生命活動において必須の働きを担っ
ています。近年、がん、神経変性、代謝異常、幹細胞機能維持、老化などのヒトの主要な疾患
や生理作用において、プロテアソームの量や活性の上昇あるいは低下が関与していることが明
らかになってきました。しかし、プロテアソームの発現や活性がどのように制御されているの
か、またこれらの病態や生理とプロテアソーム機能の増減がどのように関連しているのか、そ
の具体的な分子機構はほとんど未解明です。当教室では、
プロテアソームを制御するメカニズム、
プロテアソーム機能の破綻とヒトの疾患
およびプロテアソーム機能の破綻によりこれら病態に至るメカニズムの解明を目指します。
微生物薬品化学教室
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~bisei/
教 授 関水 和久 助 教 濱本 洋
准教授 垣内 力
助 教 松本 靖彦
カイコ幼虫の病態モデルを利用した創薬基盤の確立を目指しています。
研究課題
①黄色ブドウ球菌の病原性発現機構に関する遺伝学的並びに生化学的研
究
②病原性真菌の病原性発現機構に関する遺伝学的並びに生化学的研究
③カイコ幼虫の感染モデルを利用した感染症治療薬の探索研究
④カイコ幼虫を利用した自然免疫系活性化機構に関する研究
⑤カイコ幼虫の病態モデルの確立に関する研究
感染実験に用いるカイコ 5 令幼虫。昆虫の中では
比較的大型のため、扱いやすく精度の高い実験が
可能で、一度に多数のサンプルを扱うことができ
る。さらにマウスと比べ倫理的な問題や飼育コス
トの点で優れている。
当教室では、カイコ幼虫の病態モデルを作出して、従来にはなかった創薬コンセプトを確立
することを目指している。長い養蚕業の歴史の中でカイコ幼虫の飼育方法が確立されている。
またカイコ幼虫には、いつでも簡単に利用できる、という特徴がある。さらに、カイコ幼虫は、脳、
神経、筋肉、肝臓、腎臓、心臓、消化管、など、ほ乳動物に存在するほとんどの臓器を備えて
いる。したがって、あらゆる病態モデルの確立が可能であるはずである。現在当教室が最も力
を入れている研究テーマは感染症である。多剤耐性の黄色ブドウ球菌 MRSA、緑膿菌 MDRP、あ
るいは病原性真菌の出現が医療現場において深刻な問題を引き起こしている。当教室では、カ
イコ幼虫の感染モデルを用いて、これらの微生物の病原性発現機構の理解を目指している。こ
の研究は、病原性発現をターゲットとするという新しいコンセプトの感染症治療薬の開発に役
立つと期待される。また、自然免疫の分子機構が昆虫とほ乳動物で共通している点に着目して、
カイコ幼虫の自然免疫活性化に関する研究を行っている。自然免疫を活性化させる物質は、感
染症ばかりでなくさまざまな疾患の克服に役立つと期待される。
18
カイコ幼虫筋収縮モデル。おもりで体を伸張させた左の
幼虫に、D- グルタミン酸を注射すると、右のように筋
肉収縮が起こり、体長が短くなる。カイコ幼虫では Dグルタミン酸が筋収縮に関わる可能性を明らかにした。
分子薬物動態学教室
教 授 楠原 洋之
講 師 前田 和哉
助 教 林 久允
助 教 水野 忠快
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~molpk/index.html
薬物分子の体内動態を解明し、安全な医薬品のデザインと医薬品適正使用に貢献する
研究課題
①薬物の体内動態及び薬効の試験管レベルから個体レベルへの再構築 :
遺伝子多型による体内動態の個人差および薬物間相互作用の予測
②薬物の肝腎振り分け機構、血液脳関門透過機構の解明
③トランスポーターの膜局在制御の解明
④トランスポーターの利用によるドラッグデリバリーシステム(DDS)
の開発
⑤薬物による組織毒性発現機構の解明
⑥トランスポーターの転写制御・エピジェネティック制御機構の解析
生体内の主要な異物排泄臓器である肝臓と腎臓には、種々
トランスポーターが発現していることが明らかにされてき
た。その中には基質選択性の似たものもあり、こうしたト
ランスポーターを利用することで、医薬品の体内動態特性
を最適化できると考えている。図には、薬効標的を同じく
するものの、体内動態特性を最適化することで、個人差を
小さくすることに成功した医薬品の例を示した。
薬物による効果や副作用を予測するためには、薬物分子の体内での動きを知ることが必須で
す。しかし、薬物は様々な物性を持っているために、一概にそれらの動きを説明することはで
きません。私たちは、これらの薬物を細胞内へ取り込んだり排出する働きを持つ、薬物トラン
スポーター群の性質を知ることで、薬物がどのような動態特性を示すのか予測できるのではな
いかと考えています。薬物速度論、生化学的および分子生物学的手法といった様々な手法を用
肝胆系輸送の high throughput screening システムとして、
肝臓への取り込みと胆汁中への排泄を行う2つのトランス
ポーターを一つの極性細胞に発現させた(ダブルトランスフェ
クタント)。ダブルトランスフェクタントでは胆汁排泄に対応す
る方向性のある経細胞輸送(ベクトル輸送)が観察される。
生体内では、脳や腎臓においても、このように複数のトラン
スポーターが機能的に協関することで、効率的な異物排泄シ
ステムを形成している。
いて、肝臓、腎臓、小腸および脳における薬物トランスポーターの解析を行っています。また、
薬物の効き方には個人差があることが知られています。上記の研究を通して、私たちはこの個
人差に薬物トランスポーターが大きく関与していること、また他の薬との相互作用の原因にな
ることも見出してきました。こうした研究は、最終的に副作用を最小限に抑え、薬効を最大限
に引き出すことのできる医薬品の開発、使用法の確立につながるものであり、テーラーメード
医療時代を見据えた重要な研究領域であると自負しています。
薬品作用学教室
http://www.yakusaku.jp/
教 授 池谷 裕二
准教授 小山 隆太
助 教 佐々木拓哉
薬を使って脳を究める ( 分子から個体まで、ミクロの解像度でマクロに解析する )
研究課題
①遺伝子発現を用いた学習・情動に関与する神経回路の網羅的全脳解析
②多ニューロン可視化による神経回路の作動原理の研究
③軸索ガイダンスの機構解明と再生医療への応用
薬理学は「薬の生体に対する作用解明」と「疾病治療薬の開発方法を探る」を二本柱とした、
文字通り " 薬を理解する学問 " です。分子レベルから全身動物までの幅広い知識と高度な技術
を駆使して、研究を進めています。
私たちの研究室では「記憶や情動に深く関係する大脳辺縁系や大脳皮質の役割」を研究して
います。とくに、海馬体の機能的役割や扁桃体による調節機構に興味をもち、電気生理学・光
生理学・行動薬理学・組織化学・分子生物学などのさまざまな実験技法を応用しながら、科学
的難題に立ち向かっています。最初期遺伝子の発現を指標に、神経活動の履歴解析にも取り組
んでいます。異種シナプス間の相互作用、スパイク列の時空間的解析、うつ病、てんかんや脳
血管障害などとの関連解析などマクロ的視点に立った解析が特徴です。
