水坤 寄稿 - 全国上下水道コンサルタント協会

水坤
寄稿
水コン協「新ビジョン 2015‒2025」
策定報告
企画委員会委員長(㈱日水コン/管理本部) 小石川信昭
■ 1.「新ビジョン」策定の背景
■ 2.「新ビジョン」の基本理念、狙い
「新ビジョン」を策定した背景には、大きく2つ
「新ビジョン」では、このような、この先の社会
の要素があります。一つ目は、これからの社会情
情勢や上下水道事業環境の変化、そして「新水道
勢と上下水道を取り巻く事業環境は、どうなるの
ビジョン(H25:厚生労働省)」「新下水道ビジョ
かという今後の見極めと将来展望の必要性の高ま
ン(H26:国土交通省)」で提示された上下水道事
りです。平成 17 年に策定した前回のビジョン「地
業の基本的方向性と民間企業へ期待している役
域水代謝への貢献─21世紀における上下水道コン
割、さらに、上下水道コンサルタントが抱えてい
サルタントの使命と役割─」から10年が経ち、社
る課題を踏まえて、10年先の上下水道コンサルタ
会情勢と事業環境は大きく変化しています。注目
ントのあるべき姿とそこへ到達するための方策を
すべき点として、人口減少・少子高齢化の進展、
示しています。すなわち、これからの上下水道事
大規模災害への対応の高まり、上下水道施設整備
業に予想される変化と先を見据えた上で、我々は
の概成、膨大なストック施設の老朽化の進行、水
どのような担い手となり上下水道事業、そして地
コン協会員企業の主たる顧客である地方公共団体
域に貢献し、社会的存在価値を確保していくかと
の財政逼迫、
事業管理体制の確保が挙げられます。
いうことです。
二つ目は、上下水道コンサルタントが直面して
いる厳しい現状です。とりわけ高普及率を達成し
管理運営の時代に入った今、基幹事業領域の計
■ 3.「新ビジョン」の骨子
画・設計関連市場の縮小が加速しつつあります。
図1に「新ビジョン」で掲げたコンセプト─こ
その一方で、新規市場として拡大傾向にある施設
れからの上下水道サービスの担い手としての挑戦
の改築・更新、維持管理やエネルギー活用などの
─のイメージを示します。この「挑戦」とは、こ
事業については、PFI、DBO、包括民間委託など
れまでの技術サービスの領域を超えた上下水道事
多様な事業手法の進展を契機に、多くのプレイヤ
業全般に亘るサービスを提供することを念頭に置
ーが参画しつつあります。その結果、計画・設計
いたものです。その目指すサービスの到達点とし
業務に関連する内容であっても、必ずしも上下水
て「多様な官民協働形態」を定義し、それぞれの
道コンサルタントだけの市場ということではなく
形態において上下水道コンサルタントがどのよう
なってきているように見受けられます。また、多
な役割を果たしていくかを提唱しています。
くの会員企業では最も大切な経営資源である人材
「多様な官民協働形態」は、図2に示すように
の確保が懸念されています。
「個別形態」
「包括形態」
「事業体補完形態」と三つ
に分類しています。
「個別形態」は、これまでのよ
うに業種(計画、設計、施工、維持管理)ごとに
区分されて発注される形態で、今後とも継続され、
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⑤ 水コン協による
会員企業への支援と
協会活動の強化
人材確保
学生
他業界
④ 業界関係者や異業種との連携
③ 上下水道コンサルタント間の連携
維持管理会社
上下水道
コンサルタント
全国上下水道
コンサルタント協会
上下水道
コンサルタント
上下水道
コンサルタント
シンクタンク
金融 法務 商社
② 多様な官民協働の
促進に向けての対応
多様な官民協働
上下水道
事業体
上下水道事業
メーカー
① 技術・品質・倫理・経営基盤のさらなる向上
建設会社
図中の上下水道コンサルタントの色や大きさの違いは、
規模や営業品目など各社各様に特徴が異なることを表現しています。
