《1》IDF常設委員会等関連

《1》IDF常設委員会等関連
1.IDF分析ウィーク2013
開催期間:2013 年 6 月 3 日~6 月 7 日
開催場所:ロッテルダム(オランダ)
出 席 者:池内 義弘 (雪印メグミルク㈱)
大山 孝治 (㈱明治)
武藤 正達 (森永乳業㈱)
小田巻俊孝 (森永乳業㈱)
1.1
IDF 分析ウィーク 2013(理化学 1)
出席報告者:池内 義弘(雪印メグミルク㈱)
オランダ国、ロッテルダム市にて 2013 年 6 月 3~7 日に開催された IDF/ISO 分析ウィー
ク 2013 に、㈱明治大山氏、森永乳業㈱武藤氏、小田巻氏とともに出席致しましたので、担
当した会議内容について下記の通りご報告申し上げます。
記
【1】出席した会議
(1) 成分分析法常設委員会(SCAMC)に関わる会議
① 個別プロジェクトに関わる前段の会議(オブザーバーとして参加)
・活動中の項目(C04, C11, C13, C14, C17, C19, C20, C21, C25 全9項目)
・検討中の項目(C22, C23 全 2 項目)
② SCAMC 本会議(メンバーとして参加)
(2) 統計・自動化常設委員会(SCSA)に関わる会議
① SCSA 本会議(オブザーバーとして参加)
(3) IDF/ISO 標準化の役割についてのシンポジウム -貿易問題の事例研究を含む-
【2】 成分分析法常設委員会(SCAMC) (前段の会議を含む)
1.参加者
委員
議長: Holroyd Steve (NZ)、副議長: Trossat Philippe (FR)、Badertscher René (CH),
Berman Shura (IL), Contarini Giovanna (IT), Dehareng Frédéric (BE), Evers Jaap (NZ),
Floor Jan (ZA), Gips Foa' Marina (IL), Ikeuchi Yoshihiro (JP), Johnson Richard (NZ),
Kouaouci Rachid (CA), Lutter Petra (CH), More Sophie (ISO), Orlandini Silvia (IT),
Ritvanen Tiina (FI), Rochut Nadège (FR), Windhausen Manuela (DE).
オブザーバー
Barbano Dave (US), Cruijsen Hans (NL), Dubois Aurélie (IDF), Konings Erik (CH), Pabst
Michael (DE), Paulissen Blanca (NL), Pecou Anne (FR), Portmann Reto (CH), Quervel
Xavier (FR), Rodriguez Maria Alejandra (AR), Ruska Diana (LV), van den Bijgaart
Harrie (NL), Wille Hans (CH)
1
2.出欠の確認、議題の採択、書記の承認
議長は IDF の独占禁止法に関する声明およびここで行われる全ての議論は同時に
ISO/TC34/SC5 の議論となる事を読み上げた後、個々の情報の改訂用に名簿を回覧した。議
案書が採択され、書記には副議長が任命された。
3.前回の議事録の確認
2012 年 6 月 7 日にイスラエル国テルアビブ市で行われた前回の SCAMC の議事録を 1 ペー
ジずつ確認し、以下の点が変更された。
Project13: 新規に試験所間比較試験(CS)を組織する必要は無くなった。これにより、
プロジェクトリーダー報告は、「PL はプロジェクトグループでの議論を概説
した。次のステップとしては 6 月に委員会案の投票を行う」と変更された。
4.その他の IDF 委員会や国際組織への連絡と重要事項の照会
リエーゾンメンバーは会議での補足説明を行なう。
① AOAC SPIFAN project (Stakeholders Panel on Infant Formula and Adult Nutritionals)
に関連して IDF、ISO、及び AOAC の間で直近で話し合われた協議事項
② 各種ビタミンに関する ISO TC(Technical Committee) 34 WG 14 の動き-H Cryuijsen (NL)
③ TC34 CAG (Chair’s Advisory Group)会議による推奨事項: ISO16634 パート 1 及び 2:
デュマの燃焼法による総窒素量の測定と、粗たんぱく質含量の算出 の改訂
④ 改質(adultration)を検出するためのたんぱく質の定量 Steve Holroyd UPC (The United
States Pharmacopeial)の活動の更新
CAG のメンバーは、ISO16634-1 を概観する必要があること、および、SC(分科会)4から
ISO/TS 16634-2 を完全な ISO の標準試験法に改訂するよう望まれていることを頭に入れ
ておく必要がある。
CAG のメンバーは、総窒素の測定法に関して種々の製品(オイルシード、飼料、シリア
ル、乳)ごとに附則を持ちながら連携する厳密なガイドラインを保有する事の可能性に
ついて研究する作業部会(WG)を TC の直下に創設する事を提案する。乳に関して、分科会
(SC)5の議長はロッテルダムにおける分析ウィークの間にまず SC5のメンバーの意見
を聞く必要がある。召集者及び専門家の募集を行う予定。
5.活動状況の報告(個別プロジェクトに関わる前段の会議内容を含む)
① プロジェクト C4
ISO 8968 | IDF 20. Milk – Determination of nitrogen content (revision)
Part 1: Kjeldahl method、Part 2: Block-digestion method.
