機械応用実験「抗力・揚力の計測Ⅰ・Ⅱ」 <テキストに関して> 抗力

機械応用実験「抗力・揚力の計測Ⅰ・Ⅱ」
2015 年度
担当:中根
<テキストに関して>
以下は,実験受講前に予習しておく内容をまとめたもので,実験の際のテキストではありません.
抗力・揚力の計測Ⅰ・Ⅱの実験時のテキストは HP 上( http://nakane-lab.net/experiment/index.html )にアッ
プしてあります.授業開始前までに必ずダウンロードしておいて下さい.
抗力・揚力の計測Ⅰ【J・F コース生(水曜日実施)
】受講前の予習内容
1 .実験の概要
自動車や航空機のように流体中を移動する物体,あるいは橋梁の桁のように流れの中に置かれた物体には,
流体による力が作用している.そして,この流体による力のうち,流れの方向(移動物体では移動方向と逆向
き)に作用する力を抗力,この方向と垂直な向きに作用する力を揚力と呼んでいる.従って航空機においては,
抗力に逆らって進み,揚力により上昇する.ここでは以下の実験を通して,抗力・揚力の発生するメカニズム
とその特性,さらには,その大きさをどのように見積もるかを学ぶ.
<1週目:圧力と抗力>
① レイノルズ数を変化させ,球に作用する抗力を計測する.
② 円柱の表面圧力を計測し,圧力分布と円柱に作用する抗力の関係を考える.
<2週目:圧力と揚力>
① 前回の円柱表面圧力の計測結果から,球をカットした物体に作用する揚力・ダウンフォースを検討する.
その上で,これを実際に計測する.
② 球を液中落下させ,落下挙動を観察する.そして,この球の落下挙動から,球に作用する揚力・抗力を推
察する.併せて,落下球のレイノルズ数を計測することで観察結果との整合性を検討する.
2 .実験の前に考えておくべきこと
(1) 図 1 のような実験装置において球の抗力を計測すると,次式で表される球の抗力係数 CD は,レイノルズ数
Re に伴って図 2 のように変化する.これに関連し,レイノルズ数 Re と抗力係数 CD の次元を考え,これらの次
元の意味するところを推察しなさい.また,このような実験で Re を変化させる場合,何をどのように変える
のが一般的であるか考えなさい.
1000
ノズル
Exp.
Schiller & Nauman
ニュートン領域
100
速度:U
圧力:Pa
球
はかり
図 1 実験装置の概略
Re =
CD
10
気流
密度:ρ
1
0.1
0.01
0.01
1
100
Re
10000
1000000
図 2 球の抗力係数の変化
ρUd Ud 流体の密度 × 代表速度 × 代表長さ 代表速度 × 代表長さ 慣性力
=
=
=
=
μ
ν
流体の粘度
流体の動粘度
粘性力
CD =
FD
1
ρU 2 × A
2
=
抗力
流体の動圧 × 前面投影面積
ノズル
(2) この実験では,ノズル吹き出し口の圧力をピトー管により計測し(右図3
参照)
,以下のベルヌーイの式を利用することで吹き出し速度を算出する.具体
的に,どのようにして速度を算出するかを考えなさい.
ベルヌーイの式:
速度:U
圧力:Pa
気流
密度
:ρ
1
ρU 2 + ρgz + P = 一定
2
ピトー管
図3 ノズル出口での
流速計測の模式図
(3) 図 1 や図 3 のようなノズルにおいて,ノズル吹き出し口中央に円柱を置き,円柱表面圧力 P を計測すると,
圧力係数 CP はレイノルズ数 Re に伴い,図 4 のように変化する.以下の問いを考えなさい.
r
① この場合,
円柱の後流がどのようになるか
を,下図 5 を参考にして考えなさい.
Flow
θ
上流速度:U
上流圧力:Pa
(c)
(b)
(a) 双子渦
(b) カルマン渦 (c) 乱流渦
図5 円柱後流渦の模式図
(a)
② 下式で表される圧力係数 CP の次元を求め,
この次元の意味するところを推察しなさい.
また,右図 4 より分かるように,0度におい
て CP =1となる理由も考えなさい.
Cp =
=
P − Pa
1
ρU 2
2
図 4 円柱表面上の圧力係数分布
円柱表面圧力-円柱上流圧力
流体の動圧
② 通常,抗力は摩擦抗力と圧力抗力を合わせたものである.図 4 の圧力分
布において,図中(a)の非粘性の場合の抗力を見積もると,どのようになる
かを考えなさい.
③ 上の②を踏まえ,
図 4 の圧力分布から,
抗力と揚力を見積もるためには,
どのようにすれば良いかを考えなさい.
(4) 球が一定速度(終端速度)で液中落下する場合,その運動方程式がど
のようになるかを,右図 6 を参考にして考えなさい.また,浮力と揚力の
違いも考えなさい.
浮力 FB
加速度 a
下向き正
抗力 FD
重力 mg
図6 一定速度で液中落下す
る球に作用する力
抗力・揚力の計測Ⅱ【F コース生(木曜日実施)
】受講前の予習内容
実験実施前に,以下の問いの解答を確認します.必ず,実験前までに答えられるようにして来て下さい.
(1) 流れ方向にも流れと垂直方向にも対称な流れがある.この場合に,抗力・揚力がどのようになるかを説明
しなさい.
(2) 物体の後流においては,大スケールの渦が長周期で発生する場合と,小スケールの渦が短周期で発生する
場合がある.どちらの場合に,抗力がより大きくなるかを説明しなさい.
(3) 航空機の翼ならびにボディとして求められる流体力学的な要件を説明しなさい.
(4) 次図は Private Pilot Handbook に掲載されている迎え角に対する揚力・抗力係数等の分布を表す図である.
同図より,失速時における翼面上の流れと揚力・抗力を予測して説明しなさい.