脳が高次機能を発揮するためには、機能的神経ネットワークがバランスよく活動することが
必須ですが、そのメカニズムはいまだ神秘のベールに包まれています。私たちは最先端のイメー
ジング技術を利用して、ニューロン一個一個の解像度を保ちながら、ネットワーク内のニュー
ロン活動を記録することに成功しました(図1)。スパイク列の時空パターンを解析すること
により、構造と機能の解析に取り組んでいます。軸索の伸長やシナブス形成機構についても研
究を進め、さまざまな調節機構を明らかにしています(図2)。これらの発見は将来の再生医
療にも重要な知見となります。
図1 海馬ニューロンが活動する様子をリアルタ
イムで捉えました
図2 神経線維を可視化して軸索ガイダンスを解析して
います
19
機能病態学教室
教 授 富田 泰輔
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~neuropsc/
助 教 堀 由起子
助 教 高鳥 翔
神経精神疾患の分子病態解明から治療薬開発の糸口を、そして同時に新しい基礎研究分野を切り拓く
研究課題
①γセクレターゼによる膜内配列切断システムの理解
② Aβ代謝メカニズム(産生、分泌、分解)とその制御の研究
③アルツハイマー病リスク因子がもたらす分子病態
④細胞内小胞輸送の破綻と疾患
⑤神経細胞シナプス接着分子の代謝メカニズムと機能
機能病態学教室では、疾患基礎研究を通じて治療・予防・診断法の開発につながる発見を目
アルツハイマー病の発症に関わるアミロイドβ代
謝システム
指すと同時に、新しい基礎研究分野を開拓することを目標として研究を行っています。特にア
ルツハイマー病、自閉症・統合失調症など神経精神疾患に関連して、発症原因・メカニズムを
分子レベルで明らかにし、新たな創薬標的分子機構の同定につなげていこうと考えています。
そして同時に、その過程で明らかになる基礎生物学的な発見についても興味を持って研究を深
めていきます。異常な状態を知るためには、正常な状態を知らねばならないし、その逆もまた
然りです。このサイクルが疾患基礎研究と基礎生物学の根幹をなしていて、その結果お互いの
裾野を拡げ、新たな生物学が切り拓かれてきたと考えています。私達は有機化学研究者、構造
生物学研究者、臨床医学研究者、製薬企業などとの共同研究も積極的に行い、それぞれの分野
での研究展開をお互いに学んで視野を広げながら、マルチディシプリナリーな疾患基礎研究を
展開していこうとしています。
医薬品評価科学教室
神経活動依存性 Neuroligin 代謝メカニズム
客員教授 藤原 康弘
准教授 小野 俊介
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~regsci/index.html
医薬品の有効性と安全性の評価科学を確立する
研究課題
①信頼性の高い薬効評価データを生みだす方法論の開発
②医薬品及び医薬品開発技術の価値評価に関する研究
③医薬品開発ガイドラインの評価研究
④ 1-3 を調整するシステムの開発と具体的施策を支援する研究
新薬(2001 年- 2006 年)の米国の承認用量と日
本の承認用量の比の分布
社会における医薬品の価値の評価科学を確立することを本講座の目的とする。その実践とし
て、現在の有効性・安全性の評価方法や新薬研究開発プログラムの効率性・妥当性に関する研
究を実施しており、研究成果をガイドラインや研究開発活動の改善に結びつけるための提案を
行っている。医薬品規制全般に関して、社会に対する説明責任と透明性を確保するための方策
を提案することも視野に置く。また、産業界及び行政において医薬品の評価とそのためのデー
タ作成に携わる人材の養成に取り組んでいる。大学という環境を生かし、薬学部の学生・大学
院学生のみならず、産業界のエキスパートや行政担当者にも開かれた柔軟な教育プログラムを
提供している。
20
日本と米国の新薬開発成功率と開発の遅れの関係
薬用植物化学教室(薬学部附属薬用植物園)
准教授 折原 裕
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~oriharay/index.htm
古くて新しい薬“薬用植物(生薬)”を総合的に解析し、新たな利用法を開発する(附属薬用植物園)
研究課題
①薬用植物の栽培と組織培養
②植物組織培養技術を利用した有用二次代謝産物の生産
③植物由来生物活性物質の化学と生合成
人類にとっての薬は有史以前から主として植物が用いられ、長い間の試行錯誤(人体実験)
第1温室(検見川)
により淘汰され、残ったのが現在の生薬と考えることができる。近年、抗生物質や生物製剤の
割合が増えてきてはいるが、植物由来の医薬品の重要性が減るものではなく、新たな医薬品と
してタキソールやビンブラスチンなどが発見されている。このように、薬用資源としての植物
の研究はすでに完結したものではなく、未だ発展途上である。
薬学系研究科附属薬用植物園は検見川総合運動場に隣接しており、昭和 48 年に正式に設置
された。当時移植した苗木たちも大きく成長し、園内を囲むように鬱蒼と茂っている。
本郷の研究室では植物組織培養技術を利用した有用二次代謝産物の生産に関する研究(培養
細胞の誘導から物質生産まで)を行っている。現在進行中の研究課題としては、カヤ、スギな
どの裸子植物培養細胞のジテルペン成分の生合成、トリカブト培養組織によるジテルペンアル
カロイドの生産と生合成、オリーブ培養細胞によるフェニルエタノイドの生産と生合成、エジ
ウラルカンゾウ (Glycyrrhiza uralensis Fisher)
根およびストロンに甘味物質 glycyrrhizin が含まれる
プト産薬用植物の生物活性成分の組織培養による生産などがある。
生体化学教室(分生研・生体有機化学分野)
http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/chem/IMCB-8ken-HP/Index.html
教 授 橋本 祐一 准教授 石川 稔
講 師 藤井 晋也
生命現象の理解を指向した生物応答調節剤の創製(分生研)
研究課題
①タンパク質の時空間依存的な発現と機能を制御する分子の創製
②核内受容体を標的とした創薬化学研究
③タンパク質のトポロジーとダイナミズムを制御する生物応答調節剤の
設計と合成
④多能性を有するサリドマイドを鋳型とした新創薬法の展開
当研究室では創薬化学・有機合成化学を基盤とした新しい生物応答調節剤の創製を行い、そ
れらを利用し、生命現象の理解を目指しています。
「低分子化合物によるタンパク質の構造・フォー
ルディング制御」に関する研究のひとつとして、
「フォールディング異常変異型ロドプシンの細胞内
局在異常の修正」という研究を進めています。こ
の例ではロドプシン変異による網膜色素変性症に
焦点を当てていますが、今後は特定タンパク質の
フォールディング異常に基づく各種疾患に幅広く
応用していくことを考えています。
多くの生命現象はタンパク質の発現・局在・分解によって制御されています。