乳-窒素含量の測定(改訂)
パート 1:ケルダール法、パート 2:ブロック分解法(ブロックヒーター)
前段の会議では、5 月末に締め切られた質問状に対するコメントに関して議論が行わ
れた。適用の分類を明確にし、乳製品毎に適用範囲を作成する事となった。また、硫酸
アンモニウムの回収率の記載は「99~100%」から、「100±1%」に変更となった。
質問状に対して JIDF が提出した「”トリプトファンやリジン、しょ糖をオーブンで乾
燥させない”という記述に根拠はあるのか?」という質問において、PL は疑問の内容が
理解できておらず、苦笑する場面があったが、他国の委員が質問内容を正しくフォロー
してくれた。最終的には米国の委員から、
「これは昔からある記述であり、今となっては
根拠を確かめられないので、
(最終案でもあるし)この会議で削除を決定する事は出来な
い」とコメントがあり、記述は維持される事となった。
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Trossat 氏は、水蒸気蒸留後の滴定剤にこだわった。既存の国際規格ではホウ酸で滴
定となっているが、実際には世界中の試験所で硫酸を用いているという。現実と乖離し
た試験法にするべきではないと強硬に主張したことから、注記に代替として硫酸を用い
てよいと記載する事となった。
Trossart 氏は、また、サンプル採取の項がある多くの国際規格に記載されている
「truly representative(真に代表する)」という表現にもこだわって議論を展開した。
この表現は明らかに酪農の規格にのみ使用される表現であるので、ISO は変更の意向が
ある。SCAMC はこの件を MSSG(Methods Standards Steering Group)に相談し、他の SC
とも議論した上で用語の統一を図る事となった。
次のステップ: ISO の投票は今年 9 月 4 日に締め切られる。その後プロジェクトは出
版の前に「truly representative」の正しい使い方を確定する。
② プロジェクト C11
Milk products and infant formula - Direct determination of labeled fatty acids.
乳製品・乳児用調製乳-誘導体化脂肪酸の直接測定
この規格案は本来 AOAC SPIFAN project (Stakeholders Panel on Infant Formula and
Adult Nutritionals) のみに関連するはずだったが、モントリオールでの AW などで他の
食品にも使える方法にということになり、その面で苦労している。前段の会議において
は、試験所間比較試験(CS)に供する試料(最低でも 6 種類を要求されている。育粉以
外に、殺菌・未殺菌のクリーム、粉乳および液状乳、チーズを2、3 種類など)につい
て時間をかけて議論された。さらに、前処理中のロスが大きい酪酸(C4:0)を含めるか
とか、分岐脂肪酸はどうするなどが議論された。
SCAMC 本会議では、PL が次回の CS では、12種類の試料(SPIFAN の 6 試料および 6
種の乳製品(チーズ 1 種を含む)を採用する事、17 試験所が参加を表明しているが、そ
のうちチーズでも参加できるのは 8 試験所しかないこと、反芻動物以外の脂肪や、C4、
分岐脂肪酸は含まない事などを提案した(C4 は他の方法で分析できそうな事による)。
これに対して、分岐脂肪酸が直鎖のピークに重なる場合があるとの指摘があり、ガス
クロマトグラフ(GC)の条件やチャート等も参加者から情報提供してもらう事になった。
次のステップ: PL は 6 月中に ISO の新規活動項目案を作成する。
③ プロジェクト C13
ISO 8968|IDF20: 2001. Milk- Determination of nitrogen content (revision) Part4:
Determination of non-protein-nitrogen content (revision) Part5: Determination of
protein-nitrogen content
乳-窒素含量の測定(改訂)
パート4:非蛋白態窒素の測定(改訂) パート5:蛋白態窒素の測定
PL は、IDF/ISO 事務局からの要請によりタイトルを”Determination of non protein
nitrogen content”に変更する事および、Appendix のタイトルを”repeatability and
reproducibility ”に変更する事を提案した。質問状に対する回答の中で、滴定する酸
の濃度を 0.01N から 0.02N に変更するというフランスの提案があったが、CS において
0.01N で実施したので、受け入れられなかった。
この項目は、2 つのパートを一つにまとめるだけの仕事なので、さらなる CS の必要は
ない事が確認された。
次のステップ: プロジェクトを国際規格案提案の段階(5 ヶ月間の投票)に提案し、
100%の賛同が得られれば直接印刷に移行するかどうかを決定する。そうでなければ国際
規格最終案の投票(2 ヶ月間)に向かう。
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④ プロジェクト C14
ISO 17997|IDF29: 2002. Milk-Determination of casein nitrogen content (revision
by merging Part1; Indirect & Part 2; Direct determination of casein-nitrogen
content)(revision)
カゼイン窒素含量の測定パート 1(直接法)とパート 2(間接法)の統合による改訂)
牛乳を用いてフランスが行った、以前の方法と新しい方法による実験において、NCN
(非カゼイン体窒素)
の値が 100g あたり 0.01g異なるという結果について議論された。
酢酸でpH が 4.6 以下に下がると沈殿生成が不十分となり、NCN が大きくなるという。
Trossat 氏は、新旧の方法において、ろ液におけるカゼインの混入量と、沈殿における
乳清たんぱくの混入量を LC-MS 法で定量し、最適な沈殿条件を決定する実験を数ヶ月以
内に実施し、結果を PL および SCAMC に報告する事になった。
次のステップ: このプロジェクトは ISO の手順で再スタートし、準備が出来次第新規
活動項目とする事となった。
⑤ プロジェクト C17
ISO 15151 | IDF 229. Milk and milk products — Determination of calcium, copper,
