OPEN EYE Vol.18 - RED HAT OPENEYE

Success story for your business
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
OPEN EYE
オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー
18
vol.
2015 February
INDEX
RED HAT FORUM
オープニング
米国レッドハット社長 兼 CEO
開催レポート October 10, 2014
ジム・ホワイトハースト
特別講演
日産自動車株式会社 グローバルコーポレート IS/IT
アライアンスグローバル VP 常務執行役員 CIO
行徳 セルソ氏
ユーザー事例 Success Story
株式会社インテリジェンス
ビジネスルールエンジンで、
俊敏性を大幅向上。
変化に合わせたルールの最適化と、
インテリジェントな自動化を実現
エグゼクティブ・セッション
田中 基夫氏
全日本空輸株式会社 上席執行役員 業務プロセス改革室長 幸重 孝典 氏
中部電力株式会社 情報システム部長 野村 武 氏
日本航空株式会社 IT企画本部 IT運営企画部 部長
荘司 敏博氏
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 取締役
○ レッドハット最新レポート
Windows Server 2003からOSSベースのクラウド基盤への移行サービスについて記者発表
エコシステムを拡充してWindows to Cloudに
拍車をかけ、2020年東京五輪までに
Linuxを国内シェアNo.1にする!
October 10, 2014
開催レポート
世界で勝つオープンイノベーション
ウドの時代だ。ここで本当の意
2014年10月10日、東京・恵比寿で国内最大級のOSS
味でのオープンイノベーション
イベント「レッドハット・フォーラム 2014」が開催され
が実現されることになる」。
た。第 6 回となる今回のテーマは、
「世界で勝つオープン
現在ではユーザー企業自身
イノベーション」。10 月8 日の大阪での開催を皮切りに、
が OSSを活用して、独自のイノ
今回はライブストリーミングを含むバーチャルイベント
ベーションを創り始めている。
も実施。先進ユーザー企業 CIO による基調講演やレッド
Facebook、Google、PayPal な
ハットとパートナー企業による展示エリアなど、会場は
どがその好例だ。
約3,000名の来場者で活気に溢れ、OSSやオープンハイ
「IT ユーザーはベンダーが
ブリッドクラウドに対する関心の高まりを感じさせるイベ
気付く前に問題を発見し、OSS
ントとなった。
を活 用することで問 題を自ら
基調講演
解決していっている。ベンダー
クラウド時代のオープンイノベーションは、
オープンソースの活用によって実現される
がソリューションを 作るのを
待ってはいない」。
か つ て 産 業 革 命 で 勝 者と
なったのはマシンメーカーでは
なく、そのマシンを使って次々
ユーザー企業がOSSを活用して
自らイノベーションを
創り出す時代
レームの時代で、イノベーショ
と小さな変化を起こし、最終的
ンは常にベンダー内のクロー
に抜本的な変化、即ち大量生
1990 年代にはクライアント/
「イノベーションは、たとえば
基 調 講 演 で 登 壇した 米 国
サーバーの時代になり、ベン
来 週 これ を やりた い ね と
レッドハット 社長 兼 CEO のジ
ダーの参加によって初めてオー
いった小さなところから生ま
ム・ホワイトハーストは、まず
プンスタンダードが生まれた。 れる。それが積み重なり、最終
ズドな 環 境で 起こってい た 。 産を実現した人たちだ。
「イノベーションは 、テクノロ
2000 年に入るとインターネッ
的に大きなイノベーションの
ジーの変化と密接に結び付い
トの時代を迎え、様々な標準仕
波となって世の中を変えてい
ている」
と切り出した。
様や共通ルールが登場した。
く。これがクラウド時代のイノ
1970∼80 年代はメインフ
「そして今日は、完全なクラ
ベーションだ」。
米国レッドハット 社長 兼 CEO
ジム・ホワイトハースト
Success story for your business
世界で勝つオープンイノベーション
クラウド時代の新たな
デフォルトの選択肢こそOSS
OpenStack を選択することは、
将来のイノベーションを生む
ための選択をしているというこ
次にホワイトハーストが指摘
とでもある。選択肢の中にはさ
したのは、 現在我々が目にし
まざまなベンダーの製品もあ
ているイノベ ーション の 多く
り、簡単な選択ではないかもし
は、OSSとビッグデータから生
れない。しかしイノベーション
まれている ということだ。大規
の観点、
またそれがどれだけ速
模分散処理を行うHadoop や
いスピードで起こっているのか
データベース管理システムの
を考えれば、正しい選択ができ
Cassandra、データ分析を行う
るはずだ」。
Spark、さらにはコンテナ型の
一方、ユーザー企業が先導し
▼ エンタープライズの成功を促進するオープンイノベーション
INNOVATION
OPEN
INNOVATION
PROPRIETARY
INNOVATION
TIME
仮想化技術である Dockerも、 て生まれたオープンイノベー
ている。
て、商用 Linux 市場の実に約
全てOSSで作られている。
ションのパワーはきわめて強力
「 我 々 は I a a S を 構 築 する
85%ものシェアを占めており、
で、それを他の企業が使いこな
OpenStack のプロジェクトでは
世界市場の約 65%を大きく凌
して勝利を収めることはなかな
最大手のコントリビュータであ
いでいる。
日本は品質を追求する市場。
それゆえにOSSが伸びている
か難しい。そのためオープンイ
り、他の企業とも協力しながら
「日本は品質を追求する市
ノベーションを採用することは
ロードマップを作成し、お客様
場。それゆえに OSS が伸びて
企業にとって、大きなチャレン
の ニ ーズも吸 い 上 げ て エン
おり、我々のシェアも高くなっ
ジとなる。そこにレッドハットの
タープライズのユースケース
ていると考えている。今回来日
「先にも述べたが、これはベ
存在意義がある。
にマッチしたものを作り上げて
して特に感じたのは、お客様に
ンダーが気付く前にユーザー
「我々は OSS の領域で頭角
いる。SDN(Software Defined
しても、パートナー様にしても、
企業が問題を提起し、それに対
を表すために鋭意努力してお
N e t w o r k i n g )を 実 現 する
OpenStackへの取り組みが他の
する解決策を求めたから。販売
り、数年前に従業員と共にミッ
OpenDaylight のコミュニティ
国よりはるかに進んでいるとい
目的で作られたものではない。 ションステートメントを定義し
でも同様で、Hadoop をより使
うこと。まさにイノベーションの
オープンイノベーションの力に
た。 お 客 様 、開 発 者 、パート
いやすくするための支援もして
先頭を切っている」
。
ついて考える時、忘れてならな
ナーのコミュニティの架け橋と
いる」。
この他にもレッドハットが貢
いのはマススケールの威力だ。 しての役割を果たすため、より
