★★2015 年~まれな症例 (聖マリアンナ医科大学病院) (症例 1)漬物石による外傷後に発症し膿汁より破傷風菌が分離された破傷風の一例 (IASR Vol. 36 p. 113-114: 2015 年 6 月号より抜粋) 症 例:86 歳男性。微 生 物 学 的 検 査:膿検体をクックドミート培地で増菌培養する とともに、変法 GAM 寒天培地(日水製薬)、ブルセラ HK/RS 寒天培地(極東製薬)、5% 羊血液寒天培地(日本 BD)に塗布し、嫌気的条件で培養を行った。48 時間培養後、変 法 GAM 寒天培地上に遊走性のコロニーを検出し、グラム染色で確認したところ、端 在性の芽胞を有するグラム陽性桿菌が含まれていた。このコロニーから上述の培地で 2 回純培養化を試み、最終的に純培養できた菌を質量分析装置によって解析したとこ 検査のポイント: 嫌 気培 養 で 培 地の 表面 に遊 走性 がみ ら れ たら ,ま ずそ の部 分 をグ ラ ム 染 色す るこ と。 複数 菌 の場 合 は特 に注 意す る。 医 師か ら の 患者 情報 が重 要。 ろ、C. tetani と同定された。同時に行われた、嫌気性菌用同定キット Rap ID ANA Ⅱ使用による検査においても、C. tetani という同定結果であった。純培養した本菌 の芽胞染色所見(図)を示す。菌株の毒素産生性試験は国立感染症研究所で行われた。 (症例 2)豚レンサ球菌( Streptococcus suis )による髄膜炎を発症し、両側高度難聴に 至った 35 歳女性例 (IASR Vol. 36 p. 159-160: 2015 年 8 月号より抜粋) 臨 床 経 過 :生の豚ホルモンを加熱調理し喫食。左手第 5 指を包丁で切った。その後 再度、生の豚ホルモンを加熱調理し喫食した。発熱、頭痛、嘔気、嘔吐が出現し、そ の後耳鳴りが出現。培 養 検 査 : 血液、髄液ともに Streptococcus suis (豚レンサ球 菌)が検出された。グラム染色画像を(図)に示す。考 察:豚レンサ球菌は Gram 陽性 通性嫌気性レンサ状球菌である。豚、イノシシを自然宿主としている。 莢膜の多糖 検査のポイント: ① 羊血 液 寒 天培 上で 光沢 のあ る 腸球 菌 様 のコ ロニ ーを 形成 。 ②血 清 型 は市 販キ ット で該 当 する 型 は ない 。③ 髄液 のグ ラ ム染 色 像 は肺 炎腸 球菌 様、 血 液培 養 ボ トル では レン サ状 な いし 肺 炎 球菌 様の 多形 性を 示 す。 臨 床 症状 で難 聴を 伴う 場 合が 多 い。 体の抗原性により 35 種類の血清型がある。本菌は分離同定が困難であるとされてい るが、本症例では質量分析装置 MALDI バイオタイパーにて菌種が豚レンサ球菌であ ると推定され、さらにラピッド ID 32 ストレップアピにて菌種同定を行うことができ た。また、本症例では国立感染症研究所にて菌の詳細評価を頂いた結果、血清型は 2 型で あり、人から分離される型としては典型的であった。 (症例 3) Stapylococcus lugdunensis による自己弁感染性心内膜炎 文献 1),2),3)よると、自己弁感染性心内膜炎の致命率においては Viridans group 検査のポイント: ま れな 菌 で はな い。病原 性の CN S。自 施 設の 同定 キットが本 菌が き ち ん と同 定で きる かど う か確 認 。コロニーは 最初 は白 色, 時間 の 経過 とと もに クリーム色と な る 。薬 剤感 受性 判定 基 準が S. aureu s と 同じ 。クランピング因 子 (結 合コアグラーゼ)の み陽 性。 streptcocci が 7.0%、S. aureus が 27.0%であるのに対し、S. lugdunensis はそ れらを上回る 42.0%、人工弁感染性心内膜炎においては 78.0%と非常に高い。 1)Anguera I, et al. :Staphylococcus lugdunensis infective endocarditis: description of 10 cases and analysis of native valve, prosthetic valve, and pacemaker lead endocarditis clinical profiles. Heart 2005;91:e10. 2) Chu VH et al.:Eergence of coagulase-negative staphylococci as a cause of native valve endocarditis. Clin Infect Dis. 2008 Jan 15;46(2):232-42. 3)森川朋美ほか:Staphylococcus lugdunensis による自己弁感染性心内膜炎の 1 症例:医学検査 2010;59 :847-851 第4回日臨技首都圏支部医学検査学会 開催年月日:2015 年 11 月 14 日(土)~15 日(日) 開催地:横浜市 会場: パシフィコ横浜 アネックスホール 第 27 回日本臨床微生物学会総会・学術集会 開催年月日:2016 年 1 月 29 日(金)13:00 ~31 日(日)13:00 総会長:長沢 光章(東北大学病院 診療技術部) 総副会長:國島 広之(聖マリアンナ医科大学 内科学総合診療内科) 開催地:仙台市 会場:仙台国際センター・新展示施設 関連学会・研修会 のお知らせ 第 31 回日本環境感染学会総会・学術集会 開催年月日: 2016 年 2 月 19 日(金)~20 日(土) 開催地:京都市左京区 会場:国立京都国際会館、グランドプリンスホテル京都 さいきんけんさ NEW S No.122 2015 年 10 月 23 日発行 編集・発行 神奈川県微生物検査研究班 責任者 土田 孝信
© Copyright 2024 ExpyDoc