iron, magnesium, manganese, phosphorus, potassium, sodium and zinc contents by
using inductive coupled plasma atomic emission spectrometric method (ICP-AES)
乳・乳製品-ICP-AES による Ca, Cu, Fe, Mg, Mn, P, K, Na, Zn の測定
前段の会議では、SPIFAN プロジェクトと共同で試験所間比較試験(CS)を組織すると
いう方向性が決まった。SCAMC において PL は、これは両者における分析法の調和に向け
た良い機会となるであろうと述べた。
ドイツの委員から、ドイツで乳において行われた CS の結果が例示された。議長は、ド
イツで用いた方法は AOAC 法と同一である為、この結果は精度のたたき台となると言及し
た。
議長は、SPIFAN プロジェクトは育粉を対象にしている事を指摘した。SCAMC は 3 種の
乳製品を含める事を提案した。この話題は SPIFAN2の議案書に記載されており、AOAC
からは方法の提供を求められている。そして ISO/IDF はこの方法を提供できるし、乳製
品を含める事を提案する。
次のステップ: AOAC の会議が 8 月に開かれる。IDF は議案書に提案し、ISO 事務局は
ドイツの CS の報告書をワーキンググループメンバーに送付する。
⑥ プロジェクト C19
Determination of BHBA and acetone content by continuous flow analyzer
連続フローアナライザーによるβ-Hydroxybutyric acid(BHBA)とアセトン含量の測定
前段の会議において、CS の参加希望試験所は6試験所のみだったので、今後の検討に
向けては十分な数の試験所の参加を募る必要がある。各委員は興味は持っているが、装
置が高価な為、参加できない事情がある(例えば規格案で採用している SKALAR は約
$6000)。ワーキンググループでは、他社の装置も使用できるようにすること及び CS の前
段で比較試験を行う事を決定した。この他に、CS における送付試料の安定性も議論とな
った。アセトンは低温では 6 日位は安定だが、その間に世界中に試料を送付して、検査
まで実施するのはかなり困難である。
次のステップ: SCAMC では CS を確定するか、あきらめて技術レポートに変更するか
を決定するまでプロジェクトを延期する事とした。PG は装置メーカーのリストを作成す
る。PL は CS に関する意思決定の後、規格案を改訂し、ISO の新規活動項目案に移行する。
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⑦ プロジェクト C20
Cream – Determination of fat content – Acido-butyrometric method and laboratory
glassware
クリーム
ラス器具
-脂肪含量の測定-
Acido-butyrometric 法(酸分解ゲルベル法)と実験用ガ
PL(仏)から、ゲルベル法はフランスでは受入乳価の決定に非常に重要であるが、一
口にゲルベル法と言っても、数値を読むときの判断基準や、用いるガラス器具が各国で
微妙に異なっている事からこの活動が必要であると説明された。
ガラス器具や判断基準の違いによる結果の違いに関するデータが示され、様々な議論
が行われた結果、以下の決定がなされた。
・ ゲルベル法の適用範囲は脂肪分 50%までとする。
・ 自動読み取り装置は規格案から排除する。
・ 規範となブチロメーターの形状を規格案に盛り込む。
次のステップ: PL は 6 月末までに ISO 新規活動項目提案書を作成し、回覧する。
⑧ プロジェクト C21
Milk — Determination of fat content — Acido- butyrometric method and laboratory
glassware
乳 -脂肪含量の測定- Acido-butyrometric 法(酸分解ゲルベル法)と実験用ガラス器具
C20 と C20 はかなりの部分が共通するので、同時に議論された。決定事項は以下の通り。
・ 乳におけるゲルベル法の適用範囲は脂肪分 6%までとする。
・ 試験法の中に、均質化された乳における注意事項を注記として加える。
・ 規範となブチロメーターの形状を規格案に盛り込む。
・ 自動読み取り装置は規格案から排除する。
・ 11mL 用のポールピペットは標準化しないこととした。
(国によって 10.77mL とか 10.79mL が採用されているが、データに差異が見られなか
った為)
次のステップ: PL は、乳において色々な国で重量/容量および重量/重量で表記され
ている結果が一致する事を確かめる為に、比較試験を継続する。
PL は 6 月末までに ISO 新規活動項目提案書を作成し、回覧する。
⑨ プロジェクト C25
Definition of propionic acid in cheese by gas chromatography
ガスクロマトグラフィーによるチーズ中のプロピオン酸の確定
PL から、ISO で新規活動項目案が回覧中(6 月末締め切り)という説明をしていたとこ
ろ、ISO 事務局員から国際規格番号に関しての要請がなされ、これにより ISO と IDF の
考え方の違いが顕わになった。IDF 側は一つの番号の中で GC 法を Part1(参照法)、イオ
ン交換 HPLC 法を part2(ルーチン法)とし、するつもりでいるが、ISO 側は、それは 2
種類の方法だから 2 つの異なる番号を付けるべきだと主張した。PL は、
(一つの番号に
複数の方法というのは)IDF 規格では普通に行われてきたことであるし、そもそも同じ
物質を測定するのに国際規格(番号)が何種類もある事が問題なので、これまで多大な
努力をしてスリム化してきたのだと主張したが、受け入れられなかった。国際規格を系
統立てる際の根本的な部分で両者の考え方が全く異なる事に、出席者は非常に驚いてい
た(筆者は、ISO との統合活動が始まって 10 年近く経っているのにこれまで問題が起き
て来なかった事に驚いた)
。
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次のステップ: 直接国際規格案の段階へ移行するという投票結果に基づき、PL は年
内に CS の手順をワーキンググループ、常設委員会および統計部会に提案する事になった。