またレッドハットの提供する
献 する分 野 はミドルウェアな
最終的に勝ち残るのは、多くの
良いテクノロジーを生み出す
Red Hat Enterprise Linux
らRed Hat JBoss、PaaS なら
ユーザーが適正なソリューショ
オープンソースのスタイル を ( 以 下 、R H E L )は 、米フォー
OpenShift など多岐にわたり、
ンだと選んだもので、テクノロ
確 立 すること。これ が 我々の
チュン500の94%の企業が利
現在ではオープンハイブリッド
ジーを選択することは、実はイ
ミッションだ」。
用しており、証券取引所の基
クラウドという考え方を提唱し
幹システムの 50%が RHEL に
ている。
ノベーションを選択するという
こと」
。
メインフレームの時代なら
IBM、クライアント/サーバー
の時代ならIntelとWindows が
頼っている。
オープンイノベーションを
「 我 々は ユ ーザ ーとしても
可能にする
オープンハイブリッドクラウド OSS を利用し、ベンダーとして
「開発したアプリケーション
を、物理、仮想を問わず、また
プライベートクラウド、パブリッ
はオープンイノベーションのパ
ククラウドに関わらず自由に稼
スタンダードだった。そして今
レッドハットは O S S の 各コ
ワーを加速しつつ、お客様が
働させ、管理できる環境を構
のクラウドの時代に新たなデ
ミュニティと連動してその方向
使える形に落とし込んだ上で
築するものだ。このオープンハ
フォルトの選択肢となるのが、 性を決め、一方でユーザー企
ご提供できる。これは我々の大
イブリッドクラウドの実現こそ、
OSSだ。
業 の ニ ーズ を 吸 い 上 げ てコ
きな強みだ」。
オープンイノベーションを可
「例えば IaaS を考える時に
ミュニティとの橋渡し役を担っ
さらに RHEL は日本におい
能にする」。
「レッドハット・
トップ・カスタマー・アワード 2014」
を発表
レッドハット・フォーラム 2014では、各分野で革新的なシステムやアーキ
テクチャを実現したユーザー企業に感謝の意を表して、
「トップ・カスタマー・
アワード 2014」の発表と授与式が行われた。受賞企業は以下のとおり。
Best Cloud Service Provider
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
Best Data Center Modernization
全日本空輸株式会社
Best Mission Critical Platform
中部電力株式会社
Best Middleware Strategy
日産自動車株式会社
いち早くオープンソースの仮想化技術KVMを
基盤としたクラウドサービスを立ち上げ、3年以
上にわたり継続的にレッドハットとともに業界
をリードするオープンソースの仮想化とクラウ
ド技術を強力に推進されました。
データセンターの刷新に伴い、社会環境の変
化を追従しやすいクラウドサービスや、Red
Hat Enterprise LinuxとRed Hat JBoss
MiddlewareによるIT基盤を採用、標準化を推
進することでビジネスの変革を支える先進的
なIT基盤を実現されました。
経営効率化に向けた業務再構築プランのも
と、ミッションクリティカルな社会基盤である
配電システムをUnixからRed Hat Enterprise
LinuxとRed Hat JBoss Middlewareにリプ
レース。今 後のI T 基 盤のクラウド化やビッグ
データの利用に向けてオープンソース技術を
積極的に推進されました。
同社中期経営計画である「POWER88」達成の
ために、
グローバルIT戦略「VITESSE」を策定
し、ビジネス価値創造に向けたIT戦略を推進。
その戦略を支えるIT基盤をOSSで実現し、Red
Hat JBoss Middlewareのルールエンジンの
活用により、変化に強いシステムをグローバル
に展開しました。
Best Middleware Implementation
日本航空株式会社
Best Global Platform Standardization
パナソニック株式会社
Best Cloud Ready Infrastructure
西日本電信電話株式会社
IT刷新プロジェクトの一環として、国内ツアー予約システムの基
盤をRed Hat JBoss Middlewareに移行、またシステム連携基
盤においてもRed Hat JBoss Fuseを採用。ベンダーに依存しな
いアプリケーションのモダナイゼーションを実現されました。
クラウドを活用したオープン・イノベーションのために、北米、
ヨーロッパ、
アジアのデータセンターのモダナイゼーションとクラ
ウド化を推進。サービスレベルに応じた適切なクラウド環境の
実現とともに、Red Hat Enterprise Linuxを標準として積極的に
推進されました。
クラウドサービスの提供を視野に入れ、100ヶ所以上に分散して
いたIT基盤を統合。Unixの性能と機能をIAサーバーとRed Hat
Enterprise Linuxの組み合わせで実現、以前は5割を超えていた
Unixから統合基盤に移行し、Red Hat Enterprise Linuxが9割を
占めるに至り、積極的なOSSの利用を推進されました。
2 OPEN EYE
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
特別
講演
ビジネスイノベーションに直接貢献するOSS、
全てのITレイヤーでレッドハット製品を採用
日産自動車株式会社は2011 年から中期経営計画「Nissan Power 88」
に着手、これを
支えるIT 戦略として
「VITESSE」
を打ち出した。グローバルコーポレートIS/IT アライアンス
グローバルVP 常務執行役員 CIOの行徳セルソ氏は
「VITESSEにおいてOSSはビジネスイ
ノベーションに直接貢献するもの」
と指摘、
「さまざまなレイヤーでレッドハット製品を活
用している」
と強調した。
ビジネスへの貢献にOSSはきわめて有効
ただしその活用は自社で考える必要がある
5年をかけてIT基盤を整備、
今がビジネス価値を提供する時
日産自動車株式会社 グローバルコーポレート IS/IT
アライアンスグローバルVP 常務執行役員 CIO
行徳 セルソ氏
「BESTでIT基盤を整え、それを現在のVITESSEでフ
OSSを活用し、BESTで成果を出したことでトップマネ
ル活用して、ビジネス価値を提供する。それが Nissan
ジメントにITの効果が認められ、VITESSEでようやくイ
Power 88に対するIS/ITの使命」
。
ノベーションの話ができるようになった。まさに今がビ
日産の中期経営計画「Nissan Power 88」
は、2011
参考までに、同社のIT 部門ではアプリケーション領
ジネスイノベーションに直接貢献する段階。ここでも
年から2016年までの6か年でブランドとセールスのパ
域をIS、インフラ領域をITとしてIS/ITという名称で呼
OSSが大きな役割を果たしてくれている」
。
ワーを高め、グローバルの市場占有率 8%と営業利益
び、世界の各リージョンにIT 組織を設けて、それらを
率8%を目指すものだ。
この目標を達成するために6つ
Global IS/ITが統括するという形態を採っている。ITス