これまで、タンパク質の発現を制御する研究においては、核内受容体を対象にその制御分子と
してアゴニスト、アンタゴニスト、パーシャルアゴニスト等の創製に成功しています。
一方、タンパク質分解によって生命現象を調整する機能性分子の設計および創製も行ってい
ます。siRNA とは異なる方法で標的タンパク質を随時破壊でき、細胞内情報伝達機構等タンパ
ク質の機能解析の画期的新手法として期待しています。見出されたツールを用いての生物応答
ネットワークの解明が目標です。
また、タンパク質のトポロジカルな構造を制御するフォールディング分子の設計・創製を行っ
ています。構造-機能を制御する化合物であり、生物応答調節剤ひいては医薬においても新た
な領域を開くものです。更に、多能性分子サリドマイド等を創薬テンプレートとした生物応答
調節剤の創製を行っています。
標的タンパク質分解誘導剤の創製研究の一例です。
cIAP1 のユビキチンリガーゼ活性を利用して、標
的とするタンパク質のユビキチン化およびプロテ
アソームによる分解を誘導する分子を各種、設計・
創製しています。
21
細胞生物化学教室 ( 医科研・分子発癌分野 )
http://www.traf6.com
教 授 井上純一郎 疾患発症に関わる細胞内シグナル伝達を解明し、創薬を目指す(医科研・分子発癌)
研究課題
① TRAF ファミリーによる転写因子 NF- κ B 活性化シグナル
②ユビキチン化によるシグナル伝達
③癌の悪性化とシグナル伝達
④骨代謝疾患とシグナル伝達
⑤自己免疫疾患とシグナル伝達
研究室のテーマは「癌」「免疫」「骨」である。実は、この3つとも“TRAF6”と”NF- κ B”
と呼ばれるタンパク質と深く関連している。TRAF6 はサイトカインのシグナルをその受容体か
TRAF6 は、細胞外からの刺激によって活性化され数種のタ
ンパク質をユビキチン化する。このポリユビキチン鎖は、
タンパク質分解は誘導せず、タンパク質間相互作用の足場
となり、シグナル複合体の形成を促し、シグナルを伝達す
る。その結果、転写因子 NF- κ B やタンパク質リン酸化酵
素 MAPK の活性化が誘導され、重要な生命現象が制御される。
また、その制御異常は、癌をはじめ重篤な疾患発症の原因
となる。
ら受け取り、細胞内へ伝達し、核での NF- κ B による転写活性化を誘導する。ヒトには種々の
骨代謝異常や免疫不全が原因の重篤な疾患が存在するが、それと酷似した疾患が TRAF6 や NFκ B のノックアウトマウスで再現される。このことは、TRAF6/NF- κ B シグナルが正常な骨形
成と免疫の成立に必須であることを示している。また NF- κ B の異常な活性化は白血病を始め
多くの癌においてその発症や進展に重要な役割を担っている。研究室ではノックアウトマウス
の作成及び解析や培養細胞への遺伝子導入実験を駆使して癌化、免疫制御、骨代謝における
TRAF6/NF- κ B シグナルの機能を分子レベルで解明するとともに、その成果を疾患の診断治療、
正常マウス(左)と TRAF6
ノックアウトマウス(右)
の X 線写真。手足の骨を見
ると顕著であるが、正常マ
ウスに比べて TRAF6 ノック
アウトマウスでは、骨密度
が異常に高く骨大理石病を
呈する。これは、リウマチ
や骨粗鬆症の悪化に関与す
る破骨細胞ができないため
である。
創薬に役立てることを目標としている。
臨床薬物動態学教室(医学部附属病院薬剤部)
http://plaza.umin.ac.jp/~todaiyak/
教 授 鈴木 洋史
講 師 高田 龍平
各生体分子の機能が集積・統合されたシステムとして生体を理解し、次世代の創薬手法を確立する(薬剤部)
研究課題
①脂質・胆汁酸・尿酸などの生体内輸送を制御する分子メカニズムを解明し、それらの
統合的理解に基づく生活習慣病治療法の確立を目指した研究
②骨吸収・骨形成に関わるシグナル分子の動的制御メカニズムを解明し、それらの統合
的理解に基づく骨代謝疾患治療法の確立を目指した研究
③創薬段階で意図しなかった分子に対する作用を包括的に考慮した、分子標的抗がん剤
の薬理・毒性発現メカニズムの定量的理解と、臨床応用および新規創薬手法の確立を
目指した研究
④大規模オミクス解析を用いて、薬物の副作用発現に関わる分子メカニズムを解明し、
それらの定量的な理解に基づく副作用発現の予防・治療法の確立を目指した研究
⑤薬物の体内動態に関連する分子機能の精密な定量化に基づく臨床薬理動態学研究
これまでの生命科学においては、生体を構成する各種要素を分子レベルまで細分化して機能を明ら
かにしていけば、生命活動の全貌を理解することに繋がると考えられてきました。しかしながら、ゲ
ノム解読以降の膨大な情報が蓄積してくるにつれて、各生体要素の分子レベルでの機能と、生命活動
全体において果たしている機能の関係は、単純な一対一対応では理解できないことが判ってきました。
例えれば、車の重要な部品と思われるあるネジがあったとして、その部品のネジとしての機能だけを
詳細に調べても、車全体におけるその部品の役割は明らかにならないことに似ています。やはり、数
多くの部品がどのように組み上がって全体を構成し、各部品がその中のどこに位置してどの程度機能
し、全体としてどのように動作しているのかを明らかにする必要があり、これがすなわち生命活動を
「システムとして理解」することに対応していると言えます。薬剤部では、より確実で効率的な次世
代の創薬手法を実現するためには、生体をシステム的に理解することが必要不可欠であると考えてい
ます。創薬標的になり得る複数の候補分子の中から、最も効果的な標的分子を同定する、あるいは創
薬段階の初期において、発現しうる副作用を包括的に予測するなど、現在では未だ解決困難な問題点
に関して、システム薬理学の手法を用いて解決することを目指して研究を展開しています。
22
ファーマコビジネス ・ イノベーション寄付講座
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~pbi/index.htm
教 授 木村 廣道
講 師 桝田 祥子
助 教 櫻木 誠
ライフサイエンスとビジネスがともに分かるクロスオーバー型人材の育成
研究課題
医薬・ライフサイエンス分野における下記①-③
①産業構造変化の要因分析(産業構造論)
②企業、大学、医療機関等における経営課題の解決(マネジメント・戦
略論)
③産業振興育成のための新たな社会システムの提言(産業政策論)
「PBI の基本コンセプト」図
日本が科学技術立国として将来に亘り持続的な発展を目指すなか、医薬・ライフサイエンス
領域は国家戦略的に重要な位置を占めている。その一方で、グローバル化が進む医薬産業にお
いて、市場としての日本国の位置づけは、年々低下している。このような状況下、医薬産業が
持続的に発展するためには、産業特有の事情を踏まえ、イノベーションとパブリックヘルス、
国際競争と国際協調などの視点を考慮した多面的な産業研究を行い、社会基盤の整備を行う体
制が必要である。
本講座の目的は、社会のニーズに即した教育および産業研究を機動的に実施し、その成果を