CS として 6 種のチーズに対して 8 試験所を募る予定だが、2 つの方法となると、16 試験
所となってしまう。試料の準備などの費用がかさむと PL は頭を抱えていた。
この方法で有機酸組成を定量することを目的とした研究の論文を Harry van den
Bijgaart 氏が投稿することになっているが、遅れており、数ヶ月以内に投稿すると述べ
ていた。
⑩ プロジェクト C24
IDF 165:1993 (no ISO) - Butter oil – Determination of contents of antioxidants
(revision into joint IDF/ISO standard)
バターオイル-酸化防止剤含量の測定(IDF/ISO 合同スタンダードへの改訂)
IDFスタンダードから IDF/ISO 合同規格に移行するには、このプロジェクトにおい
て PL と、少なくとも 5 カ国の参加表明が必要である。IDF の質問状において 15 カ国の
回答があり、棄権は無かったが、プロジェクトの牽引を表明する国は無かった。
次のステップ: IDF 本部は Codex においても要望が無い事を確認の後、プロジェクト
の中止を提案する予定との事だった。
⑪ プロジェクト C28
Instant dried milk – Determination of the dispersibility and wettability
インスタント粉乳-分散性及び水和性の測定
国際規格案を回覧し、出されたコメントを受け入れたと PL から説明された。次のステ
ップは国際規格最終案の投票で、6 月 29 日までに開始の予定。
6. 検討中の活動項目 (個別プロジェクトに関わる前段の会議内容を含む)
① プロジェクト C12
Raw milk - Quantitative determination of individual proteins
生乳-個別タンパク質の定量分析法
K. Olieman 氏(蘭)は欠席。彼は来月退官するのでこのプロジェクトにおける彼の検
討はストップする。SCAMC は R Portmann(スイス)に PL になる事を依頼した。彼は、な
っても良いと思うが、SCAMC での事務手続きや国内委員会での許可が必要と述べた。
フランスの委員から別の新しい方法が提案された。試料を脱脂し、清浄剤
(Clarification solution)を加えるだけの前処理後、LC-MS 分析を行い、各ピークの
exact mass をデータベースから検索して個々のたんぱく質の同定と定量を行うというも
の。リン酸化や糖化の影響もある程度把握できるとの事だった。
会議には、昨年プロテアーゼ分解後のペプチドを LC/MS で分析する方法を提案した委
員も出席していた(特に新しいデータは示されなかった)。会場の委員からは、LC-MS と
いう共通の装置を用いるが、全く異なる分析法なので、双方がさらに実験を重ねて、新
規活動項目としてアプライするよう求める意見が多く出された。
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② プロジェクト C22
Sweetened condensed milk – Determination of sucrose content – HPLC method
加糖煉乳-HPLC 法によるショ糖の測定
もともと PL が意図していたのは、加藤練乳の中のしょ糖のみを定量するというシンプ
ルな方法だったが、ISO 事務局から、適用範囲を広げて、個別の糖質の定量値の総和と
して総糖類の含量を出すという方法に変更するという要請が出された。会議の中で個別
の糖質の種類が議論され、乳製品だったらブドウ糖、ガラクトース、しょ糖、乳糖、麦
芽糖、ラクチュロースの 6 種類くらいは分析できるべきだとの方向になっていったが、
PL は、そんな方法を確立するには大変な時間がかかるし、試験所間比較試験にも莫大な
費用がかかる為、PL を辞退すると言った(これは筆者の経験からも非常に難しい分析で
あると思う)
。
オランダの委員が Eurofin(欧州全土に試験所を持つ分析会社)の専門家に方法の開
発が出来そうかどうかコンタクトを取ることとなった。前 PL は、一人の専門家としてな
らプロジェクトに参加する意志はあると述べた。
SCAMC としては、Eurofin の専門家の意見を待ち、分析法確立の見通しがある場合には、
現行のプロジェクトは停止して新しい活動項目をスタートさせることとなった。
③ プロジェクト C23
ISO 17678 | IDF 202. Milk fat – Detection of foreign fats by GLC analysis of
triglycerides (Reference method) – revision of scope
乳脂肪-トリグリセライドの GLC による異種脂肪の測定(参照法)
適用範囲の改訂
PL が欠席したので、議長は文献に基づいて適用範囲を広げてゆくという SCAMC の決定
を再確認した。昨年、アジアの一部地域で汎用される特殊な飼料を摂取した牛の乳は、
この方法により異種脂肪混入と判定されることがわかり、国際規格に注意書きが挿入さ
れる事となったが、今回イタリアの委員から、山岳地帯の牧草を食べさせた牛の乳も、
共役リノール酸やオメガ3系列の脂肪酸が高くなるため偽陽性と判定されるという結果
が報告された。これにより、PL はさらに注意書きを挿入して新規活動項目案を改訂する
こととなった。
④ プロジェクト C26
Method for the determination of milk adulteration with whey
乳清による乳の改質を測定する方法
マイクロチップ電気泳動によるカゼインと乳清たんぱく質の比率から、乳の改質を測
定する方法の原理と結果及び比較として HPLC 法の結果が PL から示された。PL は、より
簡便な、赤外や色素結合法の使用が可能になるようさらにデータを蓄積していくと述べ
た。Brazil Milks 社による強力なデータベースの構築が今年から開始される。この結果
をプロジェクトグループ及び SCAMC と共有し、更に検討を重ねる事となった。
⑤ プロジェクト C27
Revision of ISO 6091 | IDF 86 Dried milk – Determination of titratable acidity and
extention of its scope to raw milk
ISO 6091 | IDF 86 の改訂-滴定酸度の測定 および適用範囲の生乳への拡張
適用範囲を牛乳、やぎ乳、羊乳に広げる事が視野に入れられている。会議では終点の
判定が議論になった。まず、フェノールフタレインを用いるか、pH 滴定を用いるかで