の戦略、すなわちブランドパワー、セールスパワー、ク
タッフの数は日本が 684、米国 311、欧州 242 で、
オリティの向上、ゼロ・エミッションのリーダーシップ、
2011 年にはコスト低減とデリバリースピードのアップ
事業の拡大、
コストリーダーシップが定義されている。
を目指して、インドに日産・ルノーのキャプティブセン
同社のITアーキテクチャは、わかりやすく以下の4つ
4つの全レイヤーで
利用されるレッドハット製品
「Nissan Power 88は先の目的達成のために、全て
ター「RNTBCI(Renault-Nissan Technology and
のレイヤーに分けられる。下から順に、標準化された
のグループ会社が 6 つの戦略に対して、各々どのよう
Business Center in India)」
を開設した。RNTBCIでは
ハードウェア/OS/ミドルウェアで構成される 共通プ
に貢献していけばよいかを定義した中期経営計画。こ
現在、
1,000名のエンジニアが活躍しているという。
ラットフォーム 、その上に載るのが アプリケーション
のビジネス側の戦略を支えるために我々が打ち出し
共通サービス で、データインテグレーションやワーク
た I T 戦 略 が 、フランス 語 でスピ ードを 意 味 する
10年以上におよぶIT戦略の中で
重要な役割を担い続けるOSS
フローなど、アプリケーションが必要とする各種サービ
うIT戦略に着手。2010年までの6年間で、ITガバナンス
2005年からの10年以上におよぶ同社の2つのIT戦
り、最上位に業務プロセスを直接支援する アプリケー
を確立して徹底的なコストマネジメントを実現し、エン
略において、重要な役割を果たしているのが OSSだ。
ションサービス が位置している。
タープライズレベルのITアーキテクチャを定義、従来の
その効果について行徳氏は、次のように説明する。
「日産では、
これら4つの階層全てがOSSの適用対象
シングルソーシングからマルチソーシングへシフトし、
「BEST の大きな目標は、IT 効率を向上させること
であり、レッドハット製品を活用もしくは導入の検討対
さらにITインフラの標準化、
統合化を推し進めてきた。
だった。そしてこの 6 年間におけるOSS の最大の貢献
象としている。そして我々が最終的に目指しているレ
そしてBESTを受けた現在のVITESSEでは、3つの柱
は、TECHNOLOGY SIMPLIFICATION に対するもの
イヤーが、ビジネスイノベーションへの貢献だ。ここで
が定義されている。1 つ目が VALUE INNOVATION
だ。ITインフラの標準化と、アプリケーションの再利用
今、
レッドハット製品の利用を想定しているのがビッグ
で、ビジネスを成功に導くための様々な投資を行うこ
(=コンポーネント化)
においてOSS、特にレッドハット
データプラットフォームの領域で、分散ストレージ製
VITESSEだ」
(行徳氏)。
日産ではVITESSEに先立ち、2005年から
「BEST」
とい
スを定義し、提供するレイヤーだ。そしてその上に開
発標準化を推進する アプリケーション開発環境 が載
と、2つ目が TECHNOLOGY SIMPLIFICATION で、IT
製品が果たしてくれた役割は実に大きい」
。
品のRed Hat Storage Serverや、物理データベースを
自 体 の た め の 投 資 を 行うこと 、そして 3 つ 目 が
先にも触れた通り、日産ではBESTの6年間でさまざ
仮想的に統合してくれるデータ仮想化製品の JBoss
まなIT基盤の整備を進めてきた。
Data Virtualizationなどが挙げられる」。
SERVICE EXCELLENCE で、さらなるコスト削減のた
めの投資を行うことだ。
「この BEST がなければ、今の VITESSEもなかった。
同氏は、こうしたレッドハット製品の活用が、ビジネ
スに新たなバリューやベネフィットを提供することに
繋がると強調する。
▼ OSSへの取り組みアプローチ:ビジネスイノベーションへの貢献
Private Cloud
基盤として利用
共通インフラ
サービスへの適用
「ビッグデータプラットフォームの構築によって、エ
アプリケーション
開発環境での利用
コアアプリケーション
への適用
ビジネス
イノベーションへの貢献
ンタープライズデータ、車から収集されるデータ、イン
ターネット上のデータという3 つのデータソースを統
合して、多様なシミュレーションや分析を行うための環
アプリケーション
サービス
In-house
Applications
Package
Applications
Cloud
Applications
Big Data Platform
●
アプリケーション
開発環境
アプリケーション
共通サービス
Application Framework
Tools & Guidelines
●
Application Lifecycle Mgmt.
Data Integration
Information Mgmt.
Workflow
Big Data
Identity and Access Mgmt.
…
●
●
様々なデータソースを
横断する分析要望の高まり
飛躍的なデータ量増加、
Ad-hoc利用への対応
ついて次のように述べ、
締め括った。
分散配置された既存データ
統合によるアセット化
セルフサービスも可能にする
柔軟な分析基盤の実現
Middleware
共通
プラットフォーム
OS/Hypervisor
Hardware/Network
境が整う。2015 年からは、データサイエンティストや
ビジネスアナリストを展開することも考えている」
。
Red Hat Storage Server
JBoss Data Virtualization
Hortonworks Data Platform
そして行徳氏は、OSS に向き合う自社のスタンスに
「カルロス・ゴーン CEO からIS/IT が期待されている
のは、スピード、標準化、シンプル化。これを実現する
ために、OSSの活用は実に有効だ。ただしOSSには多く
の選択肢があり、これを何も考えずに誰かに任せると
いうのはあり得ない。OSS をどう展開し、そのベネ
フィットを 100%引き出すために何をするかは、社内
IT がしっかりと考えることだ。これからもOSSをしっか
りと勉強し、ビジネス貢献に根ざした活用について考
えていきたい」
。
OPEN EYE 3
Success story for your business
世界で勝つオープンイノベーション
ジャパン・クオリティとOSSのイノベーションの融合
Reliableなクラウドを、
グローバルに展開
「我々は ICT 環境の仮想化を
さらに進めて自動化を促進し、
利用者の使い勝手をより高め、
エヌ・ティ・ティ・コミュニ
セルフマネジメントを強化して
ケ ー ション ズ 株 式 会 社 で は
いくことを目指しています」。
2010年から、KVMをベースと
その一環として2012 年から
するレッドハットの「Red Hat
は、OpenFlowを利用したSDN
▼ クラウドサービスとオープンソース
●
●
クラウド分野においてオープンソースを積極的に活用
次期クラウド基盤でも中心技術として活用予定
●
●
Bizホスティング
●
Enterprise Virtualization」を (Software-Defined Networking)