速やかに社会還元することにより、日本の産業振興に貢献することである。これを実現するた
め、①医薬・ライフサイエンス産業の学術的研究、②創薬促進のための基盤整備、③「リーダー」
人材の養成、の3つを軸とした活動を展開している。
育薬学寄付講座
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~druginfo/index.html
PBIセミナーの講演
教 授 澤田 康文
准教授
(兼) 堀 里子
講 師 三木 晶子
助 教 佐藤 宏樹
医薬品ライフタイムマネジメント -よい薬を創って、ただしく使って、じょうずに育てる-
研究課題
①医薬品市販後情報の収集、評価、解析、提供に関する方法論の開発と
実践
②地域医療における医薬品適正使用 ・ 育薬推進のためのプログラム作成
③ ②を実践する薬局における新機能の開発
④医薬品情報の規格化・標準化・電子化及びその臨床応用
⑤生体擾乱因子が薬物の動態・作用に与える影響の定量的予測
大学薬学部は、創薬、「医薬品適正使用・育薬 ( 市販後に医薬品を正しく使って、うまく育
医薬品開発のセントラルドグマは、創薬→医薬品適正
使用→育薬→創薬→・・・・・・・のサイクルである。
てること )」を推進して薬物治療の質を改善するという社会的使命を背負っている。そのため
育薬学講座では、この世に生を受けた(開発・上市された)医薬品が、その力を十分に発揮し
充実した「薬の人生」をおくることができるようにする(これを医薬品ライフタイムマネジメ
ントという)ためのさまざまな研究を展開している。
この医薬品ライフタイムマネジメントのバックグラウンドとなるのが、我々の研究フィール
ドである「育薬学」であり、そこでは医薬品市販後情報の 1) 適正・的確な収集、2) 薬物動態・
動力学に基づく評価・解析と種々危険因子による薬物動態・作用変化の定量的予測、3) 個々
症例 ・ 事例の質的評価・解析、4) 最適な規格化 / 標準化 / 電子化に基づくアーカイブの創製、5)
医療現場に対するそれらの適正・的確な提供、などを取り扱う。具体的には、医薬品市販後の
諸問題(医薬品が関係したトラブル ・ ニーズなど)を捉え、医療現場にフィードバックするこ
と、更に、それらを速やかに解決するために、製薬現場に対しては、医薬品とその情報の進化
を目指した提案を行うことになる。
医薬品市販後情報を適正 ・ 的確な手法(誰から?ど
こから?どの様な方法で?)で収集する。
23
医薬政策学寄付講座
客員教授 津谷喜一郎
助 教 五十嵐 中
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~utdpm/
医療資源の効率的利用を目指し、自然・社会科学を融合した新たな学問領域を開拓します
研究課題
①ジェネリック医薬品の現状分析とヘルスシステムの中の合理的使用のあり方
②生物学的製剤などの高価な医薬品の経済分析
③ファーマコジェネティックスによる個別化医療
④漢方・相補代替医療の現状分析と安全性・有効性・経済性の研究
⑤医薬品ギャップの解消
医療費が年々増大し、現行の保険医療システムが岐路に立たされています。医薬品の合理的
使用ー限られた予算の中で医薬品を効率的に利用するためには、どの医薬品が効率的かを判断
せねばなりません。効率性の検討には、有効性・安全性の指標であるクリニカル・エビデンス、
そして経済性の指標となるエコノミック・エビデンス双方の評価が必要です。当講座では開発
中または市販後の医薬品 ( 関節リウマチ、がん、喫煙、高血圧など ) の経済評価を行うととも
に、経済評価データベースの構築などを進めています。
薬剤の効率性を評価するには、行政や企業、医療機関、患者など、どの立場から分析を行う
かが重要になります。本講座では、すべての立場を包括する社会的視点に立ったうえで、ヘル
スサービスにおける医薬品のあり方、その評価を行うための方法論の研究、実際の解析、政策
分析などを行い、政策への提言など社会への還元を目指します。
海外医薬品価格データソースのリンクサイト
Global atlas of drug prices URL: http://
dprice.umin.jp/
疾患細胞生物学講座
教授(兼)
新井 洋由
准 教 授 田口 友彦
細胞内物質輸送の分子基盤の理解とその破綻による疾患
研究課題
ゴルジ体
リサイクリングエンドソーム
核の配置
①物質の取り込みと分泌という二つの異なる方向性を持った輸送を制御
するエ ンドソームの分子基盤
②エンドソームの機能破綻により生じる細胞現象
③エンドソームの機能破綻に起因する疾患
④細胞内物質輸送を制御する低分子化合物の探索
我々の体を構成する真核細胞は多数の細胞小器官を有しています。各細胞小器官はそれぞれ固有の機能を果
たすとともに小胞を介して物質のやり取りを頻繁に行っており、その結果、細胞小器官全体を繋ぐ広大な物質
の交通網が細胞内に整備されています。細胞内で生合成されたタンパク質および脂質は、この交通網を辿るこ
とによって細胞内の適切な場所に運搬され、適切に機能しています。細胞の表面で機能すべき受容体タンパク
質が表面に運搬されないと細胞の外のシグナルを感知することができずに疾患の原因になります。また過剰に
運ばれてしまうと、これも過剰なシグナルを細胞内に産生することで癌などの疾患の原因となってしまいます。
細胞に侵入した後のコレラ毒素の輸送
蛍光標識したコレラ毒素を COS-1 細胞に取り込ませ、取り込ま
せた時間を0分として一定時間経過後、蛍光顕微鏡で観察しま
した。15 分後にゴルジ体の内側の空間(リサイクリングエンド
ソーム)へ、75 分後にゴルジ体へ順次輸送されていくのがわか
ります。
まさに、細胞は”適材適所”ということを知り、生体分子を細胞内に配置しているといっても過言ではありま
せん。
今までの疾患治療薬の多くは、疾患の原因となる酵素や受容体などの活性を直接阻害するまたは亢進させる
ことを目的として設計されてきましたが、今後は、細胞内で機能する場所という情報まで視野に入れ、疾患で
損なわれた生体分子の”適材適所”を実現させる創薬戦略も可能になるであろうと予想されます。本講座では、
細胞の持つこの物質の交通網の制御機構を分子レベルで理解することにより、”適材適所”の創薬を確立する
ことを目標とします。特に、物質の取り込みと分泌という二つの異なる方向性を持った輸送を制御するリサイ
クリングエンドソームをモデルとして、その機能破綻による細胞現象および疾患の同定を行います。
24
リサイクリングエンド
ソーム局在タンパク質
evectin-2 を 細 胞 か ら 欠 失
させると、コレラ毒素がリ
サイクリングエンドソーム
から脱出できなくなり、90
分後でもゴルジ体に移動で
きません。
レオポルド・ミュルレル
下 山 順 一 郎
1869( 明治2) 年、 明治 新
政府はドイツ医学の採用を決
定し、ドイツ北部連邦公使に
2名の医学教師の派遣を要請
した。1871
(明冶4)年8月、ミュ
ルレル(陸軍上等軍医正・外科)
とホフマン(海軍軍医正・内科)
が来日し、下谷和泉橋の東校
(東
京大学医学部の前身)に着任
した。