議論になったが、フェノールフタレインは使わない事となった。次に、終点のpH 設定
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がまちまちである事(8.4~8.7)が議論になった。結果に大きな影響は無いという意見が
大勢を占めたため、牛乳、やぎ乳、羊乳における担当を分担して、データを蓄積する事
となった。自動滴定装置の使用を盛り込むかどうかにはこの結果もあわせて考える事と
なった。
⑥ プロジェクト C29
Dye binding methods for protein determination
色素結合による蛋白質測定法
SCAMC 会議当日の時点で、この国際規格に対する興味を示した委員はいなかった。し
かし、オレンジ G を用いる方法にアミドブラック法の結果を加えて比較検討する論文を
IDF 機関紙に投稿することにフランスの委員が参加を表明した。
⑦ プロジェクト C31
Determination of whey protein to casein ratio
乳清たんぱく質/カゼイン比の測定
この活動項目は、IDF と AOAC 双方において共同で開始された。前段の会議では、両者
の方法が異なっている事が議論になった(例えば、4 種のアミノ酸を測ることになって
いるが、なぜその 4 種なのか?とか、アミノ酸の分析法は規定する必要があるのか?と
か、文献値の出典が明らかでないとか、アミノ酸の測定と、それを使った乳清たんぱく
質/カゼイン比の計算方法は独立すべきだ・・・など)。これらを含めて IDF 側から AOAC
に送った質問や意見に対して、この時点では回答が来ていなかった為、IDF 側で結論は
出せなかったが、
「判断基準に基づく(Criteria approach)
」という観点から、用いる装
置や方法にかける制限を最小にしていく為のデータを蓄積していくことが望ましいとい
うことになった。
⑧ プロジェクト C32
Review of existing standards for the determination of fat in various dairy matrices
様々な酪農物における脂質の測定において現存する規格類の概観
P Trossat 氏は、様々な脂肪定量法について精度を比較した表を示して、最終目標は、
シュミット・ボンジンスキー・ラツラフ(SBR)法と、レーゼ・ゴットリーブ(RG)法に集
約することであると説明した。
SCAMC は、数々の亜流がある RG 法について、乳及び粉乳における試験所間比較試験デ
ータを基に単一の方法に統合することとした。同様の目的でクリームにおける新しい試
験所間比較試験を組織する。
SBR 法については、ほとんど語句修正のコメントしか出てこなかった為、SCAMC はチー
ズ用およびカゼイン/カゼイネート用の 2 つの方法を統合する事とした。
7.議長、副議長の選挙
議長(S. Holroyd 氏)
、副議長(P. Trossat 氏)共に再選された。
8.次回の会議の場所と日程
IDF/ISO 分析ウイークは 2014 年 5 月 15~22 日にドイツ国ベルリン市で開催される。
8
【3】 統計・自動化常設委員会(SCSA)に関わる会議(一部前段の会議を含む)
1.委員
議長:S Orlandini (IT)、C Baumgartner (DE), T Berger (CH), U Braun (DE), P Broutin
(FR), F Dehareng (BE), M Gips (IL), T Hauck (DE), S Holroyd (NZ), S Kold-Christensen
(DK), B Müller (DE), A Pécou (FR), P Trossat (FR), H van den Bijgaart (NL)
オブザーバー
D Barbano (US), G Contarini (IT), A Dubois (IDF), Y Ikeuchi (JP), E Konings (CH),
K Mulawa (DK), M Pabst (DE), R Skyrud (NO), X Quervel (FR).
2.出欠の確認、議題の採択、書記の承認
議長は IDF の独占禁止法に関する声明およびここで行われる全ての議論は同時に
ISO/TC34/SC5 の議論となる事を読み上げた。また、副議長の Rob Crawford 氏から申し
訳ないが欠席すると連絡があった事を伝えた。
3.前回の SCSA 会議(2012 年 6 月 8 日、イスラエル国テルアビブ市)の議事録の確認
確認された。
4.活動状況の報告
プロジェクト S01
Statistics of analytical data − Interlaboratory Study Results of other MAS Project
groups
分析データの統計 -他の MAS プロジェクトグループの試験所間試験結果
現在の PL は定年退職するため、SCSA は U Braun(独)氏と S Orlandini(伊)氏に共
同で PL となる事を求めた。
SCSA での個別の議論は以下の通り
SCAMC – C11 – labeled fatty acids
この活動においては測定対象の種類や分析法が非常に多数あるため、かなり複雑な
研究となっている。SCSA は、若干のパラメーターを固定した上で 12 種類(n=2)の試料
を分析する事を推奨することとした。全てのデータは、抽出脂肪あたりのグラム数と
して収集することとした。
SCAMDM – D06 – LAB by flow cytometry
“enumeration”という単語はこの規格においては正しくないと考えられるので、こ
の点は SCAMDA-D6 と共に議論すべきである。研究所間比較試験の手順所案が作成柱で
ある。S01 は設定条件のチェックを要請されている。
SCAMPAI – P06 alkaline phosphatase in cheese
S01 の PL は試験所間比較試験のプランについて P06 の PL と議論した。より均一で正
確な試料調整のために試料を独立した二つの CS に分けるという PL からの要請は合意
された。
SCAMAC – A04 - lysozyme
精度の図表に測定の不確かさを加える事になった。この数値は S01 によって改訂さ
れた。報告案を SCAMAC に送付する。
S01 におけるその他の特記事項として、ISO のプロジェクトチームや、AOSC の規格設
定の考え方の共有化など、他の団体とのリエーゾン活動が紹介された。
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プロジェクト S02