採用したクラウドサービスの提
を採り入れ、グローバルでエン
供を開始した。
タープライズクラウドサービス
同社 取締役の田中基夫氏
の提供を開始。さらに2013 年
は「当時 KVM を利用したサー
からは、KVMと SDN、そして
ビスはほとんどなく、世界でも
IaaS 基盤となるOpenStack を
我々が先がけだったと認識し
組み合わせたパブリッククラウ
ています 」と語り、
「 その 後も
ドサービスの提供も開始した。
●
Bizシンプルディスク
●
2010年に「Red Hat KVM」を利用した最初の
クラウドサービスを開始
2012年に「SDN(OpenFlow)」を利用した
エンタープライズクラウドサービスを開始
NTT研究所が早くからOpenStackを検証、
仮想ネットワーク
(Neutron)にコントリビュート
2013年に「OpenStack+KVM+SDN」を
利用したパブリッククラウドサービスを開始
2011年に「Gluster FS」を利用した
分散ファイルサービスを開始
ベンダーロックイン回避
最新技術を早期に活用/世界中の技術者と連携
● 社内技術者の育成に貢献
(メリット享受には社内技術者が必要)
●
●
OSS のテクノロジーを随所で活
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ
株式会社 取締役
田中 基夫氏
用しながら、さまざまなサービ
スを 提 供してきて います 」と
OSSの有用性を強調する。
基幹システムのクラウドへの移行とともに、
モバイルによるワークスタイル変革を推進
全日本空輸株式会社
上席執行役員
業務プロセス改革室長
幸重 孝典氏
4 OPEN EYE
ジャパン・クオリティを軸に
統合ICT環境の実現を目指す
同社にとって、
レッドハットは
強力なパートナー
界中の知恵と連携できる点は
きを置き過ぎると、コストの面
とても魅力的です」。
で競 争 力に影 響するリスクも
さらに、OSS を使うことで 社
否めない。ジャパン・クオリティ
内の技術者が育っていくこと
を意識しつつ、グローバルの目
も大きなメリットだと指 摘 す
線でビジネスを展 開すること
OSS を活用する理由につい
る。
「自社でOSSを利用すること
が重要」
と語る。
て、田中氏は第一に ベンダー
で、社内技術者が育っていきま
今後は、SDNを使ってクラウ
ロックインの回避 を挙げ、また
す。エンジニアの育成について
ドのみならずデータセンターや
世界中の技術者と連携できる
も、レッドハットにはぜひ協力
コロケーション、さらにはオンプ
こと も魅力だと説明する。
いただきたいですね」。
レミスまでを一体化したICT 環
「OSS の利用を始めて強く感
日本企業としてグローバル
境を作っていきたいと語る同
じるのは、世界中の技術者が
で エンタープライズクラウド
氏。
「その上でレッドハットは強
積極的に貢献してくれること。 サ ービス を 提 供 する 同 社 に
力なパートナーになると考えて
問題が生じても、あっという間
とって、ジャパン・クオリティは
いますので、これからも引き続
に共有され、解決されます。世
強みだ。ただし
「日本品質に重
きのご協力を期待しています」
。
が、
このうちミッションクリティカ
ルなもの以外はすべて、新たな
プライベートクラウドに移して
2014 年、全日本空輸株式会
いきたいと考えています」。
社はプライベートクラウドを基盤
また現在、同社ではもう1 つ
とする自社用の新たなデータセ
の大きな取り組みとして、航空
ンターを開設した。今後4年を費
会社にとっては基幹システムと
やし、個別最適のサイロ型だっ
なる、国内線および国際線の旅
た旧データセンターからの移行
客システムの全面リプレイスを
を完了させる予定だ。同社 上席
進めている。
執行役員 業務プロセス改革室
「1988 年に構築して以来、と
長の幸重孝典氏は、その際の留
もに 30 年近く経つ古いシステ
意点を次のように説明する。
ムで、それぞ れ 異なるハード
「単純なデータセンターの移
ウェアベンダーの大型汎用機を
行ではなく、レッドハットの最新
利用していました。2013 年 2
▼『自前』から
『利用』へ
OLD
1988∼
1988∼
NEW
国際旅客
システム
大型汎用機
国内旅客
システム
大型汎用機
従来型データセンター
(個別最適サイロ型)
2013∼
2015∼
国際旅客システム
(Altea)
amadeus
国内旅客システム
(AirCore)
標準化・共通化・
統廃合
新データセンター
(Private Cloud)
技術を活用して仮想化を図り、 月、このうちの国内旅客システ
標準化、共通化までを実現した
ムを最新のオープン系システム
乗務員。彼女らのワークスタイ
サービスを実現していきたいと
いと考えています。現在社内に
に全面移行しました。国際旅客
ルを変えていくことが、社内全
考えています」
。
は約 160のシステムがあります
システムについては 2015 年以
体の変革を促す良いきっかけ
最後に、オープンソースへの
降、航空業界全体で利用してい
となりました」。社内 WiFi や仮
取り組みやその意義、価値に
る コミュニティクラウド へ移管
想デスクトップの導入など、社
ついて聞くと
「古いシステムを
する予定です」。
員の生産性を向上させるため
変えていくには、技術者やコス
に、経営陣の理解を得つつ変
ト、時間の問題など、課題が山
革を進めた。
積しています。オープンソース
社内のワークスタイル変革と
ともに顧客向け取り組みとして
モバイルファーストを推進
顧客向けの取り組みとして
は、ユーザー数の増加と相まっ
も、モバイルファーストの推進
て、安定した品質の高いプロダ
を強化している。
「航空業界は
クトが増えてきているので、そ
同社が2012年、全客室乗務
移動そのもの。スマートフォン
の 有 用 性 はた い へ ん 魅 力で
員にiPad を支給したのは有名
を持って移動するお客様が何
す。今後もレッドハットの協力
な話だ。
「実は、社員全体に占
を望んでいるのかを見据えて、 のもと、積極的に活用を進めた
める比率が最も高いのが客室
従 来 にな い 新しい 顧 客 向 け
いですね」。
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
OSSを採用したプライベートクラウドを構築し、
電力システム改革に活用。今後はビッグデータの活用へ
するために、3 つの方向性を打
す。また商用製品だと、システム
短縮・費用の抑制を進めていま
ち出しました。1 つ目がプライ
リプレースの周期を自分たちで
す。今後、このような制度対応に
ベートクラウドを利用して共通
決めることができな い 。ベン
加え、スマートメーター導入や
長線上の方法では、当時の状
インフラを構築すること、2つ目
ダーロックインの回避という観
お客さまサービスの更なる向
は、東日本大震災の影響を受
況を乗り越えることが難しかっ
がホスト環境のオープン化を
点からも、OSS はきわめて有効
上、それに伴う社内システムの
けて浜岡原子力発電所の稼働
た。よりドラスティックなコスト
図ること、そして3つ目がOSSを
でした。レッドハットには性能面
変更が求められており、レッド
を停止した。その後、経営状況
ダウンが必要だったのです」。 採用してベンダーロックインか