ミュルレルは 1824 年ドイツ
Dr. Leopold Müller 1824 ~ 1893
のマインツ生まれ。ボン大学と
ベルリン大学で医学を学び、プロシア陸軍軍医学校教官、普仏戦
争では野戦病院長を務めた。文部卿(大臣)直属のミュルレルとホ
フマンはわが国の医学教育に全権をもち、過酷なまでに峻厳な改
革を行った。約 300 名の東校の在学生は 59 名を残して退学とし、
新たに予科3年(翌年2年に変更)、本科5年の課程を定めた。
また「薬学」は医学と密接に連携する自然科学の独立分科である
とし、製薬学校設立を提案した。これにより1873(明治6)年第一
大学区医学校に製薬学科(東京大学薬学部の前身)が設置された。
ミュルレルは3年間の契約終了後、1875(明治8)年に帰国、
1893 年にベルリンで没した。三回忌にあたる 1895(明治 28)年 10
月、日本の医学・薬学の恩人として、胸像 ( 制作 藤田文蔵)をこ
の高台に設置した。胸像は戦後盗難にあったが、1975 (昭和 50)
年に復元された。
薬学部の色
薬 学 部 章
法
学
部
緑 色
医
学
部
赤 色
工
学
部
白 色
文
学
部
桃 色
理
学
部
樺 色
農
学
部
紫 色
経 済 学 部
青 色
教養学部文科
黒 色
教養学部理科
黄 色
教 育 学 部
橙 色
薬
臙脂色
学
部
1853(嘉永6)年尾張犬山
で生まれた博士は、1870(明
治3)年犬山藩の貢進生に選
ばれ大学南校(東京大学の前
身)に入学した。1873(明治6)
年9月学則の改正により、第
一大学区医学校製薬学科(東
京大学薬学部の前身)に転学
し、1878( 明 治 11) 年 3 月
同学科の一期生として卒業、
医学部第一回学位授与式では
しもやま じゅんいちろう
卒業生を代表して答辞を朗読
1853 ~ 1912
した。
博士は 1886(明治 19)年、かつて3年間留学したドイツの
ストラスブルク大学より Doktor der Philosophie、1899(明
治 32)年にはわが国の薬学博士第1号を授与された。
博士は 1881(明治 14)年医学部助教授、1887(明治 20)年
医科大学薬学科教授、1893(明治 26)年薬学第一講座(生薬学)
教授として、教育・研究に尽力されると同時に、東京薬学会(現
日本薬学会)の創立や、私財を投じた薬草園(是好薬園)の開
設等を通し、後輩の育成にあたった。
博士は、在職中の 1912(明治 45)年2月急逝。先生を偲ぶ
ために 1913(大正2)年薬学科教室玄関脇に銅像(制作 武
石弘三郎)を設置した。その後建物の整備に伴い、この場所に
位置を変更した。
薬学部第 90 回教授総会(昭和 38 年 11 月 13 日(水))協議
事項「4.薬学部の表示カラーについて」の資料より作成。
[同議事録6ページ]
4.薬学部の表示カラーについて
このことについて、伊藤学部長より先般の運動会(当日の運
1958(昭和 33)年、薬学部が独立したとき
決められた薬学部章。
ギリシャ文字で「くすり」をあらわすφαρμ
ακοの頭文字の大文字「Φ」である。当時は
バッジなどに利用された。なお、独立以前のバ
ッジは「医学部薬学科」のため『M』だった。
1988(昭和 63)年、薬学部創立 30 周年を記
念し、公募して選ばれた新しい薬学部章。
薬学部章の「Φ」を東京大学のシンボル、銀
杏の葉で表す。葉の軸の部分は「∞」をかたど
り、無限の可能性『薬学部は永遠なり』を意味
している。意匠は廣部教授(代謝)。
2008(平成 20)年、創立 50 周年を記念して
作成した薬学部章。
薬学を意味するギリシャ文字のファイ「Φ」
を、東大のシンボルマークである「銀杏の葉(旧
デザイン)」と永遠の発展を込めた無限大「∞」
の文字とで表わす。
動会では一応濃紺を使用した)において薬学部のカラーの表示
が確定してなかつたので、学生部より決定してほしい旨依頼が
あつたので諮られ、一同検討の結果臙脂色に決定した。
25
薬友会は東京大学薬学部ならびに東京大学大学院薬学系研究科の在学生、卒
業・修了生、研究生および教職員で構成される親睦組織であり、会員相互の
親睦をはかり併せて文化、教育の向上に資することを目的としています。
東大薬友会 役員一覧
最 高 顧 問
会 友 顧 問
会
長
副
会
長
副
会
長
副
会
長
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
顧
問
評
議
員
26
柴 田 承 二
金 岡 祐 一
小 林 利 彦
柴 﨑 正 勝
市 川 和 孝
嶋 田 一 夫
松 尾 壽 之
宇 井 理 生
廣 部 雅 昭
山 崎 幹 夫
宮 坂 貞
国 枝 武 久
野木森 雅 郁
庄 田 隆
手代木 功
浅 野 敏 雄
花 井 陳 雄
三津家 正 之
永 井 恒 司
評
議
員
運 営 委 員
(広報担当顧問)
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
運 営 委 員
池
田
後
藤
尊
忠
良
冨 山 格
西 島 正 弘
林 正 弘
高 柳 輝 夫
豊 島 聰
入 村 達 郎
内 海 英 雄
杉 山 雄 一
長 野 哲 雄
澤 田 康 文
関 水 和 久
松 木 則 夫
廣 川 和 憲
太 田 茂
合 田 幸 広
猪 狩 康 孝
(2015.1.16 現在 )
運
運
運
運
運
運
運
運
運
運
運
運
運
運
運
運
監
監
学
営
営
営
営
営
営
営
営
営
営
営
営
営
営
営
営
委
委
委
委
委
委
委
委
委
委
委
委
委
委
委
委
員
員
員
員
員
員
員
員
員
員
員
員
員
員
員
員
事
事
生 代 表
横 山 祐 作
佐々木 茂 貴
新 井 洋 由
中 垣 俊 郎
長 屋 秀 明
堅 田 利 明
小 野 俊 介
船 津 高 志
冨 田 章 弘
一 條 秀 憲
武 田 健
笠 原 忠
川 西 徹
浦 野 泰 照
楠 原 洋 之
内 山 真 伸
桐 野 豊
野 島 庄 七
野 口 大 心
薬学部・大学院薬学系研究科小史
第一大学
区医学校
東京医学校
東
京
大
学
帝
国
大
学
東
京
帝
国
大
学
医
学
部
医
科
大
学
1873(明治 6)
学
部
東
京
薬
大
第一大学区医学校製薬学科(予科2年・本科3年) 第1回生 20 名
(神田和泉町の元大名屋敷・全寮制)
1874(明治 7)
1876(明治 9)
5. 7
11.
東京医学校製薬学科
本郷旧加賀藩邸に新築移転
1877(明治 10)
4. 12
東京大学医学部製薬学科
1878(明治 11)
3. 29
東京大学医学部第1回卒業証書授与式 9名
1879(明治 12)
10. 18
1886(明治 19)
3. 2
帝国大学医科大学薬学科(修業年限3年)
1890(明治 23)
7. 10
薬学科としての第1回卒業式 5名(薬学士)
1897(明治 30)
6. 18
東京帝国大学医科大学薬学科
1899(明治 32)
3. 27
薬学博士学位授与 4名(下山順一郎、丹波敬三、田原良純、長井長義)
1902(明治 35)
1.