Statistics of analytical data – Statistical sampling plans liaison with TC 69/CCMAS
分析データの統計 -統計的サンプリング計画 (TC69/CCMAS との照会)
CODEX の分析サンプリング部会(CCMAS)からは「サンプリング及び試験の運用に関する
原則」の原案が 2012 年の年末に送付されてきた。相談を受けているのは原理の部分に関
してのみで、解説に関してはまた別の相談となる予定。
また、サンプリング計画に関するたたき台について、次回の CCMAS 会議で議論する予定。
プロジェクト S03
New applications of IR spectrometry − General Information for publication
赤外九州スペクトルの新しい応用 –出版に向けた一般情報
テルアビブにおける前回の会議で確定した、優先して取り組む活動項目について議論された。
① S03a スペクトルの標準化に関する文書化
委員: Frédéric Dehareng (BE) – leader, Dave Barbano (US), Wopke Beukema (NL) ,
Pierre Broutin (FR), Steen Kold Christensen (DK), Giovanni Cabassi (IT),
Pierre Dardenne (BE), Juan-Antonio Fernandez (BE), Clément Grelet (BE),
Henrik Vilstrup Juhl (DK), Hans Villemoes Andersen (DK), Philippe Trossat
(FR)
複数の装置メーカーが各自のスペクトルの標準化についての取り組みを説明した。
PG は標準化への影響を議論した。ゴールとなる文書の対象の中には、乳の IR スペク
トルが包含されるべきである。文書の中では装置メーカーが自社の装置の使用法を説
明し、第二項では装置間の一般的標準化についての取り組みを記載する予定。
装置の説明はイントラネットにアップロードされる予定。
PL は 9 月末までに最初の文書案を作成する。
② S03b 新規パラメーターを用いた品質評価の実践
委員: F Dehareng (BE)/A Pécou (FR) - leaders, S Holroyd (NZ), S Orlandini (IT),
D Barbano (US), P Broutin (FR), G Contarini (IT), S Kold Christensen (DK),
T Berger (CH), W Beukema (NL), H van den Bijgaart (NL), T Hauck (DE), K
Mulawa (DK), B Mueller (DE)
文書化のための2つの目標が設定された。
IR スペクトルにおいて提唱された新しい較正式に関連して
① 適切な較正式の選択-統計的要素は?
・較正結果の統計
・バリデーション及びモニタリングの統計
②日常の精度管理法 -QA マネジメント?
・脂肪測定に関してフランスで作成された QA の取組みが紹介された。
年末までに文書案を配布予定。
S Holroyd 氏は、定性、定量の両方に取り組んで欲しいと要望した。デンマークの
委員が協力を表明した。
③ S03c コミュニケーション
委員は S03 メンバー全員
IR 分光分析において開発された新しいアプリケーションもしくは要素や指標に関
する新しい研究結果を紹介する事、および、コミュニケーションを進展させる為の提
案と努力を行う事を目的とする。
SCSA は、IDF 本部が IDF ウエブサイトに情報投入の為のテンプレートを用いて専用
のページを作成する事に合意した。これに関して A Dubois 氏が IDF 本部と議論する。
10
プロジェクト S04
ISO 16140, ISO 17043 & ISO 22117. Food products - Statistics of analytical data of
microbiological methods (method validation & proficiency testing) – liaison with
ISO/TC 34/SC 9
食品-微生物試験法の分析データの統計(方法のバリデーションと熟練度試験)
① EN ISO 16140 の改訂-食品微生物的方法のバリデーション
規格をいくつかのパートに分離しようとしている。
・Part1: 専門用語
・参照法に対する(試験所独自の)代替法のバリデーション
この2つの項目は大きく進展し、技術的な内容も確立されたため、6 月 10 日を目処
に国際規格案の投票に投稿中である。
SCSA にはコメントを求められている。会議前日まで指摘はなかったが、当日試験所
間比較試験の項(6.2)に関して、他の方法と比較を挿入すべきだと言う意見が出された。
SCSA はこれは重要な指摘だと考えた為、コーヒーブレイクの間にコメントを文章化し、
委員合意の上で ISO に送付した。
② ISO 17468-参照法の標準化もしくは食品微生物における標準法の改訂における
技術的要求事項
文書案を 6 月 10 日締め切りで投票中。IDF からのコメントは無し。
③ 食品微生物学における外部精度管理
外部精度管理の統計的側面における一般的スタンダードの改訂
ISO13528 は食品微生物学における外部精度管理に関して CEN ISO/TS22117 と重複し
て記述しているので、改訂する事を ISO/TC 34/SC 9/WG2 に提案する。
プロジェクト S07
ISO 16297|IDF 161 Milk - Bacterial count — Protocol for the evaluation of alternative
methods
乳-細菌学的品質の測定-日常試験法の評価の手引き
スタンダードがちょうど出版された。SCSA は PL 及びメンバーの功績に対して感謝を表
明した。PG は解散の予定。
プロジェクト S08
ISO 9622 IDF 141 - Milk and milk products - Guidance on the application of
mid-infrared spectrometry
全乳-脂肪、たんぱく質および乳糖含量-中赤外線分析装置の操作の手引き
国際規格最終案の投票が 7 月 13 日に締め切られる。 → 出版の予定。
プロジェクト S09
Reference system for somatic cell counting
体細胞測定のための参照システム
・ 参照試料に関するガイドラインが SCSA によって承認され、IDF 機関紙における出版に