や保守性を細かく検証してもら
ハットにはビッグデータ分析な
は厳しさを増し、全社を挙げた
そこで同社はまず、ITコストの
い、大きな問題なく運用開始で
どの技術支援やコンサルティン
経営効率化の取り組みに着手
内訳を詳細に調査した。結果、
きました」。
グの領域で、引き続き力添えを
する。同社 情報システム部長
一番比率を占めていたのがイ
現在、電力業界では電力シス
いただきたいと思います」。
の野村武氏は、当時の状況を
ンフラ部分で全体の 6 割、中で
2011年、中部電力株式会社
次のように振り返る。
「ITコスト
もホストとミドルウェアが大き
はベースコスト。我々は、
これを
く、ミドルウェアについてはさら
きっちり下げていくことを求め
に上昇する兆しが見られたと
られました。しかし今までの延
いう。
「この状況を何とか改善
▼ 中部電力におけるITインフラの取り組み
徹底した経営効率化による
コストダウンの取り組み
電力システム改革への
迅速な対応
「業界No.1の低コスト、
高生産性の達成」
を
ビジョンに掲げ、
インフラベースコストの
半減に向け
❶共通インフラ
(プライベートクラウド)
の構築
❷ホストのオープン化
❸OSSの採用とベンダーロックインの回避
を推進
共通インフラ
ホスト計算機(共用)
■ 電力システム改革の実施予定時期
高性能サーバー・PC
サーバー
(専用)
(商用)OS
(商用)APサーバー OSS
(商用)
データベース
(商用)運用管理ソフト
(専用)
高性能サーバー
PCサーバー
(クラウド:共用)
Red Hat
Enterprise Linux
JBoss,Tomcat,
PostgreSQL,Zabbix
共通インフラについては、従
テム改革が進んでおり、2016
年には電力小売りの全面自由
化、2018∼2020年には送配電
機能の法的分離が予定されて
いる。
「我々ITも同時並行で、求
来オーダーメイドで構築してい
められるシステム構築をより速
たサーバー環境を、プライベー
く、コストを抑えて進めていく必
トクラウドによって標準化を図
要がある。この対応においても、
そして、ミッションクリティカル
中部電力株式会社
情報システム部長
野村 武氏
な配電システムも含め、従来の
商用 OSとミドルウェアに代え
て、Red Hat Enterprise Linux
第1
段階
2015年
目途
広域的運営
推進機関の設立
第2
段階
2016年
目途
電気の小売業への
参入の全面自由化
第3
段階
2018∼
2020年
目途
法的分離による送配電
部門の一層の
中立性確保
とRed Hat JBoss Enterprise
Application Platformを採用し
た。
「OSSの採用理由は、やはり
第一にコストダウンです。また、
我々自身で技術を習得して、他
● お客さま
サービスの向上
●スマートメーター
● 自由化・制度対応
● 社内システムの変更
ミッションクリティカルなシステムに
レッドハット製品を採用
電力システム改革に向けた
支援も期待
り、共通化することを目指した。 共通インフラを活用し、工期の
パッケージソフトや段階的な開発、
そして構築を進めてきた共通インフラ
(プライベートクラウド)
を駆使し、
事業のスピードに追従していく
(プライベートクラウド)
らの脱却を図ることです」。
共通インフラ
プライベート
クラウド
(
)
の領域に広く適用できると考え
ました。若手技術者の大きなモ
チベーション向上にも繋がりま
OSSで
「強く」
「しなやかな」ITを実現
今後は、
より新たなITへの
「チャレンジ」
を宣言
的な対応が続いていたという
月には、ホノルル空港でGoogle
絞ることが必要な部分にはITを
が、
「たび JAL」の刷新に際して
グラスを使った実証実験を、ま
活用して工夫していきたいと語
は、これまでのさまざまな問題
た8月には羽田空港でiBeaconTM
る同氏。IT を活用した同社の
化・標準化、シンプル化、効率
点を洗い直した。
を使った実証実験を行った。
チャレンジは、
今後も続く。
生法の適用を申請した 2010
化・コスト削減という3 つの取
「ハードウェアの保守の期限
「新しい技術は、IT 関係者に
年 1 月以降、新たな再建の道
り組 み にチャレンジしていま
切れや、OSとミドルウェアの保
はとても興味深く、魅力的にう
を辿ってきた。同社 IT 企画本
す」
と説明する。
守期限が間近であること等を
つります。航空会社には両手を
部 IT 運営企画部 部長の荘司
「なかでも
『たび JAL』
という、 再認識しました。そこで、ベン
使って行う作業が多いため、貨
敏博氏は、現在に至るまでの
我々にとって基幹となる国内線
ダーに大きく依存した体質か
物搭載の現場や整備士には、
IT 部門について「基幹となる
ツアーシステムを更新する際
らの脱却と、システムのホワイ
両手が空くことで作業効率が上
旅 客 系システムを 4 0 数 年 に
は、
レッドハットの力を借りて、
う
トボックス化を目指して、OSS
がると大変好評でした。将来的
日本航空株式会社は会社更
わ たって 使ってきました が 、 まく進めることができました」
。
の 採 用 を 決 定した ので す 」。 には、きわめて有用な手段だと
2011 年からは、 強く、しなや
2000 年以降、JALでは IT に
O S は 可 能 な 限り R e d H a t
確信しています」
。
かな IT を目標に掲げて、仮想
対する投資もままならず、保守
Enterprise Linux に置き換え
7月に開始された、国内線初
て統合し、
ミドルウェアについて
の機内 WiFiサービス
「JAL SKY
は Red Hat JBoss Middleware
Wi-Fi」
も話題だ。
に転 換していく取り組 みに着
お客様にとって利便性が上
手。2011年にプロジェクトの検
がるものは共有サービスで使
討を開始し、2013 年 11 月に
いやすく、
また差別化で知恵を
▼「たびJAL」における実例
システム名:国内ツアーシステム(「たびJAL」)
●
老朽化の不安(経年劣化)
開発環境:2003年3月
本番稼働:2004年8月
●
●
検討開始:2011年∼
本番稼働:2013年11月
日本航空株式会社
IT企画本部
IT運営企画部 部長
荘司 敏博氏
サービスインした。
システムサポート体制の脆弱性
ハード保守・供給
…期限切れの可能性
OSS化の選択:
ベンダー依存脱却、
ホワイトボックス化
OS/ミドルウェアの保守期限
…間近
売上を最大に、経費を最小に:
維持管理の内製化、
ベンダー依存脱却
JALのIT標準化への対応
個別(AIX)サーバーの乱立
レガシーOS/
ミドルウェアの存在
サーバーの統合
(可能な限りLinux化)
最新のOS/ミドルウェアへ(JBoss)
古くて耐震対策されていない戸建から、
免震対策済み大型マンションへの引越を実現
ウェアラブル端末の
推進をはじめとした
新たなITにチャレンジ
同社では現在、
「チャレンジ
JAL宣言」
と称して、新たな製品
やサービスの導入、また取り組
みへのサポートを展開している。
その一環として、ウェアラブル
デバイスの活用を推進。今年 5
OPEN EYE 5
Success story for your business
ユーザー事例
Success Story
(株)
インテリジェンス
ビジネスルール
エンジンの導入
