CT、MRI検査における同意書について

2015.7.2
第10回モーニングレクチャー
放射線科 村田 繁利
CT,MRI検査における同意書について
●現在の画像診断においてCT,MRIの造影検査の果たす
役割は大きく、造影剤の使用頻度も増加傾向にある
●一方で、副作用の問題は避けて通ることはできず、造影
剤適応の判断や検査に伴うリスクを最小限に抑えること
も要求されてくる
●造影検査前のチェックとして同意書は非常に重要である
●ヨード造影剤には各社から様々なものが発売されている
(化学構造式がそれぞれ異なる)
●造影剤アレルギーとは?
ヨードそのものに対するアレルギーではない
抗原抗体反応ではなく、アレルギー様反応である
●副作用は過敏症反応か否か?重症度は?
造影剤を確認すること
MRI用造影剤で副作用歴あり→ 慎重投与として扱う
●喘息があるからといって、一律に原則禁忌としない
①現在活動性で、薬剤などでコントロールできていない
状態
→ 禁忌
②薬剤などでコントロールされている状態
→ 慎重投与~原則禁忌
③小児喘息や過去の喘息で、現在無治療でも発作のない
状態
→ 慎重投与
●ヨード造影剤の重篤な副作用発現率
喘息あり
→ 0.23%
造影剤副作用歴あり → 0.18%
アレルギー歴あり
→ 0.10%
アレルギー歴なし
→ 0.03%
●緊急事態に対応できる体制を準備しておくことが一番大切
安易な造影剤使用は慎むべきである
ビグアナイド系糖尿病薬との併用についてはやや混乱してい
るのが現状
●検査の前後にそれぞれ2日(合計5日)休薬する
●eGFRが60以上あれば、休薬の必要なしという意見もある
●eGFR30以下は → ビグアナイド系糖尿病薬の適応外
●詳細は糖尿病専門医にご相談ください
●ヨード造影剤投与後に甲状腺中毒症が発症する恐れあり
●甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)において
薬物などでコントロールされていない → 禁忌
コントロールされている
→ 慎重投与
●放射性ヨードを用いた治療を受ける時は、治療前少なく
とも2ヶ月間はヨード造影剤の投与を避ける必要がある
●ヨード造影剤投与後2ヶ月間は甲状腺のRI検査に注意が
必要
●腎機能障害では造影剤腎症が起こる可能性がある
eGFRが30-60 → 原則禁忌~慎重投与
eGFRが30以下 → 禁忌~原則禁忌
※予防には補液が有効
●透析中 → ヨード造影剤の使用は問題ない、透析に合わ
せる必要なし(水分の過剰補給に注意)
ガドリニウム造影剤は禁忌~原則禁忌
●被曝の問題
原則として撮像しない
ただし、緊急時には母体優先で検査する
医療被曝での危険性について(いずれも100mGy以上)
着床前
→ 胎芽死亡
着床後から器官形成期 → 奇形の発生
その後出産まで
→ 精神発達遅延など
●ヨード造影剤の胎児への影響
安全性は確立していないが、上記緊急時などには必要に
応じて投与する
●授乳の問題
乳児への吸収量は母親への投与量の0.01%以下と非常
に少量である
少量とはいえ、アナフィラキシー様反応を引き起こす可能
性はゼロではないことから、基本的には数日間の断乳期
間を設けるのが望ましい(事前に母乳を搾乳しておく)
※乳児に異常が発生したとの報告がないことなどから断
乳の必要はないとの意見もある
その他の注意事項
●βブロッカーの問題(アドレナリンと拮抗する)
●腎毒性を有する薬剤の問題(NSAIDsや抗菌薬、抗癌剤)
●事前に体温程度まで温めておく(粘稠度低下)
●脳槽・脊髄造影に安易に使用しないこと(死亡例あり)
●極端な水分制限をしないこと(特に子供や高齢者)
●副作用の予防目的での事前のステロイド投与は?
有効性は確立していないが、やるなら12時間前および2
時間前に経口投与などが推奨されている
記載をお願いします
特に、リスクファクターがある患者で造影検査を行うときは
十分な説明と同意が重要となる
●前回検査後の手術歴などの確認
●ガドリニウム製剤の副作用発現率
Gd製剤の副作用歴あり
→
ヨード造影剤の副作用歴あり →
喘息あり
→
全症例
→
21.3%
6.3%
3.7%
2.4%
●NSFとの関連
●造影剤の種類により、添付文書の記載内容に若干の相違
が見られる
●どうしても必要な時は、NSF発症報告の少ないマクロ環構
造の造影剤(プロハンスなど)を使用する
●腎機能をeGFRで評価
60以上 → 危険性が高いとする根拠に乏しい
30-60 → 利益と危険性を慎重に検討し、最小量使用
30以下 → 禁忌~原則禁忌
●体内金属がある場合は人体への危険性について検討
●危険性はなくても、撮像部位によっては画像の歪み出現
たとえば、関節置換術後やAAAのステント後など
●安全性がはっきりしないものは、添付文書でも確認
放射線科、技師にも問い合わせる
HP参照(http//www.mrisafety.com/)
●金属の有無が不明なときはXpなどでも確認
●CTと異なり被曝はないので、その点では安全
●しかし、磁場やRFパルスが胎児に与える影響は完全には
わかっておらず、米国のFDAのガイドラインでは「妊婦の
MRI検査における胎児の安全性は確立していない」として
いる
●特に器官形成期である妊娠14週以内での撮影は避けるべ
きである
●ただし、母体や胎児に生命の危機がある場合など、一刻を
争う場合は、これらの点も理解し、説明した上で撮影するべ
きである
●ガドリニウム造影剤は胎盤を通過する
●胎児に不利益な影響を与えたという報告はないが、安全が
実証されているわけでもない
●どうしても必要なとき以外は使うべきでない
●ガドリニウム造影剤は母乳にも移行する
●24時間授乳を控えるという意見もある
●“MRI対応ペースメーカー”はあくまで条件付きであること
●事前に研修を受けて登録した施設で、決められた手順や検
査条件の元でのみ検査可能
●緊急の検査として直ぐには対応できないので注意が必要
※登録病院数
メドトロニック
松山市内(5病院)
愛媛県内(16病院)
セントジュードメディカル
松山市内(2病院)
愛媛県内(7病院)