第596回理工懇談会記録 日 時 平成 27 年 3 月 20 日(金) 場 所 東京歯科大学水道橋校舎 演 者 吉成 演 題 『ジルコニアの光と影』 正雄 午後 7 時 15 分より 本館 13 階第 2 講義室(B 教室) 先生【東歯大・理工・教授】 定年退職にあたり、昨年の 10 月の東歯学会での退任記念講演として「生体多機能化インプラント を目指して」を講演しました。今回の理工懇談会では、ジルコニアによる ”Made in Japan, Metal-free Zirconia Restoration”について述べさせて頂きました。 ジルコニア(正方晶ジルコニア多結晶体、以下 TZP)は、従来のセラミックスを凌駕した強度の みならず、審美性、生体適合性に優れることから、固定性補綴物への応用が急速に進んでいる。ま た、TZP の特徴を活かし、インプラントアバットメントやインプラントボディへの応用化が、特に ヨーロッパで進んでいる。 TZP を固定性補綴物やインプラントボディに応用するためには、生体環境下で長時間機能するこ とが求められる。しかし、一般的な材料の強度評価は、大気中で一回だけの負荷による静的な試験 法で行っており、これでは口腔内で長時間機能したときの耐久性を評価できない。しかも、表面を 粗糙化した TZP の湿潤下における疲労特性を検討した報告は見当たらない。Y-TZP(イットリア安 定型 TZP)、Ce-TZP/ Al2O3 ナノ複合体(NanoZR)の表面にブラスト+酸エッチング処理を施し疲労 特性を評価した。その結果、疲労強さ(水中、37℃、100 万回負荷)は、静的強さの 50~70%に減 少しており、やはり静的試験だけでは耐久性が予測できないことが判った。このなかでも、熱間等 方圧加圧(HIP)処理された Y-TZP と NanoZR は充分な疲労強度を有し、臼歯部ブリッジフレーム や直径を 3mm のインプラントまで応用可能であると考えられた。また、純チタンの 1.5 倍の疲労特 性を有していることを考えれば、TZP による 2 回法の中空インプラントも充分に可能であろう。 最近になって、高透光性カラーTZP(Zpex、東ソー)が、またエナメル陶材に匹敵する高透光性 を有する Zpex Smile が紹介された。これらカラーZpex と Zpex Smile を組み合わせた単層 (monolithic)TZP が注目されている。この単層 TZP は、陶材に匹敵する透光性と、陶材の 10 倍 以上の強度を有していることが分かった。このような単層 TZP の使用により、積層陶材でのチッピ ングを回避するだけでなく、ジルコニアフルカウンター修復を可能とし、歯の削去量減少につなが ると期待されている。しかも TZP は、硬質であるにも拘わらず陶材より対合歯を摩耗させない事実 が報告がされるようになってから、単層 TZP 修復への応用に拍車がかかっている。しかし、単層 TZP だけではシェード表現が不十分で、対合歯エナメルの破折を惹起するなどの報告もあり、本材 の動向を注視する必要がある。 TZP をインプラントボディに応用するためには、早期のオッセオインテグレーション獲得のみな らず、インプラントが接する全ての組織と親和性があるか、を明らかにする必要がある。マウス骨 芽細胞様細胞、ヒト間葉系幹細胞、ヒト口腔上皮細胞を用いて TZP 上の細胞動態を調査するととも に、歯周病関連細菌の付着・増殖特性を調査した。その結果、ブラスト+酸処理を施し表面にマイク ロ構造+ナノ構造を付与することにより、チタンと同等の骨形成能を有することが判った。また、低 温プラズマによる超親水化処理は上皮細胞の接着を促進することが明らかとなった。しかし、歯周 病原細菌の接着特性はチタンと同程度であり、従来のセラミックスとは異なる傾向を示した。さら には、TZP は弾性係数が 210GPa とチタンの 2 倍であることから、インプラントと骨組織界面に応 力集中が生ずることが予想される。TZP のインプラントへの応用に関しては、更なる基礎研究、臨 床研究を進め、エビデンスを構築していく必要性がある。 永い間、ご指導、ご厚誼を賜った、理工懇談会の会員の先生方に深く感謝いたします。 (吉成先生 平成27年度理工懇談会総会・第597回理工懇談会御案内 日 時 平成 27 年 4 月 17 日(金) 総会:午後 7 時 15 分より 例会:午後 7 時 45 分より 場 所 東京歯科大学水道橋校舎 本館 13 階第 2 講義室(B 教室) 今回の例会は、メーカー各社による新商品の紹介をいたします。 業者:㈱ジーシー 上野 氏 ㈱トクヤマデンタル / ㈱デントロケミカル 橋口 氏 吉川 氏 (五十音順) ○講演前に平成 27 年度総会が開催されます。 *本会は日歯生涯研修事業の研修会として認定されておりますので、 例会出席の際には必ず「日歯生涯研修個人 IC カード」をご持参下さい。 記)
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