ビジネスルールエンジンで、俊敏性を
大幅向上。変化に合わせたルールの最適化と、
インテリジェントな自動化を実現
「DODA(デューダ)」など、各種求人メディアの運営や人材紹介サービスなどを展開するインテリジェンス
では、専任のキャリアコンサルタントが求職者と面談およびカウンセリングを実施、転職の決定に至るまで
をサポートしている。同社では、この両者の最適なマッチングを実現するために、レッドハットのビジネス
ルールエンジン
「Red Hat JBoss BRMS」
を採用。適材適所を目指す支援サービスの向上を実現した。
6 割 に つ い て はコン サ ルタントを 統 括 するマ ネ
背景
ジャーが目視で内容を確認し、担当するコンサルタ
ベストマッチ が求められる
転職支援サービスのシステム
ントを決めていたという。
「先に話した 100 を超えるマッチングルール群の
Red Hat JBoss BRMSを選んだ決め手
成功事例が証明する高い信頼性と
圧倒的なコストメリットを評価
インテリジェンスが提供する転職支援サービスで
マスターは、一度作って終わりというものではありま
同社では 2011 年から、より柔軟な開発の実現とベ
は、転職活動をしている求職者からのエントリーを
せん。例えば社内の組織体制の変更など、環境の変
ンダーロックインからの脱却という観点から、OSS の
受け、社内の専任キャリアコンサルタント
(以下、コン
化に応じて随時チューニングが必要になります。以
積極活用を大きな方針として打ち出しており、グルー
サルタント)がカウンセリングに入り、最終的な転職
前は、一部の条件に微調整を加えるだけでも半月以
プの情報システム会社であるインテリジェンスビジネ
決定までを支援している。その際には、性別/年齢
上を要しており、チューニングも月に1 回が精一杯と
スソリューションズと連携してOSSを使った自社開発
/希望職種/勤務エリアなど、求職者個々のプロ
いう状況でした。また、マッチングの精度を高めるた
を行っていた。
ファイルに応じて最適なコンサルタントをアサイン
めにルールそのものが複雑化していたことも、チュー
また片山氏は、
「一般的なBRMS(ビジネスルールマ
するが、このマッチングの実現が、かつては実に難し
ニングに時間がかかる一因でした」。
ネジメントシステム)の存在も以前から知っており、強
かったという。以前の状況について、株式会社インテ
い関心を持っていた」
と話す。同氏は、他社事例を参考
リジェンス BI 本部 キャリア BITA(=Business IT
Architect)部 ゼネラルマネジャーの片山健太郎氏
は、次のように説明する。
「当社には、各領域に専門性を持つ200名以上の
にしながら実 用に耐え得るものか 否 かを見 定め、
システム要件
属人的な業務プロセスを改善し、
変化に強いシステム の実現を目指す
BRMS 市場の広がりも睨みながら、自社で活用できる
選択肢の1つとしてBRMS製品を考え始めたという。
「その中で JBoss BRMSを採用した理由は、やはり
コンサルタントがいます。一方、転職支援サービス
同社が自社開発によるマッチングシステムを構
信頼性とコストです。JBoss BRMS は我々が求めた機
にご登録いただく求職者の方の数は、月ベースで数
築したのは 2007 年。このシステムではルールのマ
能面も十分に満たしており、大手通信会社や保険会
万件にも上ります。求職者の方々の専門性に適した
スター変更に際し、片山氏がゼネラルマネジャーを
社での導入事例も豊富で、実に大きな信頼感をもち
コンサルタントをアサインするために、100 を超え
勤めるBI 本部 キャリアBITA 部において現場からの
ました。また今回、他の商用製品も検討対象としまし
るマッチングルール群を設けてシステム化を図って
変更依頼を受け、月に 1 回ルールを編集し、運用担
たが、残念ながらコスト的にまったく見合うものでは
いましたが、そこで最適な組み合わせを実現するこ
当者がそれらを手作業でシステムに反映させると
ありませんでした」。
とが難しく、最終的には人の目で見て判断しなけれ
いう属人的な業務プロセスになっていた。
実際の導入プロジェクトは 2013 年から構想を練り
ばならない非効率な業務が多数発生していました。
「全体のプロセス変更と併せて、システム自体の
始め、2014 年 2月に着手。レッドハットにも相談しな
求職者の方にベストの転職をしていただくために
ルール変更も容易にできる、変化に強い仕組みにし
がら、それぞれ 2ヵ月を要して実装、本番環境での検
は、その前段としてより相応しいコンサルタントをア
ていきたいという思いがありました」。
証、そしてチューニングを行い、同年8月にカットオー
サインし、詳細を詰めていく必要がある。マッチング
また従来のシステムは複雑化していたため、軽微
バーした。
の精度をもっと高めなければならない、という課題
な改修でも多大な手間と工数がかかり、年間で数百
がありました」。
万円単位のコストが発生していたという。こうした運
用コストの低減も重要なテーマだった。
「現行システムを いかに変化に強い仕組みにで
課題
マッチングルールの最適化で、
より精度の高い
求職者とコンサルタントとの組み合わせを
きるか という課題が、今回のスタート地点です。また
JBoss BRMSを導入したメリット1
ルール変更のプロセスを自動化し、
変更の頻度と精度を大幅に向上
属人な運用フローをロジックとして組み込むことも
まず片山氏が一番の課題として挙げた、最適なコ
必要でした。これらを考えた時、従来のようにスク
ンサルタントをアサインする精度の向上について、
これまで同社では、求職者とコンサルタントとの
ラッチで作り変えるのが正しいのかどうか。何かいい
BI 本部 キャリア BITA 部 プロジェクトマネジャーの
マッチングを自社開発によるシステムによって行っ
ソリューションはないかと探っていた時に出会った
佐々木貴浩氏は以下のようにJBoss BRMS の導入効
ていたが、自動化できていたのは約4割で、残りの約
のが、
レッドハットのRed Hat JBoss BRMSでした」。
果を強調する。
ビジネスルールエンジンの導入の流れ
01
背景
02
課題
03
システム要件
04
Red Hat JBoss BRMSを
選んだ決め手
ベストマッチ が求められる
転職支援サービスのシステム
マッチングルールの最適化で、
より精度の高い求職者とコン
サルタントとの組み合わせを
属人的な業務プロセスを改
善し、 変化に強いシステム
の実現を目指す
成功事例が証明する高い信
頼性と圧倒的なコストメリッ
トを評価
・マッチングの精度を高めたいという
現状認識
・目視で行う非効率な業務の発生
・自動化できていたマッチング件数
は約4割
・1 回のチューニングにかかる時間
は半月以上
・より簡単にルール変更ができるシス
テムが必要
・運用コストの低減も重要なテーマ
・3 年前からOSS の積極活用に取り
組む
・JBoss BRMS の採用理由はコストと
信頼性
6 OPEN EYE
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
ビジネスルールマネジメントシステム
(BRMS:Business Rule Management System)
とは
日々変化するビジネス現場のルールをシステムとして可視
化し、一元管理する仕組み。複雑な商品の組み合わせや約款