むけて MSSG が再調査しているとのこと。
・ 参照試料に関する質問状の回答の概観が示され、中でも参照試料を保有する事にたい
して強い要望があるというすばらしい回答が寄せられたという事が紹介された。60 以
上の試験所が 28 試験所間比較試験に参加している。試験所の中から技能評価のモデル
及び外部精度管理手順のモデルを作成する。結果を専門誌に投稿する。
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プロジェクト S10
Milk and Milk Products – Method for Automated Sampling
乳及び乳製品-自動サンプリングの方法
PG の中での議論を踏まえて PLs は規格案を改訂し、PG 及び SCSA と相談する予定。
2014 年 9 月に向けて ISO の新規活動項目としての案を準備する。そのなかで、ICAR
ガイドラインの改訂を視野に入れて適用範囲を出来る限り拡張する。
5.検討中の活動項目 (個別プロジェクトに関わる前段の会議内容を含む)
プロジェクト S11
Revision of standard ISO 21187 | IDF 196 Milk – Quantitative determination of
bacteriological quality – Guidance for establishing and verifying a conversion
relationship between routine method results and anchor method results Quantitative
determination of bacteriological quality
乳-微生物学的品質の定量的測定-日常試験法結果と最終確定法結果との変換関係を設
定し検証する為のガイドライン
前段の PG 会議では、原乳中の雑菌数を定量する方法の改訂に向けて、事前に集められ
た意見からどの項目を修正するべきかの意見が話し合われた。Scope に関しては、現行
法で記載されている原乳の微生物学的な品質を対象とするだけでなく、殺菌された後の
ミルクなども含めた全般的なミルクを対象とすべきだとの意見が出され話し合われたが、
殺菌された後では微生物学的な評価手法が大きく異なるので、原乳に限定すべきである
とのことであった。また、現行法に記載されている Reference method と Anchor method
の規定が各国で異なるため、EU、NZ、アメリカ、ブラジルなどでの各国の原乳中に含ま
れる雑菌の検査法を報告し、今後の改訂に向けた参考資料として活用することになった。
SCSA 会議において、Bianca Mueller 氏(独)および Berte Asmussen 氏(デンマーク)
が PLsに任命された。B. Asmussen 氏が SCSA のメンバーになる事は彼女の国内委員会か
ら承認された。
6.新しい活動項目
新しい活動項目の提案は無かった。
7.議長、副議長の選挙
S. Orlandini 氏は2期目の議長(2 年任期)として再選された。現職の副議長は次期
の候補者とはなれず、立候補者も居なかったことから、このポストは次回の会議まで空
席となった。
SCSA は引き続きサポート委員会によって議長を補佐していく。そのメンバーは以下の
通り。
H van den Bijgaart(蘭)(S09, S03)、U Braun(独)(S01, S02, S04)、Bianca Muller
(独)(S10, S11)
8.次回の会議の場所と日程
2014 年 5 月 15-20 日
(ドイツ国ベルリン市)その後 ICAR と合同で 23 日まで開催される。
サンプリングの質に関するセッションにおいて、IDF と ICAR の専門知識の交流を行う。
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【4】 IDF/ISO 標準化の役割についてのシンポジウム -貿易問題の事例研究を含む-
講演4
世界規模の乳製品貿易における分析法標準化の役割
Sasha Lazidu 氏 (Regulatory Affairs Manager, Fonterra Europe Co-operative U.A,
Netherlands)
初めに、フォンテラが巨大な企業で、現在世界の各地域に膨大な量の乳製品を輸出して
いるという現状説明があった。一方で、2020 年には特にインド、中国、東南アジアにおい
て食料の需要が大きく増える事、その傾向が継続する中で 2050 年に世界中の人々にどう
やって食料を供給するかが大きな問題であるという事が説明された。世界中で国境を越え
た食料の交易が行われる中、
食品の安全性に対する信頼を形成するには長い年月を要する
が、それは一度の品質事故であっさり崩れてしまう。この信頼の形成には、根底に国際規
格があり、
各国国内ではそれを基にした国内規格によって消費者に必要な情報を供給する
のが理想だが、現実には国際規格があったり無かったり、各国の規格がまちまちになって
しまったりしている。この現状を改善するための行動が必要になっている(フォンテラは
それに貢献している)
。
事例研究1
キエルダール法によるたんぱく質分析
キエルダール法の国際標準法は、もともと液状乳に適用されるものだが、現在では乾
燥された乳製品においても世界中で広く用いられている。しかしながらこの分析結果の
不整合がしばしば貿易トラブルとなっている。不整合の例として分解促進剤の組成(Cu
のみ、もしくは Cu プラス Ti)および分解時間(60、90、180 分)が測定値に与える影響
が示された。UHT 乳では結果に差は無いが、MPC80 においては 60 分、90 分では明らかに
低い値となった(結論としては、Cu のみ、180 分が良好な値を示した)。この条件におけ
る国際的試験所間比較試験を全脂粉乳、脱脂粉乳、WPC、育粉等 7 種の粉乳において実施
し、IDF 機関紙に投稿した。この改良法は年内には印刷され、Codex2014 に採用される予
定であるとの事。
事例研究2
米国薬局方の動き
米国薬局方では、未知、既知を問わず直接的に偽和剤を検出する方法を開発(改訂)
しようとしている。世界中に広く交易されている食材として脱脂粉乳を例にとると、100
以上の偽和剤が同定されたという調査結果がある。こうなっては、
「含まれてはいけない」
物質を検出することは現実的ではなく、個々の要素の「正常な範囲」というものを確定
する方法を確立すべきだという考え方で動いている。
13
講演5
たんぱく質の質の評価について