論文審査 薬学博士学位授与 1名(永井一雄)
1919(大正 8)
4. 1
東京帝国大学医学部薬学科
1923(大正 12)
医
9. 1
春
東京大学医学部第1回学位授与式 1回卒9名 2回卒 10 名 (製薬士)
薬友会設立
1924(大正 13)
4. 19
母学振興期成会設置
1925(大正 14)
5. 25
財団法人 薬学振興会設立
1947(昭和 22)
10. 1
1949(昭和 24)
4. 1
1951(昭和 26)
4. 1
教養学部より第1回生が進学
1952(昭和 27)
4. 1
初めての女子学生3名が進学
1953(昭和 28)
4. 1
(新制)東京大学大学院化学系研究科薬学専門課程修士課程設置
1955(昭和 30)
4. 1
(新制)東京大学大学院化学系研究科薬学専門課程博士課程設置
1958(昭和 33)
4. 1
東京大学薬学部薬学科(医学部より独立)
1960(昭和 35)
4. 1
製薬化学科を新設
1965(昭和 40)
4. 1
東京大学大学院薬学系研究科(薬学専門課程、製薬化学専門課程)
1966(昭和 41)
4. 1
附属薬害研究施設を設置
1973(昭和 48)
4. 12
附属薬用植物園を設置
1976(昭和 51)
3. 31
附属薬害研究施設を廃止・転換し、生命薬学専門課程を設置
1987(昭和 62)
4. 1
大学院の「専門課程」を『専攻』に改称
1991(平成 3)
4. 1
製薬化学科を薬学科に統合
7. 1
学位の名称変更 薬学士→学士(薬学)
学
東京大学医学部薬学科
(新制)東京大学医学部薬学科(修業年限 前期2年・後期2年)
薬学修士→修士(薬学) 薬学博士→博士(薬学)
学
部
1996(平成 8)
4. 1
課程の名称を変更 修士課程→修士課程(博士前期課程)
第一種博士課程→博士後期課程
1997(平成 9)
4. 1
大学院重点化(分子薬学専攻、機能薬学専攻、生命薬学専攻)
2000(平成 12)
4. 1
修士課程に「医療薬学コース」を設置
2006(平成 18)
4. 1
薬科学科(4年制)、薬学科(6年制)を設置 (2006 年入学者より適用)
2008(平成 20)
4. 1
統合薬学専攻を設置
2010(平成 22)
4. 1
修士課程 従来の4専攻を廃止し、薬科学専攻を設置
2012(平成 24)
4. 1
博士後期課程 従来の4専攻を廃止し、薬科学専攻を設置
薬学博士課程(修業年限4年)薬学専攻を設置
27
薬学部・薬学系研究科の年間行事
4月上旬
4月上旬
入進学式、
ガイダンス、
前期授業と実習の開始
動物施設、RI 施設などの利用講習会
(4年生及び大学院生)
5月下旬
検見川グランドにて陸上運動会
5月下旬
薬用植物園の見学実習(3年生)
5月下旬
五月祭(3年生が中心)
7月中旬
留学生交流会
7~8月
大学院入試と結果の発表
9月上旬
11月上旬
後期授業と実習の開始(2年生第2ターム授業開始)
12月中旬
1~2月
博士課程論文発表会・薬学科卒業研究発表会
博士課程論文の審査
2~3月
修士課程論文の審査
3月上旬
修士課程論文発表会
3月上旬
薬剤師国家試験
3月
3月下旬
28
戸田ボートコースにおいて水上運動会
学部卒業認定
卒業式、大学院修了式
学部での生活
薬学部は1学年約 80 名と、東京大学の部局のなかでは、最
も小さなものの一つです。従って、学部在学者はすぐにお互い
に知り合い、先生方とも緊密な関係を保ちながら講義と実習を
受けることになります。薬学部における講義には主に大学院薬
学系研究科の教授、准教授、専任の講師の先生が担当します。
講義は有機化学や物理化学、生化学・分子生物学や医療薬学な
ど薬に関する幅広いものです。実習には、助教の先生方や TA
の大学院生も参加します。
2年生の秋に薬学部への進学が内定すると、火~金曜日には
本郷キャンパスの薬学部で、専門科目の講義が始まります。
3年生になると、午前中は講義、午後は実習というスケジュー
ルになります。講義は専門性の高いものが多くなります。3年
生の実習は2~4人の少人数で取り組みます。
4年生になると各教室に配属になり、研究の第一線に参加す
る薬学卒業実習が生活の中心となります。薬学部内の教室だけ
でなく、薬学系研究科の協力教室である医学部附属病院薬剤部
で卒業実習を受けることもできます。
平成 18 年度以降の入学者は、4年生になり各教室に配属さ
れる前、3年生の秋に4年制の薬科学科または6年制の薬学科
を選択することになります。薬科学科の場合には従来通り一年
間の卒業実習を行い卒業します。薬学科の場合には4年生の後
期に事前学習を受け、2月に共用試験(病院や薬局での実務実
習を受けるための試験。CBT と OSCE。)を受け、5年生前期
に半年間の実務実習を行います。実務実習期間以外は配属され
た教室で二年半の薬学実習・卒業実習を行います。
薬学部図書館には必要な書籍や新着学術誌が備えられている
だけでなく、マルチメディア機器を、誰でも使用できます。
また、薬学図書館1階にはロビーが設けられ、社交とリラクゼー
ションの場となっています。この空間は、進学式やその他の機
会に行われる、インフォーマルなパーティーの会場ともなりま
す。教室配属になる以前の3年生は、学生実習室付近のロッカー
室などの施設が使用できます。
大学院での生活
大学院生としての生活は、研究に明け研究に暮れることにな
ります。終夜の実験に備えて、仮眠を取る清潔な施設も男女別
に備わっています。
薬学系研究科の各教室及び関連教室(研究所)や医学部附属
病院薬剤部は、何れも世界的にその学問領域のリーダーとして
良く知られているので、本研究科で大学院生になることは、科
学の世界でオリンピックのナショナルチームに参加する機会を
得ることに近いと思ってよいでしょう。厳しくも生きがいに溢
れた充実した生活が待っています。
設備などの点でも異例に恵まれた研究環境で実験を行い、教
室のセミナーなどで鍛えられることによって、世界中で通用す
る科学者としての第一歩を踏み出すことができます。
大学院生本人が、国内外の学会、研究会、シンポジウムなど
で研究成果をしばしば発表するのは当然のことです。また、在
学中に国際的に良く知られた一流学術誌に論文を掲載すること
が求められています。
スポーツ大会などのイベント
教職員、事務職員、大学院生、学部学生などの薬学部・薬学
系研究科のメンバーが極めて親密で友好的な理由は、単に人数
が少ないということだけではありません。学部学生を中心とす
るクラブ活動以外に、陸上及び水上運動会、その他のスポーツ
大会、薬友会総会、留学生歓迎会等の多くの機会が設けられ、
学問以外の人間関係を育んでいます。これがまた、学問におけ
る幅広い見識と、研究上の新しい展開がもたらされる背景と
なっています。
29
学部(薬科学科)卒業者
学部(薬学科)卒業者
2.6%
1.3%
93.5%
H25
2.6%
12.5%
0.0%
H25
87.5%
3.8%
0.0%
15.4%
H24
80.8%
0.0%
0.0%
12.5%
H24
62.5%
25.0%
卒業後の進路
16.6%
81.0%
広い基礎と大きな展開の力
H23