図1 「新ビジョン」コンセプトイメージ
これまで
これから
体制が十分ではない事業体では補完形態での
上下水道コンサルタントの活用範囲が広がる
経営判断
政策判断
経営判断
事業体
経営計画
事業体
事業体
補完形態
経営計画
業務管理
包括
複数年
性能発注
包括形態
包括形態
一般業務
計画
個別形態
調査・設計
施工
(新設・改築)
維持管理
個別
単年度
仕様発注
包括委託
PFI
DB
DBO
CM
・
・
・
個別形態
個別
単年度
仕様発注
包括委託
PFI
DB
DBO
CM
・
・
・
業務管理
中・小規模
多品目な水コン
中・小規模
少品目な水コン
大規模広域の
総合コンサル
包括
複数年
性能発注
包括
複数年
性能発注
大規模広域
多品目な水コン
業務管理
一般業務
個別形態
個別
単年度
仕様発注
大規模広域
多品目な水コン
計画
中・小規模
多品目な水コン
調査・設計
中・小規模
少品目な水コン
施工
(新設・改築)
大規模広域の
総合コンサル
維持管理
図 2 水コン協が考える多様な官民協働の概念
各形態の中で業務量も最も大きいと想定されま
理体制が十分ではない事業体を対象として、事業
す。
「包括形態」は、これまで事業体が担ってきた
体の補助者的な位置づけの範囲を超えて、法的権
業務管理の一部も含み、PFI、DBO、包括的民間
限を伴わない委任範囲において、上下水道コンサ
委託など、業種や業務期間が包括的、継続的に扱
ルタントが裁量権を以って、事業体と協働して「経
われる形態で、個々の業種対応から総合的な対応
営判断」
「経営計画」
「業務管理」を担う形態です。
や業種間連携が必要とされます。上下水道コンサ
この事業体補完形態で我々の役割は、まさに上下
ルタントは、この業種間連携において積極的に関
水道事業の経営パートナーになり新たな立ち位置
与して中心的な役割を果たしていくことを目指し
とマーケットを築き上げることになります。
ています。
「事業体補完形態」は、特に事業運営管
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■ 4.「新ビジョン」実現に向けた方策
と本部・支部との連携強化 ” です。そしてこれら
ビジョンの実現に向けて取り組むべきテーマと
る予定です。
の協会としての具体的な行動計画を本年度作成す
して─①技術 ・ 品質 ・ 倫理 ・ 経営基盤の強化 ②多
様な官民協働の促進に向けての対応 ③上下水道
コンサルタント間の連携 ④業界関係者や異業種
■ 5.終わりに
との連携 ⑤水コン協による会員企業への支援と
「新ビジョン」を形のあるものにしていくために
協会活動の強化─の5つを掲げ、その方策を提示
は、その基本理念、目指すところを会員企業が共
しています。これらのうち①~④については、会
有するとともに協会と一体となった行動が重要と
員企業と水コン協が一緒になって、
⑤については、
なります。加えて事業体や業界関係者への発信、
水コン協が主体的に取り組むテーマです。
意見交換を行い、ご理解を得ていくことが大切と
ここでは、⑤の水コン協が取り組むテーマを紹
考えております。
介します。その主な事項は、“会員企業の人材確保
最後になりますが「新ビジョン」は、企画委員
・ 育成への支援 ” 「魅力ある職場づくり」への支
“
会を中心に検討を重ね、そして関連委員会などで
援 ” “ 会員企業の技術 ・ 品質向上への支援 ” “ 会員
の議論、支部会員への意見聴取、意見交換会を実
企業の経営基盤強化への支援 ” “ 災害復旧・復興
施し、多くの委員、会員の方々からの提案、意見
への支援 ” 「事業体補完形態」の促進
“
” “ 海外水
を参考に取り纏めました。ここに関係各位のご協
ビジネス参画への支援 ” “ 水コン協活動の活性化
力に謝意を表します。
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