Prof. Toon van Hooijdonk (Dairy Science & Technology, Wageningen University,
Netherlands)
この講演でも、はじめに爆発的な人口の増加が起こるという予測について述べられた。
2050 年までに世界の人口が 24 億人増加することから、食料の需要は 50%増加する。これ
に対して供給量はそれほど伸びないことから、このままでは食糧不足がかなり深刻になり、
多くの人が何種類もの食べ物を好きなだけ食べることは不可能となる。そこで、食べ物に
含まれるたんぱく質の「質」を考えていかなくてはならない。
その食物の必須アミノ酸の組成が人類の必須アミノ酸組成に近いほど、たんぱく質の
「質が高い」ことになる。この「質」の評価には、生物学的測定、化学的測定によってパ
ラ メ ー タ ー を 取 得 す る。 そ の 両 者 を 用 い る 考え 方 と し て 、 Protein digestibility
corrected amino acid score(PDCAAS)法および Digestible indispensible amino acid
score (DIAAS)法が紹介された。
最近の栄養学的知見から、PDCAAS の考え方には修正が必要となってきた。例えば、①
アミノ酸は小腸で吸収され、後腸では吸収されない為、測定は小腸の終点(回腸)で行う
べきであるとか、
②祖たんぱく質の消化吸収能は、個々のアミノ酸のそれとは異なるとか、
③加熱された食品においてはリジン残基が損傷を受け、消化吸収能が異なってくるとか、
④腸内細菌による窒素のロスも考慮しなくてはならない、など。この考えを挿入する事で、
生物学的、化学的測定値からの「質」を評価する計算式に修正をかけたものが DIAAS であ
るという。講演の中では、これらの栄養学的知見や、それによる測定値のズレ等について
データが示された。
PDCAAS 法は FAO/WHO によって 1991 年から提唱されているが、上記の考え方を取り入れ
た DIAAS の方がよりアミノ酸の実際の栄養学的出納状況を表しているとして、2013 年初
頭に、FAO の専門家チームが、DIAAS への変更を提案した。
14
1.2
IDF 分析ウィーク 2013(理化学 2)
出席報告者:大山
孝治(㈱明治)
2013 年 6 月 3 日(月)~7 日(金)にオランダ国ロッテルダム市にて開催された IDF 分
析ウィーク 2013 に、雪印メグミルク㈱池内氏、森永乳業㈱小田巻氏、武藤氏とともに出席
した。担当した会議等の内容について、以下に報告する。
記
Ⅰ.出席した会議等
出席した会議等は、
表 1 の通りであった。
また、
会議場(Inntel Hotels Rotterdam Centre)
の外観等を図 1,2 に示す。参加人数は、約 200 名であった。
表1
IDF 分析ウィーク 2013 での出席会議等(常設委員会別)
常設委員会名
加工助剤・
指標分析法
(SCAMPAI)
食品添加物・
汚染物質分析法
(SCAMAC)
常設/プロジェクト会議
出席日時
参加者数
常設委員会
6 月 7 日(金) 委員 14 名
8:30~10:15
オブザーバー 4 名
P05,06,08
P09,13,15,16,17
6/3(月)PM
6/6(木)AM
常設委員会
6 月 7 日(金) 委員 19 名
13:00~14:45
オブザーバー 12 名
A04
A02,10
6/3(月)AM
6/4(火)PM
約 10 名
約 20 名
シンポジウム
6/5(水)AM
約 100 名
テクニカルツアー
6/5(水)PM
約 80 名
約 15 名
約 15 名
その他
図1 Inntel Hotels Rotterdam Centre
図2 会議場受付
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Ⅱ.会議等の報告
1.加工助剤・指標分析法常設委員会(SCAMPAI)関係
<活動計画>
1.P05:乳及び乳製品-アルカリフォスファターゼ活性の測定-
パート 1:乳および乳ベース飲料における蛍光法
・FDIS(7 月に各 NC に最終承認のために回付予定)の内容に関して、意見は出されなか
った。
・クリームを適用範囲に追加する件が議論され、以下の通りとなった。
1)クリームを適用範囲に追加することで PG 委員の一致を得たが、FDIS 投票の段階で
あるので編集上のコメントを追記するのみとする。
2)PL[E Garry(米国)
]は、クリームを適用範囲に追加する改訂版を作成するため
の NWI を申請することが必要である。IDF/ISO 事務局のアドバイスを基に手続き
を進める。
3)改訂版では、クリームにおける測定の正確さに関するデータ表を簡潔な付録の形
で追加する。改訂版(案)を SC 委員、PG 委員に回覧し意見を求める。
2.P06:乳及び乳製品-アルカリフォスファターゼ活性の測定-
パート 2:チーズにおける蛍光法
・PL[M Nicolas(フランス)
]より、2012 年に実施された予備試験結果が以下の通り報
告された。
1)試料として、ソフトチーズはカマンベールを、ハードチーズはコンテを使用した。
2)サンプル調製が重要(クリティカルポイント)であった。つまり、サンプル調製
をマスター機関で実施するか、個々の参画機関で実施するかで結果が異なった。
3)均質性、安定性の指標で見ると、調製機関が同一であると結果は良好であった。
4)同一の調製品であっても、non expert 機関では試料抽出時間の長さも結果に影響
していた。
・共同試験について、以下の通り実施することが承認された。
1)操作手順書(改訂版)は、7 月末までに PG に回付する。また、統計的視点からの
確認のため SCSA にも照会する。
2)2013 年秋(10~11 月)と 2014 年春に共同試験(validation trial と呼称)を実
施する。
3)試料調製は同一機関にて実施して、参画機関に配布する。
4)試料は、3 品種(ソフト、セミハード、ハード)×殺菌 2 条件とする。
5)ハードチーズでは、サンプリング箇所の指定などのために、試料前処理操作を説
明するイラスト/写真を添付し、操作の標準化を図る。
6)EU を中心に、フランス、イタリア、オランダ、ドイツ、米国の 14~16 機関で実施
する。
7)結果は、2014AW にて報告予定である。
・DIS は、2014 年 4 月までに ISO 事務局に送付する予定である。
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報告の全文は、会員頁を参照ください。
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