九州電力川内原発 2 号機の再稼働に強く反対し抗議する声明

九州電力川内原発 2 号機の再稼働に強く反対し抗議する声明
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2015 年 10 月 15 日、 九 州 電 力 川 内 原発 2 号 機 が 再 稼 働 し た 。 同 年
8 月 11 日 の 川 内 原 発 1 号 機 の 再 稼 働 に 引 き 続 き、政 府 及 び 九 州 電 力 は 、
またしても原発のない社会を望む大多数の国民の声を無視して再稼
働 に 踏 み 切 っ た。
伊 藤 祐 一 郎 鹿 児 島 県 知 事 は、
「重大事故で住民が避難することになれ
ば、我が国の原子力政策は終わる。それくらいの認識で原子力規制委
員会も審査をしていると思うし、電力会社もその気持ちで対応してほ
しい」と述べ、避難計画の不備を黙認する姿勢を示している。県民の
命を預かる知事としての役割を放棄するものといわざるを得ない。ま
た、政府は、今後の他の原発の再稼働についても「原子力規制委員会
によって世界で最も厳しいと言われる新規制基準に適合すると認めら
れたものについて、その判断を尊重し、再稼働していく。その政府の
方針に変わりはない」とするが、当の原子力規制委員会は、新規制基
準に適合したとしても原発の安全性が確保されたということではない
と明言しており、原発事故の責任の所在を曖昧にした全く無責任な政
策 だ と 言 わ ざ るを 得 な い 。
福島第一原発事故による凄惨な被害を直視し、国民の安全を第一に
考え、原発依存政策からの撤退を求める自由法曹団は、この歴史的暴
挙 に 強 く 抗 議 する 。
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自 由 法 曹 団は 、こ れ ま で も 新 規制 基 準 は 決 し て 安 全 性 基 準 で は な い
と い う 事 実 を 直視 し 、新 規 制 基 準 に 合 格 し た 原 発 の 再 稼働 を 進 め る と
す る 政 府 の 原 発推 進 政 策 に 対 し 正 面か ら 反 対 し 、警 鐘 を 乱 打 し て き た 。
2015 年 4 月 14 日 の 福 井 地 方 裁 判 所 の 高 浜 原 発 運 転 差 止仮 処 分 決 定
においても、新規制基準は緩やかにすぎ、新規制基準に適合しても原
発の安全性は確保されず、新規制基準自体が合理性を欠くものである
と 明 確 に 判 断 され て い る 。
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特 に 川 内 原 発 に 関 し て は 、川 内 原 発 の 抱 え る 巨 大 噴火 対 策 、緊 急 時
対 応 、避 難 計 画 等 の 具 体 的 な 問 題 点を 示 し て き た( 2014 年 5 月 19 日
付 け「川 内 原 発 の 再 稼 働 に 向 け た 動 き に 反 対 す る 決 議 」、2014 年 7 月
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23 日 付 け 「 川 内 原 発 の 再 稼 働 に 反対 す る 声 明」、 2014 年 11 月 7 日 付
け「 住 民 の 意 思 を 無 視 し て 鹿 児 島 県 薩 摩 川 内 市 議 会 、同 市 長 、鹿 児 島
県議会及び同県知事が川内原発再稼働に同意したことに対し強く抗
議 す る 声 明 」)。
火 山 噴 火 の 危 険性 に つ い て は 、 昨 年 9 月 の 御 嶽 山 だ け で な く 、 本 年
5 月の口永良部島、本年 8 月の桜島、本年 9 月の阿蘇山の噴火などの
一連の九州地方での噴火が全く予知できなかったことをみれば明らか
なとおり、事前の噴火予知は不可能であるし、仮に異変を察知したと
しても、噴火の規模を判断することは困難であり、原発を止めるか否
かの判断をすることは事実上不可能である。さらには、予兆観測後に
川内原発敷地内の使用済み核燃料を外部に搬出するということも、搬
送手段・搬送期間・搬送場所など具体的な策はなく、現実的に不可能
である。
また、避難計画に関しては、実効性の乏しい机上の空論と言わざる
を得ず、万が一の事態に住民の安全を確保することは不可能である。
例えば、川内原発から約 1 キロの距離にある川内市久見崎町滄浪地区
は、原発事故と地震などの複合災害で避難路がすべて断たれ、孤立す
る恐れがあると国に対応を求めてきたが改善されておらず、これでは
住 民 の 命 を 見 捨て た も 同 然 で あ り 、断 じ て 許 さ れ な い 。
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原 発 が 稼 働し て い な か っ た 猛 暑で も 電 力 は 毎 年 安 定的 に 供 給 さ れ
て お り 、原 発 稼 働 ゼ ロ に よ る 電 力 不足 の 懸 念 は な く 、原 発 を 再 稼 働 す
る 必 要 性 は な い。
自由法曹団は、福島第一原発の事故による凄惨な現実を顧みず、住
民 の 命 や 生 活 の 安 全 を 無 視 す る 川 内原 発 2 号 機 の 再 稼 働 に 強 く 反 対 し
抗議する。
2015年10月19日
自由法曹団
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団長
荒井新二