二項係数についての入試問題から

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二項係数についての入試問題から
うら
とし お
裏 俊男
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特集 入試問題研究
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§1.はじめに
過去,その年の西暦年を盛り込んだ入試問題がし
ばしば出題されてきた。今年西暦 2015 年は,
(2015)=(11111011111)
という特徴があった。
これを使ったなんらかの出題があるのではと予想
(期待?) していたが,今年の東大入試の 1 問
m
2015−m
−
−
 2015

2   2  
2
2015
m
2015−m
+
−
−

2  2  
2
2015
m
2015−m
+
−
−

2  2  
2
=






+……
と変形し,
C が偶数となる最小の m を求めよ
はこの特徴に関連した出題だった。
[a+b]−[a]−[b]≧0
だから,この各 {
うな最小の m を求める,という考えに導かれる。
§2.解法
この数の特徴を活かせば,
最小のはひとまずお
2015 !
C=
m ! (2015−m) !
いて,
m
2015−m
−
−
 2015
0
2  2  
2
が 2 の倍数かどうかは,右辺を素因数分解し,素因
数 2 の冪を調べればよい。
数は
 
([
=(11111100000)−1
因数 p の冪は
=2+2+……+2−1
より,m=2,k=6 のとき
2
=
 2015
2  
2
=

  
n
n
− 
p
p
∑ k⋅

 
n
=∑ 
 p

で求められた。
(実際は有限和であり,和をとる範囲 k=1∼∞ の
∞は大げさだが,詳しく書くのも面倒だからそのま
まで…)
したがって,C を素因数分解したときの,素
因数 2 の冪は
2015
2015
+
+
+……
 2015
2   2   2 
m
m
m
− + + +……
2
2
2
2015−m
−
+ 2015−m
+ 2015−m
+……
2
2
2





2

れる。実際,
] はガウス記号)
であるから,階乗 n ! を素因数分解したときの,素
これは

(2015)=(11111011111)
n
k


となる m の候補として,直ちに m=2 があげら
n 以下の自然数のうち, k の倍数であるものの個

} のいずれかが 0 にならないよ

+2+……+2−1
2






+2 +2 +2 +2
2−1
+ 

2
2





=2 +2 +2 +2+1
   
 2015−m
= 2
2
2
=
m
2
=0
 =
2
2

2 −1
+2 +2 +2
+
2
2 


+2+2+2+2−1
2







=2+2+2+2
よって,m=2 とすると,k=6 に対して
m
2015−m
−
−
 2015
=10
2  2  
2



あとは,m<2 である m に対して,
m
2015−m
−
−
 2015
=0
2  2  
2


m=2,k=6 のとき

(k=1,2,3,……) (*)
m
2015−m
−
−
 2015
0
2  2  
2



となることが§3 のようにして容易にわかるので,
であることも,シフトレジスタにのった 2 進数を思
m=2 が求める答,ということになる。
い浮かべれば簡単だったかもしれない:
2015= 1 1 1 1 1 0 1 1 1 1 1
§3.2 進数とシフトレジスタ
2= 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0
自然数は計算機の中で, 2 進数の形で扱われる。
2015 は 11 ビットのレジスタによって,
6 ビット右シフトしたところで
1 1 1 1 1 0 1 1 1 1 1
2
2015−2
−
−
 2015
0
2
2  2  

と表されている。

計算機の中では,
÷2という計算は,レジスタの
中の値を 1 つ右にずらす ( 1 ビット右シフトする)
ことで実現される:



§4.類題
数 n が同様の特徴をもつ場合の C について類
0  1 1 1 1 1 0 1 1 1 1 1 ×
∴
2015−2= 1 1 1 1 0 1 1 1 1 1 1
↑↑
題を考えてみた:
0 1 1 1 1 1 0 1 1 1 1
ここで,最上位のビットには 0 が入り,最下位のビ
ットは捨てられる。÷2なら k 回 ( k ビット) 右
シフトすればよい。すなわち,
C が 3 の倍数となる最小の m を求めよ
答.m=2⋅3=162
(解) (2105)=(2212222) である。
3 進数を格納できるレジスタがあったとすると,
 
l
=値 l の入ったレジスタを
2
k ビット右シフトしたもの
 3l =値 l の入ったレジスタを

さて,m<2 である整数 m は計算機の中で,
0 0 0 0 0 0 m m m m m
k 回右シフトしたもの
であり,
2105= 2 2 1 2 2 2 2
(ただし,各 m=0,1)
2⋅3= 0 0 2 0 0 0 0
と表される。
2015 の 2 進数表現は都合よく下 5 桁はすべて 1 な
ので,2015−m は,
2105−2⋅3= 2 1 2 2 2 2 2
だから, 5 回右シフトすれば,
2⋅3
2105−2⋅3
−
−
 2105
0
3   3  
3

1 1 1 1 1 0 m′ m′ m′ m′ m′

(ただし,各 m′=1−m)
また,m<2⋅3 とすると
したがって,以下の 3 つのレジスタを同時にどの
m= 0 0 m m m m m
ように k ビット右シフトしようとも,上 2 つのレジ
ただし,m=0,1
スタの和は, 3 つ目のレジスタの値に等しい。
よって,
m= 0 0 0 0 0 0 m m m m m
2015−m
2015= 1 1 1 1 1 0
1
1
1
1
1
 m2 + 2015−m
= 2015
2
2 
m
2015−m
−
−
 2015
=0
2  2  
2





((*) の証明終)
m′=2−m (i=3,2,1,0)
何回右シフトしようとも (k=1,2,3,……)
 m3 + 2105−m
= 2105
3
3 

すなわち
m,m,m,m=0,1,2
2105−m= 2 2 m′ m′ m′ m′ m′
m′=1−m
= 1 1 1 1 1 0 m′ m′ m′ m′ m′


よって,C⋅ は 3 の倍数である。
と表される。
∴




だから,
m
2105−m
−
−
 2105
=0
3  3  
3



よって,2⋅3 が求める最小の m である。
(東京都立小山台高等学校)
3