を身につけて薬学部を卒業し
た人への社会的な評価は極め
て高く、従って、就職も比較
的容易です。卒業者のほとん
本修士課程進学
どは本学大学院薬学系研究科
それ以外の進学
の修士課程に進みます。学部
官庁・民間企業など
と大学院の出身者は、製薬、
その他
化学、食品系などの会社、大
学、国公立研究所、行政官庁
など幅広い分野で活躍してい
ます。薬学部を卒業し、薬剤師の国家試験に合格し
て資格を取得すると、薬事、食品、環境衛生などに
関連する資格や機会が得られ、社会などへの就職で
もほかの学部の卒業者に比べてユニークで有利にな
ります。
修士課程以上の研究歴を有する人を優先的に採用
する傾向が社会的に一層強まっています。定員が
100名の修士課程への入学試験は例年8月下旬に行
われ、本学他学部あるいは他大学から志望する人も
増えています。 大学院薬学系研究科の修了者の就職は多岐にわた
り、博士課程を修了して「博士」の学位を所得する
と、大学や国公立研究機関などアカデミックな分野
のみならず、会社の研究部門やプロジェクトなどの
リーダーとしての活躍の場が広がります。
30
42.8%
1.2%
1.2%
0.0%
H23
42.9%
14.3%
本薬学博士課程進学
それ以外の進学
官庁・民間企業など
その他
等
修士課程修了者
博士課程修了者
6.1%
4.0%
34.3%
H25
5.9%
23.5%
13.7%
H25
56.9%
49.5%
6.1%
3.0%
1.0%
44.5%
0.0%
39.3%
3.6%
H24
H24
48.5%
57.1%
3.0%
7.5%
1.2%
42.5%
25.4%
H23
H23
46.3%
2.5%
3.4%
25.4%
45.8%
本博士課程進学
学術振興会特別研究員
それ以外の進学
民間企業の研究所など
民間企業の研究所など
大学・官公庁・国立研究所・
海外留学など
大学・官庁など
その他
その他
NEC
IBM 等
等
等
31
小谷 直生さん
2012 年 3 月薬学科卒
分子薬物動態学教室
若き先輩からの
メッセージ
活躍する出身者たち
中外製薬株式会社
臨床開発部門
私は現在、製薬企業の開発部
門で臨床薬理機能の一員とし
て、研究段階から臨床段階へ
と 相移行する医薬品候補化合
物の First In Human 試験の推進に従事しています。大学で
は薬学部に進学後、薬学科及び分子薬物動態学教室への配属
を志望、薬学科カリキュラムに沿った講義・実習を経験しな
がら、研究室生活を送りました。以下、私の経歴に基づいて
薬学部の特徴とその魅力についてご紹介します。
薬学部で得たものは大きく三つあります。創薬に関する網
羅的な基礎知識、医療現場での薬物治療の実態に関する知見、
薬物動態の専門知識です。進学後、有機化学や分子生物学を
はじめ、創薬に関わる幅広い学問領域の基礎知識を講義や実
習を通して身につけました。薬学科・研究室への配属後は、
実臨床での薬物治療を講義と病院薬剤部・調剤薬局での実習
を通じて学び、並行して研究室で基礎研究に取り組むことで
薬物動態の専門知識を習得しました。創薬に携わる上で必要
な知識を各分野のトップレベルの先生方から学べること、薬
の研究から臨床までの幅広い知見・知識に触れる機会が用意
されていることは薬学部の大きな特徴であり魅力でもありま
す。
創薬研究、臨床開発、臨床薬物治療、いずれであっても「薬」
を通して医療に貢献したいと志す学生には最高の環境が用意
されています。薬学部を選ばれる皆様がそれを最大限活用し、
様々な分野の第一線で活躍されることを期待しています。
大木 優さん
2012 年 3 月博士修了
臨床薬学(機能病態学)教室
ドイツ神経変性疾患研究センター
ミュンヘン研究所 ゼブラフィッシュコア
研究員
“薬にならなければ意味がない”私
はこの考えの基、科学者を目指しま
した。そして、東大薬学部の恩師と
の出会いやその研究生活の中で、私
自身の進みたい具体的な道を見つける事ができました。
私は筑波大で修士号を取得後、東大薬学系研究科に入学し、
博士課程ではケミカルバイオロジーを学び、低分子化合物の
作用機序を解明致しました。
現在は、ドイツの神経変性疾患研究センターに留学し、ゼ
ブラフィッシュをモデル動物として、アルツハイマー病や筋
萎縮性側索硬化症 (ALS) の分子病態の解明に取り組んでいま
す。昨今は根本的治療を目指したメカニズムベースの治療薬
の作出が要求されていますが、私達は未だ多くの生命現象に
ついての理解は不十分です。そこで、個体システムそのもの
を利用した低分子化合物の探索(スクリーニング)が必要と
され、着目されるのがゼブラフィッシュです。脊椎動物であ
り、一度に大量の卵が得られ、かつ化合物を水に溶かせば自
動的に投与可能なためです。私は個体のスクリーニングとそ
の作用機序の解明を基盤として、薬の作出が実現可能である
と信じています。
東大薬には基礎生物学から有機合成・分析化学まで多岐に
渡る研究室があり、“異なる科学のスタイル”と容易に交流
でき、また気さくな先生方との雑談や議論を通して、自身の
研究スタイルを構築できる環境があります。ぜひ東大薬に入
学し、人として・科学者として学び、皆様が将来、様々な分
野でご活躍される事を期待しています。
32
田尾 賢太郎さん
2013 年 3 月博士修了
薬品作用学教室
理化学研究所
脳科学総合研究センター
研究員
私は薬学系研究科の博士課
程を修了後、理化学研究所において研究員として神経科学研
究に従事しています。大学院では神経細胞の形態形成につい
て、げっ歯類をモデル動物として、細胞生物学・病態生理学
的手法をもちいて研究していました。現在は電気生理学と、
近年急速に発展した光遺伝学の技術を統合し、行動中のマウ
スの脳活動を記録・操作するために日々尽力しています。
私が薬学部を志望した第一の理由は単純で、所属したい研
究室があったからでした。それに加えて、薬学という分野が
持つ学際性にも魅力を感じていました。研究室配属以降は実
験に明け暮れる日々でしたが、それ以前の学生生活でもっと
も印象に残っているのは学生実習です。週 5 日間ずつ午後の
時間を費やして実習をこなすという課程は理系学部としても
ハードな部類でしょう。しかしながら、実験科学の基礎的手
技を一年間かけて分野横断的に訓練していくことで、その根
本である「世界を操作する」感覚を習得するという経験は、
科学の現場においては勿論のこと、他分野においても、さら
には職業選択の枠組を超えて、知的に充足した生活を送るう
えで大きな役割を果たしてくれることと思います。皆さんが
この薬学部で研鑽し、多様な分野の第一線で活躍されること
を期待しています。
坂巻 裕子さん
志田 拓顕さん
2007 年 3 月修士修了
2013 年 3 月薬学科卒
薬化学教室
生体異物学教室
野村證券株式会社
エクイティ・リサーチ部
医薬・ヘルスケアチーム アナリスト
浜松医科大学 医学部附属病院
薬剤部 薬剤師
証券アナリストという職業を
ご存知でしょうか?企業の「株式」は市場で投資家が売買し
ていますが、証券アナリストは企業の業績を分析・予想し、
その株式の価格である「株価」が高いのか安いのかといった
