第10回 健育会グループ チーム医療症例検討会 in 熱川 演 題 名 寄り添うことで取り戻せた生活 施 設 名 介護老人保健施設 しおさい 発 表 者 菊池 大助 概 要 【はじめに】 向精神薬により活動性をほぼ失った状態で入所さ れたご利用者が、ご家族の「元の生活を取り戻して 欲しい」 に応えたいとの思いで、 チーム一丸となり、 入所 2 カ月後には釣りを楽しむまでに回復した症例 を報告する。 【症例紹介】 氏名 :Y.I 様 年齢 :79 歳 性別 :男性 介護度:要介護 5 疾患名:肺癌、食道癌、認知症 現病歴:S61 年肺癌(治癒) H21 年 食道癌(未治療) H24 年 肺癌(転移) H25 年 9 月 認知機能低下の為デイケア利用開始 H26 年 4 月 肺炎の為入院。肺癌が進行 H26 年 5 月 癌センターに転院 H26 年7月 内服調整の為精神科病院に転院 H26 年 8 月 30 日にしおさい入所 性格:頑固、話し好き 家族構成:長男、長女、次女(keyperson)、妻と は離婚し独居 生活歴:東京消防庁に勤務、30 歳で親の介護の為帰 郷し、75 歳まで青果の卸売業をしていた 趣味:磯釣り、盆栽、大工 家族の要望:以前のような父らしい生活を取り戻し て欲しい 心身・ADL 初期評価: 覚醒低下により本来の身体機能は不明 ADL 全介助(デイケア利用時は ADL ほぼ自立) 【治療(ケア)計画】 問題点 第 1 段階 覚醒低下 第 2 段階 せん妄によるリスクが高い 第 3 段階 意欲の低下があり生きがいを 持つ事が出来ていない 目標 第 1 段階 覚醒向上 第 2 段階 安全に生活が出来る 第 3 段階 楽しい時間が過ごせる 【経過】 入所時~9 月 10 日 終日傾眠傾向 9 月 1 日 向精神薬中止 9 月 7 日~10 月 3 日 覚醒向上するが、昼夜せん妄が出現し窓から外に出 ようとしたり、室内で放尿する事がある為、介護ス タッフは、訪室の回数を増やし、状態に合わせた環 境整備や放尿に対しての衛生管理を行い、常に個別 対応を実施。 看護スタッフは、夜間の不眠に対して傾聴し孤独に ならないようにすることで精神状態の安定に心掛け た。 当初の食事は全介助するも、傾眠傾向強く摂取量少 なく誤嚥リスクが高い為見守りを強化しムース食か ら開始。覚醒状態の改善で食事は全量摂取でき、ム ース食から米飯、一口きざみまで改善。 リハビリは、下肢筋力の残存を確認、自立歩行を可 能と考えベッド上でROM開始。その後、座位訓練 から歩行訓練へと段階的に付加を増す事に成功し、 ADLもほぼ自立となる。 【結果】 1 向精神薬を中止することで、日中の覚醒が向上し た。 2 多職種による個別対応を行う事でリスク回避がで きた。 3 磯釣りにご家族と行くことをきっかけに、笑顔を 取り戻した。 【考察】 今回の症例は【寄り添う】という言葉に集約され る。それは、相手を思いその人の尊厳を大切にケア する事が重要である。 様々な問題に挑戦し、その人らしさとは何なのか を追求しているスタッフだからこそ対応が出来た。 そして、ご利用者やご家族の思いに共感する価値観 を持つ事ができ、各々が自分の役割を理解し専門性 を活かしたケアを提供できたと考える。
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