との整合性チェック、条件判断などを、独立したビジネスロ
ジック
(ビジネスルール)
として管理できる。
リサーチ会社ITR発行のレポートによると
「Red Hat JBoss
BRMS」は国内BRMS市場で26.7%、大手の商用製品を抜い
てシェアNo.1のポジションを獲得。2013年度には大手製造
業など多くの企業が導入を決めた。
「これまで求職者の方とコンサルタントのマッチン
株式会社インテリジェンス
BI本部 キャリアBITA部
ゼネラルマネジャー
グで自動化できていたのは約 4 割でしたが、これが 7
割 近くまで向 上しました。単に自動 化の比 率 が 高
まっただけでなく、精度の向上を伴った効果です」
片山 健太郎
(佐々木氏)。
株式会社インテリジェンス
BI本部 キャリアBITA部
キャリアプロジェクトグループ マネジャー
氏
山川 飛鳥
株式会社インテリジェンス
BI本部 キャリアBITA部
プロジェクトマネジャー
佐々木 貴浩
氏
氏
またマッチングルールのマスター変更について
は、従来の手作業に代わり、自動変換ツールによる
仕組みを構築。統計解析ツールと自社開発したビジ
ネスルールを自動変換するツールを組み合わせ、統
計解析ツールが生成した 決定木 と呼ばれる最適
JBoss BRMS 導入の成功要因
その一環として データの論理統合 に強い関心が
レッドハットのサポートでパフォーマンスが
向上、
提案力の高さも大いに評価
あると話す。
今回の JBoss BRMS 導入に際し、同社が従来の
に繋げられるかもしれない。レッドハットには、データ
の月 1 回 から週 2 回にまで頻 度を増 や せるように
使 い 勝 手 を 担 保 するた め に 重 要 視した の が パ
仮想化を実現するRed Hat JBoss Data Virtualization
なった。
フォーマンスだ 。求職者とコンサルタントとのマッ
という製品があるので、論理的なデータ統合の可能
この点について BI 本部 キャリアBITA 部 キャリア
チングを行うために投入される 1 回あたりの処理件
性についても探っていきたいと考えています。レッド
プロジェクトグループ マネジャーの山川飛鳥氏は、
数は 2,000∼3,000 件。その際、約 25 万件に及ぶ
ハットには、さらなる強力な支援を期待しています」
化モデルをビジネスルールとして、JBoss BRMS に
投入するというフローを確立した。これによってマ
ニュアル作業は不要になり、マスターの変更も従来
「マネジャーの業務負担が減り、マスターの更新頻度
マッチングルールのマスター情報も読み込み、これ
が高まったことで、ビジネスチャンスを逃さない、より
らを併せた処理を 20∼30 分以内に収める必要が
柔軟な対応を採れるようになった」
と高く評価する。
あった。
「例えば景況感の変化に応じて、柔軟かつスピー
「当初は既存システムと比較してもかなり遅いとい
ディにマッチングルールを変更できるようになりまし
う状況に陥っていましたが、マスター情報を分割して
た。数字ではなかなか見えにくい部分ですが、会社
読み込む方法を提案してもらったり、JBoss BRMSに
が成長していく上で多大な効果をもたらしてくれる
マルチスレッド機能を実装してもらい、内部で処理を
仕組みです」
( 山川氏)。
分 散する方 法を採るなどして、我々の要 求するパ
「現在、各事業部は個別でデータを管理しています
が、それらを統合できれば、何かしら新しい取り組み
(片山氏)。
▼ ルール変更のプロセスを自動化し、
変更の頻度と精度を大幅に向上
従来
運用担当者が
手作業で
マスター編集
フォーマンスを実現することができました。レッド
JBoss BRMSを導入したメリット2
ハットのコンサルタントの方がソースコードまで見な
商用製品と比較して、
導入コストは10分の1以下
そ、改善できたのだと思います。我々の要求を真摯に
がらさまざまな施策を提案し、対応してくれたからこ
受け止めてもらった点には心から感謝しています」
また片山氏が挙げた JBoss BRMS のコスト削減効
登録
マッチング
カウンセ
リング
顧客属性に応じて適切な
キャリアコンサルタントを
アサイン
運用担当者が
手作業で集約
履歴DB
各マネジャーが毎月
マッチングルールを
手作業で編集
(佐々木氏)。
果についても、佐々木氏は商用製品との詳しい比較
として、次のように説明する。
「サーバーに搭載されているプロセッサのコア数
から見た時、商用製品の場合はコア数に応じて課
金されますが、レッドハット製品では一定のコア数
他業務プロセスへのBRMS適用も検討、
データの論理統合の可能性も探りたい
まで価格は変わりません。JBoss BRMSと比較して、
片山氏は「今後は、一定のルール化を図ることが
10 倍以上のコストがかかる商用製品もありました」
できる他の業務プロセスにもJBoss BRMS を積極的
(佐々木氏)。
05
今後の展望/レッドハットへの期待
「ただしその際には、今回のようにルール変更の
テム開発コストも、年間で数百万円近くかかってい
頻度が高い業務プロセスでなければ、導入するメ
た費用が、数人日レベルで対応可能になった。
リットが限られてしまう。その点は十分に見極めなが
「導入コスト、運用コスト双方の観点から、JBoss
ら、適用の可否を判断したいと思います」
( 片山氏)。
BRMS の導入は大きなコスト削減効果をもたらして
また現在同社では、データの活用を促進するため
くれました」
( 佐々木氏)。
の専属チームを設けてあらゆる検討を行っており、
06
JBoss BRMSを導入した
メリット2
07
統計解析ツールが
決定木を生成
BRMS
統計
解析
ビジネスルールを
BRMSに自動読込
決定木をビジネス
ルールに自動変換
に適用していきたい」
と将来の展望を語る。
またマッチングルールのマスター変更に伴うシス
JBoss BRMSを導入した
メリット1
現在
JBoss BRMS
導入の成功要因
ルール変 更のプロセスを自
動化し、変更の頻度と精度を
大幅に向上
商用製品と比較して、導入コ
ストは10分の1以下
レッドハットのサポートでパ
フォーマンスが向上、提案力
の高さも大いに評価
・マッチングの自動化比率が 7 割近く
大幅アップ
・マネジャーの負担軽減でビジネス
チャンスを逃さない対応が可能に
・コア数比較で圧倒的なコストメリッ
トを実感
・年間数百万円の開発コストも数人
日レベルに
・マスターの分割読み込みなどさま
ざまな施策を検討
・JBoss BRMS のマルチスレッド化も
実現
登録
マッチング
カウンセ
リング
履歴DB
履歴DBの実績データを
統計解析ツールで分析
08
今後の展望/
レッドハットへの期待
他業務プロセスへのBRMS適
用も検討、データの論理統合
の可能性も探りたい
・ルール変更の頻度が高い業務プロ
セスを見極めて適用の可否を判断
・他のJBoss製品によるデータの論理
統合の可能性も探りたい
OPEN EYE 7
Success story for your business
Red Hat K.K. EDITORIAL 2015
○ レッドハット最新レポート
Windows Server 2003からOSSベースのクラウド基盤への移行サービスについて記者発表
エコシステムを拡充してWindows to Cloudに
拍車をかけ、2020年東京五輪までに
Linuxを国内シェアNo.1にする!