ことを投資家にアドバイスする仕事です。私は証券会社で勤
務し、証券アナリストとして製薬企業やバイオベンチャーと
いったヘルスケア関連の企業を評価しています。薬学部生が
選ぶ職業としては異色です。薬学部生時代には有機化学の研
究室に所属し、薬として効果を持ちそうな化合物を合成して、
その薬効を評価し、どういった構造が最適なのかといったこ
とを研究していました。今、仕事で有機化学の専門知識を使
う機会はまずありません。しかし、薬学部で研究をする中で
培った物事を多面的に捉えて柔軟に進める姿勢は私のバック
ボーンです。薬学は学問としては応用の部類で、例えば純粋
に有機合成を追及するだけ、ということはありません。化合
物が体内で作用する経路を推測したり、さらに最適構造はど
ういう条件で決まるのか、など全く違ったことを複合的に考
えます。広い知見が求められる一方で、様々な分野へのアク
セスが可能です。専門以外のことを試してみようという意思
を妨げる気風は薬学部にはありませんし、異なる分野の研究
室同士も活発に交流し、切磋琢磨しています。ぜひ溢れる好
奇心をもって薬学部に進学し、さらに教授を困惑させるくら
いアイデア溢れる学生となってくれることを心より期待して
います。
市橋 伯一さん
私は薬学部に進学後、学科選択
において薬学科 (6 年制 ) を選択し
ました。現在は薬剤師として大学
病院で勤務しながら、博士課程に
進学し、臨床現場ならではの研究に取り組んでいます。
ここでは、東京大学薬学部ではややマイナーな存在である
薬学科の魅力について、ご紹介したいと思います。
そもそも私が薬学科を選択したのは、薬剤師になりたいと
いうよりも、薬や医療のことをもっと知りたいというのが理
由でした。東京大学の薬学部には創薬研究者を志す人が多く、
私も最初は漠然とそう考えていたのですが、進学して講義
などを受けるうちに、「薬を創るにはまず今の医療で患者さ
んが何を求めているのかを知る必要があるのではないか。自
分はまだ医療の実際について何も分かっていないのではない
か」と思うようになりました。そのようなときに、薬学科で
は医療現場で実習ができることを知り、薬や医療の実際につ
いて少しでも学ぶことができると考え、薬学科を選択しまし
た。
本学の薬学科の特徴は、4 年制と変わらない基礎研究の教
育を行うことです。その分臨床的な内容は自分で勉強しなけ
ればならず大変なこともありますが、基礎と臨床の両方の知
識や経験を得られるのは、将来どの道に進む上でも大きなメ
リットだと思います。実際に、薬学科卒業生には、医療現場
だけでなく製薬企業などに就職した人も多くいます。臨床家
を目指す人はもちろん、基礎研究を志す人も、ぜひ一度薬学
科という選択肢について検討して頂ければ嬉しいです。
2006 年 3 月博士修了
吉田 健太さん
微生物薬品化学
2014 年 3 月博士修了
大阪大学
大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻
共生ネットワークデザイン学講座 准教授
分子薬物動態学教室
現在私は、大阪大学情報科学研究
科で人工細胞をつくる研究をしてい
ます。生物の持つ一部の機能、例え
ばゲノム情報の翻訳と複製や進化す
る能力などを持った人工細胞モデルをつくってみることに
よって、生命とは何かを理解しようとしています。正直なと
ころ薬学とは全然関係ありません。そんな私がこのメッセー
ジを書くことに若干のうしろめたさがあるのですが、薬学部
の卒業生の幅広さを示す例として価値がないこともないかな
と思い、書かせていただいている次第です。
そんな異分野の仕事をしている私ですが、薬学部で学んだ
ことは大いに役に立っています。例えば、卒業研究で得た技
術や考え方は今の研究の土台となっていますし、薬学部で学
んだ有機化学の知識や実習での経験は今でも時々使います。
近年、学術分野の融合の重要性が叫ばれていますが、その点
薬学部は一歩も二歩も先んじていると思います。
学生の皆さんへのメッセージですが、創薬とか役に立つ研
究もいいですが、当面は役に立たないような研究もいいもの
ですと言っておきたいです。未知の領域を自分の実験と理論
で切り開いていく喜びは、他では決して味わえないものです。
そして薬学部には、そんな研究も受け入れる包容力がありま
す。
生命の価値とは前世代の情報・知識を継承し改良すること
ができることです。皆さんも(できれば薬学部で)良く学ん
で一緒に新しい知識を積み上げていきましょう!
米国 食品医薬品局
臨床薬理部門
博士研究員
私は現在、米国食品医薬品局
の臨床薬理部門で博士研究員を
しています。臨床薬理というの
はあまりなじみの無い言葉だと思いますが、薬を実際に臨床
現場で使うにあたって、どの人にどの程度の量の薬を投与
すると、副作用を抑えつつ適切な薬効が発揮されるかとい
う事などを評価する、新薬を開発するにあたって重要な分
野です。例えば、どの薬を飲みあわせると薬の体中での分
布や代謝 ( 薬物動態と呼ばれます ) が影響され、薬効や副
作用が変動するのか、子供と大人で飲む薬の量を変えるべ
きなのかという事を対象とし、試験管レベルでの実験とシ
ミュレーションを組み合わせた予測や、実際の影響を適切
に評価する為の臨床試験のデザインなどが行われています。
薬学部では、分子生物学や有機化学などの基礎研究のみなら
ず、薬物動態学のような応用的な分野においても世界の最先
端の研究が行われている事が魅力の一つです。薬学部の研究
室同士や他学部・大学外との研究交流も盛んであり、私自身
も様々な共同研究に関わることによって、薬学にとどまらな
い広い知見を得る事が出来ました。こちらに来てから一年ほ
ど経ち、未だに言葉の壁を感じる事は多々ありますが、学部・
大学院での先進的な研究を通じて培われる専門知識や問題解
決能力こそが、どこに行っても通用する研究者となる為に重
要だという事を実感しています。皆さんもぜひ、薬学部でさ
まざまな事に挑戦してみて欲しいと思います。
33
ᕤࠉࠉࠉࠉᏛࠉࠉࠉࠉ㒊
ἲᏛ㒊
ᕤᏛ㒊
Ᏻ⏣ㅮᇽ
ṇ㛛
ᩥᏛ㒊
⌮Ꮫ㒊
ἲࠉᏛࠉ㒊
ᚚẊୗグᛕ㤋
୕ᅄ㑻ụ
⥲ྜᅗ᭩㤋
ᒣୖ
఍㤋
᝟ሗᏛ⎔࣭
⚟Ṋ࣮࣍ࣝ
་Ꮫ㒊㝃ᒓ⑓㝔
ᚚẊୗࢢࣛ࢘ࣥࢻ
ᘪሙ
ᩍ⫱Ꮫ㒊
ࢥ࣑ࣗࢽࢣ࣮ࢩࣙࣥ
ࢭࣥࢱ࣮
୐ᚨᇽ
㉥㛛
እ᮶デ⒪Ჷ
㉥㛛⥲ྜ◊✲Ჷ
་ ࠉ Ꮫ ࠉ 㒊
᪂୰ኸ
デᐹᲷ
⤒῭Ꮫ㒊
ఀ⸨ᅜ㝿Ꮫ⾡
◊✲ࢭࣥࢱ࣮
ఀ⸨ㅰᜠ࣮࣍ࣝ
་Ꮫ㒊
⌮Ꮫ㒊
᠜ᚨ㛛
ᮾὒᩥ໬
◊✲ᡤ
⥲ྜ◊✲
༤≀㤋
་Ꮫ㒊
➨
ᮏ㒊Ჷ
ᮏ㒊Ჷ
᠜ᚨ㤋
㱟ᒸ㛛 ᮾி኱Ꮫ
ᗈሗࢭࣥࢱ࣮
⸆Ꮫ㒊
⥺
ෆ
ࡢ
୸
㕲
ୗ
ᆅ
ᮏ㒓୕
୎┠
ᮏ
㒓
ᆅୗ
୕
୎
㕲኱
┠
Ụ
ᡞ⥺
᫓᪥㛛
表紙説明
「左」ショウジョウバエ中腸上皮のアポトーシス細胞。緑はアクチン線
維、マゼンタはカスパーゼの活性化したアポトーシス細胞、青は核。
「右」ショウジョウバエ嗅覚系二次神経の突起構造。緑は神経の形、赤
は神経内のチューブリン、青は前シナプス構造を示す。【遺伝】
東京大学薬学部教務委員会
〒113-0033 東京都文京区本郷七丁目 3 番 1 号
電話03-5841-4703
2015 年3月1600印刷 制作協力:株式会社 創志企画