26.上手に廃業する方法

26.上手に廃業する方法
「上手に廃業する方法」の勘所は以下の
3点です
第1. 時期を失しないようにします。
第2. 将来の生活設計をきちんと立てておきます。
第3. 周りの関係者の心配りを忘れないようにします。
1.時期を失しないようにする
(1) 黒字経営の場合、時期を失することのマイナス面は大きくはありま
せん。しかし、赤字経営の場合、廃業の時期をズルズルと遅らせ
てしまうと、その間借金の額が膨らみ、かえって周囲に迷惑をかけ
ることになります。
(2) 廃業には「喪失感」等の心理面のマイナスを克服しなければならな
いという側面も大きいので、経済的合理性だけで済む問題ではあ
りません。
しかし、例えば後継者難で、しかも3期連続赤字となったような場
合には、廃業のシナリオを検討し始めることが必要でしょう。
現状の債務超過のままで廃業した場合、周囲に迷惑をかけるの
で、資産超過になるまで頑張ろうと勝算の少ない戦いを続けるこ
とは禁物です。
税理士等の専門家のクールな判断を聞いてみるのも良いでしょう。
2.将来の生活設計をきちんと立てておく
(1) ハッピーリタイアメントの場合、会社からの退職金で個人の借入金
は返済するようにします。
又、会社が資産超過の場合、事業を終了させる方法によっても税引
後の手取り額が違ってくるので、選択を誤らないようにします。
① 会社清算を行なって残金財産を配当として受け取る。
② 株を売却して、譲渡代金を得る。
③ 退職金を手にして、その後に株を売却する。
上記の3つのパターンで税引手取りが多いのは通常③→②→①の
順番となります。
(2) 債務超過のケースの場合、通常任意清算や破産等が選択されます
が、会社が技術力や得意先関係等で無形の価値を持っている場合、
M&Aも可能となります。この場合、通常の廃業より事業の処分価値
は高くなります。
(3) 経営者は多くの場合自宅を会社の借入の担保に提供していますが、
債務超過の状態での廃業となると「競売」されてしまうのが通常で
しょう。このようなことが予想されるときは、知り合いに「競売価格プラ
スアルファ」の価格で任意売却し、その後安く買い戻したり(ディスカ
ウント・リースバック)、又は知り合いに売却した後で賃借人として借
り続ける(セール&リースバック)等として住いを守ることも大切です。
3.周りの関係者への心配りを忘れない
(1) 廃業にあたっての配慮
「取引先」
事前に通知し、混乱を防ぐ
「永年勤務者」
退職金を支払って、その労に報いる
「若手社員」
再就職先を斡旋する
(2) 代表者だけでなく身内(長男)も自宅を担保提供している場合も、債務超過
で廃業するとなると競売に付されることにもなりかねません。
例えば、時価3000万円の住宅で、住宅ローン残高が2000万円残っている
場合は、この不動産には1000万円の「剰余」があることになり、競売の対象
になり得ます。
この場合、知人等から自宅を担保に1000万円を借り入れ「無剰余」におけば、
競売から守ることができます。
(3) なお、周りの関係者への心配りのためにも、又、会社を廃業する手続(特に
破産の場合等)を進めるにも、ある程度の資金が必ず必要になってきます。
「地獄の沙汰も金次第」という言葉もあります。最後をきちんと終るためには
ある程度の資金の用意が欠かせません。