2015年7月にサポート切れを迎えるWindows Server 2003。
その移行先として有効となるのが、環境変
化にも柔軟に対応できるOSSベースのクラウド基盤だ。2014年12月10日の記者発表から、
レッドハットの
Windows to Cloud戦略と実際のソリューションについてご紹介する。
我々は、認定クラウドプロバイダーのクラウドサービス
とレッドハットのサブスクリプションをオンプレミスで
購入していただいたお客様向けに、Red Hat Cloud
Accessという機能を提供している。既に Amazonと
Google のパブリッククラウドサービスと連携しており、
順次国内パートナーを拡充していく」。
そして4 つ目の課題が、ミッションクリティカルなア
プリケーションの稼働環境の確保だ。
「我々はミッションクリティカルなアプリケーション
領域における実績も、Windows を大きく上回ってい
る。世界22か国、26の証券取引所がRHELを採用して
おり、全世界の金融取引の 50%以上が RHEL ベース
ハットはさまざまな取り組みに着手している」。
で動いている」。
2014年7月にはコンテナ型仮想化ソフトウェアの
Red Hat OSS Integration Centerの提供するマイグ
Docker を正式サポートした「Red Hat Enterprise
レーションサービス
「Red Hat Professional Services」
Linux 7」をリリース、そして今回、 Windows to
では 、W i n d o w s を 標 準 基 盤 にしてい な い 企 業 、
Cloud を支援するマイグレーションサービスを提
Windows への依存度を下げたい企業を対象に、
代表取締役社長の廣
供開始した。メインフレーム/UNIXからLinuxへの
Windows Server 2003 からOSS への移行を、現状調
川裕司は「これまでの
マイグレ ーションをサポ ートする R e d H a t O S S
査→移行→運用→更新という4 つのフェーズで支援
IT インフラを支えてき
Integration Center(2013年9月設立)の新たなサー
する。対象領域は、Webサーバー、ファイルサーバー、
た Windows の時代
ビスで、喫緊のターゲットは、2015 年 7月にサポート
データベース、
アプリケーションの4つだ。
クラウド基盤製品の提供と
パートナーとの協業で、
ユーザー企業の
Windows to Cloud を強力に支援
Yuji Hirokawa
始めにレッドハット
が、大きく動き始めて
終了を迎えるWindows Server 2003 からクラウドへ
最後に古舘は「単にWindows をクラウドに移行す
いる」
と指摘、
「その変
の移行だ。
ること が 最 終 形 だと は 考 えて い な い 」と 語り、
化の先にあるのが、ま
「Windows to Cloud のマイグレーションを我々と
「Windows ベースで作られているさまざまなアプリ
さにOSS ベースのクラ
一緒に支えていただく賛同パートナー様も現在 13 社
ケーションをコンテナ技術を使ってクラウドに最適化
ウドだと我々は考えて
で、今後このエコシステムをさらに拡充させていく。そ
したアプリケーションに替えていくことがこれからの
いる」
と強調した。
して我々は、東京五輪が開催される 2020 年までに
流 れだと認 識してい
Linuxを国内ナンバーワンにしたいと考えている」。
る」
と強調した。
2014年、
レッドハットは仮想化、IaaS、PaaS、統合ク
ラウド管理の各領域で製品強化を図った。今後の企
業システムの標準インフラと目されるクラウド基盤
を、
より柔軟に構築し、管理していくための戦略だ。
まず 仮 想 化 製 品として「 R e d H a t E n t e r p r i s e
Masakiyo Furudate
「今後クラウドが標
Windows to Cloudを4つのフェーズで支援、
今後はアプリケーションの最適化もサポート
準プラットフォームに
なることは 間 違 い な
い。それに併せて全て
Virtualization 3.4」
を6月にリリース、7月にはIaaS製
続いて常務執行役員 パートナー・アライアンス営
のアプリケーションを
品として 今唯一デファクトスタンダードになりつつあ
業統括本部長の古舘正清が、実際の Windows to
クラウドに移していく取
るOpenStack をベースとした「Red Hat Enterprise
Cloudソリューションを紹介し、Windows ユーザーが
り組みを、お客様、パー
Linux OpenStack Platform 5.0」
を、11 月には PaaS
抱える4つの課題について言及した。
トナー様と一緒になっ
製品として OpenShift をベースとした「OpenShift
1 つ目はサポート切れへの対応で、2015 年から
て進めていきたい」
。
Enterprise 2.0」を市場に投入。さらに、プライベー
2020 年までほぼ 1 年ごとに各種 Windows 製品がサ
ト/パブリックが混在するハイブリッドなクラウド環
ポート切れを迎え、企業はその都度プラットフォーム
境を統合管理する
「Red Hat CloudForms 3.1」
を 10
をどう変えていくかを考える必要に迫られる。しかし
月から提供開始した。
OSSならそうした心配は全くない。
「レッドハットはOSSを核にして、ITインフラの地殻
2つ目がサポート切れに伴うTCOの増大だ。ライセ
変動をドライブしていく。我々のこの戦略にご賛同い
ンスコストや保守コストに加え、インフラ改変に付随
ただいたOpenStackパートナー様は現在15社で、日
するダウンタイムの発生により、従業員の生産性は大
本市場の約9割を網羅できるほどの規模感だ」。
きく低下する。またバージョンアップやセキュリティ対
IDCの調査によれば、国内のサーバーOS市場は現
策などを行うITスタッフの対応コストも必要だ。
段階ではまだ Windows が約半数を占めているもの
「Windows を Red Hat Enterprise Linux( RHEL)
の、直近の 2∼3 年を見れば、Linux は毎年約 13%
に移行することで、1年間の総所有コストは34%も削
の伸びを示しており、この成長は今後も続くと予測
減できる」。
される。※
3 つ目の課題がクラウドの有効活用、すなわちクラ
「2014 年の国内における有償 Linux の割合は約
ウドポータビリティ
(=可搬性)
だ。
24%で、このうちの 85%をレッドハットが占めてい
「最近 オンプレミス環境で利用しているLinux 上の
る。そして2020 年には、有償 Linux 全体で50%以上
ワークロードを一定時期だけパブリッククラウドに移し
のシェアを獲得するだろう。この実現に向けて、レッド
て使いたい というご要望が増えてきている。そこで
Red Hat OSS Integration Center について http://jp-redhat.com/oss_integration_center/
▼ レッドハットの移行サービス
Red Hat OSS Integration Centerによる
Windows Server 2003移行
Microsoft IIS
Apache,Red Hat JBoss
ファイルサーバー
Samba4
Active Directory
Samba4
SQL Server
PostgreSQL,
MySQL(MariaDB)
Windows Server 2003
Red Hat Enterprise Linux
※出典:IDC Japan, 2014年6月
「国内システムソフトウェア市場2013年の分析と2014年∼2018年の予測」
Windows からCloud への移行
http://jp-redhat.com/migration/
◎ レッドハットの製品、
サービスに関するお問い合わせはこちらまで >>> セールス オペレーションセンター ☎ 0120-266-086(携帯電話からは ☎ 03-5798-8510)
〔受付時間/平日9:30∼18:00〕 e-mail: [email protected]
◎ OPEN EYEの配送先変更、
配送停止、
その他お問い合わせはこちらまで >>> マーケティング本部 e-mail: [email protected]
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かであり、OpenStack Foundation の許諾の下に使用されています。Red Hat は、OpenStack FoundationやOpenStack コミュニティの系列企業ではなくまた、支持や出資を受けていません。その他全ての登録商標
及び商標の所有権は、該当する所有者が保有します。本誌に掲載された内容の無断複製・転載を禁じます。
OPEN EYE Vol.18
2015年2月 発行
発行:レッドハット株式会社
東京都渋谷区恵比寿 4-1-18
tel:03(5798)8500